練習用のスタジオを借りることになった健が、最後に一度だけ、直のマンションでピアノを弾く。太陽の下を生きる人は、亡霊のような月のことなど忘れたほうがいい──赤の月に託して、健は直に別れを告げる。12月、多恵の墓の前で、直と健が顔を合わせる。健は一年後、ここで会おうと誓う。クリスマスの夜、健のコンサートが開催される。「赤の月」の演奏に、観客の拍手が鳴り響く。そのとき、最愛の人と出会った曲として、健が予定外の曲を弾き始める。「青の月」だった。全身全霊で演奏するその姿が、直にだけ浩志が演奏しているように見えていた。演奏を終えると健は、観客の前で思わぬ告白を始め...。