[オバマ氏就任1年]正念場に立つ米の変革

2010年1月23日 09時37分
(1時間6分前に更新)

 ワシントンで約200万人の聴衆が埋め尽くして開かれたオバマ米大統領の熱狂的な就任式。黒人初の大統領誕生となる歴史的なイベントから1年がすぎたが、支持率は低下をたどり、課題は内外で山積している。

 行きすぎた市場原理主義による金融破たん処理、単独行動主義から国際協調路線への転換など、ブッシュ前大統領の政策から決別した。だが、アフガニスタンへの増派による犠牲者の増加や高止まりする失業率など、期待値が高かったぶんキャッチフレーズの「チェンジ」に厳しい評価をする人が多いかもしれない。

 ただ、ブッシュ前政権から引き継いだ負の遺産を考慮すれば、まだ1年しかたっていないとの見方もできるのではないか。理念や理想を高く掲げながら、現実の中でもがいているように見える。今後、どれだけ実行に移すことができるかが問われている。

 米国と日本で期せずして政権交代が実現した。経済、外交・防衛などいずれも前政権から転換を図ろうとしているのが共通する。政策実現は必ずしもスムーズに進んでおらず、お互いもたつきぶりが目立つのも似ている。

 オバマ政権はブッシュ大統領時代に虐待や拷問が明らかになって問題となったグアンタナモ米軍基地(キューバ)について就任直後に閉鎖を命令したが、実現していない。増派したアフガニスタンでは戦闘が激化し米兵の死者が最悪を記録した。経済も失業率は昨年12月に10・0%に上り、好転の兆しが見えない。

 オバマ大統領の苦境を示すように19日には米東部マサチューセッツ州の連邦上院議員補欠選挙で、共和党に議席を奪われた。エドワード・ケネディ上院議員(民主党)死去に伴う選挙で、1979年から民主党が2議席を独占する同党地盤での敗北であり、打撃は大きい。

 今回の1議席は重要な意味を持つ。これで民主党は上院(定数100)で無所属議員2人を含む59議席となったが、1議席の違いは雲泥の差だ。60議席だと、安定多数となり、議事妨害を阻止できるという。オバマ大統領が内政の最重要課題と位置づける医療保険改革法案の先行きが不透明になった。

 オバマ政権にとって、昨年11月のバージニア州知事選、ニュージャージー州知事選に続く黒星であり、大統領自身、経済情勢の厳しさへの批判ととらえ、「国民は怒っており、不満に思っている」と率直に認めた。

 オバマ大統領はプラハ演説で「核兵器なき世界」を訴え、カイロ演説ではイスラム世界との和解を説いた。米ロ間では第1次戦略兵器削減条約の後継条約の枠組みに合意している。ノーベル賞委員会は「未来へ希望を与えた」としてノーベル賞授賞を決めた。だが、アフガニスタン、イラクの二つの戦時の軍最高司令官でもあり、演説で「正しい戦争」を主張するなど、矛盾の中での受賞だった。

 オバマ政権は2年目に入った。「チェンジ」できるか、真価がためされるのはこれからだ。

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