2010年1月21日 09時17分 | |
日本航空がついに会社更生法を活用して再建に取り組むことになった。
日本の空を担ってきた老舗航空会社の経営破綻(はたん)だ。政府支援を受けながら立て直しを目指すが、多額の債務を生んだ経営体質の改善には多くの課題を抱えている。
グループ3社の負債総額は約2兆3000億円で、事業会社としては百貨店そごう(1兆8700億円)を上回り過去最大となった。
今後は裁判所の管理下で官民ファンドの企業再生支援機構が事業再生計画を進める。9000億円の公的資金を投入し、向こう3年での再建を目指している。
経営陣は総退陣、社員5万人のうち1万5700人を削減する。大型ジャンボ機を退役させ、赤字を垂れ流してきた不採算路線からの大幅撤退などを進める。支援とリストラで2011年度には営業黒字に転じる計画だ。
廃止路線は明らかにされておらず、合理化が離島県沖縄にどれほど影響するのかはまだ見通せない。
日航子会社の日本トランスオーシャン(JTA)と琉球エアーコミューター(RAC)は、「運航に支障はない」としている。ただ、日航が両社の株保有率を減らす可能性が指摘されており、宮古・八重山など離島を結ぶ「県民の足」をどう守るか、県が主導して対応を検討しておく必要がある。
日航グループの国内取引先(約1万3000社)の中で、沖縄の660社は東京、大阪に次いで全国3番目に多い。日航系ホテルは五つある。
マイレージや商取引債権は保護され、利用者や関係業者がただちに損害を被る事態は避けられそうだ。ホテルも運営委託先の変更で経営継続できる、というから混乱を招くことはなさそうだ。
日航、全日空とも復帰直後から沖縄キャンペーンを展開し、「南国・癒やしの島」のイメージづくりに一役買った。現在に至る沖縄ブームを全国に広めた功績は大きかった。それだけに一日も早く経営再建を成し遂げ、沖縄の広告塔として日本の空を飛び続けてほしい。
ただ、国際線の運航効率化やリストラなどで収益力を上げるという支援機構の再建計画に対し、見通しの甘さを指摘する声もある。
前原誠司国土交通相は「(日航が)なくなるのではなく、出発点」という。再出発には原因の分析が必要だ。採算に見合わない地方路線を多く抱えさせた政治の責任も見逃せない。
大型機を積極導入し、80年代には世界有数の航空会社となった。「親方日の丸」のブランドに依拠した放漫経営、政・官のもたれ合い、複雑な労働組合問題などが経営悪化の要因といわれる。
政府支援がなければ精算に追い込まれかねないほど経営が悪化していたのは分かっていたはずだ。課題を先送りするような甘さはもう許されない。
国民の税金を企業再生に使う責任の重さをかみしめ、今度こそ出直し的な再建に全力を挙げてもらいたい。