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NIKKEI NET

社説1 GDPで日本に肉薄する中国の責任(1/22)

 2009年の中国の実質経済成長率は8.7%になった。名目の国内総生産(GDP)は今年にも日本を抜いて世界2位になる。東アジアで日中がともに経済大国として並立するのは歴史上初めてだ。中国は大国としての責任を一段と問われる。

 09年10〜12月期の実質成長率は前年同期比10.7%で、08年4〜6月期以来の2けた成長になった。世界的な金融危機の影響で09年1〜3月期には6.2%まで低下したが、文字通りV字型の回復を果たした。

 最大の要因は政府の強力な景気刺激策だ。4兆元(約53兆円)の内需振興策や大胆な金融緩和、人民元の対ドル相場を再び固定したことなどが、国内の投資と消費を活性化し輸出の落ち込みを抑えた。

 中国の景気回復は、金融危機で急落した国際商品相場を反転させて資源国を潤し、韓国や台湾をはじめとするアジア諸国・地域の輸出に寄与した。戦後初めてマイナス成長に陥った世界経済を下から支えた最強の柱が、中国経済だったといえる。

 ここにきて中国政府は国内の不動産バブルや過剰投資への警戒を強めており、金融引き締めへの転換など「出口戦略」のタイミングを探る局面を迎えている。「出口」を誤れば世界経済への影響は大きい。さらに注意深い経済運営が求められる。

 09年の名目GDPはなお世界3位にとどまったとみられる中国だが、世界1位の米国の背中も決して遠くない。すでに輸出額、温暖化ガスの排出量とも首位だ。ナンバー1としての責任を自覚するときだろう。

 だが、最近の共産党政権の振る舞いには失望を感じることが多い。昨年末の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)では、主要国による合意案に反発する他の途上国を説得しようとしなかった。

 人民元を米ドルに固定することで輸出促進を目指す政策は他の途上国に脅威をもたらしている面もある。知的財産権の保護や食品などの安全問題では対応が遅れる一方で、輸入ハイテク製品の技術情報の開示を義務づけようとするなど、国際的なルールに沿っていない。

 共産党政権に批判的な文書や映画を発表した活動家には厳しい実刑判決が相次ぎ、表現の自由や人権への抑圧は強まっている。

 台頭する中国にどう向き合っていくかは日本の戦略的な課題である。中国の力強い発展は日本やアジアにとってチャンスだが中国がナンバー1」としての責任を回避し続けるようなら座視できない。日本は厳しい考えを伝える覚悟も必要である。