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ハイチ大地震 救える命を失いたくない2010年1月21日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

 山すそのスラムは見渡す限りがれきの山。崩れ落ちたコンクリートに車が埋まり、病院は長蛇の列―。伝えられるハイチ大地震の被害はすさまじい。
 国連は被災者300万人と発表した。ハイチの人口は約960万人だから、3人に1人が被災者である。死者は20万人に及びそうで、当初の見積もりをはるかに超える未曾有の大災害なのは間違いない。
 病院は軒並み壊滅した。仮設診療所は猛暑のテントで、包帯を外すと途端にハエが傷口にたかるという。まるで野戦病院だ。
 医師や薬、治療設備が圧倒的に足りない。奇跡的救助のニュースが続いているが、息絶える人もいるだろう。救える命が見す見す失われるのは耐え難い。日本をはじめ、各国は一刻も早く医療支援を強化すべきだ。
 地震が首都ポルトープランスを直撃したことも痛い。政府機能が著しく低下し、各国からの支援の受け皿も失われたからだ。
 一部では市民が暴徒化して略奪が相次ぎ、同国政府はついに非常事態宣言を発した。
 物資不足が遠因だろう。治安回復には輸送能力の向上が欠かせない。米国の支援で空港や港湾機能は回復しつつあるが、世界食糧計画(WFP)は今後1カ月で1億食の非常食が必要と見積もっている。その面の支援も必要だ。
 日本では避難場所となるはずの学校も、ハイチでは全壊が約半数に及んだ。教育システムはほぼ完全に機能を失っている。復興に何より必要なのは人材だ。教育再生への手助けも考えたい。
 25日にはカナダでハイチ支援の国際会議が開かれる。当面の緊急支援のほか、金融支援のための基金創設も話し合われそうだ。
 米州開発銀行(IDB)は約430億円の債務免除を含む支援を提示した。欧州連合(EU)は約520億円以上の支援を既に表明している。地震の痛みをよく知る国として、日本も最大限の支援を示したい。
 中長期的には、各国の債務免除が焦点となるだろう。重い債務を背負ったままでは、政府支出は債務返済が最優先となりかねない。
 ハイチは中南米の最貧国だ。その地位を脱するには外国からの投資の呼び込みが欠かせない。そのための投資が後回しでは復興もおぼつかないだろう。各国はその点も十分に考慮してもらいたい。


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