神奈川県厚木市のペルー人一家4人が国を相手に退去強制命令取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は22日、脳腫瘍(しゅよう)の手術を受けた高校1年の長男(16)のみ命令を取り消し、父母と小学6年の長女の訴えは退けた。杉原則彦裁判長は「ペルーの医療水準は高いとは言えない」と述べた。家族で別の判断が出るのは異例。
判決によると父母は91~92年に偽造旅券で不法入国。日系人夫婦を装って在留資格を受け、長男と長女が生まれた。母は偽造された外国人登録証を使ったとして07年6月に有罪確定。一家は08年4月、東京入管から退去強制命令を受けた。長男は命令後の09年4月に手術を受けていた。
判決は長男について「日本で経過観察や治療を続ける必要がある」と判断。他の3人は「父母の入国や在留は悪質。長女は帰国しても環境の変化に順応できる」と指摘した。
原告側の山口元一弁護士は「病気の不安を抱えた長男が1人で残っても生活は難しく、判決は承服できない。法相の在留特別許可に期待したい」と話した。【伊藤一郎】
毎日新聞 2010年1月22日 21時16分