1月23日付 市町村合併改正案 自主性を尊重したい
地方自治体の多くは景気後退による大幅な税収減で疲弊している。将来的な財政基盤や行政サービス低下への不安をなくすためにも、後継法によって地域振興が行われるのは当然である。 政府がまとめた改正案の概要によると、法律の目的を現行の「合併の推進」から「合併の円滑化」に改め、10年間延長する。 現行法の目玉である、合併して市に移行する人口要件を5万人から3万人に緩和する特例も廃止する。合併推進に向けた国の基本指針策定や知事による合併協議会の設置勧告など、国や都道府県の積極的な関与もやめるとしている。 手厚い財政支援などで国や都道府県が合併の音頭を取るやり方を改め、自主的な合併支援に軸足を移すことは評価したい。鳩山政権が掲げる「地域主権」にも、合致するものだ。 改正案は来月上旬に閣議決定し、今国会に提出される予定だ。しっかりと論議をして、地域住民の意思が反映される仕組みにしなければならない。 平成の大合併は、手厚い財政支援を盛り込んだ旧市町村合併特例法に基づき1999年4月にスタートした。2005年4月からは、国や県の積極的な関与を規定した現行法で進められてきた。 99年3月末に3232あった全国の市町村は今年3月末には1730にほぼ半減する予定で、徳島県内も50市町村から24市町村になった。 職員削減などで一定の成果があったものの、市町村数が半減した割に財政状況はさほど改善せず、地方分権の受け皿としての機能強化が進んだのかどうかは判断し難い。 全国的に合併で周辺部になった地域が寂れたり、地域対立が生じたりと、しわ寄せも表面化している。 本県での合併は、06年3月末に美波、海陽の2町が発足して以降、新たな動きは出ていない。国が地方分権のためとしながら、税源移譲もほとんどなく、強制的に進めたとの印象が強いためだ。改正案では、地域の実情に柔軟に対応できる措置が欠かせない。 自主的な合併を支援するため、改正案では、合併後に地方交付税が急激に減らないよう優遇する制度や、一定期間は議員定数を減らさないなどの特例措置を残すようだ。 合併せずに残る小規模市町村が広域連携しやすくする仕組みについても、地方自治法改正案に盛り込む方向という。 これらには、合併をめぐって指摘されてきた問題に前向きに対処しようという狙いが見て取れる。 政府は地域主権への取り組みとして、今国会に「国と地方の協議の場」を設置する法案も提出する。夏には改革の基本指針となる「地域主権戦略大綱」(仮称)を策定する方針だ。 わが町の10年後、20年後はどうあるべきか。地域住民も行政任せにするのではなく、より関心を持って意見を出していく必要がある。
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