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図書館の存廃 「知の拠点」の変革が課題2010年1月22日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

 地域の図書館がビジネス拠点として注目され、「知の集積所」から情報の加工、製造、発信の場へと変化を始めている。
 身近な図書館を市民、県民の創意工夫で新時代の情報収集・発信拠点として活性化を図りたい。
 図書館の機能強化や新たな役割が注目される中で、宮古・八重山では、県立図書館の分館廃止が論議を呼んでいる。
 宮古分館は廃止が決定し、いま八重山分館も老朽化、利用低迷、財政難、行財政改革などの理由から県は廃止の方針だ。
 だが地元・八重山では存続を求める声が根強い。市立図書館はあるが「分館の果たす役割は大きい」「社会教育や生涯学習の場を失う」「地域にへき地はあっても教育にへき地があってはいけない」というのが存続要求の声だ。
 八重山分館は、大正時代の1914年に八重山通俗図書館として開館し、「古い図書資料、原本を多く所蔵しているのが特徴」と、県のホームページにある。
 県は「リーフレットから単行本まで」を収集方針に、八重山関係の雑誌、同人誌、自家製本など、「その地域で集めなければなくなってしまう物」に力を入れてきた。
 分館が保管する郷土資料は4万6000冊に上る。まさに「地域史の研究拠点」「知と文化の集積所」の役割を担っている。
 分館存続には老朽施設の建て替えという新たな財政負担が必要だ。利用率など「費用対効果」からの廃館方針だが、市民の側からは「財政難というが県都には大きな博物館ができている」と、文化施策の地域格差への不満も出ている。
 分館廃止後、県は保管する郷土資料を石垣市立図書館に寄贈し、一括貸出制度や移動図書館、相互貸借などのサービスは那覇の県立図書館本館で継続する方針だ。
 折しも今年は「国民読書年」。政官民協力のもと「読書の推進や文字・活字文化の振興」をうたう2008年国会決議に基づき制定。
 全国の図書館では、図書や地域資料・情報の収集、文化・教養・教育の拠点に加え、ビジネス情報の収集・発信、セミナー開催など多様な情報収集・発信機能も強化されつつある。
 知と教育の拠点、文字・活字文化の殿堂としての図書館を見直し、地域ならではの時代に即した機能の強化、利用促進をどう図るか。
 分館存廃問題を離島県の「知の拠点」変革の契機にしたい。


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