記者会見で携帯端末で自身の報道を見る菅家利和さん(右)=22日午後4時34分、栃木県庁、水野義則撮影
再審第5回公判後の記者会見で、硬い表情を見せる菅家利和さん=22日午後5時4分、栃木県庁、水野義則撮影
菅家さんは証言台の森川元検事をまっすぐ見すえ、「謝ってください」と問いただした=絵・いけだまなぶ
栃木県足利市で1990年に当時4歳の女児が殺害された「足利事件」の再審第5回公判は22日午後、菅家利和さん(63)が、証人として出廷した森川大司(だいじ)・元検事(62)に厳しい口調で謝罪を求めた。しかし、森川元検事は最後まで謝罪せず、当時の取り調べが適切だったと繰り返した。「どうして犯人にされたのか」。菅家さんの疑問はこの日も解けなかった。
宇都宮地裁(佐藤正信裁判長)で行われた証人尋問では菅家さんと森川元検事が17年ぶりに対面。冒頭、菅家さんが問いかけた。
「17年半もの間、無実の罪で捕まっていました。このことをどう思いますか」
これに対し、森川元検事は「全証拠を検討した結果、菅家さんが犯人に間違いないと判断した。新たなDNA型鑑定で犯人でないことが判明し、非常に深刻に思っている」と述べた。
証人尋問の最後にも、菅家さんは質問のために立ち上がり、強い口調で謝罪を求め、頭を下げた。
「私と森川さんの立場を逆に考えて下さい。謝って下さい。お願いします」
だが、森川元検事はうつむき、「さきほど申し上げた通りです」と小声で答えた。
森川元検事は弁護団の質問にも、「否認しても有罪という心証を持っていた」「自白しろと強要したことはない。(菅家さんは)質問に対して供述していた」「犯人だから供述できると思えるものがあった」などと述べ、取り調べに問題はなかったと強調した。
「自白は虚偽だった。検察は絶対的な間違いを犯したのでは」との追及にも「私はわかりません」。捜査の反省点については「最高検で検証作業をしている。現段階で個人的な感想を言うのは適切ではない」と答えるにとどめた。
公判後、菅家さんは「まったく反省の気持ちが伝わらなかった。テープの中で『人間性がない』と言った彼のほうが人間性がないと言いたい」と語気を強めた。