2010年1月22日 09時33分 | |
(25時間9分前に更新) |
国家と神道が密接に結びついていた戦前の歴史を踏まえ、憲法は、特定の宗教団体に特権を付与することや宗教団体への公金支出などを禁じている。個人の「信教の自由」を保障するため、国や自治体は宗教的中立性を保たなければならないという考え方だ。
北海道砂川市が市有地を空知太(そらちぶと)神社に無償で使用させているのは、憲法の定める政教分離の原則に違反するのかどうか―。
最高裁大法廷は無償提供を違憲とする判断を示した。
政教分離原則に反するかどうかを審査した最高裁判決はこれまでに11件。このうち違憲と判断したのは、靖国神社への玉ぐし料の公費支出の是非が問われた1997年の「愛媛玉ぐし料訴訟」だけである。今回が2例目の違憲判決だ。
77年の「津地鎮祭訴訟」で最高裁は、神式にのっとって市立体育館の地鎮祭を行ったケースについて、政教分離原則に違反しないとの合憲判断を示した。
その際、採用されたのが「目的・効果基準」と呼ばれる判断基準である。「当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進などになるような行為」を基準にして判断するというものだ。
今回、最高裁は新たな基準を示した。緩く解釈されがちだった政教分離原則の意義を再確認し、手綱を締め直した判決、だと解釈したい。
全国には似たようなケースが1000件以上あると言われており、判決の影響が広がりそうだ。
従来の「目的・効果基準」は線引きが不明確で、裁判所によって判断が分かれることが多かった。
あいまいな基準に基づいて最高裁まで争われ、最高裁は政教分離を緩やかに解釈し、合憲判断を重ねてきた―というのがこれまでの経過だ。
今回、最高裁は「施設の性格、無償提供の経過や態様、一般人の評価などを考慮し、社会通念に照らして評価すべき」だとの新たな基準を示した。
実態を総合的に評価し、社会通念も加味して判断すべきだという考え方である。
違憲の判断は示したものの、最高裁は、神社を撤去した場合、氏子らの「信教の自由」に不利益をもたらすおそれがあるとして、審理を札幌高裁に差し戻した。
違憲状態を解消するには撤去以外にも適切な手段があるはずだという現実への目配りだと言っていい。
空知太神社は砂川市が土地を無償で貸し、建物は町内会が所有している。管理しているのは氏子である。
市は「建物の宗教性は希薄」だと主張したが、新たな基準に基づいて土地の無償提供を続ける市の行為を違憲だと認定した。
ただ、新たに示された基準も、依然としてあいまいである。全国の類似のケースについて、次々に裁判が起こされる可能性もある。その際、政教分離の徹底と習俗のかねあいをどうするか。さらなる基準の明確化が求められるかもしれない。