1月22日付 住民投票10年 国は可動堰計画に結論を
可動堰化計画は是か非か。市民自らがその意思を示そうと実現させたのが、この住民投票だった。国が進める大型公共事業に対する初の住民投票として、全国的にも大きな注目を集めた。 住民投票の運動を通じて、吉野川の自然環境や景観、第十堰の歴史的価値を守ろうとの声が市民に広まり、投票結果は可動堰化反対が9割を占めた。 これを受けて、国は計画を「白紙」とした。しかし「中止」の結論は出しておらず、計画は宙に浮いたままの状態が続いている。 このため、住民投票の運動にかかわった市民には、可動堰化計画はまだ生きているとの不信感が根強くある。 そんな中、昨年秋の政権交代によって誕生した鳩山政権は「コンクリートから人へ」を基本方針に、無駄な公共事業の見直しを掲げ、群馬県の八ツ場(やんば)ダム建設事業などの中止を表明した。 建設中のダムを中止にするくらいだから、吉野川第十堰の可動堰化計画が復活する可能性は極めて低いといえる。 事実、仙谷由人国家戦略兼行政刷新担当相は今月初め、徳島市で「中止」を明言したうえ、今の政権のもとでは予算を一切付けないとの意向を示した。 政権の中枢にいる仙谷氏の発言だけに重みがある。 可動堰化計画については賛否両論があり、長年、県政の重要課題としてクローズアップされ続けてきた。知事選や徳島市長選などの結果を左右するほどの争点にもなった。 こうした経過をたどった後、昨年夏に国の吉野川水系河川整備計画が策定された。そこには今後30年間に実施する治水、利水、環境面での整備内容が盛り込まれた。 だが、約250年前の宝暦年間に築かれた第十堰をどうするかの根本的な課題は依然、残されたままだ。飯泉嘉門知事の発言通り、「まずは第十堰以外から」吉野川の整備計画が検討されてきたからである。 しかし、いつまでも結論を先送りするわけにはいかないだろう。住民投票10年を機に、国は可動堰化計画について結論を出してもらいたい。 その際、「地域主権」を掲げる鳩山政権は、住民投票の結果を十分に踏まえる必要があるだろう。 住民投票にかかわった市民らはあす、徳島市内の県教育会館で「10年目の123」と題したイベントを開催する。 吉野川と関係の深い著名人や学者らを招き、環境保全や景観保護など流域全体の問題について考えるとともに、国に可動堰化計画の中止を求める機運を高めるのが狙いだ。 “母なる川”吉野川は、徳島県民にとってかけがえのない存在である。その雄大な流れが本県の農業や工業を支え、藍染などの文化をはぐくんできた。 あすのイベントが、「人と川とのかかわり」をあらためて考えるきっかけになるよう期待したい。
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