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TSF支援所わかば板
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
親友の俊秋の屋敷を訪ねると、俊秋はガラクタのようなものの中で何かをやっていた。「何だ俊秋、大掃除か?」俺は部屋一杯に広げられた荷物の山を見ながら俊秋に尋ねる。「なんだ、清彦か。いや、ちょっと制作を頼まれた物ががあってな。それに使えそうなモノを見たような気がして……」俺の方をちらっと見て、再び荷物に目を落とす俊秋。「なんだ?また何か新しい発明か?」俺は適当にガラクタの入った箱を触りながら話しかける。俊秋の家は年季の入った発明家の一族でいろんな発明で暮らしている。俊秋の家は先祖代々、天才を輩出する家系でその発明品の中には理解を超えるようなモノも少なくない。「いや、大したものじゃないんだけどな。小遣い稼ぎくらいになるかなと思ってな」そう言いながら何やらあちこちの入れ物を出したり入れたりをしている。「ふ〜ん」俺はそばにあった椅子に座って周りの荷物を眺める。「そういや、今日はなんだ、清彦?」「ん〜? いや、暇だったからさ。ここに来れば何か面白いことでもあるんじゃないかと思ってな。 一人暮らしで彼女もいないからやる事もないんだよ」「面白いことって……、俺ン家はお前の遊園地代わりか? てか、就職活動はどうしたんだ?」俊秋が作業を続けながら笑う。「ダメ、今日24社目の不採用通知をもらった。なんの資格も持たないヤツにこの不況はつらいですよ?だから、今日は息抜き。卒業は決まっても就職できなけりゃなぁ。当分はフリーターかなぁ。 はぁ〜」大きくため息をつきながら話を続ける。「しかし、お前ン家っていいよな。広い屋敷でいろんなモノが置いてあって退屈しないし」そう言いながら手近な所からバッグを引き寄せて中をのぞき込む。
「余りその辺のモノを弄くるなよ。俺にもわからないものがかなりあるからな?」俊秋の声をよそに俺はバッグの中から肌色の服のようなモノをつまみ出してみる。「なんだ? 全身タイツか?仮装の衣装?」「ば〜か、そんなモノがここにあるわけ無いだろ、どれ?」俊秋が振り向いて俺が手にしてるモノを見る。「あ〜、女の子になれるスーツだな」「女の子になれる…… スーツ?」俺が俊秋に問い返す。「あぁ、ほら。 前の方を見てみろよ。 女性の裸になってるだろ?」俊秋の言葉に、俺はスーツの腕の部分を両手で持ち上げこちらを向ける。そこには確かに女性の胸と無毛の股間がリアルに描かれていた。「へぇ?これを着ると女になれるのか?」「あぁ、そうだ。 でも着るなよ?」「てか、確かにリアルに描かれてるけどハンズにでも売ってそうな仮装グッズだよな?」「バカにするなよ?それにはかなり高度なウチの技術が凝縮されてるんだから。俺にもそのアイテムの構造は理解できないほどだからな?」どう見ても普通の首までの全身タイツにしか見えないよな?スーツを眺めながら俊秋に聞く。「なに?天才のお前にもわからないものがあるのか?」「あるさ。ここにある物は俺にも理解できない物の方が多いぞ。ウチはオカルト系の技術を使ったモノまであるしな」「オカルト?」「呪術や魔法の類だな。ウチは使える技術は何でも使うからな。但し、そんな説明不能な技術では特許は取れないから表に出さないけどな。ウチの本業は特許技術の管理、保護だからな。 今この部屋に散らかってるのはそう言った規格外品ばかりあるから気をつけろよ」書類に目を落としながらそう言って苦笑する。「な?これ着てみたことある?」俺は好奇心に駆られて俊秋に尋ねる。「あるわけないだろ? ほら、さっさと仕舞っておけ」
その時、ドアがノックされてメイドさんが入ってきた。「失礼します、俊秋様。 出かける前に新しく雇うメイドの面接をするので旦那様が来るようにとの事です」「あぁ、今日だっけ?わかったすぐに行くからと言っておいて」そう言って立ち上がる俊秋。「なんだ?メイドさんをまだ雇うのか?今でも結構いるんじゃないのか?」「ウチのメイドさんはな?今度雇うのは俺の身の回りの世話をしてくれる俺専用のメイドさんだよ。 でも、なかなか気に入る人がいなくってな」「専用のメイドさん?なんて贅沢な!俺にも一人よこせ!こっちは大学の寮で一人寂しく暮らしてるのに!」俺の抗議に笑って応える俊秋。「やっても、寮は女人禁制だろ?それに清彦は全部一人でできるじゃないか?こうやって遊びに来るほど暇も持てあましてるんだし」そう言って笑って部屋を出て行こうとする。「くそう、この大金持ちめ!」「あははは、じゃすぐ戻ってくるから、そのあたりの物を迂闊に弄くるんじゃないぞ?」振り返ってそう言うと俊秋は去っていった。「……ほんと、うらやましい生活だよな」そうつぶやくと俊秋が出て行った部屋の中を見回す。ふと、目をやると先ほどのスーツが目にはいる。これは着ると女性になれる?マジで?女性になったら更衣室や女風呂に紛れ込めるのか?ウチの女子寮にだって……ゴクッ、思わず生唾を飲み込む。「ちょっと試してみるくらいなら……」いや、だってこんな全身タイツのような物でリアルな女性になれるって信じられるか?ここは是非、後学のためにも検証してみる必要があるんじゃないのか?スーツを広げてみると背中にファスナーが見える。これを下ろして着るのか?しかし、どう見てもただのタイツだよなぁ?胸の所にしたってパットすら入ってる気配がない。
「からかわれたのかな?試着した途端に俊秋がドアを開けて入ってきて大笑いされるとか?」俺はそっとドアに近寄り、いきなりドアを開ける。しかし、そこには誰もいなかった。「ふぅん?ハメようとしてるワケじゃないようだな?」元の場所に戻って再びスーツを眺める。「よし!物は試しだ!」俺はスーツをとり上げると背中のファスナーを全開にする。たぶん着るのは裸になってだろうな?俺はスーツの内側を確認すると内側には何かの紋様がびっしりと描かれている。これがオカルト系の技術ってヤツか?こんなの見ると妙に信憑性が増すよな。オカルトねぇ?そんなバカなモノがあるわけないし?俺は全裸になって、そこに足を入れて身体をスーツの中に潜り込ませて、袖に腕を通す。「ん、よっ!くっ!」背中に腕を回して何とかファスナーをうなじまで上げる。「ん?やっぱりただのハイネックの全身タイツじゃ……」そう口にしかけた時……緩やかに俺の身体を包んでいたタイツがぴったりと身体を締め付けるように収縮し始める。「お?おぉ!?」胸の部分がぷっくりとふくらみ始める。「へ、へぇ?」腰がほっそりとなりくびれを作る。「えぇ?どんな技術を使ったら体型まで変わるんだ?」股間の大事な部分が体の中へと収納される感覚が……「おぉ、本当に魔法だよな?」自分の身体を見下ろしながら、あちこち触ってみる。スーツで覆われているはずの指先はちゃんと「触っている」という触感を自分の指先に伝えてくる。それどころか触られた方の肉体も直に触られている様な感覚だ。「すげぇな、このスーツ。 本当に裸の女みたいだ」着る前にはただの布地だったはずの胸は大きく盛り上がり、その先にはちゃんと乳首が形成されている。そしてあそこは?、腰をかがめて股間をのぞき込む。
「うわぁ、女のアソコって初めて見るけど本物みたいだ?パイパンなのがちょっと気になるってか、恥ずかしいけど?」ふと顔を上げて部屋の窓ガラスに今の自分の姿を写して見る。そこには思わず襲いたくなるような裸の女性の姿があった。しかし……「……うわぁ、俺の顔がせっかくの女体を台無しにしてやがる」窓ガラスに映った俺を見て、ガクリと肩を落とす。つか、これで女子寮や女風呂に潜り込もうとしても即バレ、変態決定だよな?首に手を回すと小さいながらもファスナーが出てるし……でも、前から見ればここまで完璧な女装もないよな?裸の女に女装できるってのは貴重だけど……、ひょっとして顔の部分もあるんじゃないのか?俺はスーツの入ったバッグの近くを物色してみる。程なくすると……「あった!本当にあったよ、おい」そこには、女の子の顔が描かれたマスクに黒髪のショートヘアのカツラが付いたモノと同じく金髪のロングヘアーのモノの2つがあった。「おぉ、好きな方を選べるのか?こっちはゴムマスクのように被るんだな?」俺は金髪の娘のマスクを広げると頭からすっぽりと被ってみた。完全に被り終わると、さっきのようにほっぺや頭がきゅっと締まっていく。思わず目を閉じて、再び窓ガラスの方を見る。「うぉ!なに、これ!? 完璧じゃん? すっげー、どこからどう見ても美少女だよ? ちゃんと瞼も動くんだ?髪の毛だって…… 痛て、ちゃんと引っ張られる!俺の頭に最初っから生えてるみたいだ?うぉー!すげーな、俊秋ン家の技術力?」しかも、マスクを完全に装着したとたんに声まで女の子のように高く変わっていった。俺はこのスーツの性能に興奮しながら、窓ガラスに映った自分に向かって色んなポーズを取ったり、表情を浮かべてみる。
胸を軽く持ち上げてその重さを確かめながら、窓ガラスにその姿を映して楽しんでいるとドアが開けられた。「清彦、待たせたな。結局、今回も無駄骨…… えっ?」ドアを開けて入ってきた俊秋が俺の姿を見て固まる。「うふん、俊秋さん。私一人で寂しかったのぉ」そう言って俺は呆然としている俊秋に抱きつく。「え?え?貴女はいったい……、ってひょっとして清彦か!!」我に返った俊秋が抱きついた俺を引き剥がす。「く、あはははは、そうだよ、俺だ。すごいな、これ?まったく裸の女にしか見えないだろ?」俺は思わず笑って、俊秋に正体を明かした。「バカ!あれほど勝手に着るなっていっておいたのに!あ〜あ、勝手にマスクまで見つけ出しやがって!」俊秋が珍しく声を荒げて怒る。「いや、悪かったよ。怒るなって。ちょっとした好奇心じゃないか?」「ばかやろう、好奇心は猫をも殺すって知らないのか?軽はずみな事をすると取り返しが付かなくなるんだぞ!」俊秋の剣幕は収まらない。「悪かったよ、返すからそんなに怒るなよ」ここは素直に俊秋に謝っておくことにする。どう見ても悪いのは俺だしな。「脱いでみろよ」俊秋は腕を組んで俺を睨みつける。「わかったよ、すぐに返すからそんなに怒ること……、あれ?」「どうしたんだよ」「いや、後ろのファスナーに手が……、すまない、俊秋。ちょっとファスナーを下げてくれないか?さっきまでこの辺りにあったんだけど……」俺は腕を背中に廻しながらファスナーを手探りで探す。「ファスナーなんか見つかるわけ無いだろ」腕を組んでその場を動かないまま俊秋がそう告げる。「え?それってどういう……」俺は驚いて俊秋に問いかける。
「そのスーツは上下を着終わると中の体温に反応して合わせ目が組み合わさってファスナーを隠すようになってるんだ。完璧な女性に見えるための機能というわけだ」「へ?じゃどうやって脱ぐんだ?」「完璧に着てしまうともう自力では絶対に脱げない。身体の部分だけ着てる状態ならファスナーも出てたんだが、お前、わざわざマスクまで探して装着するんだもんなぁ。そうなるともう……」えっと、あれ?これって、”清彦さんは女の子になれるスーツを着たら脱げなくなってしまいました”ってヤツ?俺のマスクの上から冷や汗が一つ流れ落ちる。「まさか、俺、一生このスーツを着たまんま?トイレや風呂は?」俺は焦って体中をまさぐって、どこかに脱ぐための仕掛けがないか探す。「日常生活はそのスーツを着たままでも出来るようにはなってる。トイレはそのままで普通にできる。ほら身体にぴったりと隙間無く張り付いてるだろ?その女性器を使っておシッコも問題なくできるはずだ」「え?コレって本当に使えるのか?」俺は自分の股間を指さして尋ねる。「あぁ。理屈は聞くなよ?俺にもわからないからな。 風呂もそのスーツの機能で中は清潔に保たれてるらしいから大丈夫らしい。よかったな」「良くないよ。とりあえずは生活に支障はないってわかったけど、肝心の脱ぐのはどうなってるんだよ?マジで脱げないのか?」「脱げるよ、ただし時間が立てば、だ」「時間?」「そうだよ、そのスーツが役目を終えたら自然にファスナーが露出されて脱げるようにはなる」俊秋が困ったような顔でそう告げる。俺は俊秋の言葉にほっとして聞いた。「何だ、脅かすなよ?俺はてっきりずぅっと着っぱなしになるのかと思ったぞ。それでいつ脱げるんだ?」それは俊秋の次の言葉を聞くまでの間の安心だった……>続く
「……」俊秋は黙って俺を見つめる。「なんだよ?いつなんだ?後何分くらいで脱げるようになるんだ?」俺は再度、俊秋に聞く。はぁぁ、俊秋はため息をつくと静かに行った。「後、約一ヶ月後だよ」「へ?一ヶ月?一ヶ月って何分後だ?」俺は俊秋の言った意味が飲み込めずに尋ねる。「分でか? 約43200分後だな?」「…… はぁ!?4万3千?なんだよ、それ!?一ヶ月くらいあるんじゃないのかぁ!?」「だから、一ヶ月後だって言ってるだろ?それまでは絶対に脱げないよ!」「さすがに一ヶ月は長すぎだろ?えっと、この服は弁償するから、ハサミで切ってもいいか?いくらぐらいなんだ?」俊秋は黙ってこのスーツの入っていたバッグを指さす。そこには小さな札が結わえ付けられている。 『売却価格、着用者の人生』「へ?……何これ?」俺は目を点にしてつぶやく。「親父の字だな?値段が付けられないって事だろ?とゆうか、ハサミを使っても切れないと思うぞ?」そう言って、自分が作業していた場所からハサミを取り上げて俺に渡す。「え?いいのか?」「やってみろよ、壊してもいいから。無駄だと思うけど」俺はハサミを受け取ってスーツを切ろうとしたが肌にぴったりと張り付いてスーツだけを引っ張り上げることができない。「あれ?ハサミを入れる隙間がどこにもないぞ?ハサミじゃダメだ、ナイフか何かじゃないと」「無駄だよ、それは特殊なケプラー繊維で出来てる。小さな銃弾くらいなら問題なく弾くし、日本刀で斬りつけられても達人級でない限りは傷一つ付けられないはずだ」「レーザーメスとか……ないか」「あるよ、でもそのスーツはお前の肌にぴったりと張り付いてる。スーツやタイツというよりそれは今や皮か第二の皮膚と言っていい。背中のファスナーもその役目を果たしていない」
俺の背後に回って、自分の言葉を証明するかのように俊秋が俺の背中の肉を軽くつまむ。「スーツ全体が密着してるからな。ファスナーの部分だけ切り取り出してもファスナーだけが取れるはずだ。ミクロンの精度で全身の皮膚を削り取れる自信はあるか?」俊秋は死刑でも宣告するようにそう告げる。「そ、そんなぁ。じゃ一ヶ月このまま過ごすしかないのか?」「問題はそこだけじゃないんだが……、今はそれが第一か、とりあえず服を着ろよ、いつまでもそのままじゃ目の毒だ」「え?あぁ、そう言えば全裸だったんだよな」俺は脱いでおいた服を取り上げて身につけようとした。が……「え?あれ?」「どうしたんだ?」「服が……、トランクスは入ったんだけど、シャツは胸が止まらないし、下は尻がつっかえて締まらない」女の裸体にトランクス一丁の情けない姿に顔を恥ずかしさで赤くして俊秋に訴える。それにしても全裸の時より、男物の下着を付けてる方が恥ずかしいのはなんでだ?「え?そうか。スタイルが全く変わってるもんな」俊秋が納得したかのように手を打つ。「これは弱ったぞ。なぁ?一ヶ月間全裸で過ごすワケには?」「いかねぇよ!いくらポジティブな俺でもそれは勘弁してくれ!何か無いのか?着る服は?」「ちょっと待ってろ、何か探してくる。くれぐれも部屋から出るなよ?それとこれ以上そのあたりのモノを弄くるなよ?それ以上事態をややこしくしたらその姿で叩き出すからな?」「出ないし、出されたくないよ。この姿で外を歩き廻ったら俺は完全に痴女じゃないか。大人しく待ってるから何か着るモノをくれ」俺は急に人に見られることを意識しだして、腰を屈めるようにして胸を抱きしめて、俊秋の視線からなるべく身を隠すようにして懇願する。
「わかった、待ってろ。それとそのポーズな?正面から見ると胸を強調して誘ってるように見えるぞ?俺とヤりたいのか?」「バッ、バカっ」「あはは、冗談だ。まってろ」そう言って笑って俊秋は外に出て行った。「冗談を言うようなら、俊秋の怒りも少しは収まったようだな。よかった、今は俊秋だけが頼りだからな」 * * *しばらく待っていたが、なかなか俊秋は帰ってこなかった。「遅いなぁ、俊秋のヤツ……。こうしてる間に屋敷の誰かこの部屋に入ってきたらなんてイイワケすりゃいいんだ?」それにこのスーツ……。着た当初は本当にタイツでも着込んでるような感触が残ってたけど、今は何も感じないな?本当に全裸になってるような気分だ。そう思いながら、胸を持ち上げてみる。「うわぁ、本当にただの胸だよ?胸の重みが本当に自分の体についてるように思える」そうつぶやいて、胸をもんだり、持ち上げたりしてみる。「手で触ったり触られたりの感触はあるけど、それで性感を刺激されたりはしないんだな?」乳首の先をつまんで軽く揉んでみるが、ただつままれたとゆう感触だけだ。「そういや、さっきは下半身を調べらる前に俊秋が帰ってきたから視認だけで終わったけど……」俺は穿いていたトランクスをずりおろし、近くの椅子に座って股間をのぞき込む。「女だよなぁ、見た目は?」股間に指を持っていき、軽く人差し指の腹でそこを撫でてみる。「ひゃぁ」すごいな、本当に女のワレメを感じる。俺のキンタマはどこに仕舞われてるんだ?手の平で股間を覆ってさぐってみるが平べったい股間のどこにもキンタマの存在を確認できない。「こうやってみると完璧に女の子だよな?」ふと、疑問が湧く。「……まさかとは思うけど。このワレメの中にアレがあるなんて事は……」
ゴクッ、俺は生唾を飲み込むと恐る恐る股間に作られたクレバスに指を添えるとゆっくりとその花弁を開いていく。ゴクリ…… 「……」判らないほどの小さな突起、その下のオシッコをするところ、さらに……「は、ははは、あはは。だよなぁ?俺、男だもん。いくら何でも体に余計な穴があいてるわけないじゃん?あぁ、ドキドキした。あははは……」あそこの中は複雑な形はしていたが胎内へと続く穴は開いてなかった。緊張が解けて思わず笑い声が漏れる。「で、このバカは人が服を調達してやってる間に何をしてるのかな?」背後で俊秋の声がした。振り返るとそこには、大きな紙のバックを持った俊秋が睨んでいた。「あ、俊秋か?いや今ちょっとこのスーツの精度を検証してたんだけどな」「検証してたんだけどな?じゃ、ね〜よ!どう見てもスケベ親父な顔をしてたぞ?」「誤解だって、純粋な好奇心からだから。今のは本当にスケベ心なしの行為で自分の今の状態を知っておきたかったんだって!」「本当かぁ?まぁいい。ほら、服を持ってきてやったぞ。さっさと着ろ」そう言って、俊秋は俺の手に大きい紙バッグを押しつける。「あぁ、すまなかったな」俺は受け取った紙袋の中をあらためる。「なんだ?随分とかさばる服だよな……、ってなんだこれは?!」袋の中から取り出したそれは……「メイド服だよ。うちのメイドさんに支給してるやつ。色々と着られそうな物を探したんだけど、それしかなかったんだ。着られる服があるだけ感謝しろよ」「感謝しろよって、これを俺に着ろってか?」俺は俊秋に尋ねる。「ほかに俺にどうやって女性の服を手に入れろと?確かにうちに女性は何人かいるが、メイドさんたちに借りるにしてもどうやって借りる?清彦のヤツがマヌケにも女になってしまったので服を貸して下さい、と頼むのか?」
「いや、それは勘弁してくれ。そのあと俺はどんな顔で彼女たちに会える?それどころか変態を見る目で見られる!」「だろ?そうすると俺が自由に調達できるのはうちに予備で置いてあるこのメイド服一式だけしかない。いやか?無理に着てくれとは言わないぞ?」「う〜ん?まぁ裸よりはましだけど……」俺は紙袋の中を改める。「なぁ?メイド服はいいけど、これなに?」袋の中の箱を取り出す。「ん?ガーターベルトとストッキングだな。余所は知らないが、ウチはそこまでは制服の一部として支給してる」「ガーターベルト?」「ま、そこまで身につけろとは言わないがな。お前はウチのメイドじゃないんだからな」「いや、ちょっと興味があったり……くふふ」口元を手で隠しつつ忍び笑い……、ちょっと自分が着ることに胸がドキドキする。だって今の俺は美少女……「お前……どこまでポジティブなんだ?」俊秋が呆れたような顔をする。「いや、さすがにメイド服を見たときはちょっと躊躇したけど、これはこれでアリかななんて……」そう言ってテレ隠しに笑う。「この! ……まぁいい。何でもいいからさっさとその身体を隠せ!俺はお前の裸に欲情するような事だけはしたくないんだ!」「はいはい、わかったよ。えっと下着もあるのか?パンツ…… なぁ?ブラは無いようだけど?」「付けたいのか?残念だったな、コンビニにブラは売ってねぇよ」「え?これ、ひょっとしてお前がコンビニで?」「そうだよっ!どれだけ恥ずかしかったかお前に判るか?店員さんの冷たい視線がムチャ痛かったぞ!俺、当分あのコンビニに行けねぇ!」「いや、本当に悪かったな。すまん」俺は謝りながらパンツに足を通す。「ま、いいけどな……、それにしてもお前に女性化願望があったとは知らなかったな。そんなに女になりたかったのか?」」
「はぁ?そんな物があるわけ無いだろ。俺はノーマルだぞ?」メイド服のジッパーを下げて背中を広げ手足を通す。「へ?じゃ何でそのスーツを着たんだ?」不思議そうな顔をする俊秋。「いや、だってな?女に変装できたら女風呂でも更衣室でも何のお咎めも無く入れるんだぞ?これはもう男の夢だろ?」俺はメイド服の袖に手を通しながら"男の夢"を熱く語る……あれ?「えっと……ちょっと待て、清彦?ひょっとしてそれだけのためにそれを着たのか?ちょっと女装する感覚で?」顔をうつむけて、頭痛にでも耐えるかのようにおでこを指で押さえる俊秋。「そうだよ。本当に女にそっくりに化けられるならこれを着て女湯に行ったり、プールに行ったりして充分に楽しんだら、男に戻ってその思い出と共に夜を過ごそうと…… あれ?俊秋、頭痛か?」背中のジッパーをあげて服装を整えながら、しゃがみ込んでしまった俊秋を見下ろす。「つまり、お前としては本当にちょっと女に化けてすぐ男に戻るつもりだった、と?」「そうだよ、それが一ヶ月もこのままでいるとは計算外もいいとこだよ。男に戻れるのが時間制限付きってなんだよ?って、おい?本当に大丈夫か?」とうとうしゃがみ込んだまま、動かなくなった俊秋の背中を軽く揺する。「いや、俺は大丈夫。清彦、俺はこの"女の子になれるスーツ"を着るなって言ったよな?」顔を上げて俺の顔を見上げて確認する俊秋。「言った、言った。確かに聞いた。だからこれは俺の自業自得だって判ってるよ」「それをお前は単に女装するつもりで着ちゃったわけだ?すぐに男に戻れる気でこの"女の子になれるスーツ"を?」「だから悪かったって。責任は全部俺にある事は自覚してるから」俺は俊秋に今回の全ての責任は俺にあると言い切った。「そうか。あのな、清彦。……いや、まぁ、今はいいか……」>続く
#sage進行がもったいない良作
「ん?なんだよ?何か言いかけて黙られると気になるぞ?」「いや、それよりこれからどうするんだ?」俊秋は俺に質問する。「どうするって……、仕方がないから寮に帰って……」「寮って女人禁制じゃなかったのか?」「そうだよ。寮長が厳しくってな、女を連れ込むと強制退寮させられるんだ。ボロい寮だけど格安で入れるのが魅力だからな……、って、なに?」気が付くと俊秋が俺を指さしている。「いや、本人が女体化してる場合はどうなんだ?」「え?前例が無いけど……。え?え?え?あれ?俺、寮には入れない?」「ついて行って事情を説明してやろうか?この美女は清彦に間違いありません。マヌケにもウチの発明品を勝手に着て、その後、脱げなくなりました、って?」「そんな説明されたら俺は寮中の笑いものじゃないか?てか、俺の貞操やばくないか?女に関しては野獣の巣だからな、ウチ」「もう女性器まで形成されてるのか、それ?」「いや、さすがにそこまで精密じゃなかった。でもウチの連中見かけが美女だったら別の穴でもいいからって襲いそうだし…… え?"もう"?"もう"ってなに?」「だからぁ!だったらどうするんだ?」俊秋が若干声を大きくして対策を聞く。……えっと、さっきから何かを誤魔化そうとしてないか、俊秋?「で、どうするんだ?」俊秋が重ねて聞く。「そうだな〜?まぁ、寮に帰っても、どっちみちこの姿じゃ就職活動もできないからなぁ。 なぁ?ここに一ヶ月間、匿ってくれないか?」「まぁ匿うのは吝かではないけど、お前の立場はどうするんだ?一番、確実なのは皆に事情を話す事が……」「やめて!お願い!さっきも言ったけど、それは皆に俺のことを変態と印象づけちゃうから!そうなったらいくら俺でも皆の視線に耐えて一ヶ月もいられないから!」俺は俊秋の腕にすがって懇願する。
「あ、そうだ!確かお前、専用のメイドを雇うって言ってたよな?」「あ、あぁ。でもまだ俺の気に入った人がいないから雇ってないけどな」「それ、行こう!一ヶ月間、俺はお前の専属メイド!一ヶ月間を試用期間として採用して一ヶ月後にやはり合わないからクビにするって事で?」「お前がぁ?俺のぉ?」俊秋がイヤそうな顔をする。「イヤそうな顔をするなよ。一応、これでも一通りの家事はできるぞ?」「うん、それは知ってる。お前の寮に行ったけど男の一人住まいには思えないくらい片づいてた」「だろ?どうだ?」俺の提案にあごに手を当てて考え込む俊秋。「そうだよなぁ。俺も今はアレの制作で暫くの間は他のことで手を煩わせたくないし…… お前だったら気楽に命令できるし……」「だろ?なっ!バイト料は一ヶ月間の衣食住って事で?」「そうだな…… そのスーツの件もあるし…… わかった!それじゃお前は俺が個人で雇った専属メイドって事で仮採用中という事にするから。それでいいな?」「OK、OK。じゃそう言うことで」「……ま、若干の不安もあるがそういう事なら、そう皆に紹介するけどいいのか?」「いいよ。俺も"清彦で〜す、これから一ヶ月お世話になりま〜す"って言って引かれるより、清彦とは赤の他人って事にしておいてもらった方がありがたいからな」「じゃ、紹介するから服装を整えておけよ」「服装?あぁ?ガーターまでがメイドの制服だって言ってたっけ?」そう言いながらバックの中からエプロンを取り出すと後ろで結び、ガーターを箱から取り出してスカートをめくりあげて装着、ストッキングを太股まで引っ張り上げる。「なぁ?このガーターってどうやってストッキングに付けるか知ってるか?」「だから、人前でスカートを捲りあげてパンツを見せるな!」「え?」>続く#イラスト部分まで
#これは確かにsageておくのがもったいない。#が、とりあえず主さんの意向通りsageておく。
「え?じゃないよ、正体がばれたくないならそれなりに気を使えよ。女の振りをしろとは言わないけど、無神経にがさつな動きをするなって事だよ」「あぁ?そう言えばそうか?」俺はストッキングを付け終わるとスカートを下ろしてパンパンとはたく。「お前……本当に大丈夫だろうな?とりあえず、今の話通りにするけど正体が皆にバレても俺は責任を持たないからな?」心配そうに俺を見る俊秋。「大丈夫、大丈夫。自然と皆の中に溶け込んでみせるから。さぁ、ご主人様、皆に紹介して下さいな」そう言って笑って俊秋の背中を押して部屋を出る。「まぁ、お前のノリの良さは認めるけど、時々裏目に出るからなぁ。(今回みたいに……)」「ん?何か言ったか?」「いや、単なる独り言だ。気にするな」 * * *「ということで俺の専属メイドとして仮採用することにした、え〜と?名前なんだっけ?」俊秋が食堂で皆を集めて俺を紹介する。まぁ、皆と言ってもメイドさんが三人だけど……「あはは、いやですね、俊秋様。雇用主が従業員の名前を忘れるなんて?」俺が笑って俊秋の脇腹を肘でつつく。「あはは。はい、はい、自分で自己紹介してね」俊秋も笑顔を浮かべて俺を前へ押し出して、皆に見えないようにつつき返す。「はい。えっと中村清……香です」そう言って頭を下げる。「芸のない名前(ボソッ)」「うるさい、事前に名前ぐらい決めとけ(ボソッ)」「それはお前の役目だろ?自分の名前なんだから(ボソッ)」「えっと、俊秋様?ちょっとよろしいでしょうか?」さっき、俊秋を呼びに来たメイドの双葉さんが俊秋に尋ねる。「はい?なんですか?」俊秋がそれに応える。「先ほどのメイドの面接の時に中村さんはお見かけしなかったように思うのですが?」
「あぁ、この中村さんは俺の知り合いで、さっき急に尋ねてきて、ちょっと事情があって雇うことにしたんだ。事情についてはプライベートな事なので聞かないでやってくれ。だからメイドは全くの素人なので仮採用で様子をみることにしたんだ」俊秋が誤魔化して理由を説明する。で、何で知り合いなのに名前を知らないんだってツッコミて〜!でも、それをやると俺が自爆するし……「えっと、不慣れですがよろしくお願いします」俺も後に続いて挨拶をして再度、頭をぺこりと下げる。「よろしくね、中村さん」「仲良くやりましょうね」隣に立っている青葉さんと若葉さんが俺に微笑む。「ありがとうございます、青葉さん、若葉さん」「あれ?自己紹介しましたっけ?」若葉さんが不思議そうな顔をする。「え? 痛っ」「ばか!」俊秋が背後から俺の尻をつねる。「あ、あはは、先ほど俊秋様に一通りお名前を教えていただきましたから。はは、ははは」そう言って俺は誤魔化し笑い……「あー、そうだったんですか」納得した顔をする若葉さん。「まぁ、この清……香は俺の専属って事で俺の用事だけに専念してもらうから留意しておいてくれ」俊秋がそう宣言する。「わかりました。それで、中村さんは住み込みですよね?お部屋はどうされますか?一応、私の二人部屋と小さい方の一人部屋が空いてますが?」「それなら双葉さんと同じ部屋で……」「同じ部屋では24時間いつ俺に呼び出されるか判らない清香のせいで双葉さんの迷惑になるかもしれないので一人部屋にしてやって下さい」双葉さんの問いに俺が答えかけようとすると俊秋が口を挟む。チッ!「お前……今、舌打ちしたよな?」「え?何のことです?私が舌打ちなんかするワケないじゃないですか?俊秋様の判断に何の不満があるとでも?アハハハ」
#コレは完結までもっていってほしいわ!#まだ秘密があるトコとかが堪らないです。#個人的には無事脱げて欲しいとこだけど・・・どうなることやら。
「それじゃ中村さんをお部屋に案内していいでしょうか」双葉さんが俊秋に聞く。「うん、そうだね。それじゃ清香を部屋に案内してやってくれるかな。軽く説明はしてあるんだけど、もう一度、ウチのことを教えておいてあげてくれるか」「はい、それじゃ中村さん……」「すいません。それで私の事は俊秋……様と一緒で清香と呼んで下さい」いや、本名の名字で呼ばれると恥ずかしいからな。まるで男だってバレたようで……「わかりました。それで清香さん。荷物はどこに?」「あ?何も持ってませんから、このままで案内してください」「え?何も?着替えとか、日用品は?」「そのメイド服、ウチのですよね?それじゃどうやってウチまで……?」「あれ?本当に何も持ってないんですか?」他の二人も不思議そうに口を開く。いや、あるにはあるんだけど、俊秋の部屋に放置してあるのは男物の服と下着だし……「えっと……まぁ……プライベートな事情により……、は、ははは……」「あ、そうなんですか……」「プライベートな事情なんだ……」「プライベートな事情じゃ仕方ないよね……」おかしな顔で納得するメイドさん三人と隣で皆から無言で苦り切った顔を背けるご主人様が一人……、いいじゃないか、納得してくれたんだから?「ははは、それじゃ案内しますから付いてきて下さい」ちょっと引き気味に笑って、双葉さんは俊秋にお辞儀をすると俺を手招きして食堂を出る。 ・ ・ ・「清香さんはこういったお仕事は初めて?」廊下を歩きながら双葉さんが俺に声をかける。「はい、足手まといにならないようにしますのでよろしくお願いします」そう言って愛想笑いをする。「中村……、清香さんって言うと俊秋さんの御親友の中村清彦さんと何かご関係が?御姉妹とか、御親戚の方とか」
「えっ?あっ、いえっ!えっと……赤の他人です!全く見た事も会った事もありません!誰ですか?中村清彦なんてイケメンは?!」俺は突然の双葉さんの言葉に焦って知らない振りをする。「……そうですか?そうよねぇ、清彦さんとは似たところが全くありませんもんね」「そうですよ、清彦さんにはこんな大きい胸はありませんし、私には清彦さんのようなリッパなモノが股間に付いてませんから全く似てません!」「……えっと、やっぱり清彦さんと顔見知り?」立ち止まって俺の方を振り返り、首をかしげる双葉さん。「えっと、"プライベートな事情"って事で知り合いじゃありません……」「あぁ!プライベートな事情!それじゃ他人でも仕方がないよね?」えっと、意味がよくわからんが便利だな?"プライベートな事情"そんなことを話しながら屋敷の奥の方にくると双葉さんが一つの部屋のドアを開ける。「ここです。一応、部屋の中はいつでも使えるようにしてありますけど、いかがです?」そう言って、俺が入れるように身をよける。中は四畳半ほどの部屋で中にはベッドとマットレス、小さなタンスとテーブルが置いてある。「お布団は後で運びましょう。後は……、TVは見ます?見るなら小さなものがありますから言って下さい。配線は……明日にでも出入りの電気屋さんに頼んで……」「あ、それくらいなら俺…私にでも出来ますから。アンテナをそこから引っ張るだけですね?」「清香さん、一人で出来るんですか?すごいですね」そうかぁ?普通は誰にでも出来るんじゃ……あれ?女の子って電機製品の配線が苦手な人がいるって聞いたけど、このレベルでも駄目なのか?「えっと……、今晩から勤められるんですか?」「あ、はい。よろしくお願いしますね」
「……プライベートな事情があるというのは判りましたけど、本当に手ぶらなんですか?」「はい、財布に少々の小銭がある程度で荷物は何も」「寝間着とか、替えの下着とか……」「あはは、何もありません。替えの下着どころかブラすら付けていませんよ」「え?」それを聞いた双葉さんの手の平がいきなり俺の胸にあてがわれる。「ひゃ?」そのまま手が俺の胸で上下する。そのまま早足で去っていく双葉さん。なんだろ?『俊秋様!いますぐ清香さんにお給料の前借りをさせてあげて下さい!』『え?清香は衣食住だけ保証したら給料はいらないって言ってたぞ?』『双葉さん、どうしたんですか?』『じゃ、衣の方を保証させてあげて下さい!あの人、替えの下着どころかブラすら持ってないんですよ!』『あ、そうだった。わかった。若葉さん、悪いけど清香をどこか連れてって充分な下着と替えの服、寝間着を買ってやってくれないか?』『そうだったって、何で知ってるんですか?俊秋様!』あ〜?食堂の方で何か騒動が持ち上がってるな。後で俺が俊秋に怒られそうな予感がする……そんな事を思いながらベッドに腰掛ける。今日から一ヶ月、ここが俺の部屋か。向かいと斜め向かいが双葉さん達の部屋のようだ。しかし、考えてみればとんでもない事になったな。今朝にはまさか俊秋の屋敷でメイドさんをやる羽目になるとは夢にも思ってなかった……頭を下げてメイド服の下のスーツのせいで盛り上がった胸を眺める。スカートの上から股間を押さえてみる。本当にどうゆう仕掛けになってるんだろ?とてもこの下に男のアレが存在してるようには見えない、それどころかこの下のスカートを捲って下着を下ろすと女性器にしか見えないものが付いている。しかも、まだ試してはいないけどちゃんと機能するらしい……
「世の中には信じられない技術ってあるんだな。実際に自分が体験してなきゃ信じられない技術だ……」「何が信じられないんですか?」「えっ?」ふと、顔を上げると目の前に若葉さんがいた。「うわっ!っと、若葉さん!? どうしたんですか?」「あはは、何をびっくりしてるんですか?考え事をしてたのかな?あのね、俊秋さんが部屋を片づけ終わったら清香さんの下着と服を買いに連れてって事なんだけど、荷物はないんだよね?後はお布団?」「あ、すいません。それと小さなTVが余ってるって双葉さんに聞いたんですけど?」「あ、TVは私たちの部屋にありますから持ってきますね。布団は青葉さんが用意してますから」そう言って、若葉さんは斜め前の部屋に入っていく。どうやら、そちらが青葉さんと若葉さんの部屋のようだな。廊下に出て見ると向こうの方から布団が歩いてくる。えっと、青葉さん?「あ、すいません、青葉さん。持ちますから」そう言って駆け寄ると反対側から布団を受け取る。「ありがとう、清香さん」布団の向こうから声がする。それから3人で俺の部屋を整えた。「それじゃ、行こうか。清香ちゃん」若葉さんが俺に声をかける。「え?どこに?」「いやだ、さっき言ったでしょ?清香ちゃんの着替えとかよ?」「そう言えば、清香さんはその服しか持ってないんだよね?」「え?えぇ。これだけです」「う〜ん?若葉ちゃん、買い物は駅前?それとも川向こうのショッピングモール?」「駅前のデパートに行こうと思うんだけど?」「そうね、駅前だったらいいか?」二人でなにやら相談をしている。「えっと……モールの方だと何か問題が?」「いえ、駅前だと私たちもたまにこの格好で行く事もあるから大丈夫かなって」「モールだと外を歩き回るぶん、結構そのメイド服は目立ちますからね」
「えっ?この格好で外に?!」俺は驚いて声を上げる。「だって、清香さんは他に服を持ってないから買いに行くんでしょ?」「私たちの私服を貸せたらいいんでしょうけど、清香さんは男の人並みに背が高いから私の背丈じゃ合わないし、青葉ちゃんの服は胸がきつそうだし……」「ひどぉい、若葉ちゃん」青葉さんが抗議の声を上げる。「双葉さんのもサイズが合わないと思うから……ね?」「でも、そうね。確かに私たちの中で清香ちゃんに合うサイズの服はなさそうね。着れるとしたらパジャマかオネグくらいだけど、それで外に出るのはいやでしょ?」うんうんと首を縦に振る。「だったら、このままで。大丈夫、慣れよ、慣れ。私もこのまま行くから恥ずかしくないって」そう言って笑いかける若葉さん。……まぁ、今の俺の姿じゃ誰にも中村清彦だってバレるわけじゃないから安心だけど、それでも皆に注目されるのは…… まぁ、着ぐるみでも着てるつもりで……「わかりました、それではよろしくお願いします」俺は若葉さんにお辞儀する。「それじゃ行きましょうか。旦那様の車を使わせてもらうからデパートの立体駐車場までは人の目も気にしなくっていいからね」そう言って微笑む若葉さん。「あれ?そう言えば親父さ……旦那様は?お見かけしませんでしたけど?いらっしゃらないんですか?」「旦那様達はね、さっき海外旅行に出かけられちゃいました。帰られるのは一ヶ月後くらいですね」「あ、そうなんですか」「年に一回の海外旅行の日なんですよ。ウチの旦那様は奥様に頭が上がらなくって結婚するときに年に一回は海外旅行に連れて行くって約束させられたんですって。たぶん、一ヶ月間、奥様にいろんな場所に連れ回されるんだと思いますよ」そう言って青葉さんが笑う。
「本当に旦那様達はいつまでたっても新婚さんみたいな夫婦ですからね」そう言って若葉さんも笑う。ふ〜ん、そうなんだ?親父さんはお袋さんとそんなに仲がいいんだ?まぁ以前から知ってたけどね。確かにお袋さんは若くって美人だからべた惚れってのは判る気はするけどな。俺でも親父さんの立場だったら、ずっと甘え続けていたそうなお袋さんだもんな。「あぁ、そうなんですか?そうすると私がいる間は俊秋様とメイドさん達だけになるんですね?」「うん、まぁ出入りの業者さんとか旦那様の秘書の坂本さんとかが来られる事はあるけど、住み込んでるのは5人ね。って言うか、"いる間は"ってダメよ、清香ちゃん。ちゃんと俊秋様に認められてずっと雇ってもらう気でいなきゃ?」「そうそう、私たちも応援してあげるからがんばって本採用にしてもらおうね、清香ちゃん」「あぁ、そうですね。よろしくお願いします」ごめんなさい、二人とも。俺は一ヶ月後には中村清彦に戻って中村清香はここから消えます。その後、俺は若葉さんの運転する車に乗ってデパートに向かい、数点の衣服と下着を買ってもらう事になった。 ・ ・ ・「ブラのサイズ?」「えぇ、そう。いくつ?」「えっと、知りません。(数時間前まで男でしたから)計った事がないもので」「えっと?それは今までブラを付けた事が?」「(男には付ける必要が)ありませんでした」「なんで?そんなに大きい胸をしてるのに?今まで揺れても気にならなかったんですか?」「そんなに気になりませんでしたから。(平面だったので)」てか、あれ?最初にスーツ着た時より若干育ってないか?俺は自分の胸を見下ろして胸を指でぷにゅっと押さえてみる。「すいませ〜ん」若葉さんの声に店員さんが近寄ってくる。「はい、なんでしょう?」
「この人の胸のサイズを測ってもらえませんか?」「あ、はい判りました。それでは試着室の中で上半身を脱いでもらえますか」俺はメジャーを持った店員さんにそう言われて、若葉さんに試着室に押し込められる。「それじゃ脱いで下さい」「えっと。ここで……?」「はい、服の上からでは正しいサイズが採寸できませんから」そう言って微笑む店員さん。「はい、わかりました」その声と共に背中のジッパーが下ろされる。「ふあっ!若葉さん?若葉さんまで入ってきたんですか?」「大丈夫ですよ、この中は広いから、採寸するだけなら3人くらいは楽に入れますから」そう言って、微笑みながら背中を開くと肩口を広げてメイド服をウエストまで引き下げる。「ひゃっ」「あ、本当にノーブラだったんだ。清香さん?」「あら?この大きさでブラをしてないと先がこすれて痛くありませんでした?この大きさならちゃんとブラをしてないと型が崩れてしまいますよ?あら?張りのあるいいお乳……」一応、人造物ですから……着用してる本人にもまるで自分のモノのような感じしかしませんが。店員さんが背中からメジャーを回してお乳の下と乳首の上から採寸する。「70-Cですね。ついでに3サイズも測っておきましょうか?」そう言って止めるまもなく腰に止まっていたメイド服をさらに下へ……ガーターにパンツ一丁の姿をさらす女の子な俺……男の姿のままだったら女性二人に挟まれて密室にいる状態なんてあそこが激しく反応するんだろうけど…… センサーが行方不明だもんなぁ…… 精神は充分反応してるのに身体が反応しないって生殺しじゃね?……あれ?これってどういう状態?女性を見ても精神だけ反応してアソコが立たないって、ただのイ*ポ?ぐぁ〜〜ん!「あれ?清香さん?どうかしたんですか?」
#これは、旦那様に妙なフラグが・・・?#スーツのほうも相変わらず不穏な様子が見え隠れしますし、もうとことん素晴らしすぎる展開です。#というか、特殊繊維で傷一つつかないようになってるとかで強化服じみているのがまた。#このメイドさんなら予期せぬ事態で殺されそうになっても安心そうw
> このメイドさんなら予期せぬ事態で殺されそうになっても安心そうw# いえいえ、ところが以前、削った部分でこのような会話が。w## 「日本刀で斬りつけられても?俺ってひょっとして無敵?」# 「言っておくが調子に乗って危険なことはするなよ?確かにスーツは斬れな# いけど、肉体は無敵じゃないんだからな?」# 俊秋がジトッとした目で俺をにらみつける。# 「え?それって?」# 「スーツは斬れないけど、衝撃は肉体に伝わるんだ。肉を斬らせて骨を断つ# を地で行く結果になる。斬れはしないが鉄棒で殴られるんだ、骨折はする。# で、そうなったら今のお前にメスは通らない。どうなると思う?」# 「えっと、俺に手術の類はできない?」# 「そうだ。だからくれぐれも身体の内側が傷つくようなマネはするなよ?# 人一倍、怪我に気をつかえ!命に関わるような事になったらレーザーで無理# 矢理切り裂くけど、そうするとスーツがどう暴走するかわからないからな?」# 「……斬撃に強いが衝撃に弱い、逆ゴムゴムの実?」## つまり設定としてはスーツだけが無敵……w
若葉さんが不思議そうに声をかけてくる。「い、いえ…… なんでも。あははは。すいません、それじゃあサイズを測ってもらえますか?」俺はごまかし笑いをしながら店員さんに身体を向ける。屋敷に帰ったら俊秋に相談しよう……せっかく、女の子に化けられたのにアレが立たないんじゃ無駄になっちまう……採寸してもらった数値はなかなかなものだった。ただ元々の素材が素材なだけにウエストもヒップも従来の女の子よりは数値が弱めだったが、それでも充分に女の子な、男にはあり得ない数値だった。その後、ブラを試着させられて(若葉さんも一緒にと誘ったのだが丁重に辞退された、ちぇっ!)何点ものブラを選ばされて、それに合ったパンツも買った。「えっと、多くありません?2,3セットあれば充分では?」「え?ダメよ、清香さん。今までどうしてかは知りませんけど、女の子は清潔にしてなければいけないので頻繁に着替えるでしょ?それにレパートリーが少ないと着替える楽しみがないですよ?」あ〜?着替える楽しみですか……?自分自身にはないなぁ。若葉さん達と着替える機会があれば別だけど……「あ、それと……清香さん、生理は?」「へ?」「いえ、次はいつですか?どっちにしろサニタリーも買っておいた方がいいでしょうね?」そう言いながら、ワゴンの中から股間の辺りが厚めの下着を取り出す。「えっと……ありませんから、生理」「はい?あはははは、生理がないわけ無いでしょ?生理が無いのは……、あっ!ごめんなさい。ひょっとしてそのお腹に赤ちゃんが?プライベートな事情って……」「違います違います!妊娠なんかしてません!あります!生理あります!それはもう盛大にドバドバと!えっと……終わったばかりなんで今は必要がないって事で!」俺は慌てて若葉さんの想像を手を振って否定する。
「あぁ、そう言う事ですか。でも、万が一の時のために2枚ほど買っておきましょうね。あ、そうか、ナプキンも持ってないのよね?それも後で買いに行きましょうか?」そう言って、買い物かごに生理用のショーツを2枚放り込む。えっと、たぶんそれは一生使うことなく終わると思うのですが?帰ったら俊秋に相談にのってもらうお礼にプレゼントしてやろう。 ・ ・ ・「すいません、若葉さん」「ん?なぁに?」「えっと、ちょっとお手洗いに行きたいんですけど……」俺は股間をもじもじさせながら若葉さんに訴える。どうも試着室で下着姿(しかも、ショーツだけ)で長くいたせいか暖房が効いているとはいえ、体を冷やしてしまったようだ。「あぁ、そうなの。それじゃ私も行くわ」そう言って、お手洗いの方へと向かう。女同士で連れション……、女性ならではのイベントと言えないこともないけど、これは別にどうでもいいイベントだよなぁ?若葉さんの後に続きながらそんな事をぼんやりと考える。「それじゃ、荷物があるから順番にしましょうか?」若葉さんがトイレの前でそう提案する。俺の服やら下着やらを買い込んだせいでちょっとした荷物になっている。さすがにこの量はトイレの中には持ち込みにくいのか…… 二人共、両手がバックで塞がっている。「そうですね、それじゃ……」「清香さんからお先にどうぞ。私はそこのベンチで待ってますから」先に言われてしまった。「えっと……、すいません、それでは先に行かせてもらいます」いや、さすがにここで譲り合いをするほど余裕が無くなってきてるし……俺は女性用に入ると(いや、さすがにお約束イベントとして恥ずかしがってる余裕が(略 )、さっさと個室に入る。
トイレのカバーをあげて……、スカートを捲りあげて……、ショーツを下ろして……、便器に座って…… ……えっと、本当に機能するんだろうな?このスーツ?うっかり出したらスーツと身体の間に漏れだしたりは……?尿意はあるんだけど今ひとつ、どこからどうやって出るのかが判らない。俺はまくり上げたスカートの中にある女性器を眺める。ホースが無いのに狙いを定められるのか?プシャーッと広がったりは?思わずスカートをさらに捲りあげる。いや、スカートにオシッコが飛び散ったまま外を歩けるほど勇者じゃないし?てか、万が一を考えれば家まで我慢すればよかったかな?いやいや、途中で我慢が出来なくなって若葉さんの前で醜態を晒すわけには……俺は覚悟を決めると、飛び散った時の用心にスカートを限界まで捲り上げ股間の力を緩める。ぽたぽた、シャーッ、ほどなく股間のワレメからオシッコが飛び出る。うわっ、本当にちゃんと機能するよ!?すげぇな、本当にこのスーツ!てか、女の子のアソコって平坦なのにちゃんとまっすぐ出るんだ?俺は初めての体験に、思わず目が股間に釘付けになる。ひゃー、リアルな女装をしてるつもりだったけどここまでのリアルな女性体験をしてしまうとは……、トイレットペーパーを巻き取って股間に残る滴を拭き取ると、下着を引き上げ、スカートを直して外に出る。入れ替わりに若葉さんがおトイレに……俺は外の休憩用のベンチに座って若葉さんを待つ。いや、焦ってたから気にならなかったけど、俺、女性用のトイレに入ったんだよなぁ?男だってばれたら確実に通報される行為だよな。この超極薄のスーツの下には本物の男の身体があるんだから。ぼうっと、今の俺の状態について考え込んでいて、ふと顔を上げてみると前を行く客、特に男性の視線が俺に注がれている事に気づく。
横を見ると鏡になっている壁にメイド服の美少女が無防備な表情でこちらを見ている。あぁ、そうだった!慣れてきて気づかなかったけど今の俺はメイドの女の子なんだ。俺だって、デパートの公共の場でこんな女の子が無防備に座っていたら見つめちゃうよな?てか、俺だったら絶対にナンパする。にっこりと笑って「ねぇ?君、今一人?」なんちゃってね。えっ?見ると目の前に高校生くらいの男子が……「ひゃ?ひえ、ひひょりじゃありません!すいません、仕事中なんで!」俺は周りのバッグを指さし、仕事中である事を訴える。「お待たせ、清香ちゃん。あれ?どうしたの?」焦っていると中から若葉さんが現れる。「あ、若葉さん。はい、連れが来ましたから。それでは!」俺はぽかんとする高校生に早口でまくし立てると、荷物を拾うと若葉さんを引っ張っていく。事情も判らず、引っ張られてくる若葉さん。階段の踊り場でやっと立ち止まる。「どうしたの、清香ちゃん?」「えっと、ナンパされました。はぁはぁ」しかも年下!年下にナンパされてテンパってしまった!あとから屈辱感がじわじわとこみ上げてくる。「えっと?あれ?清香ちゃん、ナンパされたの初めて?こんなに綺麗なのに?お顔が真っ赤。かぁわいい!純情なんだ?なんだか清香ちゃんにぐっと親近感が湧いてきちゃった」若葉さんが背後で楽しそうに笑っている。えぇ、えぇ、女性に軟派されたらうれしいですけど、男にナンパされても嬉しくも楽しくもありませんから…… * * *「それじゃ、私は車をガレージに戻しておきますね。清香ちゃん、本当に一人で持ってける?」屋敷に戻って、玄関先に付けた車から降りた俺に若葉さんが車の中から声をかける。俺の両手には俺の衣服が入ったバッグがぶら下がっている。
「大丈夫ですよ、部屋まで持っていくだけなら一人で持っていけますから。それより、付き合ってもらってありがとうございました」そう言って、若葉さんにぺこりと頭を下げる。「いいのよ。これから一緒に働くお仲間じゃない。お互いに助け合っていこうね」そう言って笑うと若葉さんは車をガレージの方に走らせて行った。俺は荷物を持って屋敷に入っていく。さてと…… 俊秋のヤツは……部屋よりも工房の方にいそうだな?二階の自室ならともかく、下の工房なら荷物を持ってでもそう苦にならないよな?ちょっと顔を見せてくか。一階の奥にある工房のドアをそっと開けて中を覗くと、俊秋が作業台の前の椅子に座って携帯をもてあそんでいた。俺はそのまま、ドアを大きく開けて中に入っていった。「ただいま〜、俊秋。買ってきたぞ」俺の声に俊秋が顔を上げる。「あぁ、清彦か。で、どうだった?」「どうだったって、普通だぞ?採寸してもらって、若葉さんに見立ててもらったものを適当に買ってきた。あ、ほら、これは俊秋にお土産だ」そう言って、バッグの中から小さな箱とレジ袋にくるまれた物を俊秋に投げる。「お土産?お前が俺に?なんだ、一体?」俊秋が俺の投げた物をキャッチして問いかける。「生理用ショーツとナプキンだ。俺は使わないからお前にやる」「俺はもっと使わねぇよ!!」俊秋が俺からのせっかくのプレゼントを全力投球で投げ返す。「いや、俺が持ってても仕方がないんだけど、若葉さんにどうしても必要だからってな。俺は本当は男なんだから要らないんだけど、そうも言えないだろ?だから買わないわけにいかなかったんだ。だからお前にやる」「いらねぇよ。お前は皆には女だって事になってるんだから一応、お前が持ってろ。……それに必要になるかもしれないしな。(ぼそっ」最後に何かをつぶやく俊秋。
「え?何か言ったか?」「いや、別に。とにかく、買ってきたんなら部屋に片づけておけ。その後はここか俺の部屋でぶらぶらして時間をつぶしてればいいから」「なんだよ?せっかくメイドさんになったんだから仕事ぐらいやってやるぞ?何か無いのか用は?」「なんだ?やる気だな?」「せっかくの一ヶ月の貴重な体験だからな。その間は楽しまなくっちゃな。ここん所、就活に追われてストレス溜まってたからな。この姿じゃOLの就活になっちまうから、就活は休止だ。その間は、ここで気分転換させてもらう事にした。女の子を堪能する」「そういや、就職活動中だったな?いいのか……って、言ってもそれじゃどうしようもないか」「まぁ、俺は最悪の場合、実家に帰って家の手伝いって選択肢が残されてるからな」「あぁ?温泉旅館をやってるんだっけ?末っ子だって言ってたか?」「あぁ、三男二女の一番下だ。子沢山だから放任されっぱなしだったけど、戻っても俺一人くらい雇う余裕はあると思うからな。温泉の番頭さんも悪くはないし」「仲居さんだったり……」「あ?何か言ったか?」「いや、別に。そうか、だったらいいんだけど。ほんと、ポジティブだよ、お前は。わかった、とりあえず、今日は好きにしてろ。明日になったらここらの片づけをしてもらうから」部屋いっぱいに散らかったがらくたを眺め回して俊秋が言う。「なんだ?もう捜し物は見つかったのか?」「あぁ、後は明日、双葉さん達に片づけてもらおうと思ってたんだけど、お前がやってくれるんなら、お前に任すから」「任せて、ご主人様。一ヶ月分の衣食住のお手当程度の働きはするから。それじゃ俺はこれを部屋にかたしてくる」そう言って笑って部屋を出る。「あぁ、わかった」そう言って俊秋がずっと弄んでいた携帯を持ったまま、俺に手を振る。
俺が部屋を出てドアを閉めると、中で俊秋が大きくため息を付くのが聞こえたような気がした。 * * *その少し前…… 清彦が若葉さんと着替えを買いに出て行って暫くの時間がたった。俺は工房に戻って携帯を弄んでいた。親父……掛けても出ないだろうなぁ?まだ空の上のはずだし……もうすぐ清彦のバカも帰ってくるだろうし……ダメ元で試しに掛けてみるか?俺は親父のメモリを呼び出してボタンを押してみる。トゥルルル……え?繋がった?『もしもし、俊秋さま?』「え?その声は双葉さん?なんで?どこにいるんですか?」俺は驚きの声を上げる。『旦那様の書斎ですが?携帯が鳴ってるのでみたら俊秋さんの名前が出てましたので勝手に出させていただきました』「え?親父、携帯を置いてったの?」『旦那様は休暇で旅行に出られる時はいつも置いてかれてますよ』「うわっちゃ!じゃ、旅行中の親父に連絡を取る手段はないのかぁ?」『不定期にはですけど、向こうから連絡はしてこられますが、何か用事がおありで?』「うん、親父の発明品について大至急聞きたい事があったんだけど……」『今朝、指定されました衝撃防護用のアイテムと書類関係は全て工房に出しておきましたけど、それについてでしょうか?』「うん、双葉さんは知らないだろうなぁ?あの中に持ち出し禁止のTS01って型番の品が混じってたんだけどわからないよねぇ?」『あぁ、私たちは型番だけで中身を見る事は禁じられてますから……、旦那様の昔の発明品の事が判るのは旦那様と以前に助手をされていた奥様だけですので』「だよなぁ……、親父から連絡があったら俺が大至急連絡を取りたがってるって伝えてくれるか?」『わかりました、旦那様から電話がありましたらそう伝えておきます』「よろしく、お願いしますね」
……まいったな。連絡不能かよ?あのスーツの解除法ぐらいどこかに書いておけよ、親父。こうしてる間もあのバカの身体は……携帯を切ると、俺はスーツの解説書に目を落とす。そこには簡単な説明と効果が書かれているだけで、材料、製法はおろか、詳細が一切記載されていない。せめて「女の子になれるスーツ」を作ったんなら「男になれるスーツ」も作っておくとかしておけよ、それだったら後でフォローできるのに……「本人がまだ全く気づいてないのが救いと言えば救いか……、あぁ、いつ言えばいいのかなぁ……」俺は深いため息をつくと手に持った携帯をもてあそびながら今後の事について答えのでない難問に頭を悩ませた。 * * *部屋に荷物を置いて買ってもらった下着と服をタンスに入れる。「女の物の下着か……、これを一ヶ月も履き続けるのか、俺は。ドキドキはするけど、下半身が何も反応しないよな…… あ、そう言えばイ*ポについて聞くのを忘れてたな」下着を仕舞ったタンスを閉めて部屋を出る。 ・ ・ ・「なぁ、俊秋?一つ聞きたいんだけどな?」工房のドアを開けて俊秋に問いかける。「うわっ、バカ。いきなり入ってくんな。入ってくる時はノックしろ」何かの薬剤を調合していた俊秋が慌てて試験管をビーカーから放す。「なんだ?爆発でもするのか?」「しねーよ。しねーけど、調合が微妙なんだよ!ちょっと待て」そう言って試験管の液体をビーカーの中へ静かに垂らしていく……「で?なんだ、聞きたい事って?」試験管を洗いながら俊秋が俺に聞く。「俺の性感ってどうなってるんだ?」「はぁ? ……せいかん?生還?静観? ……なに?」俊秋がきょとんとした顔で問い返す。
「ここだよ、ここ。せ・い・か・ん!女の子と居ても反応しないんだよ!車中で若葉さんと二人っきりなのは楽しかったんだけど、アレが行方不明だから反応しないんだよ!ひょっとして俺は一ヶ月間、不能か?」俺は自分の股間を指さし、俊秋に尋ねる。「あぁ、性感な。いいじゃないか?これから一ヶ月、屋敷を預かる雇用主としては羊の群れに狼が紛れ込んでなくて助かる」「いや、俺は可愛い牧羊犬だよ?羊を守る心優しいワンちゃんだよ?」「だったら牙は要らないだろ?」「いる!ワンちゃんと言えども牙は要る!なぁ?マジでこれを着てる間は不能か?」「……う〜ん、俺もよくわからないけどお前のペニスはまだどこかにある筈だからまるっきり不能ってこた無いと思うんだけどな?環境に慣れてないからうまくそれがペニスに伝わらないんじゃないのか?」「え?まったく感触がないんだけど、あんのか?ペニス?」メイド服のスカートの上から股間をまさぐってみる。「こらこら、女の子が人前で恥ずかしいまねをするんじゃありません。いきなりすっぱり無くなるわけ無いだろ?あるよ、どこかに。異空間か、魔界か、異次元だか知らないけどな?まだ存在はしてるはずだ。性感に関しては今は不能状態だけど徐々に現れくると思うぞ?」「そうなのか?だったらいいけど……」俊秋の言葉のどこかに引っかかるのを覚えたが、それがどこかは判らなかったので深く考えずに納得する事にしておく。「男の性感とは限らないけどな……(ぼそっ」「え?何か言った?」「いや、別に。で?用件はそれだけか?」「あ?まぁな。で、俺は後は何してりゃいいんだ?」「だから、好きにしてろって。とりあえず、俺の制作活動のじゃまをしなけりゃいいから」そう言いながら、ビーカーの中のドロッとした液体を型枠に流し込む。
#相変わらず不安になる要素がちらちらと…w#個人的には無事に脱げてくれることを祈りたいところですが…
「ふ〜ん?それじゃ好きにしてるよ」そう言って、ぶらぶらと工房を出る。好きにしてろって言われてもなぁ?せっかくメイドさんになったんだから何かおもしろい事をしたいよな?そうつぶやきつつ、スカートの裾なんかを摘んでもてあそぶ。「あれ?清香さん、どうしたんですか?」廊下をぶらぶらと歩いていると向こうから歩いてきた双葉さんが声を掛けてくる。「あ、双葉さん。制作のじゃまだって俊秋……様に追い出されちゃいました。好きにしてろって。双葉さんは何をしてるんですか?」」「これから夕食の準備ですよ。ウチではメイドが当番制でご飯を作るんですよ。旦那様も奥様も豪華な物には拘られませんから味さえ確かだったら何でも食べられますからね。むしろ、手作りの味がいいんだそうですよ。外食が多いせいもあるかもしれませんけど」「一人で作るんですか?えっと、家族3人とメイドさん3人の6人分?」「今は旦那さん達が旅行中で清香さんが増えたので5人分ですけどね。それに当番は主導的にご飯を作る当番で、そのときに手の空いた人が補助に入るんですよ」「だったら、俺……私、ヒマなんでお手伝いしましょうか?明日まで仕事はないって言われてますから?簡単な事ならできますよ」「清香さんが?いいの?俊秋さんから清香さんは俊秋さん専用のメイドなので他の仕事はやらせないようにって言われてるんだけど……」「いいんですよ。私の方から手伝わせて下さいって頼んでるんですから、問題はありませんよ」そう言って双葉さんに笑いかける。「そう?悪いわね。だったらお願いしようかしら?今日は若葉さんも青葉さんもまだ手が離せないようだから」「はいはい、それじゃなんでもお気軽に言いつけて下さい」にっこり笑って、双葉さんと並んでキッチンに歩を進める。
いや女性と二人っきりで料理ってのも楽しいよな〜、貧乏人の自炊生活で一人で食事作って一人で食っての日々から比べりゃ天国だよ。これはもうスーツ様々って感じ? ・ ・ ・「俊秋様〜、夕飯の準備が出来ましたよ〜」俺は工房のドアを開けて俊秋に夕飯が出来た事を告げる。「だから、ノックをしろって言ってんだろ?微妙な作業をしてる時に手が滑ったらどうしてくれるんだよ!」俊秋が机の上から顔を上げて怒る。俊秋は作業台の上で小さな基盤に何かをハンダ付けしている最中だったようだ。「あ、すまない。何か失敗したか?」俺は俊秋に謝る。「いや、ちょうどやり終わったばかりだったからいいけど」そう言ってハンダごてを置いて手首をコキコキと動かす。「一体、何を作ってるんだ?」小さな基盤に小さなモーターの付いた物が机の上に数点置かれている。「うん?知り合いに頼まれた特注品の試作だ」「知り合い?特注品?なんの?」「ん?あはは。取引先の家族から頼まれた個人的な玩具だ。気にするな。で、夕飯だって?」そう言って立ち上がって笑う俊秋。 ・ ・ ・「えっと?誰が作ったって?」俊秋が食卓を眺めて不思議そうな声を上げる。「清香さんですよ?そこの茶碗蒸しと治部煮と酢の物は」今日の夕飯当番の双葉さんがご飯をよそいながら俊秋の問いに答える。「はぁ?清……香が?お前、料理なんて出来るの?」俊秋が不審な顔で俺に問う。「出来るよ、和食に限るけどな。お前、自炊生活者を舐めるなよ?」「いただきます」と声を上げて皆が食事を始める。「美味しい!」「本当、清香ちゃんって料理が上手なんですね」「ホント、プロみたい」「でしょ?清香さんが手伝ってくれたので今日は楽ができちゃった」皆が感嘆の声を上げる。
「いや、本当にプロ並みだよな?一体どうやったんだ?」小声で俺に問いかける俊秋。「どうって、これが俺の実力だよ?」「いや、マジでプロなみじゃないか?俺、お前の料理なんて今まで食ったことないぞ?」「ふふふ、俺の料理スキルは男に食わす為には無いのさ」俺は余裕の笑みを俊秋に向ける。「お前な〜?一応、俺はそれなりに舌が肥えてるつもりだ。何気ない料理だけど細かい所に技が使われてるのがわかるぞ?素人じゃないだろ?」「ふふふ、昔、うちの板長さんに可愛がれていてな。悪戯半分に仕込まれたのさ」「あれ?清香さんのウチって料理屋さんなんですか?」「いえ、実はうちの父が有名な陶芸家の美食家で、自分で料亭を……」「ウソつけ!」せっかく、女性陣の同情を買おうとした俺の頭を俊秋がはたく。「痛いなぁ、食卓での場を和ませる軽いジョークじゃないか」「あはは、清香さんっておもしろい方ですねぇ」「しかし、俊秋さんにこんな可愛い女性の知り合いが居るとは思いませんでしたね」「本当に。工房に籠もられて外に出る事なんて滅多にないのに、いつの間にこんなに綺麗は人とお知り合いに??実は恋人同士とか?」「「違います!!」」若葉さんの指摘に二人の声がハモる。その後も食卓は和やかに食事がすすんだ。 ・ ・ ・夕食が済み、その後も食堂に残って双葉さんの後かたづけを手伝い、終わって一段落付いた頃、青葉さん達がやってきた。「双葉さん、お風呂の順番はどうしますか?今日から清香ちゃんが増えたから清香さんから先に入ってもらいます?」「え?お風呂ですか?私は後でいいですよ?」そう言って、俺は青葉さん達に先を譲る。いや、さすがに新参者が先に入るワケにはいかんでしょ?
「でも、後になると遅くなるよ?女の子のお風呂は長いでしょ?」「比較的、手が空いてる人から先に入った方がいいから」青葉さんと若葉さんがそう主張する。双葉さんも考え込む……「そう言えばさ?清香ちゃんは俊秋さん専属のメイドさんだから食事当番は免除でいいんだよね?」青葉さんが皆にそう確認をとる。「あ、やりますよ?同じお屋敷に居て私だけ免除ってのも悪いですし」「え?いいの?私たちは助かるけど?」「かまいませんよ。皆さんにも手伝ってもらえるんでしょ?」そのまま、話は他の方にも広がっていき、なし崩し的にお茶会のようなものへと発展していった。そうやって俊秋の屋敷内に俺の居場所を作りながら一日目が過ぎていく。 * * *目が覚めるといつもの部屋でない事にとまどう。「あ、そうか。俊秋の工房でスーツを着て脱げなくなって、一ヶ月間住み込むことになったんだっけ」布団から手を出し、腕を上げるとピンクのパジャマの袖からでた白い腕が目にはいる。「本当に女の子の腕だよなぁ?あ〜、あ〜ぁ。声も女の子みたいに高いし?」腕を布団の中に戻して胸に手をやると柔らかな脹らみがある。股間の方にも手の平を当てると毎朝、元気に挨拶をしてくる暴れん棒が居ない。「すごいよなぁ?スーツを着ている俺自身がこれがスーツだって判らないんだからな」天井を見上げながら暫くの間、布団の中でもぞもぞと身体をまさぐっていたが、いつまでもこうやっていても仕方がない。布団を捲りあげてベッドから出る。「う〜んっ」腕を伸ばして大きく伸びをする。部屋の隅に置いてある姿見の中でピンクのパジャマを着た健康そうな可愛い女の子が伸びをしている。「本当に、我ながらいい女だな」鏡に近づいて、その姿を見ながら色々なポーズと顔をしてみる。
いつまでもポーズを付けていても仕方がないので着替える為にパジャマを脱ぐと、鏡の前にはブルーのショーツ一枚を身につけた俺の姿が映し出されている。「えっと、ブラも付けないとダメなんだよな?」昨日、若葉さんに選んでもらったピンクのブラをタンスから取り出し身につける。「んと?ブルーのショーツとピンクのブラじゃ合わないのか?……色も統一させないといけないんだっけ?でも、誰かに見られるわけでもないし?それに下は昨日、風呂に入った時に着替えたばかりだし……いいよな?」ガーターベルトを腰に巻きストッキングに足を通すと、次は壁に掛かったメイド服を取り、背中のファスナーを下げて足を通す。「女装の趣味はないつもりだけど、ドキドキするな。これを着るのは」ファスナーを上げて、エプロンドレスを上に付ける。そして、ヘッドドレスと言われるカチューシャのような物を頭に付けて髪を留める。「うんうん、美少女、美少女」鏡にその姿を写してくるりと回る。「さぁ、一ヶ月の美少女生活。今日も堪能させてもらうぞぉ」俺はにっこりと微笑んで部屋を出る。 * * *「俊秋様ぁ、朝ですよぉ、起きて下さぁい!」俺は笑顔で俊秋の布団を引っぺがす。「ひゃう!だ、誰だ!……え?誰?」俊秋が寝ぼけた目で俺を見る。「誰ってお前。親友の顔を忘れるなよ?」「え?あ!あぁ、清彦か……忘れてたよ。朝からハイテンションだな?」「俺はいつでもこんなものだよ。どうだ、可愛いメイドさんに優しく起こされる気分は?」腰に手を当てベッドで毛布にくるまってる俊秋を見ろして笑顔で尋ねる。「中身も可愛いメイドさんだったらよかったんだがな。それに気持ちよく人が寝てるところにいきなり掛け布団を引っぺがすのは優しい起こし方とは言わねぇ。返せ、俺の掛け布団!」
「何言ってんだよ、朝飯だ、朝飯。可愛いメイドさんが自らの手で作った美味しい朝食がキッチンで待ってるぞ。それとも俺がベッドから引きずり出して着替えさせてやらないと起きられないのか?」そう言って毛布の裾に手を掛けて引っ張る。「うわっ、止めろ止めろ!たとえ見かけが可愛い女の子でも中身がお前だと判ってると気色悪い!起きるから止めろ!」そう言ってベッドから起きあがる俊秋。「あん、俊秋様ったら気色悪いだなんて。清香、泣いちゃうゾ」そう言ってくねくねとシナを作る。「ホント、お前、ノリノリだな?本当に女性化願望ないのか?」ベッドから降りてパジャマのボタンに手を掛けながら俺に尋ねる。「ねぇよ!でも全く自分じゃない存在になるって貴重な体験だろ?それも美少女だぞ、美少女!これは楽しまなくっちゃ損だろ?」そう言ってくるくると回ってみせるとスカートがふわっと広がる。俊秋が気が抜けたように何かつぶやく。「なんだかなぁ……、俺の苦労も知らないで気楽なもんだよなぁ……」「ん?何か言ったか?」「いや。それより今朝もお前が朝食を作ったのか?」「今日の当番は若葉さんだから、俺は味噌汁だけだがな。さぁ、さっさと着替えてキッチンに行け、冷めちまうだろ?ご主人様の分際でメイドさん達を待たせるなんてもっての外だぞ?とんでもないご主人様だな。自分を何様だと思ってるんだ?」「ご主人様だよ!本当に方便とは言えお前を俺のメイドにしたのはすごい失策だったような気がするな……、なぁ?やっぱりその姿で寮に帰らないか?寮長にはちゃんと俺から説明してやるから?」「何を言ってるんですか、ご主人様。こんな可愛い清香を見捨てる気ですか?さぁ、ご飯ですよ。さっさとキッチンに行って下さりやがりませ」俺は着替え終わった俊秋の背を押して部屋の外に押し出す。
「なんでこんな状況でこいつはこんなに陽気なんだろうなぁ……」俊秋はぶつぶつ言いながら、俺に押されてキッチンへと向かう。 ・ ・ ・皆で賑やかに朝食を食べる。「なんだか、食卓が異様に明るいな……」俊秋が皆を見渡してポツリと漏らす。「なんか清香ちゃん一人増えただけで華やかになったよね」青葉ちゃんがそれに応える。「ですね。清香ちゃんって朝、早いんですよ。私が起きてきた時には先に起きてましたから」ご飯のお代わりを差し出しながら若葉さんも応える。「まぁ、早起きは昔からの習慣でしたから。こっちに出てきた時にもっと自堕落になるかと思ってたんですけど、長年に渡って染みついた生活習慣は取れなかったんですよ」そう言って笑う。「それはいい事ですよ。私達は朝が早いから手伝ってもらうと助かるわ」双葉さんもそう言って笑う。「本当に一日足らずで異様に馴染んでしまってるな?」俊秋がジトッとした目で俺を睨む。いいじゃん?和気あいあいとした明るい食卓で朝を迎えられるんだから?「なんですか、ご主人様?こうやって朝から美人に囲まれて朝ご飯を食べられる事に不満でもあるんですか?この果報者ぉ!」そう言って、にやりと笑って肘で横の俊秋をつつく。「一人、偽物が混じっているけどな?隣という一番居て欲しくないポジションに」そう小声で俺につぶやく。「あん、清香、ご主人様にこんなに尽くしているのにぃ」「きしょい、バカ!」「なんだか本当に仲がいいですよね」「慇懃無礼な清香さんの言葉にも俊秋さん悪い気はしてないみたいだし」「そうですね、主従と言うより恋人同士っぽい感じ?」『違います!間違ってもコイツとそんな関係だって思わないようにして下さい!』お互いを指さし、二人の言葉がハモる。 ・ ・ ・
「それで俺は何をやればいいんだ?」朝食を終えて俊秋の部屋に帰ってきた俺は俊秋に尋ねる。「あぁ、そうだったな。でも、本当に仕事をやるのか?別に無理しなくてもいいんだぞ?」「いや、ヒマだしな。お前の部屋に最初っから潜んでるのも精神的に限界がくるだろ?だったら、一ヶ月も世話になるんだからメシ代程度の働きはさせてもらうぞ。それに服も買ってもらったしな」「そうか?だったら付いて来いよ」そう言って俊秋は部屋を出て工房に向かう。 ・ ・ ・「ここに散らばってる箱やバッグを倉庫に片づけておいてくれるか?それぞれにタグが付けられてるから倉庫の棚に貼り付けてある型番通りに仕舞ってくれればいいから。倉庫の鍵は双葉さんから受け取ってくれ」「あぁ、わかった。それはいいけど、ここで俺がばたばたと動き回ったらお前の邪魔になんねぇ?」「俺は今日は夕方まで出かけるから大丈夫だ。好きに暴れててくれ。と言っても判ってると思うがその辺りの物を勝手に使うんじゃないぞ?」「あはは、俺をもっと信用しろよ?俺が勝手に人の物をいじるような人間に見えるか?」俊秋に向かって快活に笑ってみせる。「一体、どの口がそういう事を言うんだろうねぇ?この事態を招いたのはどこのどいつだと思ってんだ?」俊秋が腰に手を当てて俺を睨む。「判ってるって。俺も反省した。二度と勝手に中身には手を出さない。ご主人様ぁ、ご主人様は清香をもっと信用してくださぁい」頬に両手の拳を当てて、腰をかがめて振ってみせる。「お前のそう言う態度が反省してるようには見えねぇんだよ!このお気楽野郎が!」俊秋が思いの外の剣幕で俺を怒る。あれ?意外と本気?まぁ、一ヶ月も俺に転がり込まれるのも災難だろうけど。
「いや、マジで反省してるって。一ヶ月とはいえ、お前ンチの発明品を使用不能にしちまってんだから」俺は顔の正面で手を合わせて俊秋に謝る。「はぁぁ、問題はそこじゃないんだがな……まぁ、いい。本当にこれ以上事態をややこしくだけはしてくれるなよ。とりあえずは信用するから」ため息混じりに俊秋がそう口を開く。そこが問題じゃないんだったらどこが問題なんだ??「ところでどこに出かけるんだ?」「昼までに大学にちょっと顔を出して、その後は春風家に寄ってくる」「春風家?」「あぁ、それのクライアント。ウチの取引先の家だけどな。そこの奥さんが今回の内職の注文主だ。夕べ、制作できるメドが立ったから細部の打ち合わせをしてくるんだ。なんだ?何か用でもあったのか?」「いや、もし時間があるのなら俺の寮に寄って一ヶ月の外泊届けを書いてきてくれないか?さすがに一ヶ月も居ないと不審に思われて捜索願を出されるかもしれないからな」「なるほど、確かにその心配はあるな。判った、出してきてやる。俺の家で一緒に卒論でも書いてる事にしよう」「あぁ、そうかぁ…… だったら、ついでに俺の部屋に入ってノーパソを持ってきてくれないか。卒論も書かなくっちゃ行けないんだった。資料もそこに全部入れてあるんだ。卒論、マジでここで書かせてもらうから」そう言ってスカートのポケットから俺の部屋の鍵を取り出して俊秋に向かって放る。「わかった。じゃ、頼んだぞ?ゆっくりやってくれればいいからな」俺の投げた鍵をキャッチするとそう言って俊秋は出て行った。「ふん?結構あるな?まぁ、それでも半日もあれば余裕で片づくよな」工房内を見渡して俺は大体のあたりを付けて、双葉さんの元に向かう。双葉さんは玄関の掃除をしているところだった。「双葉さん、倉庫の鍵を貸していただけませんか?」
箒を持ったまま双葉さんが俺に尋ねる。「倉庫の鍵?何をするんですか?」「俊秋様に工房の片づけを頼まれまして、倉庫の鍵は双葉さんから受け取れと言われたんですが?」「工房の?結構あるでしょ?ちょっと待っていただければお手伝いしますよ?」「いえ、私が頼まれたんですから一人でやりますよ。あれくらいだったら私だけで充分ですよ」そう言って笑う。「清香さんって結構頑張り屋さんなんですね?人手が居るようだったら、無理しないで言って下さいね。ちょっと待っててください」双葉さんは箒を立てかけるとどこかに行ってすぐに帰ってきた。「はい、これが倉庫の鍵です。片づけが終わったらまた、私の所に持ってきてください。本当に無理しないでくださいね。手伝いますからね」にっこりと笑って鍵を俺が伸ばした手のひらにおく。「ありがとうございます。それでは借りていきます」そう双葉さん礼を言って別れる。「がんばってくださいねぇ」双葉さんの声援が俺の背中にかけられる。いや、本当にここンチのメイドさんって優しい人ばかりだよな?俺、就活に失敗したらここに就職しようかな?俊秋に頼んでこのスーツをいつでも着脱可能に改造して貰って女性の振りして……なんちゃって。 ……そう言えば、なんで一ヶ月も脱げない仕様になってんだ?このスーツ?意味がわかんねぇ?そんな事を思いながら工房に戻ると俺は黙々と工房内の片づけを始めた。 ・ ・ ・「清香さん、お昼ですよ。一休みしませんか?」俺が工房の中を掃いていると双葉さんが入ってくる。「あ、判りました。こちらももう終わりますのですぐに行きます」そう言って双葉さんの方を振り返る。「え?あれ?清香さん、あれだけの荷物をもう運んじゃったんですか?」
「はい、先ほど、全部運び終わって、今、工房の中を掃除し終わるところです。後で倉庫の中を確認していただけますか?」そう言ってスカートのポケットから倉庫の鍵を取り出して双葉さんに手渡す。「わかりました。それにしても……早いですねぇ?あれだけの荷物を……一人で?」「あはは、力だけが取り柄ですから」驚く双葉さんに笑って応える。いや、実は中身は男だから力だけはあるんですよ?「力だけって謙遜を。お料理だって上手だし、お掃除だって……」そう言いながら工房の中を見回す双葉さん。「完璧じゃありませんか。本当に俊秋さんは一体どこでこんなに優秀な人と知りあったんでしょう?」「あはは、お世辞にしても嬉しいですよ。はい、掃除も終わりました。お昼にしましょうか?」塵取りに掃き取ったゴミを部屋の隅のゴミバケツに放り込んで双葉さんに告げる。 ・ ・ ・「え?あれだけの荷物を全部一人で運んだんですか?!」「大変だったでしょ?中には私たちが二人がかりで運んだ物もいくつか合ったんですよ?」昼食を食べながら俺の仕事ぶりを双葉さんから聞かされた若葉さんたちが感嘆の声を上げる。「いや、まぁ実家が小さな温泉宿をやっていて幼い頃から家業を手伝わされていたので慣れてるだけですよ」「え?清香さんの実家は温泉宿なんですか?」「あぁ、それで朝が早かったり、料理を習ったりしてたんですか」「そうすると将来は清香さんは温泉宿の女将さん?」「いえ、私は末っ子なんで実家は継ぎませんから」「兄弟が多いんですか?」「上に2人づつ兄と姉が居ますから、私は放置されてるんですよ」そう言って笑う。「うわぁ、5人兄弟ですか?二男三女かぁ、さすがに多いですね」「え?三男二女…… じゃない!そうそう三女なんです、私……」あぶない、あぶない。
しかし、女の子に囲まれての朝食なんて何年ぶりだろ?っていうか今まであったっけ?ひょっとしてこれが噂に聞くハーレムってヤツ?目の前には大人な雰囲気の双葉さん。斜め前にはさっぱりした性格の若葉さん、お隣にはコンパクトなスタイルの青葉さん。うんうん、ほどよくタイプがバラけてるよなぁ。「なんだか清香さん楽しそうですね」向かいの双葉さんが俺の顔を見て面白そうに笑う。「え?そうですか?まぁ、こんなに美人な人たちと食事できて楽しくないわけないじゃないですか?」「やだ、清香ちゃんったら、自分もその中にいる癖に?」隣の青葉さんがそう笑う。「そうそう、この中で一番美人なのが清香さんなんだから。そういう意味では残念だね。私たちは一番美人な子の顔を見ながら食事できるんだけど、清香さんは一番の美人の顔を見られないんだから?」そう若葉さんも笑う。「あはは……、自分の顔を見ても仕方がありませんから」そう言って俺たちは笑いあいながら昼食を取る。いや本当に楽しいなぁ、ここのメイド生活。食事が終わり、ゆっくりとお茶を飲む。「そう言えば、皆さんは昼からは?」俺が皆を見て尋ねる。「私と青葉さんは外回りの掃除ね。落ち葉がかなり溜まってきてるから」若葉さんがそう言う。「私は清香さんが片づけた倉庫のチェックを済ませた後で旦那様が留守のうちに普段出来ない細かいところの大掃除ですね」双葉さんもそう答える。「私も何かお手伝いしましょうか?」俺がそう提案する。「え?でも清香さんは何か仕事があるんじゃ?」「いえ、俊秋、様が帰っていらっしゃるまではする事がありませんから。言いつけられた用事は工房の片づけですけど、昼までに終わってしまいましたから、ヒマなんですよ」「いいのかしら?清香さんは俊秋様専属なのに?」
「いいんですよ、ご主人様が留守なんで指示されたお仕事が終わればやる事もないし?一人で部屋で部屋に待機してるのもヒマですし?」そう言って、双葉さんに笑いかける。「わぁ、清香さんに手伝ってもらえるなら助かるなぁ」青葉さんが嬉しそうな声を上げる。俺も俊秋の部屋に閉じこもってるより、女の子のそばにいる方が癒されるからね。「そう?それじゃあ、悪いけど清香さんにも手伝ってもらうわね」「はいはい、なんでもやりますよ」お茶も終わって、昼からの仕事の為に全員が立ち上がる。 * * *「お〜い、清香。どこに居るんだ?」3時の休憩が終わった頃、俊秋が帰ってきた。「ん〜?ここぉ、バスルームゥ!」俺が声を上げて返事を返す。「はぁ?バスルーム?何でそんな所に? ……居ないじゃないか?」俊秋の声が近くで聞こえる。「隣だ。小さい方じゃなくって、家族で入れる大きい方の風呂場だ」俺はバスルームから首を出して隣の小さい方のバスルームに声を掛ける。それにしても、トイレはともかくとして、バスルームまで二つもあるのかこの屋敷は?まぁ、それはそれでよかったんだけど……「なんだ?こっちで何してるんだ?って、なんだ!その格好は!?」「何って風呂掃除に決まってるだろ?風呂場でスポンジを握りしめて"今、ご飯を作ってます"ってヤツが居たら変だろ?」「俺が言ってるのはその姿だ!その格好はなんだ?!」俊秋が無礼にも人を指さす。「あぁ、これ?いや、風呂掃除を頼まれたんだけど、そのままじゃ服が濡れそうなんで、脱いでやってたら通りかかった若葉さんにピンクのブラとブルーのショーツって組み合わせが変だって笑われたんだ。だから、着替えたんだけど。……まだ変か」そう言って腕を広げて黒のブラとショーツに包まれた俺の姿を俊秋にみせる。
「はぁぁ……、あぁ、変だな。お前の頭が……」俊秋が大きくため息をついて、そんな事をほざく。「うわっ、そんな言い方は人をバカにしてるように聞こえるぞ?」「バカにしてないように聞こえたらお前の耳がおかしいが、どうやら正常なようだな?」どうもこの男は人の事をとことんバカにしているようだ。「お前なぁ……」「お前、その姿になんの抵抗も感じないのか?」「あぁ……? あぁ!慣れた!うふん、ご主人様ぁ、私ってせくしぃ?」そう言って俊秋に近づき、両肩に腕を回す。「ふわぁ!ばか!近寄んじゃねぇ! ……おかしいな、精神には影響は出ない筈なのに……」俊秋が悲鳴を上げて飛び退き、何かをつぶやく。「なんだよ?軽い冗談じゃないか?お前、ちょっと余裕がなくなってないか?」「俺には何でお前がそんなに余裕があるのかが不思議だよ?」肩を落として首を振る俊秋。えっと、俺ってそんなに呆れられるようなことをしてるか?マジで服が濡れるから下着で掃除してただけなのに?実家でもパンツ一つで風呂掃除をやらされてたぞ?自分の姿を改めてみてみる。健康的な肢体に黒の下着。……汚れも目立たなくっていいじゃないか?少なくとも俺は他の女性がこんな姿で目の前に現れれば目が釘付けになるけどなぁ?「まぁいい。風呂掃除はもう終わるのか?終わったら服を着て俺の部屋に来い。頼まれたノーパソも持って帰ってきてやった。それも俺の部屋に置いておくから」そう言って、踵を返す俊秋。「はぁい、ご主人様ぁ。すぐにお掃除を終わらせてまいりますぅ!」背中に俺の声を受けてガクリと肩を落とす俊秋。何か心労が溜まっているのか?仕方がない、後で俺が慰めてやろう。なに、中身が俺でも美少女に肩でも揉まれりゃ俊秋だって悪い気はしない筈だ。きっと俊秋の心身も癒されるだろう。
俺は掃除用具を仕舞うとメイド服を身につけ俊秋の部屋に向かう。 ・ ・ ・「で?お前は何で風呂掃除なんかしてたんだ?」俊秋が部屋に入ってきた俺に開口一番、尋ねる。「なんでって。お前に頼まれた工房の整理は昼に終わっちまったんだよ。昼からはすることがなかったんで双葉さんに頼んで仕事を分けて貰ったんだが、いけなかったか?」「……いや、まぁ。お前が仕事をしたいって言うんなら別に止めはしないけど、お前ってそんなに働き者だっけ?」「まぁ、怠け者じゃないと思うぞ。働き者なのは女性と一緒だからだな。ここでは常に女性と接触する機会が多いから楽しいじゃないか?なんなら次はお前が着てみるか、このスーツ?清香に化けて双葉さん達と一緒に居てみろよ?楽しいぞ?」「……いや、俺は一時の快楽の為に女性として一生、生きていく気はないから」ポツリと俊秋が何かをつぶやく。「え?なんだって?」「いや、なんでもない。まぁ、お前の好きにしててくれていいよ。それとこれがお前に頼まれたパソコンだ。持ってけ」そう言って、ノートパソコン一式をバッグごと俺の前に置く。「あぁ、サンキュー」俺はそれをテーブルから取り上げる。「それとな、俺は暫くはこれの制作にかかるから、お前のメイドとしての使命は"くれぐれも俺の邪魔はするな"って事だからな?そこん所は理解しておけよ?」「わかってる、わかってる。清香はいつでもご主人様の忠実なシモベですよぉ?いつだってご主人様のために尽くしてますからぁ」両頬に拳を当ててぶりっ娘してみる。「なぁ?お前と親友の縁を切っていい?」「やん!ご主人様のイケズぅ」にっこり笑って俊秋に媚びを売る、「さっさとそれ持って部屋に帰れ!夕飯まで来なくっていいからな!」わぁ、怒った、怒った。
「はぁい、それでは失礼します、ご主人様ぁ!」俺は笑ってバッグを引っ掴み、メイド服をひるがえし部屋から逃げ出す。 ・ ・ ・「いやぁ、つい俊秋を怒らしちまったな。いかんいかん、今のこの生活が楽しくって調子に乗ってしまう。俊秋に面倒ばかり掛けてるのに……」反省、反省……「あれ?清香さん、どうしたんですか?」青葉さんが廊下で声を掛ける。「あ、青葉さん?いやぁ、ちょっと俊秋様に怒られちゃいました」「え?それは私たちのお仕事を手伝ってもらったせいで?」「いえ、それとはまったく関係のない事ですから。青葉さん達のお仕事を手伝う事に関しては好きにしていいと言われましたから」そう言って笑いかける。「そう?だったらいいんだけど」「あれ?青葉さんはこれから夕飯の支度ですか?」「はい、夕飯当番は私ですから」「だったら、お手伝いしますよ。ちょっと荷物を部屋に置いてきますね」「え?いいの?悪いわね、清香ちゃん」「いいんですよ、皆と一緒にお仕事をするのは楽しいですから」俺は笑顔で双葉さんに返事を返す。・そんな感じで数日が過ぎていった。 * * *「俊秋様もすっかり健康的な生活を送られるようになりましたね」朝食の席で双葉さんが俊秋にそう言って声を掛ける。「健康的?俊秋様が?」俺が不審そうな声で問いかける。だって、こいつ、俺が呼びに行かないと工房から出てこないし、朝だって俺がたたき起こしてるんだぞ?「だって、三度三度ちゃんと食事をお取りになってるし、朝はちゃんと起きてこられるようになりましたし」はい?それって普通では?「そうですね。以前は私たちが起こしに行っても追い返されましたし、食事にしてもすっぽかされる事が多かったですからね」若葉さんも双葉さんの言葉に同意する。
「それはね。どこかのバカメイドが毎朝ハイテンションで起こしに来るし、食事だって毎度工房から引きずり出しに来るから仕方がないんですよ。邪魔するなって何度も言ってるのに……」ふて腐れたように味噌汁を飲みながら俊秋が答える。「あはは、清香はご主人様の健康を一番に考えてお仕えしていますから」そう明るく笑って俊秋の肩をたたく。「ウソつけ、お前は何も考えてないよ」ぶすっとした声でつぶやく俊秋。「ふふふ、それでも清香さんに言われたら俊秋さんも部屋から出てきちゃうんだ?」青葉さんがおかしそうに笑う。「本当に清香さんが来てから俊秋さんに限らず、家の中の雰囲気が変わりましたよね?」双葉さんもにこやかに笑う。「そう言えば、俺は昼間は工房に籠もって清香の様子を見てないんだけどうまくやってるの、こいつ?」俊秋が他の皆を見て尋ねる。「えぇ、よく働いていただいてますよ」「力仕事なんか率先してやってやっていただけますし」「俊秋さん専属なのに、私たちと同じくらい働いてもらってますし」「いえ、私は皆の補佐をしてるだけですから。おほほほほ」そう褒められると本当に嬉しいよな。「わざとらしい笑いだな、おい?」そんな俺の誠意を疑うひねくれ者が一人。「いやですね、ご主人様。清香は皆さんのために一生懸命ですよ」「まぁ、仲良くやってる分には俺も文句はないけど……、双葉さん、これが何かやらかしたら言って下さいね。すぐに叩き出しますから」ひねくれ者がそんな失礼な事を双葉さんに告げる。何で人を素直に信じられないんだろうね?「あはは、大丈夫ですよ。私たちはとっても仲がいいんですから」「そうですよ、昨日だってお風呂で……」「あっ!青葉さん、おかわりいかがですか!」俺は叫ぶように青葉さんの言葉を遮る。
「え?あぁ。もう沢山いただきましたら結構ですよ、清香ちゃん」「そうですか、わかりました。えっと、今日は皆さんの予定は……」「ちょっと待て。清香」俊秋の手が俺の肩を掴む。「な、なんですかぁ、ご主人様ぁ?」「えっと、青葉さん、夕べお風呂がどうしたんですって?」俊秋が青葉ちゃんに続きを促す。「いえ、たいしたことじゃないんですよ。お風呂で胸のさわりあいをしただけの話ですから」そう言って照れるように顔を赤くする。「えっと、胸の?お風呂って清香と?一緒に入ったの?」俊秋……、ご主人様?肩を掴む手が痛いんですけど?「はい、楽しいですよ、皆で入った方が」「皆で?青葉さんだけじゃないんですか?」俊秋が疑問をぶつける。「あ、この間からお風呂は大きい方のバスルームを使わせて貰ってるんですよ。女性はお風呂が長いですから順番待ちをしてると遅くなってしまうので一度に何人も入れる方を使わせて貰ってるんです。さすがに全員一度には無理ですけど三人くらいなら一度に入れますから」双葉さんが話を補足する。「あれはいいアイデアでしたね。おかげで仕事が終わったら順番を待たずにすぐにお風呂に入って暖まれますから」若葉さんも笑って話す。「えっと……それはいつから?」「清香さんが来られた日からですよ?お風呂の順番をどうするか決めようとしたら清香さんがアイデアを出してくれたんですよ」ギギギ、そんな音が聞こえてきそうな感じでロボットのように俊秋の首がゆっくりとこちらに回る。えっと……ご主人様?「きぃよぉかぁ?今の話は本当なのかなぁ?」「ご主人様ったら目が怖いですぅ。だって、寒い夜に皆さんが順番待ちをして入って、入ったと思ったら次の人が待ってたりしてると落ち着かないでしょお?」頬に手を当ててブリッ娘して誤魔化そうと試みる。
「本当にナイスアイデアでしたよ、清香さん」若葉さんが俺に親指を立てて笑顔を見せる。「ちなみに、一番長風呂なのは誰ですか?」俊秋が笑って皆に尋ねる。えっと、顔の端が引きつってませんか、ご主人様?「清香さんかな?」「清香ちゃんね」「清香さんですね」「きぃ・よぉ・かぁ?ちょっとじっくりと話しあおうか?」「ご主人様?肩が痛いんですが?ほら、私の髪ってこんなに長いですから洗うのに時間がかかるんですよ。それに裸同士のつきあいは従業員同士の親睦を深めるんですよ?あは、あはは……」「うん、清香ちゃんとよく洗いっこするもんねぇ」「そうね、清香さんはよくみんなの背中を流してくれるからね」「温泉旅館の娘さんだけあって、洗い方がいいのか体がよくほぐれるし」青葉さん、若葉さん、双葉さん、今それはフォローにならないから!「ほほう、清香は皆の体を洗ってあげてるんだ? え・ら・い・なぁ!」「あはは、お褒めに預かりありがとうございます。あたたた、痛い、痛いですよ、ご主人様?」「お前なぁ? 一生、そのままで暮らすか?誰が苦労してお前を男に戻そうとしてると思ってんだ?」双葉さん達に聞こえないように小声で俺に囁く俊秋。「あ、あはは……。ちょっとした息抜きじゃないか?別にいやらしい事を考えてるわけじゃないからさ。このスーツ着てから男としての欲望が押さえられたままだからエッチな気持ちにならないんだよ。本当に純粋に楽しいからやってるだけ。邪心は殆どないから」「"殆ど"って所が多少引っかかるが本当だろうな?」「本当、本当。お前に苦労を掛けてるのは自覚してるから。一ヶ月はこのままでメイドやる覚悟も出来てるから別に早く脱げなくてもいいよ。だからお前も俺の事は放っておいて自分の事に専念してくれ」俺は俊秋の怒りをなんとか収めようとそう言ってなだめる。
こそこそと話している俺たちを双葉さん達が怪訝な顔をする。「あの……、俊秋さん?どうかされたんですか?大きい方のお風呂を使っていた事が問題でしょうか?」「いや、それは別にかまわないよ。それとは別の事でちょっと清香に注意をしてただけだから」「まったく、それが脱げれば元に戻れると思ってるお前は気楽でいいよな……」皆の方を向いて笑ってそう告げると、ご飯茶碗に目を落として何かをつぶやくと俊秋はそのまま朝食を続けた。 ……こいつ、最近はやたらと独り言をつぶやく事が多くなったよな? ・ ・ ・朝食も終わり、俺は俊秋が何かを作っている工房で暇をつぶしていた。「なんだ?今日は双葉さん達と一緒にいないのか?」「ん?そうそう手伝う事もないからな。用があれば声を掛けてくれるようには言ってある。ほら?用もないのにべったりと張り付いてるよりは少し距離を置きながら付き合った方が好感度が目減りしないんだ。始終、そばにいて彼女たちにストーカーっぽい印象を持たれたくないからな」そう言って笑う。「お前って、考え無しな癖に変なところで知恵を回すよな?てか、同じ女同士なんだからストーカーって印象は違うだろ?」机の上で作業を続けながら言葉を返してくる俊秋。「いいんだよ、それは俺の目から見た考えだし。必要ならばいつでも参上、用が済めば静かに待機、"ご家庭の必需品清香ちゃん"が彼女たちと俺の丁度いいスタンスだと思ってっから。それにうっかり寄りすぎてボロが出ないとも限らないしな?」「ボロがって、すでに同じように風呂に入ってる時点で危ないと思うがな……。ところで……、そのスーツについて言っておかないといけない事があるんだが……」俊秋が机から顔を上げて、急に真面目な顔を俺に向ける。「ん、なんだ?改まって?」
「……実はお前、勘違いしてるようだけど。そのスーツの機能−−」俊秋が何かを言いかけた時、ドアがノックされる。「失礼します、俊秋さん」ドアの外から双葉さんの声が聞こえる。「え?なに?今、ちょっと……」「今、旦那様からお電話が入りましたけど出られますか?それとも後で掛け直してもらいますか?」そう言って手に子機を持った双葉さんがドアを開けて入り口に立つ。それを聞いた俊秋が机から慌てて立ち上がる。「あ、出ます!あの鉄砲玉、次なんて言ったらいつになるか判らないし、早く知りたい事があるし」そう言って、双葉さんに近寄り子機を受け取ると電話に出る。「あ?親父?あのな……、あ、ちょっと待って」俊秋は受話器に手を当てると俺たちに声を掛ける。「双葉さん、ありがとう。清香、ちょっと部屋から出てろ」そう言って、俺に向かって手の甲をしっしっと振る。俺は犬か?双葉さんが部屋を出た後に、俺も渋々出て行く。双葉さんは他にも用があったのか、先に向こうに行ってしまったようだ。部屋の外に残された俺はすることもなく………… …… …… まぁ、家政婦(メイド含む)は見たり聞いたりするもんだしな?俊秋の内緒話とやらに興味を抱いて、そっとドアに耳を近づける。・…… だから、アレの解除方法だよ。 …… 解除できないってなんだよ!…… いや普通、何かあった時の為に作るだろ! …… 殆ど、呪術?なんだよ、それ!…… はぁ?因果律すら書き換える?そんな馬鹿げたモノ………… 途中で止めたり出来ても、ふたなり化か、無生殖化?…… ……そのまま放置して変化させてしまった方が安全?…… いや、俺が使ったワケじゃないよ。いいじゃないか、誰でも。…… 何で、そんな不完全なモノを作ったんだよ!…… 普通、戻れる手段も作るだろ?
俊秋の声がとぎれとぎれに聞こえてはくるが、内容が専門的なのか、真剣な声で話しているのはわかるが意味はよくわからない。今、作ってる机の上のモノに関して尋ねているのだろう。なんだ、つまらない。内緒話だったらもっと何か面白そうな話が聞けるかと思ったのに……、俺はそっとドアを離れる。仕方がない、少し双葉さんのところにでも行って時間をつぶしてこよう。俺は俊秋の部屋を音を立てないようにそっと立ち去る。・…… スーツ自体が魔法結界になってて呪を封じ込めているって、そんな非常識な?そこまで非科学的なモノなのか?…… はぁ?スーツを脱ぐと呪が外に解放されて完全に変身が完了する? ・ ・ ・それにしても……俺は夕べの一件を思い出していた。青葉さん、若葉さんの3人で風呂に入っていた時だ。若葉さんの背中を流していた時に湯船の中から青葉さんが俺に言った。「清香ちゃんの胸って大きくなってない?」「はぁ?私の胸がですか?そんな事はないと思いますよ?」俺は自分の胸を見下ろして言う。大体が作り物なんだから成長するわけがないんだよね。「そうよね?私も気づいてた。清香ちゃんの胸って明らかに育ってるわよね?清香ちゃん、ブラが最近きつくなってきてない?」「え?いえ別にきつくは…… あれ?少し、締め付けが出てると思ったのは気のせいじゃ……」「やっぱり。清香ちゃん、まだ胸が成長してるんだ?私よりも大きい癖にまだ大きくなるなんて……」青葉さんが湯船から出て近づいてくる。若葉さんの背中をこすっている俺の背後に立つと後ろから青葉さんの手が伸びてくる。「ひゃうん!」「ほら、見てよ、このさわり心地。大きい癖に柔らかすぎず堅すぎず。ふよふよしたお肉のかたまりがまさに豊満と言ってもいい存在感を……」
「ちょっと、ちょっと!青葉さん、どこのグルメ番組ですか?」「あっ、青葉ちゃんずるい!私だって清香さんの胸を触りたいと思ってたのにぃ!」前で若葉さんが羨ましそうな声を上げる。「ちょっと、若葉さん、なにを言ってるんですか?青葉さんも!人の胸を揉まないで下さいよ!ダメですってば!変な気持ちになるでしょ!」「いや、本当に良いさわり心地よね?清香ちゃん。指の間からこぼれ落ちそうな胸よね?」ぷにぷにと俺の胸が揺れ動く。「あ、あん……ちょっと!マジで!いい加減にしてくれないと私も揉み返しますよ?」「いいよ?私の胸なんてどうせ揉むほどの大きさはありませんからがっかりするだけですから」「判りました、それなら……」「ひゃん!ち、ちょっと、清香さん。なんで私の胸に手を掛けるんですか?」「いや、背後の青葉さんには手が届かないから」「理屈がワケ判りません!」「あはは、それにしても……若葉さんだって良い胸してますよね?」「ま、まぁ、一応、美容体操をしてますからね。って、ダメですよ!」「二人とも大きくっていいなぁ。私だって若葉ちゃんと一緒に毎日寝る前に体操やってるのになんで大きくならないんだろ?」青葉さんが背後で自分の胸を見ている気配がする。「青葉さんだって今に大きくなりますよ」「それは勝者の余裕ってヤツね?天罰ぅ!」再び背後から伸びた手が胸を覆う。「ひゃうん!ダメですって!あ、あぁぁぁ」ガタン前にいた若葉さんがいきなり消えたので俺は力の行き場を無くしてタイルの上に身体を投げらかす。「おやぁ?清香ちゃんがその身を投げ出して胸を私たちに晒してるよ?」若葉さんが笑顔で俺を見下ろすと両手を押さえつける。「ほんとうだぁ。どれどれ?清香ちゃん先生がその胸を診察してあげましょう」手をニギニギして俺の腰の上に馬乗りになる。
「ち、ちょっとぉ!ダメですってぇ!俺の胸なんて触るほどの価値はありませんから!」「いやいや、これだけの一品はそうはありませんよ?」青葉さんの手が悪戯っぽく俺の胸に添えられる。「ひゃぁん!ちょっとぉ!」青葉さんの指の間に挟まった乳首から電撃が走る。「い、いや」思わず身体が仰け反る。「こ、このぉ!この場合は正当防衛だよな?」俺は腕を若葉さんの拘束から外して、顔の上で揺れている若葉さんの双つのリンゴをつかみ取る。「きゃ!やん」その後、青葉さんを腰の上から落として寝かせると手の平を胸に置く。「ふふん?青葉さん?覚悟はいいかなぁ?」「ひゃぁ、ダメ!よくない!止めて!くすぐったいからぁ。きゃははは。だめぇ!」青葉さんはどうやらくすぐったがりのようだった。その後は3人でバトルロワイヤルの身体の触りあいとなった。あのときは……大騒ぎして有耶無耶になったけど……成長してたよな?この胸?作り物でも大きくなったりするのか?それに……このスーツを着た時は明らかに作り物の感触だったのに、夕べは感じていたような?心なしか乳首も起っていたような?えっと、慣れてくると性感まで女のように感じるようになってくるのか?深い性能だよな、このスーツ?俺は廊下を歩きながら首をかしげつつ双葉さんの元へと向かった。 ・・・結局、昼までは双葉さん達と過ごした。お昼に俊秋を昼食に呼びに行った時は、いつものように机で何かを作っている最中だった。「俊秋、昼飯だぞ」「あぁ、わかった。すぐに行くから」「そう言えば、さっき俺に何か言いかけてなかったか?」「ん?あ、あぁ、あれか?別になんでもない。大したことじゃないから」机から顔を上げて俺にそう言うと、昼食のために机から立ち上がった。
#本人のあずかり知らぬところである意味死刑宣告が…w#何となく、父のほうも何か隠してそうな気も?(邪推ですけど)#しかしコレは、もしマスクをかぶらずに首から下だけしか着なかったor着続ける状態だったら…#首から下だけが作り変わってしまうってコトかと想像してしまいましたw#少なくともマスクをかぶってしまう前はチャックが露出してたワケですが、#「脱いだ時点で〜」ってのはこの時からそういうことなのか、それとも矛盾をはらんだ情報なのか…(流石にないですが)#(どっちにしろ、もしすぐに脱いだとしても元に戻れていたのかどうか怪しい感じにw)#皮モノ好きとしてここまでのものを見せられると、スレ主とは色々語り合いくなりますね。#(そういえば、もう一個あった黒髪ショートのマスクは結局何だったのでしょうか。)
>死刑宣告#ある意味天国へのチケットだと思うがどうかw#片道切符だけどな!!
# まぁ、なんというか…… 父親の方にもあのスーツについては# 私の中で裏設定のような物があるのですが、このお話には出て# こない話なので。w ・・・「いや、だってお前。天女を天に帰したくないと思うなら最初っから羽衣をこの世に存在させなければいいんだぞ?」「ちょっと待て?なんだその暴論は?それと元に戻す方法が無いって言うのとどんな関係が……」「女体化の基本設計は北欧で偶々知り合った専門家達によるものだから俺には今更どうする事も出来ん。設計者達は行方不明だからな?今はどんな姿でどこにいるのやら……スーツの素材の方は私が全能力をつぎ込んで絶対に脱げないようにつくってあるしな。わはははは」# なんて会話が電話でなされたとか、なされなかったとか……w# 父親は過去にあのスーツを作って何かをやらかしたって事で。w# 更新、ちょっとリアルが忙しくって間があくようになってます。
#なんという外道w#続き待つ間色々考察やら妄想やらしてたんですが、これは見事に男に戻す気無しですねw#「元通りに戻す方法を隠し持ってるけど息子達を試すために内緒にしてる」とか#「実は旅行はウソで俊秋達の近くでこっそり様子を見てた」とか予想してたんですが、こういう方向のノリもまた。#双葉さんがちょっと怪しいかなって思ってましたけど、さすがに考えすぎでしょうか。#いや、むしろ他のメイドさんにもワケありの人がいたりして…#スレ落ちしそうになったら保守したり、もし落ちたら図書館にバックアップ保存しようかなと思っておりますので、のんびりと書いていってください。#(そういうのが拙かったらすみません)
#その専門家ってハロウィンに魔女の姿をしてたりクリスマスにサンタの姿をしてたり#しませんか?ww
> もし落ちたら図書館にバックアップ保存しようかなと思っておりますので# それはご勘弁ください。m(__)m
大したことがない割にはさっきは妙に真剣な顔をしてたぞ、お前?まぁ、コイツがそう言うんなら大したことではないんだろう。 ・・・「清香ちゃん?お昼から何か仕事はあるの?」昼食が終わってキッチンから出て行こうとした俺を青葉さんが呼び止める。俊秋は俺を置いてそのまま部屋に帰って行く。「え?いえ、別にこれといった用事は…… 俊秋様の部屋か工房でぼうっとしてるか、いつものように皆さん達のお手伝いに回る予定ですけど?」「だったらさ、ちょっと私に付き合ってよ」青葉さんがにこりと俺に微笑む。 ・ ・「ごっ主人さまぁ!お買い物に行くのでクレジットカードくださぁい!」俺は元気よく俊秋の部屋の扉を開ける。「うわっ!え?誰?って清彦?なんて格好だ?メイド服はどうした?」俺は穿いているデニムのミニスカートから伸びた足を軽く膝を曲げて上げて見せる。「うふん、せくしぃだろ?」「どうしたんだ?そのスカートは?」「前に若葉さんとデパートに下着を買いに行った時に一緒に買ったヤツだ。普段からメイド服しか着ないから今まで着なかったけど、昼から青葉さんと私用で買い物に出かけるから着てみた。どうだ?欲情したか?」「しないよ。しないけど……ちょっとドキッとはしたな。中身が清彦だと判っているのに…… なんだ、この敗北感は……」俊秋が俺を見てイヤな顔をする。「ははは、何をおっしゃいますやら男子と生まれて、美女にときめくのは正常な反応ですよ?」俺はさらに足を上げてウィンクをして両手で太股をなで上げてみせる。「中身がお前だって事が一番の萎えポイントだがな。で、そんな格好をしているお前に質問だが、本当に女性化願望は」「ないよ。お前、最近よくそれを俺に聞くよな?なに?俺に惚れた?」
「惚れねぇよ!ただ有ってくれたら俺の肩の荷が下りるんだが……」「なんだよ、それ? ……まぁいい。それよりカードをよこせ」「なんでそこで俺のクレジットカードが出てくるんだ?」「だって、俺のお給金は衣食住の保証だぞ?これから青葉さんと買い物に行くんだ。だからお金」「食い物ならウチにあるだろ?てか昼食が終わったばかりだぞ?」「食い物じゃねぇよ!衣だ、衣!服!てか下着を買いに行くんだ!さらに厳密に言えばブラ!」「えっと……、話の流れがよくわからんので、最初っから説明してくれるか?」俊秋が頭に手をやって悩むような態度で俺に問いかける。「朝、聞いただろ?青葉さん達と胸の触りっこした事?」「あぁ、お前の悪行は聞かせてもらった」「従業員同士の親睦だって。その時、青葉さんと若葉さんに言われたんだよ。俺の胸が半月前より大きくなってるって。実際に後で自分で計ってみたら本当にワンサイズ大きくなってた」「そ、そうなのか?」「あぁ。なぁ?このスーツの胸って成長するのか?それに手触りも最初の頃より敏感になってるようだし?」胸を見下ろして人差し指でトップをツンツンと突いてみる。「えっと……成長するようだな。親父に聞いたところに寄るとそれは被験者が生まれた時から女性だった場合をシミュレートして個人に合わせて微調整されるらしい……」「へぇ?多機能なスーツだな?って、事は俺は女性に生まれてたら巨乳だったのかぁ?」そう言いながらブラウスを盛り上げている胸を軽く押し揉んでみる。「で、胸がどうしたって!」俊秋が声を荒げて俺に続きを促す。あれ?俊秋のヤツ、顔が赤い?あれれ?マジで俺、女として意識された?
「あはは……、それでブラが少しきつくなってるようなんだよ。どうせ後半月ほどの事だから、それでもいいかと思ってたんだけど、さっき、青葉さんが私用で服の買い物に出かけるから一緒にどう?って誘われたんだ。清香ちゃんもブラの新しいのいるでしょ?って。だからカードをよこせ」「……大体の事情はわかった。それにしても……、なんでミニスカートなんだ?ジーパンとか前に買わなかったのか?」「買ったよ?でも、せっかくスカートにも慣れてメイド服で抵抗無く買い物に出られるようになったんだから、次はミニに挑戦かな?って」そう言って裾をちょっと摘んでみる。「ジーパンは男に戻ってもいつでも着られるけど、スカートは無理だろ?せっかく女のフリ出来てるウチに経験できる事は何でも経験しておかないと損だろ?」「あ〜、女のフリね……、本当にお前は何でも見境なしに前向きだよな?ひょっとして、お前って何かの事故で女になってしまっても平気で生きていけるんじゃないのか?」「あはは、そんなに褒めるなよ?」「褒めてねぇって…… カードだな?わかった、くれぐれも無駄遣いしてくれるなよ?一応、俺の私的な金なんだからな?」そう言って、俊秋が机の引き出しから銀行のカードを取り出し俺に渡す。「あれ?クレジットじゃねぇの?」「俺のクレジットカードをお前が使えるわけ無いだろ?銀行で必要なだけ下ろして使え。ただし、領収書は貰ってこいよ?チェックするからな?」「あん、ご主人様のしっかり者ぉ!」俺は腰を曲げて手を胸の前で拳にしてお尻を振ってみせる。「だから、お前がやってると思うとキショいんだよ!ばか!さっさと行ってこい!」「あぁん、ご主人様のいじわるぅ」そう言って笑いながら俊秋の部屋を走り出る。
「ったく。見た目と中身が一致してれば文句はないのに……」俊秋のぼやきを背に出かけていき、その日は夕方まで俺は青葉さんと買い物を楽しんだ。 ・「………で?清香君?領収書にあるこの"婦人水着¥19800"ってのはなんだね?」机の向こうで俺が持って帰ってきた領収書に目を通しながら俊秋が尋ねる。「えっと……青葉さんがこの競泳用の水着の方が足が長く見えて清香ちゃんによく似合うよね?って……」「君は来年の夏までその格好でここにいる気かね?」「いや、次の休みに若葉さんがよく行くスポーツクラブの温水プールに皆で行きましょうよって青葉さんに誘われちゃった。てへっ?」俺は舌を出してなるべく可愛く俊秋に媚びを売る。「お・ま・え・は・なぁ?」俊秋の声が必死に理性を保とうと一言一言をゆっくりと口にする。……が「着実に自分の野望を実現していってるよなぁ!!!」机を手の平でバン!と叩いて、俺を睨みつける俊秋。あ?理性が切れた?「イヤ、別に俺から望んだわけじゃないから。ほら?俺だって男だから女性用のハイレグ水着なんて着たくはないよ?でも、青葉さんがどうしてもって薦めるから仕方が無いじゃないか?断れば角が立つだろ?」「本音は?」「プールで男の視線独り占め?」机に突っ伏す俊秋。「なぁ?マジでお前の親友を辞めさせてくれないか?なんだ、お前のそのポジティブさは?」「前から言ってるだろ?全くの別人状態って楽しいぞ?俺だとバレないでこんなに可愛い女の子になれるんだから浮かれもするって」「イヤ、普通の人間はそこまで楽しまないと思うぞ?それをお前は本気で女を楽しんでるよな?」「そうかぁ?慣れると楽しいぞぉ?おかげでトイレに行って紙を使うのもブラを装着するのにもすっかり慣れちゃったけどな」
「パンストだって伝線させずに履けるようになったし」「え?お前、パンストなんて履いてるのか?」「履いてるぞ?見せてやろうか?ほら?」俺は足をソファの上に上げて見せて膝の部分を摘んでみるがストッキングは思うように摘めない。「あれ?ぴっちりしててストッキングだけ摘めないや?いいか。ほら?」俺はメイド服のスカートをたくし上げて、純白のショーツの上を覆う肌色のパンストを俊秋の前に晒す。「ば、ばかやろ!そんなもの見せるんじゃねぇ!」俊秋が怒鳴る。「なんだよ?聞くから見せてやったのに?普通は喜ぶ所だろ?」俺はスカートを下ろしてパンパンと払って口を尖らせる。「だから、中身がお前じゃなかったらそれなりの反応をしてやるよ。……しかし、お前。何でも受け入れるんだな?」「ん?ストッキングの事か?この前、寒そうに庭掃除をしてたら双葉さんが分けてくれたんだ。清香ちゃん、生足じゃ寒いでしょ?パンストは持ってないの?って。ホント、ここのメイドさん達って優しいよな。ってか、このスーツは防寒機能とか保温機能ってないのか?」そう言って俺は腕を上げて皮を引っ張ってみる。「そんな多機能じゃねぇよ」「ただ頑丈なだけかよ?女性に化けられるのと引き替えに時間制限付きで脱げなくなる、しかも脱ぐためのどんな手段も施しようがない……、考えてみれば、それってヘタすると拘束具じゃないか?まるで着たら最後このスーツの中から逃げられないようにしてあるようで?」ガタッ!椅子をならして俊秋が立ち上がる。「あ、あは、あはは……な、何を言ってるんだ。そんなバカなワケ無いだろ?そんな自由に動き回れる拘束具なんてあるわけ無いだろ?拘束の意味が無いじゃないか?あはははは」俊秋が慌てたようにまくし立てる。
「……えっと?あれ? ……お前、ひょっとして俺に何か隠してる?」俺が首をかしげて、狼狽する俊秋に尋ねる。「あはははは、俺がお前に隠し事なんかするわけ無いだろ?」俊秋の目が泳いでいる。「…………」「…………」俊秋は押し黙ったままだ。俺は俊秋の前の机の上に乗ると足を組んで、黙ったままの俊秋の頭を右手で抱え込み、残った左手で俊秋の顎をなでさすり甘い声を出す。「坊やぁ〜?お姉さんにしょ〜じきに話してご覧なさぁい?お姉さん怒らないから。ね?」「だから、なんにも隠してねぇって……」俊秋がぽつりと口を開く。「ウソだね。俺がこんなマネをしてるのにお前がいつものように怒らないこと自体、不自然だからな」そう言って抱え込んでいた俊秋の頭を解放する。「それは……」「それは俺ではどうにもならないような問題か?」俺は腰に手を当てて俊秋を見つめる。「ん……、まぁ、そうだ……」「お前だったら何とかなる事か?」「判らない……」俊秋が申し訳なさそうな目で俺を見る。「ん〜〜?だったら、いいや。何とかなるかどうかはっきりしたら言ってくれ」そう言って机から降りる。「え?」俊秋がぽかんとした顔をする。俺は伸びをして答える。「聞いたところで俺にはどうにもならない事なんだろう?でも、お前ならまだ未知数なわけだ?だったら俺は自分でどうにもならない事で気を磨り減らすような事はしたくない。だから今は聞かなくていい。お前の方で打つ手が無くなったらその事情を聞かせてくれ。それを聞いたら落ち着いてゆっくりとパニックに陥るから」「落ち着いてパニックに、って。 ……矛盾してるぞ、それ。いいのか?それで?」「いいよ。俺はお前を信用してるから。それまではいままで通りすごさせてもらう。OK?」「まぁ……お前がそれでいいのなら……」
「いいよ。それに俺は自分でどうにもならない事で悩むのは性に合わないからな。で、もう行っていいか?夕飯の手伝いをしに行かなくっちゃならないんだ。今日の当番は青葉さんだから買い物の話の続きを楽しまないといけないからな」気が抜けたような顔をする俊秋にそう言って笑ってみせる。「わかったよ。まぁ、俺にどうにもならなくなったら話すよ」部屋を出て行く俺の背に俊秋がそう声を掛ける。 ・ ・「ふふふ、これで水着の件はウヤムヤになったな。さて、青葉さんや若葉さん達と食事の支度をしながら楽しくスポーツクラブの打ち合わせ、打ち合わせ」俺はクスクス笑いながら廊下を歩く。それにしても……、俊秋は何を隠してるんだろう?たぶん、俺の着ているこのスーツに関する事なんだろうな?拘束されてるって言ったら慌てだしたんだよな?これが脱げない事が問題なのか?……ひょっとして、一ヶ月じゃ脱げないとか?2,3日遅れるくらいなら問題はない……1週間?ちょっと辛いが何とかなる……って事は月単位?一ヶ月とか二ヶ月?三ヶ月とか言われるとやばいよな?卒業の問題もあるし?卒論って郵送でも受け付けてもらえるんだろうか?最悪、このまま卒業までここにやっかいになる可能性と対策も練っておいたほうがいいのかな?俺はそんな事を考えながらキッチンへを向かった。 * * *「しかし、あいつはどこまでお気楽な性格なんだろうな。いくらあいつの自業自得とはいえ、ウチの物であぁなると思うと夢見が悪いし……てか、俺も後は親父が帰ってくるまで殆ど手詰まりなんだよな〜。あとはウチの中の資料を調べるくらいなんだけど…… なんで、これに関しては記述がほとんど無いんだよ?」そう呟いて、腕を伸ばし机に突っ伏す。
……まさか、あいつ。全てを話したらあのノリで「責任、取ってね♪」なんて言わね〜よなぁ?なんだかその可能性もありそうで怖いな?「元の身体に戻せ」って言われる事ばかり考えてたけど、あいつの場合、常識の範囲外のリアクションも充分に考えられるか……?俺は清彦が出て行ったドアを机に突っ伏したまま眺めて呟く。 * * *あれから数日が過ぎた。俊秋はそれからはあの事にふれようとしなかったし、俺も全く気にしなかった。バタンッ夜、俺が部屋から出てくると工房の方から歩いてきた俊秋と出くわした。「あれ?俊秋?こんな夜中に何やってんだ?とっくに部屋に戻って寝てると思ったのにぃ?だめだぞぉ?夜遅くまで起きてる子の所にはお化けが出るんだぞぉ?」「……俺は幼児か?頼まれた物は完成間近だったんで一気に作り上げていて、今まで掛かったんだよ。それよりお前……今、どこから出てきた?」「どこからって……双葉さんのお部屋?えへっ?」ほっぺを指先で突いて俊秋に微笑んでみせる。「えへっじゃねぇよ!えへっじゃ!夜中に女性の部屋で何をやってたんだ!って、お前、酒を飲んでるな?」俊秋が俺の顔に鼻を近づける。「えへへ、双葉さんのお部屋でパジャマパーティです?女の子同士の親睦ですよぉ?若葉さんと青葉さんも居ますよぉ?ご主人様も一緒にどうですかぁ。今なら男はご主人様だけ!ハーレムっすよ、ハーレム?」俊秋ががくりと肩を落とす。「イヤ、なんだかもう……お前にはいちいちつっ込まないけどな。とりあえず、俺の希望としては健全な同性交友に励んでくれ」「あん♪ご主人様ったら、この半月ちょっとですっかりと性格がお丸くなられて」「丸くなったって言わないよ。これは諦めたって言うんだ」
「いやいや、状況を認めるのはいい事ですよ、ご主人さまっ!」俺は笑って俊秋の肩を叩く。肩を叩かれながら俊秋がつぶやく。「諦めて状況を認めるか……、それも一考の価値はあるかもしれないな。無理に男に戻そうとせずに女として受け入れさせる方が楽かもしれないよな……」「ん?なんだって?」俺は俊秋のつぶやきが小さかったのでよく聞き取れずに聞き返す。「いや、なんでもない。とにかく、ハメを外しすぎるなよ」俊秋が俺にそう注意していると双葉さんの部屋から若葉さんが出てくる。「あれ?清香さん、まだそこにいたんですか?って、あれ?俊秋さん?どうしたんですか、こんな夜中にこんな所で?」若葉さんが俺たちに声を掛ける。「ご主人様が夜の独り寝が寂しいと私を誘いに来たんですよ」俺は笑って若葉さんに告げる。「まぁ!やっぱりお二人はそう言う関係……」頬に手を当てて若葉さんが驚く。「ウソですよ!この酔っぱらいの言う事にまともに耳を貸さないで下さい!俺は今まで工房で作業してただけですから!これから寝に戻るところでこのバカと鉢合わせしただけですから!」「あん♪ご主人様ったらテレちゃってぇ、かぁわいい!」俺は俊秋の肩にそう言ってしなだれかかる。「若葉さん?このバカにどれだけアルコールを注入したんですか?」「えっと……、ワインを一本につき一杯づつ試飲したから4杯ですね?清香さんってお酒はあまり強くないみたいみたいですね」そう言って若葉さんは俺を俊秋から引きはがす。「あはは、おかしいな?俺ってそんなに弱くないと思ったんだけどな。ははは、体質でも変わった?」「はいはい、変わった変わった。若葉さん、このバカをよろしく。酒に弱いようですから注意してやって下さい。寄って狼藉に及ぶようだったら、縛り上げてベッドの上に転がしておいていいですから」
俊秋が薄情な事を言う。「うふぅん♪ご主人様ったら今晩は清香にそんなプレィを望まれるんですかぁ?」「今晩どころか、一晩たりともお前と寝た事はないし、今後も永久にないよ!」俊秋が俺のお尻を軽く蹴る。「あ〜ん、若葉さん、ご主人様が忠実なメイドに暴力を振るうよぉ」そう言って今度は若葉さんに抱きつく。若葉さんは俺を抱き留めて笑う。「ふふふ、本当に仲がいいですね」「違いますって。とりあえず、若葉さん。迂闊にそいつに抱きつかれないようにして下さい。見た目に騙されないように」「若葉さぁん、ご主人様が女同士の友情に嫉妬してるよう」そう言いながら俺は若葉さんの胸に顔を埋めてぐりぐり……「ほら、若葉さん、ご主人様に私たちの仲の良さを見せつけてやりましょう。ぐりぐりぐり……」「やん、こら!清香ちゃん、悪戯はダメですよ。ほら、お手洗いは済ませてきたんですか?」「あ、そう言えばトイレに行くために出てきたんだっけ?忘れてた」俺は若葉さんから離れて、股間を押さえながらトイレに向かう。背後で俊秋と若葉さんの声が聞こえる。「若葉さん、本当にあいつに気を許したりしないでくださいね」「あれ?本当に俊秋さん、清香さんに嫉妬してるんですか?」「違いますよ、実はあいつ……同性愛者のようなんです」俊秋のヤツ、本当に事を言えないもんだから苦し紛れにとんでもない事を若葉さんに吹きこんでるな。そんな事を吹き込まれたら。気軽に抱きつけなくなるし……あれ?ある意味合ってるのか?俺ってユリ?「若葉さぁん、ウソですよぉ!ご主人様の言う事は信用しないで下さいよ〜!」「黙れ、酔っぱらい!さっさとトイレに行って来い!」「はいはい、判りましたから早く行ってきて下さい。大丈夫、清香さんのことは信用してますから」若葉さんは俺たちを見て微笑む。
#>「責任、取ってね♪」#確かにこの人なら言いそうだwどんな状況もあるがままに受け入れてしまいそうな感じで。#ただ、お父さんが#>「私が全能力をつぎ込んで絶対に脱げないようにつくってあるしな!」#って言ってたのと#>「今のお前にメスは通らない」#ってのはやっぱり危険な感じが…#どんな手段でも絶対に脱がせられないなら怪我すると危険すぎるでしょうw#無理やり切り裂いて脱がすのは可能なのかもしれませんが、その時はその時で…w
・「でも俊秋さん、本当に清香さんの事は気に入ってるでしょ?」俺がトイレに行ったあと、若葉さんが俊秋に話しかける。「はぁ?気に入ってませんよ!試用期間だから仕方なく使ってやってるんですから」「そうですか?でも、俊秋さんなら試用期間中でも気に入らなかったら自分のそばには近づけないでしょ?清香さんって遠慮のない性格で俊秋さんよく叱ってますけど、そばで見てると楽しそうですよ?」「そんな事ないですよ。事情があるから仕方なくクビにしてないだけです。それがなければとっくにクビです」「いやぁ、多分、俊秋さんは事情が無くっても清香さんをクビにはしないと思いますよ」「は?」「いや、女の感ですけどね。清香さんが来てからの俊秋さんって本当に活き活きしてますから。こういうのって本人は意外とわからないものですよ」ふふふ、と笑って俊秋を見送る事情を知らない若葉さん。 ・「あぁ、まだクラクラする。ご主人様、ここで寝てていいですか?」翌朝、俺は俊秋の部屋のソファに身体を任せて頭を押さえていた。「頭に乗ってるからだ、酔っぱらい」俊秋の言葉には容赦がない。「ワインくらいでこんなに酔っぱらう事なんか無いと思ってたんだけどな?コンパじゃ焼酎をストレートでも平気だった筈なのに……、なぁ?これって、まさかこのスーツの副作用か何かじゃないだろうな?」「えっ?」半分冗談で言った俺の言葉に俊秋の顔が一瞬引きつる。えっと?あれ?ひょっとしてコレって俊秋が俺に内緒にしてる部分に関わるところ?「あはは、いや、まぁ、いいけどな。あれ?そう言えばそれは何だ?」俺は話題を変えようと俊秋の机の上に鎮座している卵状の物を指さす。と、ゆうか玉子そのものにしか見えないんだけど。
それにしても、何で俺の方が俊秋に気を使うんだろ?「ん、これか?春風家からの依頼品だ」そう言って机の上にある品のひとつを指で摘んで持ち上げる。「この前から作ってたのはそれか?なんだ、それ?」「何に見える?」俊秋が笑ってソレの一つを俺の方に向ける。「玉子?まるでむき身のゆで卵のように見えるけど……」俺は俊秋の指に挟まれた物を目を懲らして見つめる。「…………、食べるか?」少し何かを考えた俊秋が悪戯っぽく笑ってソレを俺の方に投げる。「お前、食べ物を投げるなよ?」俺はソレをキャッチして改めて見つめる。見た目、手触り、弾力……、どう見ても茹でたての玉子だ……でも、なんで俊秋が茹で玉子なんかを作るんだ?てか、あの工房で作ってたんだからどう考えても食材じゃないよな?と思いつつも、俺は好奇心から玉子に軽く歯を立てる。「え?あれ?なんだ、これ?柔らかそうなのに歯形一つ付かないぞ?」「あはははは、だろ?それはお前が着てるそのスーツの繊維に使われてるのと同種の衝撃防護材が使われている。さすがにその厚さになると切ろうが押しつぶそうが傷一つ付く事はない」面白そうに笑って話す俊秋。「はぁ?おかしな物を作ったんだな?こんな物が何の役に立つんだ?」「ぷ、ふふふ、いや、聞いたら笑うようなアイテムなんだ、それ」俊秋が何かを思い出したかのように思い出し笑いをする。「はぁ?なんなんだ?少なくとも食べ物じゃないよな?」「ある意味、食べ物だよ?女性専用のな?ぷっ、くくく」「食べ物って、こんな物消化に悪いぞ?女性専用って美容食か?」俺は玉子を持ち上げて蛍光灯に透かしてみる。「いや食う場所が違う。下の口だ」「下の口って、下に口なんか…… え?女性専用で下の口? ……これってまさか?」
「俗に言うローターだよ?知ってるだろ?アダルトビデオなんかで出てくるアレだ。それはウチの技術の粋を集めた特注品のローターだよ。あはははは!」俊秋がたまらないといった風に机を叩いて笑う。「うわっ、どこのバカだ?こんな物を作らせるのは?」俺は手に持った玉子を俊秋に投げ返す。「あ〜ははは、驚いた?いや、お前が驚くのを見させてもらうとは思わなかったな。あ〜、スッとした」目尻の涙を拭いて、俊秋が玉子をもてあそぶ。「ウチの取引先の奥さんが変わった人でな?ツテで俺の所にこういう物が作れないかって話が来たんだ」「よく旦那がそんな物を作るのを許したな?」「旦那さんがそのツテだからな」「はぁ?旦那さんがそれを許したのか?変わった夫婦だな……」「ははは、まぁな。で、完成品がコレ。お値段は一つ120万、お前にも売ってやろうか?」「いらねぇよ!そんなもの!俺には使えねぇよ!何だよ、その巫山戯た値段は?」「趣味で引き受けたからほぼ原価だぞ?俺の取り分に1割高くしてあるけどな」そう言って、玉子を元にあった位置に戻す。「朝っぱらから、つまんない物見せやがって。おかげで頭のクラクラを忘れちまったよ」俺は頭を振って俊秋に文句を言う。「あはは、よかったじゃないか?」そう言って椅子にどっかりと座る俊秋。「ところで……、何で完成したんならそこにいつまでも飾ってるんだ?さっさと箱に入れてリボンでも掛けてお客さんの所に持って行けよ?」「あ?あぁ、そうしたい所なんだけどな。制作者としてはできれば動作の具合を確認したいところなんだ」そう言って玉子を眺める俊秋。「すれば?」「すればって、俺は男だから動作確認のしようがないだろ?使い心地なんか確かめようがないからな」
「だったら誰か人を雇って試してもらうとか?」「……お前だったらできるのか?どこかでローターの動作確認者募集中って人を募る事が?って、言うかウチの技術が外部に流出する危険は避けたい。こんなバカげた形をしててもな?」「だったら双葉さん達に頼むとか?」「バカか!?お前!そんな事を頼んだら辞表を出された上にセクハラで訴えられるだろ!」「アハハハ!確かに」俺は俊秋の方を向いて明るく笑う。「あれ?」俊秋が俺の方を見て首をかしげる。「どうしたんだ?」「女性で秘密が守られる位置にいて"俺直属の専属メイド"、そんな女性がどこかにいたよな?」「ちょっと待て!最後にやたらピンポイントな立ち位置が指定されなかったか?」「あはは、気のせいだよ。俺の専属メイドの清香くん」椅子から立ち上がって俺の所まで来た俊秋が明るく俺の肩に手をおく。「あはは、そうですか?気のせいですか?よかった!それじゃ私は双葉さん達のお仕事の手伝いに行きますね?失礼します」そう言って出て行こうとする俺の肩をグッと俊秋の手が固定する。「ははは、何を言ってるのかね、清香くん?君の雇用条件は最初っから俺の専属だ。他の仕事をする必要はないんだよ?忘れちゃったのかなぁ?」俊秋が俺を強引に振り向かせてにっこりと微笑む。ピ、ピンチ?……あれ?待てよ?俺って本物の女じゃないよな?確か初日にアソコを確認したとき……あ、あはは、そうだよ。俺は偽物の女なんだから、男の股間に膣があるわけないじゃないか?何を焦ってるんだ、俺?「あ、そうだった!あははは。残念だったな、俊秋。確かに俺は見かけは完璧な女性だが本物の女じゃない。惜しいがそれを使用する為の器官が俺にはない。初日にそれは確かめてある」
「いや、ホント残念!少しでもご主人様のお役に立って、日頃からお世話になっているご恩をお返ししたかったのに……、本当に残念!」俺は自分の身体について思い出した事を俊秋に告げて笑いかける。「………… あれから3週間くらい経ってるよな?」「え?あ、あぁ?」「ふ〜ん?お前の股間には女性器はないんだ?」「あぁ……、あるわけないよ?男だもん、俺」「もし、有ったらどうする?」「え?だから無いって」「だから有ったらどうするって聞いてるんだ?」なに言ってるんだ、こいつ?有るわけ無いって言ってるのに?「有ったら、お前の好きにさせてやるよ」俺は胸を反らして俊秋にそう宣言する。「今の言葉、忘れるなよ?」俊秋がにやりと笑う。えっ?「ちょっと待て?おしりの事を言ってるんじゃないぞ?女性の性器の事だぞ?」「当たり前だ、男の尻に入れて何が判る?さて、それじゃ確かめる為にそのスカートを捲ってお尻を上げて股間を俺の方に向けてもらおうか?」俊秋が意地悪そうな笑いを俺に向ける。「えっと……、ご主人様のえっちぃ」俺は誤魔化し笑いと一緒に後ずさる。「笑っても誤魔化されネェよ?俺は研究のためなら何でもやる性格なのは理解してるよな?」そうだよね、普段は温厚そうだから忘れるけど、こいつも所詮は織田家の人間、マッドなサイエンティストな性格の血が流れてるんだよな。「いや、本当にないから?女性器」「だから、それを俺が確かめたらそれで終わりだろ?」「ご主人様?玉子に何を塗っておられるんですか?」俊秋はいつの間にか、何かのチューブを取り出し、玉子に塗っている。「こんな事も有ろうかと用意しておいたローションだよ。いきなり入れられるのはツライだろ?きぃ・よぉ・かぁ?」俊秋が笑いながら俺にじりじりと迫り、ベッド際に追いつめる。
#ここでまさかのゆでたまwww#腹筋が引きつるとは思わなかった#謝罪と賠償として速やかに続きを(ry
# さて、今年最後の更新です。 ちょっと壊れた感じのレス10個。# まぁ、人様のSSネタやら自作SSネタやら交差してますが、知らなく# ても大丈夫な筈ですが、読むに耐えない場合はスルーでよろしく# お願いいたします。いや、作者バレバレなようなので開き直りまし# た。ww# それでは、よいお年を……(^^;
「ご主人様ったら、笑顔がこわぁい。あは、あは、あはは。何で入れる気満々なんですか?挿入口はないって言ってるのにぃ、てか、こんな事もあろうかと、って何?」「はい、男らしく覚悟は決めようね。清香?」そう言って、俺をベッドにうつぶせに押し倒す。「や!いや!清香、女の子だもん、男らしくなんて無いもん!」「女の子だったらなおさら好都合!」スカートまくり上げ、俺の尻を露出させるとさらにパンストをショーツごと引き下ろし……俺の股間の中心部を"何か"がなで回す。「だから、無駄だって!ほら!もういいだろ?」「あぁ、もういいかな?」俊秋の声に不穏なモノが含まれている。「ひゃうんっ!え?今の何?」何かが股間に押しつけられる感覚と共に、胎内に何かが詰まったような衝撃が走る。「へぇ?意外と簡単に入るもんなんだな?ローションのせいかな?」俊秋が押さえつけていた俺の身体から離れる。「え?ちょっと?何をしたんだ、今?」俺は手を股間に当てる。「だから、ローターのモニターをしてくれる約束だろ?で、どうだ、挿れ心地は?」俊秋がにこにこと俺を見る。股間の奥に弾力のあるモノが…… えっと、何で身体の中に玉子が入ってるんだ?「ひんっ!」玉子を指先でつついてみると身体の中に電気が走る。「なるほど、入れ心地に不満はないと……」「不満はないと、じゃないよ!何でコレが俺の胎内に入ってるんだよ!」「え?それは清香ちゃんが女の子だからだろ?この前、言っただろ?そのスーツは被験者が女だった場合をシミュレートして微調整するって?ほら、好きに動かしていいから、使い心地を試してみてくれよ?」「えぇ?あれって胸だけの話じゃなかったのか?このスーツは下半身も変えるのか?って、だいたいコレ、どうやって出すんだ?」
俺は股間を両手で押さえて俊秋に訴える。「せっかく、入れたばかりなのにもう出すのか?もう少しモニターしてくれよ」「はいはい、素直に入りました。気持ちよかったです、はい、モニター終了。ほら、さっさと出してくれよ?」そう言って俺は俊秋に尻を向ける。「なんだよ、乙女の恥じらいってモノがないのか、お前は?わかった、わかった、俺もそれ以上は無理強いをしないから出していいよ。とりあえずはチャンとスムーズに入れられる事だけ確認できただけでヨシとしてやる」尻を出す俺にそう告げる俊秋。「だったら早く出せって?」「はぁ?だから出していいって?」二人の間で相互理解が成立していない?「えっと……俺が自力で出せないだろ?これ?」「はぁ?女の子ってどこかに力を入れればポンッと出せるんじゃないのか?」「…………」「…………」二人の間に沈黙が流れる。「いやいやいや、急造女の俺にそんなマネができるわけ無いだろ?それどころか、さっきまで俺自身に膣がある事すら知らなかったんだぞ?」「いや、それでも感覚で判るだろ?どこに力を入れればどこが締まって絞り出されるとか?」「わかるか、ばか!どうすんだよ!さっさと出してくれよ!自分の胎内に異物が入ってるなんて気持ちが悪いだろ?」「バカって何だよ?男の俺に女の感覚が判るわけ無いだろ!自分の身体なんだからお前こそ、力のコントロールで押し出せないのかよ?てか指を突っ込んでつまみ出せないか?」「指をつっこんでってな?この玉子だけで中がキツキツだよ!」そう言いながら、ベッドに座り直して足を開き、股間のそこに指を当ててツプッと……「くぅ、ひゃん!ダメだ、入れる隙間なんてないぞ?」「女のそこはある程度伸びるらしいぞ?最低限、赤ちゃんがそこから出てくるんだからな?」
「いや、俺はニセ女だから本物の女と一緒ってワケじゃ……ひぃっ!」指が滑り、玉子が奥に押される。「どうした?」「お、奥に入った!奥に!余計に中に……」「バカだなぁ?グッと股間の奥を押さえられないのか?奥に行かないように?」「だから、感覚がわかんねぇんだって!」そう言いながら、下半身を睨んで神経を股間に集中して力を入れる。「どうだ?」「ん?何となく……これで……よっ、くそっ!あれ?」カチッ、ヴゥゥン……「ひぃぃぃぃ!な、なんだ?こ、これっ?」「え?あっ、ひょっとしてスイッチを入れたのか?」「ちょっと待て、ひぃ、スイッチって何だ?聞いてねぇぞ?はぁん」俺は足を閉じて股間を両手で押さえつける。「聞いてねぇって……ローターだって言っただろ?当然、バイブ機能は必須だろ?」「え、偉そうに胸を張るんじゃねぇ!止めろ!下腹が変な感じ、ひぃ」「お?結構、刺激されるんだ?どうだ、俺の作品は?凄いだろう?外からの衝撃が全く中に伝わらないのは親父の発明だが、それでいて中からの衝撃はロス無く外に伝えるんだ」「判った、お前があの親父さんの息子だって事はよく判ったから止めてくれって!」股間を押さえてベッドの上で身もだえる。「なんか俺、凄く失礼な事を言われてる気がするぞ?」「だって、普段のお前ってあの親父さんの暴走を唯一止める事のできる良識派のお袋さん似って感じだけど、こうやって発明品に関わると我を忘れてるじゃねぇか?はうっ、間違いなくお前らは親子だよ!」そう言いながら、俺は胎内で暴れる玉子の振動に耐えながら「く」の字になって股間を押さえ続ける。「凄く失礼だよ、お前?俺はあんなにひどくはない!とりあえず、その玉子の頭かお尻部分のセンサーがスイッチになってる。切るには強めにそこを押せばいい−−」
それを聞いた俺は指を股間に突っ込んで玉子を押す。「んだけど、小中大と3段階の強さと連続、断続モードの計6段階を通ってから停止するから……」カチッ、ヴッヴッヴッ……、ローターの振動が変わる。「先に言えーっ!ばかっ!ひぃぃ、さっきより事態がぁ!」「わ、悪い、ちょっと待て!やっぱりこういう事はクライアントが対処法を知ってるんじゃないかと思うから……」俊秋が懐から携帯を取りだし、どこかを呼び出す。俺は取り出せないのなら、せめてスイッチを切ろうとするが振動が最初の頃より微妙で身体に……主に股間に力を入れる事ができない。「と、俊秋ぃ、ダメだ、スイッチが押せないぞ?はぁ、お、押そうとすると玉子が奥にいっちまうし、動かないように押さえようと下腹に力を入れると振動が身体に直接、はぅっ!」「わかった、わかった、ちょっと待ってろ。あ、春風さん?奥様は?…… あ?奥様ですか?織田です。依頼された品ですけど…… はい、完成はしたんですけど…… はい、モニターに試してもらったら出せなくなったんですけど…… 欠陥じゃない?それでいいんですか?でも出せませんよ? はぁ?歯磨きを絞り出すように?」「おい、胎内を歯磨きを絞り出すような感じで動かすんだってよ?」受話部分を押さえて俊秋が俺に報告する。「だから、その感覚が判らないんだって!てか今、胎内を絞めようとすると振動が!ひゃうん!」「え?できたんなら納品を早く?いいんですか?色々と問題があるようなんですが? ……バイブ機能も外部からの切断方法がありませんから、直接、玉子を押して切断するしかないという欠点も見つかってるんですけど?」「やっぱり、コレって欠点なのかよ、ひぃん」かちっ、ヴゥッゥゥ!「ひゃぁあ!し、振動がぁ!余計にきつくぅ!」
「それくらいは問題なく押せる? ……さらに中の振動がきついんじゃないかとモニター協力者が言ってるんですが? ……はぁ?望むところ?いいんですか? ……はい、言われた強さになるようにしてありますけど? ……それで問題ない? ……あ、はい、わかりました、毎度、ありがとうございます」俊秋が携帯のスイッチを切る。「えっと、清彦?今、注文主に聞いたんだけどな?」「な、なんだよ?対処法が見つかったのか?」「ようは慣れの問題だと言う事だ。何回かやってるウチに慣れるらしいぞ?とりあえず、落ち着いて慣れる。な?」「な?じゃねぇよ!落ち着けるか!何とかしろって!」俺はベッドの上を転がり回る。「えっと、とりあえず玉子は今、中の連続モードだから……、あと4回押せばバイブは止まるから?」「ば、ばかぁ、中でこんなに感じるなら大なんて耐えられるかぁ!スイッチを押す余裕なんかあるかぁ!はあぁん、で、電池は?電池寿命はどれくらいで切れる?」「えっと満タンに充電したばかりだから8時間?えへっ?」舌を出して小首をかしげる俊秋。「お、男が可愛い子ぶるんじゃねぇ!8時間だと?ひ、ひぃ」股間を押さえて我知らず首を左右に振る。気づけば股間を押さえていた手がヌルヌルしている。え?これって俺の股間から出てる?まさか、愛液ってヤツ?「えっと、ほら?とりあえずさ?この部屋にいていいから玉子のスイッチを切るなり、何とか取り出すなりしろよ?な?」「ひ、ひぃ、ち、ちょっと待て!お前、何やってるんだ?」俊秋に目を向けると、鞄の中に作った残りの玉子を箱に入れて締まっている。「いや、今、聞いてただろ?クライアントが、できたのならすぐに持ってきて欲しいって言ってるんだ。悪い、清彦。そんなわけでちょっと届けて説明してくる」
「待てぃ!それって逃げるんじゃないのか?」「あ、あはは、親友を見捨てて逃げるわけないじゃないか?人聞きが悪いなぁ?あ、そうだ!その玉子な?取り出したらお前にやるよ?モニター料代わりだ?よかったな、現物支給とは言え、120万もの給料をもらえるメイドなんてそうはいないぞ?あはは、ラッキーだよ、お前。それじゃ、行ってくる。留守は頼んだぞ、清香。あ、それと向こうの奥さんがお礼にお昼はあっちでご馳走して下さるそうだからお昼はいいって双葉さんにはそう伝えておいてくれ?あそこの奥さんって、性格は変だけど料理は凄く美味しいんだ、あはは、楽しみだな。それじゃ清香、帰りは夕方になると思うが頑張ってくれ!健闘を祈る!では、さらばだ!」そう言って一気にまくし立てると片手を上げるて、唖然とする俺を置いて風のように俊秋が出て行く。……えっと?あれ? ……俊秋のヤツ、怖じ気づいて俺を放置して逃げやがったぁ!!ばっかやろー!!その間にも、胎内の玉子は暴れるのを止めない。一人、俊秋の部屋に取り残された俺。くそっ、マジでどうする?力を抜いてれば性感を刺激される事も少ないけど、迂闊に動くと身体に快感とも痛みとも判らない電気が走るような刺激に襲われるし?ヤツが帰ってくるまでここで大人しく寝てるか?でもなぁ?放っておいても何だか、だんだんと股間が切なくなってくるんだし……、コレって女性の性欲の現れなのか?油断してると自然と股間に手が伸びてるし……はふぅん!だ、だめぇ……スイッチを無理矢理にあと4回、勢いで押すか? できるのか……な?そっと股間に人差し指を向ける。そぉっと、そぉっと……指を膣の中に差し込み玉子の先端にふれる。 よし!勢いで股間に力を入れて玉子を固定すると一気に玉子を押す!
ひ、ひぃぃぃぃ!カチッ!カチッ!カ……ヴィィィィ!!ひえぇぇ!2,2回、今は大の連続モード、あと2回押せば振動は止まるが……ウィィィィン!チョンと指先で胎内の玉子を突いてみる。ハウッ!き、きつい、刺激が強すぎる。でも後2回、2回押しさえすればこのキケンな刺激から解放される。これ以上、このまま刺激を受け続けていると引き返せない世界にイッてしまいそうで怖い……股間に意識が行かないように心を落ちつかせる。すぅっ、と深呼吸をして先ほどと同じようにそぉっと、指先を玉子の先に近づけ……股間に力を入れて玉子を動かないように固定!ヴゥン!うひぃぃ!そこで刺激に耐えて、一気にスイッチを連打!カチッカチッカチッ!え?ヴィィィィン!しまったぁぁ!一回、余計!胎内で玉子ローターが静かに小モードで起動する。しくしく……俺は力無く、俊秋のベッドの上で身体を大の字にしてひっくり返る。まぁ、バイブが大モードから小モードに移行しただけ刺激はマシになったけど……こうやって身体の力を抜いて大の字になっていれば耐えていられるな……もう、こうやって8時間寝てようかなぁ〜 バイブを止める為にもう一度残り5段階の刺激を通過するのはツライし……すっかり、投げやりになって考える。コンコンッぼんやりと考えているとドアがノックされる。俺は慌ててベッドの布団の中に潜り込む。ひゃう!股間の刺激が……いや、まだ片足にショーツとストッキングを引っかけたままだしね?さすがにすぐに着用は無理! 「清香さん?大丈夫?俊秋さんに二日酔いで俊秋さんの部屋で休んでるって聞いたんですけど?」若葉さんがドアを開けて部屋を覗き込む。「え? …… えぇ、そうなんです!昨日のワインがちょっと残っちゃったみたいで体調が……」
布団の中から顔だけ出して若葉さんに答える。「あれ?俊秋さんのベッドで寝てるんですか?」「え?えぇ、俊秋様がここを使っていいって言ったので、お言葉に甘えさせてもらって…… ほら?流石にご主人様の布団はフカフカのいい物を使ってるから寝心地がいいんですよ?」「そうなんですか。どれどれ?」若葉さんが俺の側にかがみ込んで手の平を俺のおでこに当てる。「あ……」「本当だ。顔が赤いし、熱も少し有るみたいね?大丈夫?」いえ、別にそれは酒のせいじゃないんで…… 今現在も股間でヤンチャしてる暴れん坊のせいなんです。「えぇ、少しの間、ここで休ませていただければ治ると思いますので。そんなわけで今日は皆さんのお手伝いに廻る事ができないかも知れませんけど……」「いいのよ、いつも手伝ってもらって悪いとみんな思ってるんだから。体調がすぐれない時はゆっくり休んでね?」「はい、すいません」その後、二言三言話して若葉さんは出て行った。程なく、双葉さん、青葉さんも次々と俺のお見舞いに現れた。俺は若葉さんの時と同じように寝てれば治るからと、布団の中から微笑んで、ここでそっとしておいてくれるように頼んで仕事に帰ってもらった。その間もローターは俺の中で回りっぱなしで、顔は羞恥で赤くなりっぱなし状態だった。………やはり、悠長に寝てるとあの三人にも心配させてしまうよな?静かな室内、布団の中で手探りで股間に手を持っていく……うっ手探りでそぉっと指であそこを広げる。きっと他人が見たら今の俺ってすっげぇ無様な格好をしてるんだろうな。ひゃうん……ひっ、ひぃ、つ、つま、つまんだ!よし、そぉっと……つるっひゃい!?あ!あぁぁ、滑ったぁ!せっかく摘み出しかけたのにぃ!
「くそぉ、せっかく、つまめても表面がヌルヌルしてる上に細かく振動してるからむちゃくちゃ滑りやすいじゃねぇか!しかも滑って中に引っ込む時の刺激が…… やばいな……妙に気持ちよかったり…… ダメだ、もう一度気を取り直して再挑戦……」 ・ ・「ぷ、くすくす、コレで何回目だろ?俊秋のバカのせいで……」股間に指を差し込んで笑う。あぁ、ダメだ。妙にハイになってきちまったぞ?くすくす、女の身体って出口付近に敏感な性感帯があるんだな?もう少しってところで身体がハネちまう。 そぉっと、刺激しないように……ひゃうっ!つるっ!くーっ、あははは。だめだぁ。 俺、今日一日こうやって過ごすんだろうか?なんだか笑いが止まらない。 ・ ・くぅ〜、くふふふふ、気持ちいいぞ?なんだか癖になってきた?奥に押してみたり……ひゃは!いや、俺、本当に女でもやっていけるんじゃない?いや、もういいや。一休みしてこの感触を楽しんでみる……かな?ふふふ ・ ・えっと、刺激を強めてみたり…… ・ ・ハァハァ、さ、流石に疲れた……オナニーを猿に教えると衰弱するまで止めないって聞いたことあるけど俺って猿?はぁはぁ、俊秋が帰ってきた時に専用メイドがベッドで衰弱死してたなんてシャレになんないよな。考えてみれば、お昼も食べずにオナってるんだもんなぁ、俺。そろそろ、真剣に引き抜く努力をするか…… ・ ・く、くふぅ!惜しい!もう少しだったのに!でも、段々とコツが判ってきたぞ。もう少しやれば出せるな。 ・ ・
はぁはぁ、やったね!取り出したばかりの茹でタマを親指と人差し指で挟んで目の前に持ってくる。俺の中にこんなモノが挿いってたのか。カチッ、カチッ、ヴーン、ヴン、ヴン…… 押すと振動が段階を置いて順に変わっていく。……えっと、これ、くれるって言ったよな、俊秋のヤツ?……慣れてみるとコレって。うふふ……えっと、充電器が俊秋の机にあった筈…… 俺は玉子をメイド服のポッケに仕舞ってベッドから起きあがり、俊秋の机を見る。「あ?あった、あった。この玉子の充電器」俺は机を回り込んで、上にあった充電器を持ち上げる。持ち上げた拍子にコードの先が机の上のマウスに当たり、そのショックで暗かったモニターが息を吹き返す。「なんだ?慌てていたから俊秋のヤツ、電源を落とし忘れたのか?しかも何かやりかけたままじゃないか?『TS01仕様書』?」カチッ「品名……、女の子になれる…… これって……」俺の目はディスプレィに吸い付けられる。 ・ ・「なるほど……、これじゃ俊秋が俺に言えないワケだよな……」椅子に座って眺めていたディスプレィから目を離してため息をつく。て言うことは、この極薄のスーツの下の今の俺の身体は……俺がこのスーツを着て3週間…… あ〜、そりゃ胸も出てくりゃ膣もできあがるわなぁ? 多分、俊秋の言葉はある意味、真実だったんだろう。『被験者が女性だった場合をシミュレートして個人に合わせて微調整』か。問題は微調整されてるのがどこの事を指してたか、だよな?スーツか、身体か?まぁ、確かに俺の自業自得なんだけど…………でも、何でここには"効果"と"材質"は記述されてるのに、肝心の変身のシステムが殆ど説明されてないんだ?机に肘を突いてもう一度、モニターを見る。
#年明けまでスレが生きていることを祈りつつ。#続きを期待しております。よいお年を!
> 俊秋はいつの間にか、何かのチューブを取り出し、玉子に塗っている。# ムヒ
# 山芋なんかを塗ったりすると七転八倒の快感が……ってチューブで売って# ないよ、そんなもの。w# お正月から書き始めるつもりが、駐車場の雪の中から車を発掘する作業に# 二日間を費やしてしまいました。(^^;# とりあえず、今、書き進めた分だけ。w
どうやらこの中に入れられているのは俊秋のウチの発明品の一覧らしいな。一覧表を出して眺める。型番の頭がTSで始まるアイテムはこれしかない。他にも真っ当なモノからアヤしげなモノまで記載されてるが、全て頭の二つのアルファベットでグループ分けされてるが、TSで始まるアイテムはこれしか載ってないって事はこのアイテムだけが特殊って事か?「……いや、しかし。とんだ早合点だったな。"女の子になれるスーツ"か。てっきり、女の子に化けられるスーツだとばかり思っていたら着た者の身体を女の子に変えるスーツだったとは……」「つまり一ヶ月間、脱げないのは身体を女性に変えるのに一ヶ月掛かるって事で……」俺はスカートの裾を捲りあげて白い太股を摘んでみる。「この白い足は殆ど俺の今の身体と寸分変わらなくなってるって事か……」さらに手を上に動かしてつい、さっきまで玉子が入っていた大事な部分に手をあてがう。「これも……か?ひょっとして時期的に見ても、もうこの奥には子宮ができあがってたりするのか?」ちょっと、想像すると顔が赤くなってくる。ぶんぶんと顔を振って、嫌な想像を打ち消す。「あ、あははは。えっと、それで元に戻る手段は……」俺はスカートを元に戻し、再びパソコンに目を移す。 ・「あるわけないよな?元に戻せるんなら俊秋のヤツが内緒にしてるワケないもんな。戻せないからアセってるワケで……」腕を組んでモニターを見ながら考える。「でも、全く絶望的ってワケでもないのか?絶望的なら俊秋も"わからない"なんて言わないだろうし。それにここに書いてある注釈が気になるな?"不適合確率不明、だが問題にならない程度"……不適合格率?コレを着ても女に成らない者もいるって事なのか?」
でも、俺の身体は女性化してるみたいだけど……?服の上から自分の胸を揉んでみる。多分、これも当初のニセ胸から本物の胸に変わってるんだろうな?身体が偽物の胸と置き換わったからサイズが変化したみたいだから」腕を頭の後ろで組んで体を反らせて椅子をくるくると回す。「いや、まいったよね?悪戯で女装してたつもりがいつの間にか本物の女の子になっちゃてたとは…… 親父達になんて言う?冗談で間違って女になっちゃいましたぁ?呆れられるだろうなぁ?それより、この姿で大学卒業できるのか?就職の職種はOLに変更か?」顔を天井に向ける……「一番の問題は俺自身だよなぁ?えっと、パニックに襲われた方がいいのか?てか、3週間もメイドやってるうちに女の生活に慣れちまったから実感がわいてこないんだよなぁ、俺? 俊秋に言ったら怒るだろうな?自分の事だろ!このバカ!って?ハハハ。 責任取ってね?とか言ったら火に油かな?もっとも、いくら身体が女になっても男の元に永久就職する気は無いんだけどねぇ…… 困ったな?」そう呟くと俺はパソコンのスイッチを切って立ち上がる。「とりあえず、夕飯の支度の手伝いでもしに行こう。俊秋にこれを見た事は内緒って事で…… あいつはあいつで何か考えていてくれるんだろうし」 ・ ・ ・「あれ?清香さん、もう身体はいいんですか?」食堂に行くと双葉さんが食事の支度を始めた所だった。「はい、お陰様でもう大丈夫です。お手伝いしますね」流しで手を洗い、調理用のエプロンに付け替える。「そうですか?まだ調子が悪かったら言って下さいね」そう言って、俺のおでこに手を当てて熱を看る。「いや、夕べはお酒が久しぶりだったんで、ちょっと体調管理に失敗しただけですから。次からは大丈夫です、ご心配をおかけしました」
「うん、平熱みたいね。それじゃお手伝いよろしくね」双葉さんが俺に向かって微笑む。本当に優しいよな。ここの人たちは…… マジで就職先に織田家のメイドって選択肢を含めてもいいかな?冷蔵庫の中から食材を見繕いながら、そんな事を考える俺がいた……。 * * *「ただいま。えっと……清香?大丈夫だった?」食事ができあがる頃、俊秋が帰ってきて食堂に顔を出した。「あら、ご主人様ぁ?よくもおめおめと顔が出せましたねぇ?」俺はにっこりと微笑んで俊秋に近づく。「あ、あはは。その様子だと取れたんだ?いや、ごめん!つい、調子に乗った、反省してる!」「言っとくが、あれは返さないぞ?」「え?ひょっとして気に入った?」「ははは……何をバカな事を? ホントは要らないんだけど、くれるって言うからもらって上げるんだからね!勘違いしないでよね!気持ちよくなんか無いんだからね!」「いらねぇ!そんなツンデレいらねぇ!」「あ、そうだ。充電器も混みでもらったからな?」「……あぁ、いいけど?」「これで今夜、若葉さん達を誘って遊ぶんだ。私の自慢のご主人様はこんな物を開発してるんですよ。凄いでしょう?って」俊秋が俺の腕にすがる。「ごめんなさい。本当に悪かった!マジで反省してる!何でもするからそれだけは勘弁してくれ!そんな事をしたら彼女たちに汚物でも見るような目でみられるから!」「う〜ん、どうしようかなぁ?」俺はポケットの中から玉子を取り出し、指先でもてあそぶ。「あ!バカ!そんな物を見せびらかすな!」「ばかぁ?誰にそんな事を言ってるのかな?ご主人様の分際でメイドに逆らうとは身の程知らずだな?」指の先で玉子を回しながら俊秋の狼狽する姿を見て笑う。
#>ってチューブで売ってないよ、そんなもの。#とろろそばってコンビニであるだろ?#あれは小袋だけど、小袋に出来るならチューブのもあるいは…
# >ってチューブで売ってないよ、そんなもの。# # これをチューブと呼ぶのは微妙な気もするが、楽天市場で税込み577円(送料別)で売ってる件# http://www.rakuten.co.jp/mashiko/468916/469374/
「いや、それは違うだろ?てか、仕舞えって、それ!双葉さんに見つかるだろ?」「俺は別に見つかっても困らないけどね?ご主人様からの贈り物なら自慢になるからな」「どうしたんですか?清香さん、俊秋さん?」食堂の入り口で話し込んでいる俺たちの様子に双葉さんが近寄ってくる。「いえ!別に何でもありませんから!清香の体の具合を聞いてただけですから!」近づく双葉さんに俊秋が焦る。「あれ?清香さん、ゆで卵なんか作ってました?」俺の手にある玉子を見て双葉さんが尋ねる。「これですか?これはご主人様。ふぐっ!」いきなり俊秋が俺の口をふさぐ。「あ、双葉さん、ちょっと清香を借ります!食事の用意は?」「え?あ、えぇ、もう清香さんに手伝ってもらいましたのでテーブルに並べるだけですが?」「そうですか!それじゃコレ、借りてきますから!」そう言うと俺の口をふさいだまま廊下の隅の方に引きずって行く。 ・「いやん♪、ご主人様ったら人目に付かないところに引きずり込んで清香に一体何を……」握った両腕を顎に当てて、笑いながらいやいやをする。「とりあえず、本気で謝るからそれを仕舞うか、返してくれ」「返す?ヤだね。こんな楽しいものを手放すなんて」俊秋の手の届かないところで玉子をぽんぽんと手の平で投げては受け取る。「お前……マジであぶない道に目覚めたのか?だったら返さなくてもいいからソレは仕舞ってくれ」「う〜ん、なんかねぇ。俊秋にコレを入れられて思ったんだけど、妙に女の快感に目覚め始めたような気がするんだけど、何でだろうな?俺って男の筈だよな?」ちょっと悪戯心が芽生えて俊秋にカマを掛けてみる。「え?あ、あはは。気のせいじゃないのか?」
「そうかぁ?それにここってどうなってるんだ?男のアレが無くなったのは別次元にしまい込まれてるって話だったけど、股間に孔が空いてるのはどういう仕掛けだ?」「え〜と……孔に見えるけどソレも別次元に……」「繋がってたら入り口があるだけだから、挿入感も感じるわけないし、圧迫感も感じるわけないよなぁ?」「……お前。何か気が付いた?」「ん〜?何がだ?」手でもてあそんでる玉子を見ながら俊秋に聞き返す。「…… 前にも言ったと思うけど、そのスーツのシステムは本当によくわからないんだ。この間、親父にも聞いたけどメイン部分は親父もどうなってるか判らないらしい……」「ふ〜ん?まぁいい。一応確認しておくけど一ヶ月で脱げるのは間違いがないんだよな?あと…、一週間か?」そう言いながら、ポケットに玉子を仕舞う。「あぁ、それは間違いないはずだ。ただ、前後一日くらいの誤差はあるかも知れないけど……」ちょっと苦虫を噛みつぶしたような顔になる俊秋。これ以上、責めるのも悪いか、俊秋自身には落ち度はないんだからな。「脱げるまで一週間か……」「あぁ、1週間後にそれは脱げる……」少しの間、二人の間に沈黙が落ちる。『…………』あと、1週間でこいつは何か打開策を見つけてくれるだろうか?それとも俺は1週間後、本物の女性として生きていく事になるのだろうか?「あはは、まぁいい。これだけ嫌がらせをすれば充分だ。玉子の件は忘れてやるよ。安心しろ、これは俺だけで楽しむから」そう言って、笑って俊秋の肩をばんばんと叩く。「お前、やっぱりそれを気に入ったのか?」「べ、別に気に入ってなんか無いんだからね!ご主人様の命令で使ってるだけなんだから、勘違いしないでよね!」「だから、そんなツンデレいらねぇって!てか、命令なんかしてねぇ!」
「まぁ、ご主人様ったらテレちゃって」「テレてねぇよ、判ったからもういけ!玉子は絶対に人前に出すなよ!」そう言い放って、俺を食堂の方に向けて背を押す俊秋。「あはは、すぐに夕飯だからな。これから工房に籠もるなよ?すぐに呼びに行ってやるから」俺はそう言って後ろ向きに手を振って、食堂に戻る。「あぁ、わかった」俊秋の返事が背に返ってくる。 ・「あ、清香さん?俊秋さん何だったんですか?」「え?いや、ちょっとご主人様の分際でメイドに意地悪をしたからお説教をしてたんですよ」笑って返事をする。「あはは。やだぁ、清香さんったら。本当は清香さんが俊秋さんに何かしたんでしょ?」「冗談じゃありませんよ。私はご主人様の忠実なメイドですよ?ご主人様に逆らうような事をするわけないじゃないですか」「うふふ、本当にそうなの?清香さんって俊秋さんと殆ど同等の口をきいてますし、結構ひどい事を言ってますよぉ?厳しいところならクビになっててもおかしくはないんですから。 ……それでも俊秋さんがそばから放さないのは清香さんの人柄かしら?」双葉さんがテーブルに食器を並べながら笑って話す。「あはは。まぁ、どうなんですかね?」俺も食事の準備を手伝いながら、笑って誤魔化す。「清香さん、あと1週間ですね。皆、応援してますからね。メイドに正式に採用されるといいですね」双葉さんがテーブルの向こうから俺の顔を見て微笑む。あぁ、そう言えば俺は一ヶ月の仮採用でここで働いてるんだったよな?1週間後、俺はどうなってるか判らないけどここを去るのは初めからの決定事項なんだ…… すいませんね、せっかく皆に応援してもらってるのに。双葉さんに少し後ろめたい思いで何かを口にしようとした時、食堂のドアが開けられれた。「清香ぁ〜!」
「あれ?俊秋?どうしたんだ?」俺はワケがわからずに入ってきた俊秋に驚く。「どうしたんじゃねぇよ!ちょっと来い!」俊秋が俺の腕を取って引っ張っていく。「あ〜れ〜、双葉さん、再びお出かけしてきます〜」「俊秋さん、もう夕飯の支度ができたんですけど?」双葉さんが突然乱入してきた俊秋に声を掛ける。「すいません、双葉さん。すぐに戻ってきますから」そう言って食堂から俺を引っ張り出す俊秋。あれ?何かやったっけ?まさかパソコンを見たのがバレた?俺を引っ張って廊下を歩いていく俊秋に声を掛ける。「なぁ?マジでどうしたんだ?俺、何かやったっけ?」そのまま俊秋の部屋に連れ込まれる。「あのなぁ?俺は確かにここに居ていいって言ったよ?でもな?後始末くらいはしておけ!」俊秋の指さすベッドの上には……「あ?俺のパンストとショーツ……」スカートの上から股間とお尻をなで回す。「あ〜はっはっはっ、俺って今、ノーパンだ?あはははは」思わず自分で大爆笑。 俺って結構、動揺してたんだ?自分が下着を付けてない事に気づかないほど?「笑い事じゃないだろ?人のベッドに下着を置きっぱなしにしてつんじゃねぇよ?」「あはははは。済まない。いや、ご主人様が後で楽しまれるんじゃないかという可愛いメイドさんの気遣いだと思ってくれていいよ」「いらねぇよ!何が悲しくて男の下着を楽しまなきゃいけないんだよ!」「いやん♪、清香、女の子だもん♪」「うるさい、バカ!それとこれ!」俊秋がベッドの布団を捲りあげてシーツを指さす。「あらら〜、ご主人様ったらいいお歳をしてオネショ?」「じゃないだろ?確かに原因を作ったのは俺だよ?でもな、後始末くらいしておけ!」
「あはははは。そういや、半日ここで悶えてたんだから痕跡が残らないわけないよなぁ?いやぁ…… これは見事な……」俺はシーツに残った半日に及ぶ快感の痕跡を見下ろして笑う。「あ、ダメだ。ハマっちまった。あはははは」「いや、笑い事じゃないだろ?普通、人にこんなの見られたら恥ずかしがるとか、隠すとかしないか?お前、絶対にヘンだよ?」「あははは。……そ、そうかな?あはは」目尻の笑い涙をぬぐいながら俺は俊秋を見る。「なんだか、お前を見てたら毒気を抜かれた。とにかく、夕飯が済んでからでいいからシーツを交換してくれ」「え〜?このままじゃダメですかぁ?」「ダメに決まってるだろ!お前、ご主人様をこんな女臭い布団で寝かせる気か?」「え?女臭いか、これ?」俺はベッドに鼻を近づけて嗅いでみる。「掛け布団にもお前の臭いが染みついてるだろ?」「う〜ん?わからないな?」「まぁ自分自身の臭いだから判らないかも知れないけど、最近のお前は石鹸の臭いと体臭が混ざった独特の臭いはしてるな?女臭いって言うか……不快ってわけじゃないけど」あぁ、そうか。体臭まで変わってきてるのか?自分の事だから気づかなかったけど。「そうかぁ。はいはい、わかりました、ご主人様。夕飯が終わったら大至急シーツを交換します」「掛け布団もな?マジで臭いが気になって眠れなくなりそうだから」「あらら、いいですよ?この掛け布団を夜のおカズにして下さっても」「何を好きこのんで男の臭いで欲情しなくちゃいけないんだ!」「あん♪そんな事を言われたら清香の女としてのプライドがぁ」「うるさい!お前は女なんかじゃない!立派な男だ!」「あはは。そうなんだ?俺は男なんだ?」「当たり前だ、バカ。とりあえず、夕飯だ。行くぞ」そう言って俊秋はずんずんと先に歩いて部屋を出て行く。
夕飯がすみ、俊秋の布団を新しい物に替え終わる頃には夜もいい時間になってしまっていた。「うぅ、冷えるなぁ。早く風呂に入って寝よう。その前に……」トイレに入り、スカートを捲りあげてショーツを下ろす。……今まで、この行為も特殊な女装のつもりでやっていたから深く考えなかったけど。 ……ヘタすると、これからもこれが一生、俺のオシッコのスタイルになるんだよなぁ?そう思うとあらためて恥ずかしい。トイレに入るたびに便器に座り込み、終わると紙でそこを拭く……うわぁ!ダメだ!昼のあれから微妙に自分の世界観が狂ってきてる。やたら、女の子を意識しちまう!女装と女体化じゃまったく心構えが違ってくるよなぁ?そんな事を考えながら、トイレを出て自室の戻りパジャマとタオルを持ってバスルームへと向かう。やはり、動揺してるのかなぁ?まぁ、一生の問題だし……バスルームの脱衣所でメイド服を脱いで鏡に映った自分をじっと眺める。「女の子だよなぁ?これがもうすぐ俺の本物の身体になる?」腕を背中に回してうなじのファスナーのある箇所を確かめると、そこには薄いスーツの皮に覆われた小さな瘤の感触を感じる。ここさえ掘り出せば戻れるワケじゃないんだよな?スーツ全体が肌に密着してるらしいから……爪の先で少し盛り上がっているその瘤をカリカリと掻いてみるが、その程度で何が変わるわけでもない。「…………」「あれ?どうしたの清香ちゃん?鏡の前でポーズなんか取って、意外とナルシスト?」ドアを開けて青葉さんが入ってくる。はい?鏡の前で腕を後頭部に回して、もう片方は腰に当てられていて…… これってモデルの定番なポーズ?ちょっとそのポーズは痛いよ、俺?「え・いえ!これは違いますよ!ただ自分の体を見てただけで!」俺は慌てて青葉さんに釈明する。
「だから、自分の肉体美に見とれてたんでしょ?あはは。気にしない、気にしない。清香ちゃんの身体だったら自分で見とれる価値はあるから」青葉さんが笑って服を脱ぎ始める。「イヤ、そうじゃなくてですね?」「いいって、いいって。ほら、早くお風呂に入らないと風邪引くよ」そう言ってさっさと全裸になった青葉さんは俺の手を取って風呂場に入っていく。中にはすでに若葉さんが体を洗い終わって、バスタブに身体を沈めていた。「清香さん、今日は遅かったのね?いつもは一番に入ってるのに」「あはは。ちょっと失敗をしまして、今まで俊秋様の部屋でそのフォローをしてました。内容は秘密です」笑って若葉さんにそう説明する。いやまさか、自慰してて俊秋の布団を汚してしまったので替えてましたとは言えないよな。 そう言えば、あのシーツ明日の朝一で皆に見つからないように洗濯しなくちゃいけないな……「若葉ちゃん、清香ちゃんったらね。脱衣所の鏡の前で裸になって自分の身体に見とれてたのよ?」身体を洗いながら青葉さんが若葉さんにそう話しかける。「へぇ?意外とナルシスト?」「青葉さんにも言われました、それ。違いますよ。ちょっと、思うところがあっただけです。自分に見とれるような趣味はありません」青葉さんの隣で一緒に身体を洗いながら口を尖らせる。「ふ〜ん、そうなの?でも、そうやって二人並んでると清香さんが自分の身体に自信を持つも判るわぁ。比較対象にいいものを選んでるよね」若葉さんがそう言って笑う。「ひどぉい!若葉ちゃん、そりゃ私は清香ちゃんと比べるまでもありませんよ!大体、清香ちゃんがナルってたのは私が来る前からです!」青葉さんがそう言って若葉さんに抗議をする。こうしてみると、青葉さんって可愛いよな?胸もだけど……。本物の女の子ってこうなんだろうな。
「あの……若葉さん?」「ん?なぁに?」「私って女としてどう思います?」「は?どう思うって?」「女の子っぽく見えるかとか、女として違和感を感じたりしないかって事なんですけど……」「清香ちゃんは可愛いよ。掃除洗濯、お料理も出来るし、やった事がないって言ってたミシンもうまく使えるようになったし……女の子スキルは完璧だし、女の私から見ても身体はこぉんなに女の子を主張してるし!」「ひゃう!だ、ダメですよ!青葉さん!」青葉さんが背後からシャボンだらけのスポンジで俺の胸を揉んでくる。どうもこの人は人の胸を揉むのが癖のようだ。コンプレックスの現れ?まぁおかげで俺も若葉さんや双葉さんの胸にさわっても違和感を持たれないから助かるけど。「あははは。どうだ!清香ちゃん!こんなに自己主張の激しい胸を持ってるくせに女っぽく無いなんて言うかぁ!そんなヤツは私が懲らしめてやるぅ、うりうりうり!」「ひゃん、ちょっとダメですって!胸は感じちゃうから!最近、敏感なんです!勘弁して、ふひゃひゃ、あ、あん。らめぇ」俺は青葉さんの攻撃に身を悶えさせる。若葉さんがその様子を見て笑う。「あはは。本当に清香さんは充分女っぽいよ。そうやって青葉さんと楽しそうにじゃれあってるところ何か特に女の子って感じ」「清香、可愛いよ、清香」「いや、だから降参!降参しますから勘弁!ひゃん、ひゃめぇ」俺はタイルの上に裸の身を投げらかして身体中を泡だらけにして悶える。「はいはい、青葉さんもその辺で勘弁してあげなさい」「仕方がない、この辺で勘弁してあげましょう。ははは」若葉さんの制止に青葉さんが笑って俺の身体から離れる。やっぱり、女体化の影響からか身体の感じ方が最近はやたらと敏感になってるようだ。
「ひぃひぃ、ひどいですよ。青葉さん。泡が髪の毛に付いちゃった。せっかく濡れないように頭の上に纏めてたのに。髪を洗うのは面倒なんですよ」シャボンが付いた髪の毛を摘んでみる。「あはは、ごめんね。お詫びに私が洗ってあげる。ほら、座って、座って」青葉さんが俺を椅子に座らせて、頭に巻いていたタオルを取り去り、腰まで届く俺の髪の毛を下ろして、青葉さんが手で優しくさわる。「そう言えばさぁ?清香ちゃんって日本人よね?」「え?はい、そうですよ?」「前から不思議だったんだけど、何で金髪?これって染めてるんじゃないよね?すッごく自然で柔らかくって綺麗な髪だよね」そう言って俺の髪をお湯で濡らすとシャンプーで洗ってくれ始める。「あぁ、それは私も思った。清香さんの髪って本当に金色だもんね」若葉さんも青葉さんに同意する。「えっと……あ、あはは……、えっとプライベートな事情ってワケで……」もう、これは笑って誤魔化すしかない。「あぁ、プライベートな事情……」「それなら仕方がないよね……」一応、納得してくれたけど、釈然としないんだろうなぁ?「あはは、突然変異なんです。私にもよく判らなくって……」「あ、そうなんだ?」「ごめんね。変な事を聞いて」「いえ、いいんですよ。あははは」笑って誤魔化す俺。突然変異で金髪って……、俊秋の人体事件の影響で髪の色が変わったって言った方がリアリティがあったかな?「ね、失礼ついでだから聞くけどここも何かそう言う体質のせい?」そう言って青葉さんが髪を洗ってくれている背後から俺の股間に手を回す。「ひゃい?ふぇ?な、なんです?青葉さん?」「清香ちゃんのお股のところって体毛が生えてないよね?最初は剃ってるのかと思ったけど、そう言う事をしてる気配もないし?ほら?すべすべ」
そう言って、俺の大事なところの上あたりを不思議そうに撫で撫でする。「ひゃん、や。ちょ、ちょっと。そうです、そうなんです。だから青葉さん、これ以上は勘弁!」椅子から転げ落ちないように身体を青葉さんの魔手から逃れさせようと胸を隠しながら悶える。この手がもう少し下にさがるとピンチ!「あぁ、そうか。清香さんが妙に子供っぽく見えると思ったら、そこがお子様だからかな?」若葉さんが俺たちを見て子供達の悪戯を見る母親のような目で笑う。いえ、本当は俊秋の説によると黒髪と金髪の二つのマスクに対して身体用のスーツが一つだけだから、どちらか一方の毛の色に合わせると片方のマスクが使えないから身体は無毛なんだそうです。「はい、髪の毛は洗い終わったよ」シャワーで俺の髪の泡を丹念に洗い流してくれる青葉さん。そのあとも青葉さんに色々と髪の毛をメンテされてクルクルっと俺の頭の上に戻される。「すいません、青葉さん」「いいって、いいって。私も清香ちゃんで遊べて楽しいんだから」「そう言えば、清香さん?」三人で湯船につかっていると若葉さんが声を掛ける。「ん?なんですか?」「さっきの話だけど、何で急に女の子を意識しだしたの?ひょっとして俊秋さんに恋をしたとか?」いけない、若葉さんの目がガールズトークのノリだ。「いえ!違います!どう間違っても俊秋に対して恋愛感情は湧きませんから!」「ムキになるところが怪しい……」背後で小悪魔が同じノリの目をし出した。ザザッ!胸を押さえて青葉さんから距離を取る。「チッ、勘が鋭くなった?」青葉さんの方を見ると両手をワキワキと動かして俺の胸を狙う姿が……「学習能力があるだけです!もう勘弁して下さい、青葉さん!いえ、ちょっと他の皆さんの姿を見てたら自分は女としてどうなんだろうって思っただけですから」
「清香さんは充分に女らしいと思うわよ?ファッションやアイドルの話題は致命的にダメだけど、それはそれぞれの個性だから」そう言って微笑む若葉さん。「うん、そうよね。清香ちゃんは標準以上に女の子よ?言葉遣いが俊秋さんに対しては時々、乱暴になったりするけどそこが返って女の子っぽいって言うか」青葉さんもそう言って微笑む。そして二人の声がハモる。『だから、自信を持って俊秋さんにアタックを掛けていいんだよ?』「ちがーうっ!誤解です!!」 * * *「それじゃ、若葉さん、青葉さん、お休みなさい」『うん、お休み』「清香ちゃん?」「はい?なんですか?」「私たちは味方だからね?」「いつでも応援してるから」二人がにこにこと俺の顔を見つめる。「……勘弁して下さい。本当に誤解ですから」部屋の前で若葉さん達と別れて自室に戻る。.どうも、おかしな事を聞いたせいで変な誤解が生まれてるな……”清香ちゃんは標準以上に女の子よ”喜んでいいのか、肩を落としていいのか?結局、俺はどういう評価を聞きたかったんだろう?ベッドに入り、目をつむって考える……もし、男に戻れなくってもやってけると自信を持っていいのか?女として…… ………… …………えっと、それは俺が今まで合コンとかで知り合った女の子とヤっちゃった事を俺がされる側の立場に回るって事も含むわけで……がばっと起きあがる。「無理!それは無理!女としての生活は自信も出たけど、性生活は無理!」思わず声に出して否定する。いや、俺も童貞ってワケじゃないから女の子と多少なりと経験はあるよ?でもそれを俺がやられるのは無理!男のペニスをあぁしたり、こうしたり、あげくの果てに胎内に突っ込む…… いくら俺のノリがいいって言ってもそれは精神的に無理!
#やばい#清香ちゃんがかわいすぎて萌え死ぬ
くっそー、初めてネットで感想を書いてしまうくらい面白いです!頑張って下さい!!
# ありがとうございます。# ラストまでもう少しですが、何とかたどり着けるようにしたいと……(^^;
いや、待て。別に女になったからと言って男と寝るのが必然ってワケでもないじゃないか?世の中には結婚しない女性も多いし……そうだよな。何を焦ってんだ、俺。「どうも女性化すると知ってから、変にテンパってるようだよな?早いウチにいつもの自分を取り戻さないとダメだよな〜」ふと、ゾクッと身体が震え自分が布団から上半身を出していた事に気づく。「うぅ、寒い!布団からちょっと身体を出してるだけで冷え込むもんだな」身体が冷えたせいで尿意を覚えている。「う〜、トイレ、トイレ」俺はベッドから出てトイレに向かう。「考えてみれば、何かで悩むなんて俺のキャラじゃねぇよな?とりあえずは現在の状況に困るような不満はないんだし、俊秋だって俺が男に戻れる手段を考えてくれてるはずだから、今から女としての未来を憂いても仕方がないよな?うん」用を足し終え、トイレから出て考える。「女か……、どうも自分の男としての意識にブレが出てるのかも知れないな。ここはひとつ、俺なりの方法で男しての自分を取り戻そうか」 ・ ・ ・「おい?」俊秋が俺の肩を揺する。「ん〜?なんだよ?」布団の中で眠たげな声で答える。「何をしている?」真夜中、声を潜めて俊秋が背中越しに問いかける。「何をしているって、真夜中に布団の中でするって言えば睡眠を取っているに決まってるだろぉ?」「言い換えよう。"俺の"布団の中で何をしている?」「どう言い換えようと寝ているとしか答えようがないが?」「だから何で俺のベッドの中にお前が居るんだと聞いている!」俊秋が少し声を荒げる。「ご主人様のために忠実なメイドとして布団を暖めておきました」「俺の方が先に寝ていたんだが?」「細かいことは気にするなよ?夜中なんだからお前もさっさと寝ろよ?」
「寝てたら知らないウチに俺の布団の中に侵入者が居たんで、驚いて目が覚めたんだよ!さっさと自分の部屋に帰れ!」そう言って、俺から布団を取ろうとする俊秋。「ヤだよ、寒いもん。俺の部屋の布団も冷えちまってるだろうし」布団を引っ張り返して答える。「さっさと出ないと犯すぞ?」「まぁ、ご主人様ったら同性愛のご趣味がお有りなので?清香ちゃんの可愛いお尻が大ピンチィ」「ばか。昼間、身をもって経験しただろ!今のお前の身体には男を受け入れる場所があることを?お前は男でも見かけは完璧な女なんだから男の布団に入ってくるんじゃねぇよ!」「見かけは完璧な女か……、ふぅ」軽くため息をついて続ける。「いいよ、そうしたら悲鳴を上げるから。知ってるか?女の悲鳴ってわりとよく通るんだぞ?俺ならここからでも双葉さん達を叩き起こせる自信はあるね?」「最悪なメイドだな、お前。 ……あのな?結局、何をしたいんだ?」「自身の男の再確認と男気分の充電」「はぁ?なんだ、それ?」俊秋の疑問に半分寝ぼけたような声で答える。「昼間、ご主人様に悪戯されてから自分の男としての"存在"に揺らぎが出てることに気づいた。だから、お前と一緒に寝て自分が以前と同じ感覚で平気でいられるか確認してる。それと最近、双葉さん達寄りの生活をしてたから普通に女寄りの思考をしだしてるようなので、お前に密着して男成分を吸収させてもらうことにした、OK?」「オーケーじゃないだろ?……よくわからない理由だな?なんだよ、男成分って?」「昼間のあれが俺に女である自覚を持たせて女を受け入れるようにし向けたなんて邪推はしないよ?お前はただの実験バカだからな?そこんとこは親友としてわかってる。ただ、それで俺に変なスイッチが入りかけてしまった。だから解除作業中……」
「………… 清彦、ひょっとして気づいてるのか? そのスーツ……」暫く間をおき、ぽつりと俊秋がつぶやくように口を開き掛ける。「うるさい、バカ。メイドの朝は早いんだ。ゆっくり寝かせろ。話はそれからだ。でないと明日、仕事中にあくびをしたら双葉さん達に正直に言うぞ?"夕べはご主人様が寝かせてくれなかったんですぅ"ってな。若葉さんなんかは俺たちの仲を疑ってるからそれをどういう意味に取るかは知らないけどな?」そう言って布団を引き上げ、俊秋にあらためて背を向け本格的に寝にはいる。「本当に…… 最悪なメイドだよ、お前は」呆れたようにつぶやくと俊秋も起こしていた半身を寝かせて布団を被り直す。「わかった。明日、ちゃんと話そう」 * * *「ふぁ〜、よく寝た」俺は上半身をベッドから起こして大きく欠伸をする。なんとなく気分もすっきりしている。「そうか、そりゃよかったよな?」脇で声がする。「ん?俊秋か? …… え?まぁ、大変!ご主人様が何故だかすごく憔悴しておられる!どうされたんですか、ご主人様?まるで一睡もしておられないかのように目に隈が!」「一睡もしてないんだよ!どこかのバカが女の身体で人に布団に侵入してきて、手出ししたら悲鳴を上げるなんて脅すから!」「あぁ?そういう事もあったっけ?今となっては懐かしい思い出だ」「思い出じゃねぇよ!現在進行中の悪夢だよ!起きたんならさっさと出て行け!」俊秋が俺の腰を足で押す。「やん♪ご主人様ったら一度寝た女にはもう用がないなんて、なんて鬼畜な方なんでしょ?」「本当にただ寝ただけだよ!鬼畜はお前だよ!ベッドに自分から忍んできたんなら素直にヤらせろよ!」「あん♪だって清香、男の子だもん。ホモじゃないもん」「ワケわかんねぇよ!お前は!」
「とにかく、起きたんならさっさと出て行け!俺はこれから寝る!昼まで起こさなくっていいからな?朝飯もいらねぇから静かに寝かせろ!うわっ?なんだよ、まだ6時前じゃないか?」枕元の目覚ましを見て俊秋が声を上げる。「ははは、そりゃメイドの朝は早いですから」「おまえ、いつもこんな時間に起きてんの?」「まぁ、昔からの習慣で体内時計がセットされてるからな?」「……本当にメイド向きのスキルを備えたヤツだな。とにかく、起きたんならさっさと出て行け」「わかったよ。それとな、済まなかったな、俺の我が儘で。おかげで頭もすっきりした。後はゆっくり寝てろ」そう言って俺はベッドから出る。「あのな、起きたら真面目な話があるから。昼からは空けておけ」頭からすっぽりと被った布団の中から俊秋が声を掛ける。「あぁ、わかった…… それじゃ午前中は布団の中で俺の残り香で楽しんでくれ。それ以上、衰弱しない程度にな?」俺がそう言って俊秋の方を向いたとたんに目覚ましが飛んできた。ガンッ慌ててよけると目覚ましはここまで届かず床に落ちる。「ふひゃっ!あぶないなぁ。ダメだぞ、物を投げちゃ壊れるだろ? あ、出てく、出てく!」布団の中から伸びた手が次の投擲物を手探りで探すのを見て、俺は慌てて部屋から逃げ出す。 ・ ・ ・「うぅ、寒い!ガウンか何かを着てくりゃよかったな。早朝からパジャマ一枚は流石に寒いな」俺はピンクのパジャマの胸元で腕を組んで猫背気味になって廊下を歩く。流石に下にブラすら付けてないからな。脂肪は熱の通りがいいって聞いた気がするけど、やっぱり胸も冷えやすいのだろうか?「あれ?清香さん、どうしたんですか?そんな寒そうな姿で?」気が付くと若葉さんが部屋から出てきたところだった。
「えっと、ちょっとおトイレに。ガウンを着て行けばよかったんですけど、用を足す時に邪魔になりそうだから無精をしてこのままで言ったんですけど、やっぱり着て行けばよかったです。あはは」そう言って笑って誤魔化す。「あはは、そうなんですか。でも、あまり身体を冷やすと悪くしちゃいますから気を付けて下さいね」そう言えば、今朝は若葉さんが食事当番だったっけ?「あ、私も食事のお手伝いします。すぐに着替えていきますから」「そう?いつも悪いわね。それじゃお願いします」にっこりと笑って若葉さんが礼を言う。「あ、そうそう。今朝は俊秋は朝寝坊するので朝食が要らないそうですから。一人分は抜いてください」俺も若葉さんにそう言って笑いかける。「え? ………」若葉さんの顔がぴくんと動く。「はい?」俺も若葉さんの反応に怪訝な顔を返す。「えっと…… 清香さん?ひょっとしてその姿で俊秋さんの部屋に行って来たんですか?」え?あれ?今、俺、何かまずいことを……?若葉さんの顔が徐々にニヤ〜という表情に変わっていく。「あぁ、そうなんだ?清香さんって行動力があるとは思ってたけど。ふ〜ん?やったね、清香さん。ひょっとして朝帰りですか?」あれ?あれ?ちょっと待って?何か誤解が生まれてないか?「えっと、違いますよ?多分、若葉さんが思ってることは何もありませんから?」俺は両手を振って若葉さんの想像を否定する。「え〜、私まだ何も言ってないんだけどな〜?」あぁ、若葉さんの笑顔がさらに深くなっていく〜!「ねぇ、清香さん?初めてだったの?」「えっとぉ…… 何が?!」「やだぁ、女が男の部屋に夜這いかけて"初めて"って言ったら決まってるじゃないのぉ?」口を手で隠して笑う若葉さん。誤解してる!絶対に誤解してる!「イヤ、俺、処女ですから?」
「あはは、嘘付いちゃダメ。お姉さんに正直に話してご覧なさい?絶対にここだけの話にしておいてあげるから?」あぁ!その笑顔が怖い!若葉さん、絶対に青葉さんに話す!「イヤ、マジで!本当に俊秋とは何もありませんから!」「うふふ、昨日までご主人様とか俊秋様って言ってたのに今朝は呼び捨て?もう、気分は恋人同士?」ニヒヒと笑う若葉さん。「いえ!前から時々、呼び捨てでしたから!知ってるでしょ?急に呼び捨てになったワケじゃありませんから!」「あらぁ?そうだっけぇ?」「とにかく、俊秋様とは何もありませんから、迂闊なことは言わないようにして下さいね?俊秋様に迷惑を掛けてしまいますから?」俺は若葉さんの肩に手を掛けて頼み込む。「まぁ、清香さんがそう言うなら黙ってますけどね」「お願いします……」「それで俊秋さんの食事は要らないのね?ちょっと寝坊して後から起きて来られるのかしら?それだと何か軽い物でも用意しておくんだけど?」「要らないと思います。昼までは寝てると思いますよ。夕べは一睡もしてないようだから、昼まではぐっすりと……」言いかけた俺の口が途中で止まる。「ふ〜ん、そうなんだ?俊秋さん、夕べは一睡もしてないんだ?清香さんはそれを知ってるんだ?キヨちゃんはいつから俊秋さんのお部屋にいたんだろうね?その姿で?」にた〜っと笑顔が俺に向けられる。俺はもう、キヨちゃんですか? 俺のバカ……えぇ、そりゃもう、その後の朝食の準備中は針のムシロでしたよ?笑顔が人を殺す武器になり得ることを実感しました。さすがに双葉さん達が起きてきた時には、その笑顔を引っ込めてくれましたけど、いつまでその存在しない秘密が守られるかは謎ですが…… ・そして、半日が過ぎ、俊秋も部屋から起き出してきて一緒に昼食を取る。
「若葉さん?俺の顔に何か付いてます?」俊秋が昼食を食べながら若葉さんに聞く。聞かれた若葉さんは、と言うと……何故だか、にやにやとした顔で俊秋と隣に座る俺の顔を見比べながらご飯を食べている……「いえ、別に何も?」「えぇ、何も付いていませんよ?」若葉さんの隣でご飯を食べている青葉さんもそう口を開く。……って、えぇ?! 青葉さんまでにやにや笑いをしている!若葉さん、半日も保たないんですかぁ!?「あの、若葉さん?」「はい?なんでしょう?キヨちゃん?」「キヨちゃん?お前、また若葉さん達と親密度を増したな?今度は何をやらかしたんだ?」俊秋が俺の顔を見て尋ねる。「あ、あははは、何をやらかしただなんて人聞きの悪い。清香はいつでも若葉さん達と仲良しですよ?」「も〜っと、仲良しな人もいますけどね。 ね、キヨちゃん?」俺に向かってにっこりと悪戯っぽい目でウィンクする若葉さん。……隣の青葉さん?両目が閉じてますよ?「あ、あははは、そ、そうですか?」俺は片目をつむって、そっと頭下げ、若葉さん達に勘弁して下さいという意思表示をする。「何やってんだ?お前?」俊秋がそんな俺を見て不審そうな顔をする。「い、いや、べつに?ただの女の子同士の秘密の会話ですよ?ご主人様も混ざりたいんですか?」「混ざりたかね〜よ!どうせまた、ロクな事をしてないんだろ?」「あはは、ヤですね。ご主人様?もっとあなたの忠実なメイドを信用して下さいよ?私がいつ、ご主人様のためにならない事をしました?」「お前が俺のメイドになってから、ずっと俺は神経をすり減らされ続けるんだが?」「あはは、ご主人様ったら冗談ばっかり!」俺はそう言って俊秋の背中を叩く。「これが冗談だったらどんなに心休まるか……」
そう言って、興味を失ったかのように再び食事を続ける俊秋。よし!誤魔化せた!俺は若葉さん達にこっそりと片手を上げて"お願いしますよ〜"と合図を送る。若葉さんと青葉さんは顔を見合わせてクスクスと笑いあったが、それ以上は何も言ってこなかった。 ・ ・ ・「清彦、後で俺の部屋に来てくれ」昼食が終わり、俊秋が席を立つ時に真剣な小さな声で俺に耳打ちする。「わかった」……いよいよか。 さて、男に戻れるか、女のまま生きる事になるか。 * * *「ごっ、しゅっじんさまぁ〜、来ましたよ〜」昼食の後かたづけを手伝った後、俺は俊秋の部屋のドアを陽気に開けた。「あのな、清彦?俺が何の話をしようとしてるか判ってるんだろう?なんでそんなに陽気なんだ?」「不安な心を敢えて陽気に振る舞う事で払拭しようとしてる乙女心が判らないんですか、ご主人様ぁ?」「お前の場合、どこまでが本気か判らないからなぁ?本当に不安がってるのか?」俊秋はそう言いながら席を立つとドアを開けて周りを確認すると、ドアをきっちりと閉める。「ご、ご主人様、外に人がいない事を確認してドアを閉めるなんて……、一体、私に何をなされるつもりなんですか?」俺は後ずさると何かにつまずき、ベッドの上に倒れ、その拍子にスカートの裾がまくれ上がる。「わざわざベッドのそばに行ってまでつまんねぇ小芝居してるんじゃねぇよ!下着が見えてるぞ!さっさとそこに座れ!」俊秋がそう言ってソファを指さす。「ちっ、ノリの悪いヤツ」そう言って俺はベッドから起きあがり、スカートを直すと俊秋が指さしたソファに座る。「言っとくけど、ここからは真面目な話だ。いいな?」そう言って俊秋も俺の向かいに座る。「あぁ、わかったよ」
手を膝の上で組んで俊秋が尋ねる。「なぁ?本当はもうそのスーツの機能に気が付いてるんだろう、清彦?」「すまないな、昨日お前が付けっぱなしにしておいたパソコンを見た」どうも冗談を言う雰囲気ではないので、俺も真面目に返す。「だったら、知ってるよな?お前のその身体が今、どういう状態だか?」「あぁ、このスーツは女装の為のスーツじゃなくって着た者の身体を女性に作り替える為のスーツで、俺の身体は今、一ヶ月掛けて女性に作り替えられて居るんだろ?俺の身体にローターが入ったって事はあそこも完全に女性化してしまってるって事なんだろうな」「その通りだ。多分…… 後、一週間以内にそのスーツは脱げるようになるだろう」「なぁ?一応聞いておくけど本当に脱ぐ事は出来なかったのか?」「出来ない。親父の話によると一度着たら最後、後戻りが出来なくなる事に全力を注いだそうだ」「あはは!なんだよ、それ!マジでこれって自由に動ける拘束具か?」「ばか、笑い事じゃないだろ。お前自身の問題だぞ?なんだよ、自由に動ける拘束具って?矛盾してるぞ?」「それで単刀直入に聞くが、俺はどうなる?女の子のままか?もう男に戻れないのか?」スカートの裾を少し持ち上げて俊秋に聞く。「可能性は極端に少ないけど、元に戻れる方法は2つある。一つはそのスーツの制作者を見つけ出す事だ」俊秋は指を一本、俺に示す。「親父さんか?だったらもうすぐ帰ってくるんだろ?一ヶ月の旅行だって聞いたぞ?」「そのスーツの真の制作者は親父じゃない、親父が作ったのはそのスーツの素材部分だけだ」「だったら誰が作ったんだ?このスーツを?」「えっと、な?俺も半信半疑なんだからバカにするなよ?」「は?何で俺がお前をバカにするんだ?いいから話せよ?」「それを作ったのは魔女たちだ」
「……俊秋、俺はお前がどんなに病んでいても親友だ。病院にはなるべく見舞いに行くから」「その携帯を仕舞え!どこに掛けてるんだ!」「俊秋、お前は病気なんだ。悪かった、俺がお前に心配を掛けすぎたせいで心を病んでしまったんだな……」「だから言いたくなかったんだよ!俺だって半信半疑だって言っただろ!よこせ!うわっ!マジで119押してやがる!」俊秋が俺の手にしていた携帯を取り上げる。「いや、だってお前。よりによって魔女だぜ、魔女?正気を疑うなって言う方が無理だろ?」「俺だってな、それを言った相手が海の向こうじゃなかったら電話を掛けてたよ」「だろ?」そう言って、俊秋から携帯を取り返す。「だから、掛けるなって!」再び携帯は俊秋の手に……「あのな?お前は俺に真面目な話があるって言ってたような気がするんだが?」「あるよ!だから話そうとしてるのにお前が混ぜっ返すんだろ!」「正気を疑うような事を言うからだろ?」「だったら、お前はそのスーツをどう説明するんだよ?着る時に何か変わった仕掛けがあったか?」「いや、おかしな紋様が目一杯描いてあったが、それ以外は……」「だろ?ま、親父が言うには魔法としか言いようのない高度な未知の技術らしいけど、とりあえず"魔法"と言った方が理解がしやすいんだそうだ。信じられない話かもしれんが、黙って聞け」「わかった」俺は浮かしていた腰を再びソファに落とす。# さて、後1,2回の更新で終われる予定ですが、後になるほど説明っぽ# くなってしまうのが困ったところです。(^^; # 文章の未熟なところはご勘弁ください。
「これは親父から聞いた話だけどな?25年ほど前だ。どうやってかは知らないが北欧の方で不思議な姉妹たちと出会ったんだ。その姉妹たちは人と接触を取る事を極端に嫌う一族の姉妹で普段は結界を張った土地から出ることなく暮らしている」「人と接触をしないんだったら、どうやって出会えるんだ?」「人ってのは好奇心って物があるんだ。その一族の大人たちは達観してしまっているから外には出て行かないが、子供たちの中には外の世界に興味を持つ者もいる。その姉妹たちはそんな子供たちの一人というか、一団だったらしい。まぁ、とにかく魔法使いの子供たちに出会ったと理解していてくれたらいい。」「ふ〜ん?で?」「親父はうまくその姉妹たちと仲良くなったって言うか、取り入ったらしい。そんな中でそのスーツのシステムの作成を姉妹に依頼して完成させた。で、単刀直入に言うとその姉妹たちにさえ直に頼めば、瞬時に身体は男に戻るそうだ」「だったら、すぐに親父さんに聞いてその姉妹の居所を!」俺は勢い込んで腰を浮かしテーブルの上に手を付き俊秋に頼む。「わからない。行方不明だそうだ」「は?行方不明って?親父さんは接触できたんだろ?」「そのスーツを作った時に姉妹に言ったそうだ。二度と自分と接触しないようにして欲しいと……」「はぁ?なに、それ?」「自分に男性化スーツの作成の可能性や被験者を元に戻す手段が無くなるようにしたかったらしい」「……何、考えてんだ?お前の親父さん?」「知るか!”だって、そうしたら被験者は女として生きてくしか道はなくなるじゃないか?あはははは”だと……その後、背後で殴られるような音が聞こえて電話が切れたから、詳しくは聞けなかったけど、親父としてはそのスーツに対する対策を自らの手で消してるらしい」
「またワケのわからない事を…… ん?あれ? あのな、俊秋?」俺はある事を思い出して、俊秋に尋ねる。「なんだ?姉妹を捜し出す方法か?正直言ってお手上げ状態だ」「いや、ちょっと話が変わるけど、このスーツのマスクな?2種類あったよな?俺が使ってるヤツと黒髪の?黒髪の方のマスクの顔ってたたんであったからよく見なかったけど、あの顔って……」俊秋が突然立ち上がって、テーブルに付いていた俺の手を上から握る。「清彦! ……あのな?世の中には確かめちゃいけない事ってあると思わないか?たとえ確証があっても?いや、逆にあるからこそ!!」あぁ!ご主人様の目がこれまでになく怖い程、真剣だ…… だよなぁ?俺でさえ気づいた事だ。俊秋が気づかないわけがない。でも、うっかり確かめてしまって、認めたくないんだろうなぁ?自分の母親が元は…… しかし、あの親父さんブっとんだ人だとは思ってたけどまさか、そこまでとは……、そこまでするか?まぁ、夫婦仲は悪くないようだけど……「あ、あははは。そ、そうだよなぁ?あはははは。話を元に戻そうぜ?で、制作者にアプローチするのは絶望的だと?」「悪いが、絶望的だ。彼女たちの隠れ里の結界は完璧だそうだ。それに話によると出入口が異常らしい。場所が世界中どこにでも繋がって居るどころか、時間的にも前後何十年の単位で移動が可能らしい。土地ごとタイムマシン化してるようなもんだ。土地にそんな機能があるなら結界は完璧にあっちとこっちの世界を切り離してると見ていいだろうな。こっちから向こうを見つける手段はない。親父がそう仕組んでしまったからな。天文学的な偶然でも無い限りは……」「マジ?荒唐無稽も過ぎないか?はぁ」俊秋のあまりにも非常識な話に思わずため息をつく。
「親父の話だから今ひとつ信じられないが、信じる事しかできない。そのスーツ自体が荒唐無稽すぎるからな。でも現実にスーツは今、お前自身が着込んで着実に機能を果たしている」「わかった。とりあえず、一つの方法はダメだと。じゃ、残っているもう一つの可能性ってのは?」「……それは、お前の体質次第だ」「俺の体質?」「これも親父からの受け売りだけどな?今そのスーツの中はマナと呼ばれる魔法の素が入っていて、スーツが結界となってそれを逃がさないようにしている」「マナ?ファンタジーとかで使われるヤツ?」「あぁ、多分親父もそれから名付けたんだろう。それがスーツの中に閉じこめられ増殖しながら、高濃度になったマナがお前の身体からお前の情報を解析して女性へと変えている」「俺の情報を解析? あぁ、この前、言ってた俺が女性として生まれていた場合をシミュレートして身体を調整してるってやつか?」「そうだ。それで詳しい事はよくわからないけどまれにそのマナの影響を受けない体質の人間が居るらしいんだ」「マナの影響を受けない?でも、俺は実際にこうやって女の子になっているぞ?」「スーツの中でマナが増殖してるって言っただろ?お前はそういう体質だった場合はマナがお前じゃなくスーツの方を女に見せ掛けているだけって事だ」「その場合はどうなるんだ?」「スーツを開けた時にマナは全て放出される。それだけ。女に見せかけていただけだからお前は最初っから男のままだったってワケだ。スーツを脱いで男に戻るだけだな」「つまり、マナを受け付けない体質だったら俺は男のままって事か?」「そうだ。でもその可能性は問題にならないほど低いらしい」「あぁ?そういえばそれらしい事がパソコンに書いてあったっけ?」「…………」「…………」二人の間に沈黙が訪れる。
#>背後で殴られるような音#まさかこっそり話聞いてた奥さんに…ムチャシヤガッテ・・・
#ここで、天文学的偶然とやらがおきたら、それはそれで面白いかも。#例の魔女っ子たちと出会って、そうとは知らずに手放しちゃうとかw#もし、もう一つの黒髪のマスクかぶっていたら、どうなっていたんでしょうね。
「その二つだけか?俺が男に戻れる方法は?」「……そうだ」「……弱ったな。殆ど、女性化決定ってわけか?」俺がポツリと漏らす。「一応、俺なりに制作者を捜し出せるかやってみてるが、手がかりが全くない。時間さえ許せば、今後も引き続き制作者を捜し出す努力は続けさせてもらうが余り期待はしないでくれ」「いや、そこまでお前に迷惑は掛けさせたくないが…… なぁ?なんで高濃度のマナがいるんだ?」俊秋の申し出を辞退しようとした俺の脳裏にある疑問が浮かぶ。「え?どういう意味だ?」俊秋が聞き返す。「いや、俺がこのスーツを着た時にスーツはすぐに機能したぞ?だったらそれ以上のマナは要らないんじゃないか?でも、お前の言い方だとマナはスーツの中で増殖し続けるように聞こえたんだが?」「あぁ、そうか。そのことまではパソコンの方には載ってなかったな……いいか、清彦。気をしっかり持って聞いてくれ」俊秋が真剣な顔で俺を見つめる。「ん?どうしたんだ俊秋?」「そのスーツにはもう一つの機能がある。それを実行する為に大量のマナが必要になる」「もう一つの機能?なんだ、それ?」「因果律の書き換えだ」「因果律の書き換え?」「一ヶ月間、お前のデータを解析し終わったマナはスーツから解放されるとお前が初めから女として生まれてきたように世界を書き換える」「はぁ!?それって俺が最初から女だったって事になるのか?」俺は驚いて尋ねる。「そうだ。お前が男だったとゆう痕跡はどこにも無くなる。例外は本人のお前自身とお前がそのスーツを着た事を知ってる俺だけだ。この二人だけがお前が男だった事を知っている。それ以外はお前が男だった事を知る者はいなくなる」「えっと、ちょっと待て?そうすると俺の親父やお袋、兄貴達や姉ちゃん達は……」
「最初っから自分の子供は娘で、兄弟は妹だと認識される。子供頃からの友人も女の子のお前と遊んだ記憶を持つだろう」「……って事は経歴も?」「当然、女子として過ごした事になるだろうな?お前、免許証持ってたよな?」「あぁ、でもこの姿だから使えないんで車には乗れないけどな?」「多分、今のお前自身の女の子の免許証に変わってしまうだろう」「ほ〜、じゃ今の俺は女子大生って事になるのか?住んでる場所が小汚い男子寮じゃなくって、隣のおしゃれな女子寮に変わったりして?」「え!?あぁ……たぶん、そうなるだろうな?」「く、くくく」俺は俯いて声を漏らす。「いや、同情はするぞ。今まで男として生きてきたお前の存在が無くなるんだ。ショックは判るつもりだ」俊秋が俺の肩に手を掛ける。「ノープロブレム!なんだ!やるじゃないか、女の子スーツ!アフターケア出来るんなら最初に言えよ。あはははは。俺、ちょっと悩んじゃったよ!ダメじゃないか、俊秋。そういう事は始めに言わなくっちゃ?」そう言って笑って、近寄ってきた俊秋の肩をばんばん叩く。「は?えっと、清彦?何を言ってるんだ?」俊秋がワケがわからないと言う顔をする。「いや〜、だって俺が女の子になったなんて親父やお袋達になんて説明しようかとか、大学側にどう説明したらちゃんと卒業させてもらえるかとか、戸籍の問題とか色々と悩んじゃったよ?俺が女になってしまっても全部、不都合なく世界が改竄されるんだよな?」「あぁ、そうだが……」「だったら、オッケー!アハハハ、しかも女子寮に入ってる事になるんだ?らっきぃ〜、いやスーツを脱ぐ楽しみが出来たよな?」「いや、ちょっと待て!いいのか?お前の存在が、お前が今まで男として生きてきた存在が無くなるんだぞ?本当にいいのか?」俊秋が俺の両肩を掴んで揺する。
「まぁ、多少の寂しさはあるが、俺は過去を懐かしむほど老成してない!俺は未来に生きる主義だ」「いや、待て待て待て!ほっ、んとうにいいのか?戻れないんだぞ?」俊秋が焦って俺の肩をゆすりながら力を入れて俺に聞く「だから戻れないのは寂しいって?でも過去と未来を天秤に掛けりゃ未来の方が重要だろ?違うか?」「いや、まぁ言ってる事の意味は判らんでも無いが……、間違ってないか、それ?」「いや、まぁ、それにまだ俺が完全に女性化すると決まったワケでもないんだろ?俺がその魔法を受け付けない体質だったら男のままで住むし、何かのきっかけで制作者達にアプローチが取れたら戻れるんだろ?」「まぁ、そうだけど、絶望的に小さい確率だぞ?」「だから気にしないって!ダメもとダメもと。そう言えばさ?魔女たちが見つかったとして、元に戻してもらうのに代償か何か要るんじゃないのか?こんな高機能のスーツも作ってもらうのにかなりの代償が必要だったんじゃないのか?俺のミスでお前に莫大な出費を強いるのは心苦しいから、本当に無理しなくていいぞ?」「あはは……、その手の出費は気にしないでいいからな?」一瞬、俊秋の顔が引きつる。やはりこのスーツの作成にはかなりの出費が必要とされたのだろう、それを考えるともし魔女たちが見つかったとしても俺はこのままでいい。「ふふふ、そうか、そうか。数日後には俺は男に戻るにしても、女の子のままにしても、ちゃんとした存在になるんだ」俺はソファに座り直して楽にする。「あぁ、なんだか昨日からの不安がばかみたいだよ」「いや、俺はこの一ヶ月の悩みがバカみたいに思えてきてるんだが?」気が抜けたような顔で俊秋が対面のソファにストンと尻を落とす。その時、ドアがノックされて青葉さんが顔を覗かせる。
「清香ちゃん、おやつはいかがですか?俊秋さんも」「おやつ?」俊秋が時計を見る。「あぁ?もう3時か?オヤツってどうしたんです?いつもはそんなの食べてないのに?」「ふふふ、女の子だけの特権なのだよ。いつも3時には軽いティータイムが入るのさ。知らなかったのか、俊秋?」「あぁ、そう言えば3時頃に双葉さん達が何かを食べてるのは気が付いてたけど……、お前、本当に女の子が当たり前に生活してるよなぁ?」「清香は女の子だもん。で、青葉さん、このご主人様に分け与える分まであるんですか?」「さっき、双葉さんと若葉さんがお買い物に出かけてらしたんですけど、駅前のケーキ屋さんが期間限定のケーキのセールをやってたんで、色々と買ってこられたんですよ。俊秋さんの分もありますからいかがですか?」青葉さんがニコニコと俊秋を誘う。「そうですね。何か頭の方が疲れたんで甘い物でも補給させてもらおうかな?ご馳走になります、青葉さん」そう言って、俊秋が立ち上がる。「仕方がないな。お情けでケーキを食べさせてやろう。ご主人様、食堂に来るがいい」そう言って、俺も立ち上がり俊秋の先を歩いてドアに向かう。「ホント、お前って何様だよ?買ってきたのは双葉さん達だろ?」」笑いながら俊秋がついてくる。青葉さんが俺の隣に並んで笑って小声で尋ねる。「清香さん、俊秋さんと何をやってたんですかぁ?」「えっと、若葉さんから何を聞いたのかは知りませんけど誤解ですよ?」どうも今朝の出来事が尾を引いてるな……、早いウチに訂正しておかないと……そんな事を考えながら、3人で食堂の中へと入っていく。 ・「双葉さん?俺の顔に何かついてます?」俊秋がケーキを食べながら双葉さんに聞く。……にやにや笑いがもう一人増えていました。orz
# あと1,2回の更新で終わると言いながら…… 終われませんでした。orz
完結まで後もう少しなのに消えますマークが出てる誰かポイントをお願いします
#スレ落ちで未完なんて悲しすぎますね…#新スレ立てて続けるなりで完結までいってほしいところなのですが。
# え?あれ?夕べ、上げて寝た時点では"消えますマーク"は出てなかったのですが# …… あの後で出たのかな? 今、見たらただでさえ不相応だった高ポイントが# さらに加速していてびっくり。 # 一応、スレ落ちまでには完結させる予定でいましたけど、さらに延命いただいた# おかげで余裕ができました。(恩を仇で返すようなニュアンスが……(^^; )# このような作品を応援いただき、どうもありがとうございます。m(__)m・# ついでの戯れ言# この作品、描き始めの動機ってまろんどさんの「ゆでたまっ!」なんですよね。# 私としては当初からあのシーンが書きたかったのですが、SSが書き終わるまでに# ネタ元の本家作品が気が付いたら支援所から無くなっていたという……orz# 私は「ゆでたまっ!」って結構お気に入りだったので残念でした。 # で、ちょっと前から心に引っかかってたのが、「この作品はゆでたまに対するオ# マージュなのであのシーンはパクリではありません」といういいわけがちゃんと# 機能させていただけるのだろうか?と。(^^;# もちろん、まどんどさんから「それはダメだろ?」とつっこまれたら土下座して# 謝る覚悟ですが…… (^^;# 別作品でも前科があるので執行猶予がつくかは微妙ですけどね。w
#本人じゃないので何とも言えませんが、一部で騒動になってた2chの問題とは違う形式だし#リスペクト元書いてる上にTS作品(←これ重要!多分……)だから、問題ないような気がします。#むしろ、ゆでたまの様に続きを(オマケ+6作目まで)書いてくれと言ってきそうな気もw
# まぁ、話の全てが「ゆでたまネタ」じゃなくて、使ってるのはこの# 話の中の一部分で状況をネタとして使わせてもらってだけなので赦# してもらえるだろうと楽観視してる部分はあるんですけどね。(^^;# まぁ、この場合、問題なのは書く側が確信的にまろんどさんのゆで# たま有りきで書いていて読んだ人が「あ、こいつ"ゆでたまっ!"を# 真似てやがる」って、失笑を狙ってるところですか。# さすがに小ネタを使わせてもらう度にまろんどさんに許可を取りに# 行くのも鬱陶しがられるんじゃないかとお知らせはしていませんけ# ど、今回の騒動で気になったものでちょっとふれてみました。(^^;
なんだかなぁ…… 自らが蒔いたタネなんだけどね…… ・ ・ ・「だからね?誤解なんですよ」ケーキを食べ終わって俊秋が食堂から出て行き、女だけが残った。「ん〜?何の事かなぁ?」「私たち、清香さんに何も言ってないよ?」「清香さん、何か気にしすぎてませんか?」「えっと……、3人がそろってニヤニヤと笑ってる時点で私の邪推なんかじゃないと思うんですけど?」「えぇ?私たちが何を邪推してると?」双葉さんがにこやかに尋ねる。「どうせ、若葉さんから聞いたんでしょ?私が今朝、俊秋さんの部屋から帰ってきた事?」腕を組んで双葉さん達を睨みつける。ただ、この姿になってからは、迫力が無くなってるので「ニラミ」がまったく効かないのが悲しいけど。「やっぱり、俊秋さんの部屋でお泊まりしてきたんだ?」若葉さんが得意げに胸を張る。 ……なんで?「はいはい、白状します。真夜中に悪戯で俊秋様の部屋のベッドに忍び込みました。でも、それだけですよ?寝てただけで何もしてません」「嘘ぉ?清香さんみたいな可愛い女の子にベッドに入ってこられて男の人が何もしないわけ無いでしょ?」「そうよね?私が俊秋さんだったら、絶対に手を出すわね」「ひょっとして、避妊具を忘れたとか?」「いやいやいや、途中で忍び込んだ事を俊秋様に気づかれたけど、何かをしたら悲鳴を上げて双葉さん達を起こすって脅しましたし、ましてやソレ目的じゃありませんから避妊具なんて最初っから用意してませんよ!」俺のいいわけで3人が不思議そうな顔をする。「えぇ?じゃなんで俊秋さんの部屋に?」若葉さんが尋ねる。「えっと、だからちょっとした悪戯と…… すいません、本当に人に言えないプライベートな事情なんです。 ……それも杞憂に終わっちゃったんですが」
いや、まさか自分が男を再確認するためにトチ狂いました、とは言えないよな?「ふ〜ん?残念ね。そのまま男女の関係にでもなれば旦那様達も喜ばれたのに」「前にも言ったと思うけど、私達は清香さんなら俊秋さんとそう言う関係になっても応援するわよ」双葉さんと若葉さんがそう言って、微笑む。「えっと……確かに前にも聞きましたけど、それは不味いんじゃないですか?使用人とご主人様が関係を持っちゃうのは? てか、あれ?!なんで旦那様達が喜ぶんです?」俺は双葉さんに尋ねる。「えっとね。旦那さん達が結婚される時に色々とゴタゴタがあったらしいの」双葉さんが語り始める。「ゴタゴタ?」「ほら、俊秋さんのお父さんだけあって、お父さんも発明や研究だけしていれば幸せって人だったのよ」「そうなんですか?でも、旦那様って奥様と仲がいいですよね?いつまでも新婚さんみたいな雰囲気で?」「そりゃもう、旦那様が自分で見つけてこられたお嫁さんですからね」「あれ?清香ちゃんって旦那様達を知ってるの?確か、清香ちゃんと入れ違いに旅行に行かれたのですれ違いで会えなかったんじゃ?」青葉さんが首をひねる。マズい。「えっと……、雇われる時の紹介してもらいましたけど、俊秋様とは以前からの知り合いだったので、その時に旦那様達とも面識があるんですよ」青葉さんにそう言って誤魔化す。「まぁ、今でこそ旦那様はそれほど偏屈じゃ無くなってますけどね。それまでの旦那様は結婚話はおろか、お見合いの話をされるのを避けるために外国にまで逃げちゃうような人だったんですよ」「外国まで逃げるって……、それじゃ発明、研究も出来ないでしょ?本末転倒じゃ?」「旦那様は外国にもいくつか隠れ家的な研究施設を持っておられるんですよ」「資料はネットでどこからでも取り出せますからね」
あぁ?なるほど。そう言えば、このスーツも北欧のどこかで作られたって言ってたっけ?「そんなわけで、旦那様のご両親も旦那様がご結婚されるまで苦労されたそうなんですよ」「だからね?俊秋さんもその旦那様に性格がそっくりだから、結婚までが大変になるんじゃないかって、奥様が心配されてね」「だったら、俊秋様には少しでも女性と接触させて普通に付き合える精神を養ってもらおうってハラがあるんですよ、旦那様達には」「はぁ?ってことは、私の俊秋様の専属メイドとしての本来の役割はスキンシップ?」「そういうことですね。俊秋さんがそれを知ってるかどうかは知りませんけど、旦那様達の思惑はそこにあるみたいですよ」「でも、旦那様の心配通り、俊秋さんはどのメイドも気に入られなかったので旦那様達も半分諦めておられたんですけど」「意外にも俊秋さんの方で清香さんを雇われたんで、旦那様に報告したら奥様が喜んでおられました」双葉さんがそう締めくくる。「つまり、私は織田家の跡継ぎのための嫁取り対策って事ですか?」「それだけって事じゃないですけどね。でも清香さんはメイドも俊秋さんのお相手もリッパに勤めていますからまさに適任だったわけですよ」「ですから、ここで清香さんが俊秋さんと関係が出来ちゃったら、さらに上出来なワケですよ」「いえ、それはマズイでしょ?確かに理由は今聞きましたけど、さっきも言ったようにご主人様と使用人ですよ?織田家って名家なんでしょ?」「それは大丈夫なんじゃない?奥様だって結婚前は旦那様の助手をやってらした普通の家の方だって聞きましたよ?」「うん、清香ちゃんなら俊秋さんと息が合ってるからうってつけだよ?」「………… はっ! いやいやいや、ちょっと待って?何気に話をしていたら私が俊秋様と付き合う話になってる?!」
うっかり会話を続けている内にいつの間にか会話が俺が俊秋と結ばれるような流れになっている事に気づき、正気に返る。「だから、俊秋さんと付き合っちゃっていいのよ?」「夕べ、結ばれたんでしょ?おめでとう♪」「お赤飯、炊こうか?」「最初の双葉さんはともかく、若葉さん、青葉さん、なんて事を言うんですか!だから誤解ですって!私は処女ですから!」ちなみに、お赤飯を炊かれるような体験もしてませんから。俺は双葉さん達にブンブンと首を振って否定する。「えぇ?本当に何もなかったの?」「うそぉ?清香ちゃんほどの女の子が隣で寝てるのよ?」「男だったら我慢できるわけ無いでしょ?」メイドさん達がひそひそと話し合う。「俊秋さんって女の子に興味がないのかしら?清香さんの事が嫌い?」「でも、日頃の様子からは清香さんを嫌ってるようには見えないよ?」「だったら、やっぱり女の子に興味がない?まさか、男の子に……」黙っていると俊秋に大変な評価が確立しそうなので、慌てて口を挟む。「ちょっと、ちょっと!俊秋様はノーマルですよ!男色かでもショタでもありませんから!」「だったら、なんで清香ちゃんに手を出さなかったのよ?」青葉さんが頬を膨らませてブー垂れる。えっと?俺、今青葉さんに逆ギレされてる?「いや、だから……、私と俊秋様の間には色々と事情がありまして……」俊秋は俺が男だって判ってるから、ちょっとやそっとの事では俺に手を出さないんですよ、って言えたら苦労がないんだけど……「……俊秋さんが同性愛者ってのは問題よね?」「そうかぁ、だから女の人になびかないのかぁ……」「意外な真相だったわね?でもこれは織田家の浮沈に関わる問題よ?」「お〜い!聞いてますぅ?俊秋様はノォマルですよぉ?」俺は手でメガホンを作って勘違い娘達に呼びかける。
てか、女の子ってこういった噂話やゴシップの類って好きだよな?「よし、わかりました。それでは、清香さんに俊秋さんの潔白を証明するチャンスを上げましょう!」パンッと手を打って双葉さんが俺に微笑む。はいぃ?話がおかしくなってませんか、双葉さん?「そうね。ご主人様の潔白を晴らすのは専属メイドの使命よね?」青葉さんまでにっこりと俺に笑いかける。「えぇっと?私に何をさせようと?」「清香さんが俊秋さんを誘惑して、のってきたら俊秋さんはノーマルだと証明されます」若葉さんも俺を見て微笑む。……あなた達、単に面白がってるだけでしょ?そう言えば、今日はあまり仕事がないって言ってたような? ・「……で、何で私はお化粧して、昼間っからネグリジェなんて着てるんでしょう?」俺は虚ろな目でメイドさん達に問いかける。「そりゃもう清香さんのこの姿を見て俊秋さんがノーマルなら何か反応があるでしょ?」「お日様が上がってる内にするのは暇つぶ……、夜にやって盛り上がりすぎて私たちが止めに入れないと大変でしょ?」「……今、何か言いかけて、言い直しませんでした?」「はっはっはっ、気にしない、気にしない。さて、これからの清香ちゃんの使命は、俊秋さんの部屋に行って俊秋さんを誘惑する事にある。清香ちゃんはりっぱに使命を果たし、ご主人様に掛かった疑いをはらしてくれたまえ!」青葉さんが俺の前に立って(慎ましい)胸を張って部屋の外を指さす。「たまえ、って青葉さん。完全に遊んでるでしょ?それにいくら私のノリがいいからって昼間っからこういうマネをするのが異常だって事くらいはわかりますよ?私、いくらなんでも双葉さんだけはこういう事をやらない人だって思ってたんですが?」
「あはは、どうも最近は私も清香さんに影響されてきてるみたい。だって清香さん達を見てると楽しそうで混ざりたくなるのよ」笑って応える双葉さん。 俺?俺の影響?自業自得? ・ ・ ・「えっとな?お前は昼間から裸同然の格好で俺の部屋に入ってきて一体、何をやってるんだ?」ご主人様がモニターから顔をそらさないまま、俺に質問される。不思議な事に若干、肩と声がお震えになっておられる。「えへへ……、ご主人様を誘惑してるように見えませんか?」「お前はなぁ? 黙って部屋に入ってきてベッドに直行して毛布にくるまるような行為を誘惑というのか?」「いや、お前も着てみると判るぞ?寒いんだよ、この格好」俺は俊秋のベッドの上で毛布をクルクルと身体に巻き付けた状態で寝ながら話す。「俺は昼間っからマッパにネグリジェを着て屋敷内を徘徊するような変態な趣味はねぇよ!」「やん、ご主人様ったら清香の事を変態みたいに……」「りっぱに変態だよ!大体、その毛布にくるまってベットで寝た状態を何とかしろ!」「やだぁ!ご主人様ったら清香の裸に興味津々!?」俺は部屋の外に聞こえるように声を上げる。「大声出すな!俺の部屋に痴女がいるって双葉さん達に聞こえるだろ!」その双葉さん達が部屋の外で耳を澄ましている筈なんですけど……「えっと、とりあえず"このままじゃ清香の裸に欲情するから帰れ"って怒鳴っていただけると非常にありがいんですけど?」俺は毛布の中から机の向こうの俊秋を見上げて小声で頼む。「お前の裸なんかで何で欲情しなくちゃいけないんだよ!このバカ!」俊秋が声を荒げる。 ほら、やっぱり…… 清香ちゃんレベルの女の子でも…… やはり男にしか……あぁ!扉の外でますます誤解がぁ……
俺がチラッと扉の方に目をやった事に何かを気づいたのか、俊秋が静かに席を立ち扉のノブを掴むとサッと引く。「わっ」「きゃっ」「あんっ」三人が部屋の中に転がり込む。「何やってるんですか、双葉さん? ひょっとしてこの太巻き女の奇行と関係があるんですか?」呆れたような目でメイドさん達を見下ろす俊秋。居心地の悪そうな目で笑うメイドさんトリオ。「いやん♪清香は太ってなんかないもん♪」毛布にくるまって身動きのしにくい状態で抗議する俺。「だまれ、首謀者!」え〜?俺が首謀者なの?濡れ衣だよぉ! ・ ・ ・「つまり、俺が女性に興味が無いじゃないかと?」俊秋がメイドさん達3人をソファに座らせて、対面で腕組みをして事情を聞いている。「えぇ、まぁ……」「だって、清香さんが隣で寝ていても手を出さなかったって聞いて……」「普通は女の子が隣で寝てたら、男性ならその女の子に何らかのアプローチをするでしょ?ましてや清香さんはかなり高レベルの女の子ですよ?」「高レベルの女の子ってのは、そこのベッドの上で太巻きになってるヤツの事ですか?あれに色気を感じます?」「うっふん?」「うっふん、じゃねぇよ、バカ!なんで疑問系なんだよ!」俊秋が俺のお色気攻撃をいともあっさりと打ち砕く。「いや、まぁ……あの身動きできない状態の清香さんに何かを感じるのはサディストだけだと思いますけど……」双葉さんが俺の方に顔を向けてそんな事を言う。「てか、何で双葉さんまでノっちゃうかな?普通なら止める役目でしょ?皆の統括役なんですから?」「だろ?私もそう言ったんですよ、ご主人様」俺が俊秋の言葉に賛同する。「うるさい!そこの海苔巻き、お前もいい加減にベッドから出て、ここに座れ」俊秋が自分の隣を指さす。
#ぜひ図書館に!
#「うっふん?」で耐えられなくなったw#ゆでたまパート(と便宜的に言わせていただく)は確かにあったけど、#あれ除いても充分話成り立つし面白いしで、気にすることもないんじゃないの?
#お邪魔いたします。#よもや、オマージュなどと嬉し恥ずかし事になってくださっているとは。#という訳で、一言で感想を言いますと、#「抜けます」#という事で(ぉ#さて、というわけで、なんだか気にさせてしまっているようなので、その点について少々。#例の件で問題視したのは、#「ゆでたまっ!を知っている人がいないところで、原作無記名でオリジナルのように振る舞った」#という点なのです。#こちらで発表する分には、その点は一切問題無いと考えております。#むしろ、こうして私の目に入るであろうところで書いて下さるのは、非常に嬉しい事でございます。#私の顔もついついほころんでしまうというものです。#しかし、こうなると、ゆでたまっ!を図書館から削除したのが申し訳なく思います。#せめて一個目だけでも再掲載しようかと真剣に悩んでいたり。#まあ、それはともかくとして。#素直に、パロディネタとして楽しませていただきました。#ありがとございました!
# うわっ、ご本家登場! 正直、お目にとまると思っていませんでした。# いや、申し訳ありません。お気を使わせてしまったようで。(^^;# そう言っていただけると嬉しいです。> #せめて一個目だけでも再掲載しようかと真剣に悩んでいたり。# いや、本当に名作ですよ、"ゆでたまっ!"は。# しかも、この作品って妙にインスピレーションを刺激されるんですよね。(^^;# あのシーンから枝葉が前後に伸びて、この作品の骨格が出来てさらに増殖して# こんなバカ長い作品が出来てしまった、と……w# さて、という事で次回更新であっさりと終了予定。応援して下さいました皆様# ありがとうございます。m(__)m
「ご主人様のエッチぃ、清香の裸に興味があるんだ?」「ねぇよ!毛布を巻いたままでいいから!てか、お前はそんなネグリジェまで持ってたのか?」「それは私の勝負寝間着です」若葉さんがおずおずと手を挙げて答える。「……若葉さぁん?」俊秋が肩を落として顔をかっくんと下に向ける。「まぁ、いいです。皆が清香の影響を受けてる事はわかりました」「いえ、清香さんに非があるわけでは」「そうです。清香ちゃんはイヤがってたけど私たちが無理矢理に」「うん、これは私たちが勝手にしでかした事ですから」三人が俺をかばってくれる。やっぱり、優しいなぁ、皆。「あ〜、はいはい。妙な人徳みたいなものがあるな、お前」俊秋が俺の頭をぐりぐりと撫でる。「ご主人様、ごろにゃ〜ん」俺は毛布越しに俊秋にすり寄る。「調子にのんな! わかりました。この件は不問にしておきます。一応、言っておきますけど、俺の趣味はノーマルですよ」「でも、清香さんの裸に興味がないって?」青葉さんが俊秋に尋ねる。「ノーマルですけど、清香だけは事情があってそういう対象にならないんですよ。別の女の子がこういう格好をしていたら視線も合わせられませんけど、清香は対象外なんです」そう言って、俊秋が毛布の中からネグリジェの端をつまみ上げる。「でも、清香さんのスタイルって高レベルですよ?」若葉さんがそれでも食い下がる。「高レベルなのは認めますけど、高レベルでも、です」「ね?言った通りでしょ?」俺が隣でうんうんと頷く。「えいっ!」青葉さんが対面からいきなり俺の毛布を引っ張る。「ひゃっ!ちょっと!」毛布の上半分が俺から引きはがされる。「青葉さん、何を! うわっ!バカ清香!さっさと胸を隠せ!」俺の薄衣の下の胸が透けて見え、俊秋が目をそらせる。
「ちょっと待て、不可抗力だろ、これは! 青葉さん、毛布から手を放して下さい!」俺は慌てて青葉さんから毛布を取り戻す。「いきなり、何をするんですか、青葉さん」俺は青葉さんに抗議をしながら毛布を身体に巻き付ける。「本当に。驚くじゃないですか」俊秋も同意する。「いえ、冷静に対処したら俊秋さんは清香ちゃんに無反応でいられるけど、不意打ちでもそうなのかなぁ?って思っちゃったので。ごめんなさい」青葉さんがぺこりと俺たちに頭を下げる。「俊秋さん、反応したね?」「しましたね?まるっきり意識してない事もないんだ?」若葉さんと双葉さんがこそこそと話し合う。「いきなりだったら、誰だって驚きます!」「ガチホモだったら無反応よね?」「それか嫌悪感を表すもんね?」「俊秋さんの顔は赤くなってる」「わかりました、わかりました。そりゃ、こんなヤツだって見かけは完璧に女ですから、俺も男なので少しは反応しますよ!でも異性としては見てないのは本当ですから!」「はいはい、わかりました」「脈、あるよね?」「ある、ある。意識してないとあの反応は出ないよ」双葉さんの後ろで若葉さんと青葉さんがひそひそ……「それでは俊秋さん、失礼をいたしました。今回の事は使用人として出過ぎたマネだったと反省してます」そう言って、3人が俊秋の前で頭を下げると静かに部屋を出て行った。ドアの向こうで妙にはしゃいだ声がする。あれは余り反省してないな?「あははは。よかったですね、ご主人様?同性愛者容疑が晴れて?」「あはは、じゃねぇよ!バカ!」俊秋が俺の頭をはたく。「お前も用が済んだらさっさと出て行け!風邪を引く前にその寝間着を着替えろ!ったく!」俊秋がそう言って、腰に手をやって外を指さす。
「はいはい、わかりましたよ」俺もソファから立ち上がり、毛布を身体に巻き付けたままドアに向かう。「本当に…… お前をメイドにしてから屋敷内が賑やかで困るよ」俊秋がぶつぶつと言いながらパソコンの前に戻る。「……すまないな?ここにやっぱり俺は不要だったか?」俊秋に背を向けたまま静かにつぶやく。「い〜や、研究の邪魔にはなるけど…… それなりに……、な」再び、パソコンのモニターに向かって顔を上げずに答える。「……そうか? ………… だったらこれは……ご・ほ・う・び!!」俺は身体に巻き付けてた毛布を脱ぎ去り俊秋のベッドに放り投げると両手を広げる。淡いピンク色のネグリジェの下にはブラはおろか、ショーツすら付けていない裸体が透けて見えている。俺の声で思わず顔を上げた俊秋の顔が赤くなる。「こ、このボケぇぇぇ!!さっさと着替えろぉぉ!!」ワイヤレスマウスが飛んでくる。ガンッ!「あははは、それではご主人様、失礼しま〜す!後で、ベッドメイキングやり直しに来ますので、よろしく〜!」俺は笑って、部屋を逃げ出す。「夕飯まで顔を出すな!」部屋から俺の背に声が届く。いや、まぁ、こうやっとけばこの件の俊秋の印象は俺に移るだろうしね?俊秋が、双葉さん達に対して変なわだかまりみたいなものを強く持たせるわけにはいかないじゃないか?少しでも削っておかないとな。・それから数日、穏やかで平和な日が続いた……そしてついに…… * * * ・ ・その日は俺も朝から俊秋の部屋で自分のノートパソコンをいじっていた。パチッ!「いてっ!」俺は首筋に走った軽い痛みに思わず手を当てた。「ん?どうしたんだ?」俊秋が顔を上げる。
「いや、首筋に何か……、あれ?あれれ?うなじにファスナーが……」首筋に手を伸ばしてファスナーを摘んでみる。「あぁ!ちょっと待て!引っ張るな、清彦!」俊秋が慌てて俺のところに飛んでくる。「これって、ひょっとして変身が完了しちまったって事か?これを引っ張るとこのスーツはもう脱げるんだろ?」俺が俊秋に尋ねる。「脱げる!脱げるから待てって言ってるんだ」そう言って俺のうなじを調べる俊秋。「なんだよ?どこかおかしいのか?」「おかしくない。いいか、清彦。よく聞け。前にも言ったけど、このファスナーを開けるとお前の周りの世界が変わるんだぞ?お前が生まれた時から女性だったと世界が認識してしまうんだぞ。お前が男だったという証は何もなくなってしまうんだ!いいのか?」「それは聞いたよ。でも、これを開けないと俺が本当に女の子になってしまったのか、このスーツの効果を受け付けない体質で男に戻るかがわからないだろ?」「でもな?よく考えろよ?とりあえず、このスーツを開けさえしなければ現状は維持されるんだ。開けても男に戻れる確立は低い。だったら開けない限りは"清彦"という存在は消えないんだ」俊秋が真剣な目で俺に説明する。つまり、このファスナーを下げた瞬間に俺は"清彦"という存在を失う確立が非常に高い、と。でも開けない限りは俺は清香の姿のままだけど、清彦という存在を失う事はない、と?「でもな?脱がないと俺は手詰まりのままなんだぞ?大学の卒業も就職活動もままならないままだ。だったら、俺はこの不確定な状態の”シュレディンガーの清香ちゃん”の入ったスーツを開けて存在を確定する事を選ぶよ」「いいのか、本当に?」
「いいって。これでも一応、俺なりに真剣に考え抜いたんだぞ?」そう言って、俺は俊秋の部屋の扉に近づくと外を確かめて、双葉さん達に気づかれないように扉に鍵を掛けて戻り、服を脱ぎ始める。「おい……」俺を制止するか見守るかの判断が付きかねるようにその場で立ちつくしたまま俊秋。「ん?なんだ?ひょっとして裸になったついでに俺に筆下ろしをして欲しいのか?俺が女でいるうちに?」そう言って、淡いブルーのブラのホックに手を掛けて笑う。「ばか! ……いいよ。わかった。お前が決めたお前自身のことだ。お前の好きにしろよ。俺は黙って見ててやるから」俺は黙って笑って、同色のショーツも脱ぎ捨て真っ裸になって俊秋の前に立つ。「いいか?脱ぐぞ?ひょっとしてこれが見納めになるかも知れないからよく目に焼き付けておけよ」そう言ってポーズを付けて笑う。「ばか、見たくなんかねぇよ!お前の身体なんか!やるんだったらさっさとやれ。目が腐る」俊秋もそう言って静かに笑う。「あん♪ご主人様ったら清香の身体が名残惜しい癖にぃ。 ……いいか?いくぞ?」俺は背中のファスナーを指で摘み、静かに下ろし始める。 ジ、ジジジジ……俊秋の目の前で、俺の「スーツで覆われた身体」ではない「本当の身体」が徐々に現れていく…… ・ そして…… 俺は翌日、俊秋の屋敷を出て、寮に戻り…… 3月には無事に大学を卒業し…… 4月には決まっていた就職先に就職を果たした。・ − 了 −
・ ・ ・ エピローグ「ただいま〜!ご主人様ぁ。あなたの忠実なメイド清香、たったいま実家より戻りましたぁ!」俊秋の部屋を勢いよく上げて俊秋に帰宅の報告をする。「あぁ、お帰りどうだった?久しぶりの実家は?」相変わらず俺のご主人様はパソコンから顔を上げずに応答する。「いやぁ、久しぶりに帰ったってのに相変わらずこき使われてさぁ」ソファの横に大きめのトランクを置き、どかっと座る。「しかも、今は女だろ?着物を着て仲居さんに混じって働かされるんだぞ?こっちで働いてる方が楽だったぞ」「偶にはそうやって真面目に働く喜びに目覚めた方がいいぞ?」こちらを見もせずにカチャカチャと音を立てながら、そんな無礼な事を言うご主人様。ご主人様の分際でメイドに働く喜びに目覚めろ、とはなんて言い草だ?「ひどぉい、ご主人様。お屋敷でも清香は働き者だって評判なのにぃ!」「はいはい。じゃ、帰ってきたんならその働き者なところをさっさと見せてもらおうか」「あん♪ご主人様の鬼ぃ!せっかくご主人様の為に急いで帰ってきた健気なメイドさんに一休みさせる余裕くらい与えなさいよぉ♪」「だったら、その女言葉を止めろ!気色悪いんだよ!」「清香、女の子だもん…… うわっ、ごめん!ごめんなさい!マウスは投擲武器じゃねぇから!」ソファから立ち上がり、逃げ腰になる俺。 机の向こうでは俊秋が立ち上がり、マウスを振りかぶっている。が、その体勢で目を丸くして俺を凝視したまま固まっている。「なんだ?その格好は?」
「あ?これ?いやな。実家に帰ったらさ?俺の存在って本当に生まれた時から女の子だったことになってたんだよ?中村旅館の末っ子の清彦くんは末娘の清香ちゃんになっていて、清彦君なんて男の子はどこにも最初からいませんでしたぁ!って」「あ……そりゃショックだったろうな?なんて言ったらいいか……」「いや、それはいいんだよ。そうなることは了解済みであのスーツを脱いだんだから」「いいのかよ!お前の22年あまりの存在だぞ!」「あぁ、それは気にしないから。でな?俺が使ってた筈の子供部屋がな?小兄ちゃんと同室だった筈なのに姉ちゃん達と同室って事になってたり、アルバムに俺が女の子姿の写真が貼ってあったり、俺の過去が女の子仕様に完全に変わっていていろんな発見があって結構、面白かったぞ?」そう言って笑いながら続ける。「特にな。俺の子供の頃の写真ってすごいぞ?特に幼児時代。金髪の可愛い女の子なんだ。我ながらすっげぇ、可愛いの。お前も見たら絶対にロリに目覚めるぞ?成人女性に興味がないお前も幼女だったら萌えるんじゃないか?青葉さんに言われてアルバムも持って帰ってきたんだ。見せてやろうか?」俺は旅行鞄のトランクをポンポンと叩く。「俺はノーマルだよ!対象はちゃんと成人女性だよ!お前は俺に何を求めてるんだ?しかも、自分の写真でご主人様に性的欲求を満たさそうとするな!本当に病的にポジティブだな?それで俺の質問はどうなった?」「あはははは。だから話はこれからだよ。それでさ?アルバムを見てたら高校時代の俺がセーラー服で写ってんだよ?でさ、ためしに衣装棚を探ってみたら出てきましたよ。清香ちゃんの高校時代のセーラー服!ちょっと着てみたら兄ちゃんや姉ちゃん達に大受け!清香ちゃん、まだ現役の女子高生で通じるよ、って」
「お前ンチは兄姉そろって全員ポジティブなのか?」「そうなるとこれは、是非ともご主人様にも見せてやりたいじゃないか?だから、こうやって」そう言って俺は着ている紺のセーラー服の袖を広げ、くるりと回ってプリーツスカートの裾を広げてみせる。「どうだ?このあたりの学校ってセーラーじゃなくって、ブレザーだから新鮮だろ?ご主人様ぁ?清香の女子高生姿は目の保養になりましたぁ?」そう言って、ご主人様にほほえみかける健気なメイド清香ちゃん。「あれ?どうした、俊秋?具合が悪いのか?」気が付くと俊秋が机に両手をつき、がっくりとうなだれている。「いや、何かどっと疲れが……」「まぁ、ご主人様。清香のいない間に不健康な生活でもしてらしたんですか?ダメですよ、清香に頼った生活に甘えてちゃ?」「いや、この疲れはお前が帰ってきたからだと思うんだが?」「あははは、ご冗談ばっかり!じゃ元気になる為に清香のアルバムをごらんになります?元気になって萌え悶えちゃいますよ?」そう言って、笑顔でトランクに手を掛ける。「いや、いい…… とにかく、帰ってきたんなら今日は自分の部屋でゆっくりとしてろよ。仕事は明日からでもいいから……」そう言って俊秋は椅子にストンと腰を落とす。「……そうか?まぁ、いい。 後でまた来るからな」そう言って、俺はトランクを持って部屋を出て行きかける。「あれ?ちょっと待て、清香!」そんな俺を俊秋が呼び止める。「ん?なんだ?」「お前、そのセーラー服はどこで着替えたんだ?鞄を持っているって事は部屋にはまだ帰らなかったんだよな?」「え?あぁ、ウチからここに直行だからな?」「えっと…… まさかとは思うが…… いや…… まさか?」「なんだよ?一人で何をぶつぶつと?」
「まさかとは思うが、実家からそのセーラー服を着て帰ってきたのか?」「当たり前じゃないか?他にどこで着替えてくるってんだ?うちに帰るのに駅のコインロッカーででも着替えるのか?バカなことを?あはは」「バカはお前だぁ!よく恥ずかしくないな?よく警察に不審尋問されなかったもんだ」「されたよ?不審尋問」「はぁ?どういう事だ?」「駅前で交番のお巡りさんに呼び止められてな。まぁ、金髪の見慣れない制服を着た女子高生が駅前でこんなトランクを持って歩いていれば仕方がないかもしれないけどな?」「それで…… どうしたんだ?」「いや、どうもこうも……、俺の顔を見たら「なんだ、織田さんのお屋敷の清香さんだったんですか」ってそれだけ。いやぁ、織田さんチの金髪のメイドさんの知名度ってかなりあんのな?あはははは」頭を掻いて、俯いて肩を振るわせる俊秋に笑いかける。「バカ野郎!いい大人がセーラー服で街をうろついてウチの痴名度を上げてんじゃねぇよ!」俊秋の怒声が部屋に響きわたる。「あ、待てって。マウスを投げるな!あぶないじゃないか?」「うるせぇ!このバカメイド!」俺はセーラー服のスカートをはためかせてトランクをひっつかみ、笑って部屋から逃げ出す。 あ、清香ちゃん、帰ってたの?何、その服?可愛い! 清香さん、お帰りなさい。実家どうでした? なぁに?また俊秋さんに何かしたんですか?あははは「あははは、ただいま〜」 ・ 父さん、母さん、清香のご主人様は今日もとてもお元気です。 俺の職場は毎日が賑やかで楽しい所です。 E N D・# この長い作品もやっと終わる事ができました。応援して下さった皆様、# どうも、ありがとうございました。m(__)m
#完結、本当におつかれさまでした!#それにしても本当に図太いメイドさんだなぁ…w#こういう人だったからこそ、俊秋も大分救われたって気がしますね。(ある意味受難ですけれどw)#このスレ読んでる間、色々とシチュ妄想してしまいましたよ。#まだ事情が明らかになる前の段階から色んな展開を予想してました。#「脱いだら戻れる」展開だったらどうなるんだろうって考えたりもしてましたし。#マスクも二種類でしたし、もしかしたら無事男に戻れてもに何かの事情で着なおして、今度は黒髪のほうを装着するって感じのシチュを想像したり、#他には、実は身体のほうももう一着あって、やむなく俊秋も着る羽目になったりとか・・・#(黒髪のほうにあんな事情があったって判明する前に予想したことです。まさか奥さんとはw)#(「俊秋が黒髪のほうを着る羽目になった」ってシチュを想像しながら黒髪メイドさんの画像をこっそり集めてたのは内緒)#あと、最後まで「双葉さん達が実は…」みたいな大どんでん返しが無いかなあって思ってました。ごめんなさい。#(双葉さんが偽者で実はお父さんが化けてた、とか気になったので約束を破って顔を変えて様子を見に来た魔女だったとか)#最後まで残った疑問としては、「マスクをかぶらずに身体だけ一ヶ月着続けた場合どうなったのか」と「身体だけ着た状態ですぐ脱げるのか、脱いだ場合どうなったのか」っていうところでしょうか。#前者は、顔だけそのままなひどい状態になるのか、それとも顔も影響して変化したりするのか…#後者は最初に着た段階で性器まで変化してる感じだったんで、やっぱり身体だけでも着た段階でアウトなんでしょうかね。#ともかく、この数ヶ月間このスレのお陰で本当楽しかったです。ありがとうございました!
#すばらしいです。この物語のタイトルは何になるのでしょうか?
# 完結お疲れ様でした。# 清彦君、途中から性格変わってないか?# もしかしてそう言う性質もあるんだろうか > 女体化スーツ# しかし、子供の頃から金髪って、絶対問題起きてますよね、隠し子疑惑や浮気疑惑 > 清彦改め清香の実家## 結果論、本人が納得しちゃってるからいいんだけど、これって# 着用当初に無理やり脱がせていればほぼ影響無しで脱げたような気が。# 怪我とか緊急時は無理やり脱がす選択肢はあったみたいだし、中で変化させながらってことは早期であれば、影響は殆どなかったのでは?# とか、考えると慎重になった分、後手に回ったってことでしょうか。### それにしても清香ちゃんの将来が気になりますね。# 俊秋の母親を作り上げたボディスーツだとすると少なくともこの時点では俊秋の母親の昔の服とかがベスとマッチするってことですよね。# # 後日談を期待しつつ、改めてお疲れ様でした。
> お前ンチは兄姉そろって全員ポジティブなのか?#この疑問ともツッコミとも諦めともつかないセリフに笑った
#完結おめでとうございます。素晴らしい作品でした。> ”シュレディンガーの清香ちゃん”#は上手い例えだなあw#清彦と織田家の皆さん全員(=俊秋の両親+メイドさんトリオ)#とは以前から面識があったみたいですが、#清彦→清香に因果律が置き換わったことで前々からの#知り合いだったということに変わっているのかな?>俊秋様とは以前からの知り合いだったので、その時に旦那様達とも面識があるんですよ#と言ってるから、両親に関しては嘘から出た実ですが。
#完結おめでとうございます! 超GJッス!!#因果律だけが書き換えられて、体は男のままっていうのを妄想してました。#世界の認識にあわせるためにふたたびスーツを着込むことに。#まさしく自由に動き回れる脱出不能の拘束具…… みたいな。#あ、でも老けないから問題があるかもw(削除キー1234
#素晴らしい作品でした。主に笑いがw#図書館どうのこうので↑で揉めていたようですが、#本家ゆでたま共々、是非保管して欲しいですね。#ただの1読者風情が偉そうで申し訳ないですけども・・・
#お疲れ様です。思わずローカルに保存してしまいました。#上の方と同様になりますが、> ”シュレディンガーの清香ちゃん”#は笑ってしまいました。そして>#清彦→清香に因果律が置き換わったことで前々からの>#知り合いだったということに変わっているのかな?#は、確かに気になりますね。どうなんでしょう。##最後にわがままを一言。#「アフターストーリーが読みたいッ・・!」#・・結局清香はラブい関係になるのかとか、俊秋の両親と対面するときの様子とか、気になって仕方ありません/(^o^)\
# 沢山のコメント、ありがとうございます。すごく嬉しいです。# こんな作品でいろいろと皆さんの想像力を刺激できれば幸いです。(^^>すばらしいです。この物語のタイトルは何になるのでしょうか? # タイトル…… なんでしょうね?昔っからこの手の物を考えるのが苦手で。w# 何か言いタイトルを付けられるといいんですけど。# おかげで何人の"ああああ"が世界を救い続けたことか……w# 図書館に入れるのはなんだか…… まぁ、後日、広大なネットの片隅のどこかに# ひっそりとのるかも知れませんが…… 図書館はご勘弁下さい。恐れ多いです。.# 以下、嘘だよね?ってほどの高ポイント頂いたお礼代わりに、以前に別スレに書# いた外伝もどきの完成版SSを上げておきます。(主役はとても外道な人に関わっ# たお人好しな誰かさん) # 本当にありがとうございました。m(__)m
事務所でいつものように仕事をしているとドアを開けてここの所長である先輩が入ってきた。「先輩、また遅刻ですよ?いい加減早く起きられるようになって下さいよ」僕は先輩に向かってパソコンを打ち続けながら文句を言う。「バカな事を言うなよ。27年間寝坊し続けた俺に今更、早起きが出来ワケがないだろ?寝言は寝てから言え!」「なんで注意した僕が怒られなきゃいけないんです?悪いのは先輩でしょ?」「まぁ、そうなんだけどな。すまん。朝、出がけにイヤな事があって引きずってしまった」そう言って来客用のソファにドカッと座る。「なんです?イヤな事って?」「親に見合いを薦められた……」そう言って悪夢を払うかのように両手の平でゴシゴシと顔を擦る。「いいじゃないですか?どうせ先輩の家だから相手は綺麗な美人で頭も良くって……って非の打ち所の無いようなお嬢さんばかりでしょ」そう、この織田先輩の家はいわゆる名家ってヤツだ。たった二人だけのこの事務所だって実際は利益なんて殆どでない筈なのにやっていけるのは先輩の実家から回される仕事のおかげだ。「それがイヤなんだよ。俺がそんな女性と合うと思うか?」「合いませんね……先輩のように自分勝手の我が儘放題で相手の都合も考えずに迷惑を掛け倒す人は女性を幸せに……ぐぇっ!」机に向かいキーボードを打つ僕の首が締め上げられる。「だれもそこまで言えとは言ってない。たとえ、本人も認める事実だとしてもな?」「げほっ、いいじゃないですか?見合いくらいすれば?」「イヤなんだよ!そんな事をするくらいなら俺は研究室で好きな事をして過ごす方がいい。女性と付き合うなんて面倒な事ばかりじゃないか?せめてどこかにいないか?俺の事をよくわかっていて、俺が何をしても受け入れてくれる懐の大きな女性が?」
「かなり巨大な懐を必要としますね、それって。銀河系が入っちゃう位の大きさですか?」そう言いながらできあがった書類をプリントアウトする。「お前、本当に口が減らないね?出会った時のお前は本当に純粋だったのに?先輩、先輩って目をキラキラさせてついてきたのに」「あの頃は、世の中って物を知りませんでしたからね」「そう言えば俺とお前の腐れ縁って10年くらい?」「ですね。高校で科学部の先輩、後輩として出会って3…4…3…丁度10年になりますね。なんで他の奴らと一緒にさっさと見限っちゃわなかったんだろ?」そう言って立ち上がってプリントアウトされた書類を先輩に手渡す。「本当に。あの頃の純粋な吉秋はどこに行ったんだろうな。ま、そう言うわけで俺は今日から自分探しの旅に出る」そう言いながら、先輩は自分の机に向かうと、渡した書類の所定の欄にサインをしてハンコを押す。「はぁ?何を言ってるんです?」「見合いを断るのにも疲れた。私は旅に出ます、探さないで下さい」「ふざけないで下さい!先輩が行方不明になったら事務所はどうするんですか?」「俺はお前に伝えられる事は全て伝えた。あとはお前一人でも任せていける」そう言って僕の肩をガッシと掴む先輩、その顔はとてもさわやかだ。「先輩から教えて貰ったものなんて何もないですよ?事務関係の手続きは全部、僕が自力で覚えたんです。先輩はその間、隣の研究室で好き勝手に実験と発明をしていただけです」半眼で先輩を睨む。「だったら、俺が居なくても大丈夫だろ?」「ここは先輩が代表なんですから居てもらわないと。それに実家から連絡があったらなんて、返事するんです?」「いいよ。見合いがイヤで逃げましたって正直に言ったら」「だめですよ、そんな事いったら仕事を回して貰えなくなるかもしれないじゃないですか?」
「だったら、新素材開発のために北欧の方に研修に行ったとでも言ってくれ。では、さらばだ。ほとぼりが冷めた頃に帰ってくる!」そう言って、出社したばかりの先輩は手に持った鞄を一度も下ろす事なく出て行ってしまった。「まったく……、本当に我が儘な人だ。でも、確かにあの人が家庭を持つなんて想像がつかないよな?先輩の家系は天才が出やすい家系らしいけど、先輩の場合は天才っていうより鬼才だからな。あの人に合わせて生きていける女性なんているんだろうか?そうも言ってられないところが名家のツライところだな。俺んチみたいなサラリーマンの団地暮らしの家には縁のない話だろうけど」僕は先輩の出て行ったドアを見つめて呟くと仕事を再開した。その後、やはり先輩の実家から先輩が帰ってこないと連絡があり、僕は先輩に言われた通り、新素材開発のために研修旅行に出かけたと伝えた。これはあながち嘘でもない。先輩は特殊繊維や素材関係の発明にはかなりの実績がある。先輩の家は一種の発明家の家柄でその所持する特許数はかなりの数にのぼり、その使用料で年間に兆を超える金がなにもしなくても先輩の家に転がり込んでくるらしい。先輩もその一翼を担っているので「開発の為」と言うと大概のムチャは通るし、実際に最近は北欧の方にインターネットを通じて怪しげな人脈を作ったようなのだ。実家の方でも先輩の性格は把握されてるようで、行方が判らないと言う僕に対してもそれ以上の追求はされなかった。 *そして、一ヶ月が過ぎた……「やぁやぁ、吉秋君。ただいまぁ、留守中に変わった事はなかったかね?」先輩は元気よくドアを開けて入ってくる。僕は食べていた昼食の出前のドンブリを下ろして先輩を睨む。
「どこに行ってたんです、一ヶ月も?とりあえず、見合いは延期になったようですよ?留守中の変わった事はそれだけです。仕事関係は僕が全部、処理しておきました」「やっぱり、吉秋は俺が仕込んだだけ合って優秀だよなぁ」「僕は仕込まれた覚えは一切ありませんけどね?」「見合いについてはいい打開策ができた。安心してくれ」「先輩が笑って"安心してくれ"って言うときは逆の場合が多いんですけど?」「いや、吉秋君。これは本当に皆が満足する名案だって。まずはこれを見てくれ」先輩が机の上に下ろしたバッグから何かの素材を取り出す。「……ゴムマスクですか?」「うん、まぁそのようなものだ。なぁ、吉秋。俺はなんで見合いをさせられるんだと思う?」「はぁ?織田家の跡継ぎの癖にいつまでもだらしのない生活を続ける社会不適応者の独り者だからでしょ?」「きみ、いちいち言葉に刺があるよね?まぁいい。つまり、俺に彼女がいればしたくもない見合いをさせられる事もないわけだ?だったら婚約者をでっち上げればいい」「また、変な事を言い出したよ、この人は?そんな奇特な人がいないから逃げだしたんでしょ?」「そう!つまりそこだ、婚約者になってくれる人がいれば問題なし」「はいはい、で求人募集でも掛けますか?ハローワークで受け付けてくれるかな?」「あはは、何をたわけた事を?目の前にいるじゃないか?俺の婚約者」「…… ハローワークより精神病院に掛ける方が先か……」「あはは、まるで異常者を見るような目で俺を見るんじゃない」「"異常者を見るような目"じゃありません、"異常者を見る目"です。その言い方だと先輩はまだ異常者か疑われている状態に聞こえますよ?確定事項なのに」「本当に失礼だね、この後輩は?」
「僕は男です!どうやったらそれが婚約者になるんです!それに実家にも僕の顔は割れてるでしょ!」「だからそのためのコレだって」そう言って手の持ったゴムマスクを自分で被ってみせる。「え?」先輩が被ったマスクは先輩の顔にぴったりと張り付く、最初はただのゴムマスクに見えたそれは先輩の顔に張り付くとリアルな顔へと変貌していく。「どうだ?本物の女の子だろう?」その口から発せられる声を女性のような高い声に変わっている。僕は先輩の顔を直に触ってみる。「え?うそ?どうやってるんです、これ?まるで本物の肌じゃないですか?」「うふふ、すごいだろう?向こうで偶然にすごい技術を持った人たちと出会ってな。色々と話をしているウチにこんな物が作れる可能性に至ってな。素材自体は俺の発明品でそこに彼女たちの技術を細かく埋め込んでもらった」マスクを後頭部から剥がして改めて机の上に広げる先輩。「埋め込んでもらったって何です、これ?ナノマシンか何かですか?いくら詳しく見ても何がどうなってるのかが全く判りませんよ?高額な開発費が掛かったんじゃないんですか?」机の上からマスクを取り上げて確かめるが、仕組みがさっぱり判らない。「開発費か?思ったより安かったぞ?うまい棒3人前、一年間分だから……」「ウマイボウ?それはどこの通貨ですか?聞き慣れませんが?」「知らないか?うまい棒?トウモロコシが原料のこんな筒状の?」先輩がきょとんとした顔で、手で棒を掴むような仕草をする。「いや、知ってましたよ。子供の頃よく食べましたから。ただ、これだけの技術を持った人物がそんな子供のような物を要求するとは思わなかったので聞き間違いかと思ったんです!」
「いや子供だから、彼女ら。で、君にはコレを被って俺の婚約者として俺の親に会ってもらいたい。それで今後は見合いを強要される事も無いってわけだ」「いやです、何で僕がそんな芝居を……」「君には先輩のために我が身を捧げようとする意志がないのかね?まったく、近頃の若者は年長者を敬う心がない。嘆かわしいことだ」先輩が顔を下げて頭を振る。「先輩のために人生を誤り続けさせられた僕にそれを言いますか?」「だったら、もう一回くらい誤っても大丈夫だろう?だから、な?」「第一、僕にはそんな猿芝居はできませんよ?それに顔がいくら女性っぽく見えても体つきで一発でバレますよ」「そこは大丈夫。俺だってマヌケじゃない。今回の発明品のキモはむしろそちらよりもこっちにある」そう言って次に鞄から出したのは……「ダッチワイフ?」「タイツだ!タイツ!それと同じ機能を持った全身タイツ!」そう言って先輩が持っているのは全裸の女性の絵が描かれた全身タイツである。さすがに陰毛まで付ける悪趣味さが無いのは救いと言えるのか?「それもひょっとしてコレと同じ?」「そう、コレを着た吉秋君はどこからどう見ても完全な女性へとなれる。コレさえ着れば、多少は言動が怪しかろうと全く問題はなくなるってもんだ。どうだ?」ずいっとタイツを僕に近づける先輩。「どうだ、と言われましても……」「よしわかった。じゃ特別ボーナスを出そう!俺の婚約者になってくれたら50万出す!悪い条件じゃないだろ?コレの開発費の50倍だぞ?」「うまい棒と一緒にしないで下さい!本当にくれるんですかぁ?」「やるやる、なってくれて俺の親に婚約者と認めさせられたらな。嘘じゃない証拠に一筆書いてもいい」そう言って、先輩は椅子から立ち上がるとプリンターからB5の白紙を取り出してサラサラと何かを描く。
「ほら?これでどうだ?俺の婚約者だと親に認めさせることが出来れば50万をお前に支払うという契約書だ」そう言って、先輩は僕に作ったばかりの契約書を渡す。目を通して確認した内容は確かに先輩の言った通りの内容だ。「確かに……」「よし、貸せ」内容を確認した僕の手から契約書を取り上げるとコピーに掛けて同じ物を作る。「言っとくが、ここに書かれている通り、コレは成功報酬だからな?」そう言って、先輩は契約書に自分のサインを入れると僕に渡す。「?」「お前もサインを入れとけよ。あとで成功報酬じゃなかったって言われたくないからな?」「僕は先輩と違って正直者ですから、そんな駄々は捏ねませんよ。失敗したら報酬はもらえないってことですね?わかりました、了解の印にサインしますよ」そう言って僕は契約書にサインを入れる。「よし、じゃ今日は帰ってきたばかりだから家に帰って俺に婚約者がいる事を両親に話しておく。だから、お前は明日の夕飯はそれを着て俺の婚約者として両親にあってそれを認めさせる。いいな?」「はいはい、わかりました。僕は先輩の婚約者になればいいんですね。特別ボーナス、忘れないで下さいよ?」「判ってるって、お前も手を抜くなよ?ふふふ、いや我ながら名案だったよな?」僕は先輩の笑顔の真の意味を知らずに、手にはいるはずの成功報酬の使い道を考えていた。 * * *そして翌日。「ははは、大成功だ。夕べ、親父達に話したら『なんだ、そんな人がいるなら早く言わないか』って事になってな。段取り通り今日の夕飯にお前を招待する事になった。いいか、これが昨日、俺が考えたお前のプロフィールだ。親父達に合う前に頭の中によくたたき込んでおけよ?」そう言って数枚の書類を俺に渡す。
「これは? ……先輩の婚約者のプロフィールですか?うまくいくかなぁ?」渡された書類をぱらぱらと捲りながら不安を漏らす。「大丈夫!お前は俺が見込んだヤツだから、きっとできる。自信を持て!あははは」「……正直、見込まれたくありませんでしたよ」「成功報酬50万だぞ?欲しくないのか?実はお前に黙ってたんだけどな、これに成功すればさらにご褒美があるぞ?」「ご褒美?なんですか?」「それは成功してからのお楽しみだ。だから真剣に頼むぞ?今日はもう夕方までそれを記憶するのに掛かりっきりにしてくれればいいからな」そう言って先輩はご機嫌で机に座り、僕の代わりに書類に目を通して次々と処理していく。珍しい、この先輩が自分から仕事をするなんて…… それだけ真剣って事か?そして僕は一日を掛けて先輩が考えてきたプロフィールを頭にたたき込み、その情報が自然に口から出るように先輩に特訓された。 ・・・「それじゃ、そろそろ準備をしようか?」先輩が例のバッグからゴムマスクと全身タイツを取り出してテーブルに広げる。「本当にやるんですかぁ……」僕はテーブルの上のアイテムを見下ろして先輩に確認をする。「当たり前だ、そのために今日一日、お前の仕事を俺が片づけてお前には特訓をしてもらったんだからな」「元々、あれは僕の仕事じゃなくて先輩の仕事だったんですけどね?」「つべこべ言わない。やると決めたんだから最後くらい男らしく決めろよ」「最後くらい??」「次がいよいよ本番って意味だよ?ほら、約束まで後一時間」そう言って、腕時計を僕に向ける。確かに先輩が両親と約束した時間が迫っている。「わかりました、覚悟を決めます。成功報酬、忘れないで下さいよ?」そう言ってテーブルの上のタイツを取り上げる。
「うん、いい覚悟だ。それでこそ、我が婚約者」「ヤな立場ですね、それ? で、これはどうやって着るんですか?服の上から……は無理ですね?下着の上からですか?」「いや、真っ裸になってだ。スーツが肌に密着してないと効果が出ないからな」「まっ……裸ですか?」「あぁ、それでないと本物の女性にならないからな」「は?」「着てみれば判る。俺の発明はすごいぞ。どこから見ても女性にしか見えなくなるからな」「ふ〜ん?まぁ夕べのマスクの一件でそれは納得してますけど……」僕はスーツの背中のファスナーを下げてテーブルに置くと服を脱ぎ始める。「で、先輩?」「なんだ?」「そこで見てられるといくら同性でも恥ずかしいんですけど?」「気にするな、お前が間違った着方をしないかチェックしてるだけだ」「はいはい。どうせ、出て行って下さいってお願いしても無駄なんですよね」そう言いながらも僕は服を全部脱いで裸になるとさっさとタイツを手にとって、足を通す。「それにしても…… 何かマヌケなスーツですね?」「見た目はな。でも着てみれば判る。ファスナーを上げるとスーツが肌に密着して胸が脹らみ股間の脹らみがなくなるから」「どういう仕掛けなんです、それ?」僕はそう言うとスーツの腕にも手を通し終わり、背中のファスナーに手を回す。「うん、オッケーだ。どれファスナーぐらい上げてやろう」そう言って先輩は立ち上がると僕の後ろに回って背中のファスナーを上げる。ジーッファスナーが締まる事によって全身が軽く締め付けられていく。「よし!さぁ、どうだ!」先輩が僕から離れたとたんにスーツが全身を締め付ける。「ひっ?む、胸が膨らんで……え?こ、股間が……腰が!」僕の体型がみるみる変わっていく。胸が膨らみ始め、腰が締まって行き、股間が……
「う〜ん、流石にいい仕事をしてるなぁ?」先輩が感心したように、変身していく僕を見つめる。「せ、先輩!これ、どうなってるんです?まるで本物の女性ですよ?」「だから、そういう物だって言ってあっただろ?」「確かに聞いてましたけど、これほどリアルだとは……胸はパットとかで説明つきますけど、腰が小さくなったのと僕の股間のモノは……?」「不要な部分は異次元空間に退避されるようになってるらしいな。話に聞くと」「異次元空間に退避ってどんな超科学ですか?うまい棒の値段に釣り合わない技術ですよ?これって戻るんですよね?」先輩が無言で再び僕の背後に回るとファスナーを少し下げる。フシューッスーツが空気を吸い込む音と共に腰が膨らみ、胸がしぼむと股間に確かな手応えが戻ってくる。「どうだ?安心したか?」「は、はい……」それにしても……、一体、どういう仕掛けだ?どこをどう見てもただの全身タイツにしか見えないのに?」「それじゃ納得したところでマスクの方も付けてもらおうか?」そう言って先輩が背中のファスナーをさっさと上げてしまい、僕の身体は再び女体化する。「わかりましたよ。あれ?先輩?マスクって2種類有るんですか?」僕はバッグの中からマスクを2つ取り出す。 黒髪のショートヘアと金髪のロング。「あ、昨日付けた黒髪の方で頼む。最初に向こうの技術者に可愛い女の子とだけ指定しておいたら、その金髪のマスクを作ったんだ。うっかりしてたよ、目は覆わないからそれだと黒い目に金髪の女の子ができあがるんだ。不自然だろ?だから黒髪バージョンを作り直してもらったんだ。ちなみに費用は麦チョコ5袋」「これが麦チョコ五袋で?絶対に変ですよ、その技術者」そう言いながら僕はマスクを被る。マスクが顔に吸い付き頭をぴちっと覆う。
「うんうん、見事に女性だ。 あとはこれだな」先輩は僕を見て満足気な顔をするともう一つ、バッグを取り出す。「なんですか?これ?」「お前の着ていく下着と服だよ?まさか、そのまま全裸で俺の両親に会う気じゃないだろ?」そう言って笑う。「全裸?うわぁ、確かに僕が裸になってるみたいに見えますね?これは恥ずかしいかも?」「だろ?だから服を着ろ。下着も好きな物を付けろ」「好きな物を?え?服は清楚そうなワンピースがあるけど、下着は何で何種類も?」僕はバッグをひっくり返してテーブルの上に下着の山を作る。「お前の好みが判らなかったからな。好きなのを付けていいぞ?」そう言って、先輩が笑う。この人は本当におかしな事を考えるよな?下着くらい適当でいいじゃないか?何かのこだわりでもあるのか?下着に?僕は中から白のこれと言って特徴のないブラとパンツを選ぶ。パンツをスーツの上から穿き、腕にブラの紐を通す。「はいはい、秋奈ちゃん、ホックを留めてやろうな」ブラに悪戦苦闘してる僕を見かねて先輩がブラのホックを留める。「なんです?秋奈ちゃんって?」「ばか!忘れるなって言っただろ?その姿のお前は吉秋じゃなくて秋奈だろ?!」先輩がそう言って怒る。「あ!そうでした、そうでした。つい、うっかり」「しっかりしてくれよ?行く前にもう一度、おさらいだ。服を着ながらでもいいから自分のプロフィールを言ってみろ」「大丈夫、あれだけ頑張って覚えたんだから忘れてませんよ」「だめだ、行く前にはっきりと口に出して自覚を持ってもらう」「仕方がないな。じゃ、行きますよ。 私の名前は……」そうして、今日覚えた事を特訓された女性の口調で話し始めながら用意されたワンピースに手を掛ける。
「ふふん、いいな。うん、いい、いい」先輩は満足そうに頷いている。「何か、僕。段々と情けなくなってきましたよ?」女装した姿を洗面所の鏡に映して見出しなみを整えながら先輩に訴える。せめてもの救いは鏡に映る女性に自分の面影が全くない事だ。「そんな事ないって。大丈夫、後は全部俺に任せろ。お前はもう俺の婚約者なんだから。それだけを忘れなければ何の問題もないからな」……先輩がやたらとハイになってきてるのは気のせいだろうか?そして、僕は先輩に手を取られてスカートの裾を揺らせて御両親が待つホテルのディナーへとエスコートされる。 * * *「あー、はっはっはっ。大成功!親父もお袋もお前を気に入ったようだぞ。べた褒めだったじゃないか?おかげでこれでもう見合い話は回ってこないな」先輩の両親と会食をした後、僕たちは勧められてホテルの一室に部屋を取った。「大成功はいいんですけど、この後、僕たちはどうすればいいんですか?」「どうって?」先輩が質問の意味がわからないと言うような顔で聞く。「いえ、僕としてはさっさと事務所に帰って、この女性服も珍発明のスーツも脱ぎたいんですけどね?」「お前、本当に失礼だよね?人の会心作を珍発明で済ますか?」「はいはい、それで帰っちゃダメなんですか?」「まぁ、親父が用意してくれた部屋だからな?黙って帰っちゃったら気を悪くするだろ?そんな事で婚約を認められなかったらどうするんだ?元の木阿弥だぞ?」そう言って、笑ってソファにどかっと座る。「う〜、という事はここに泊まっていくんですか?」「いやか?最高級の部屋だぞ?お前、今までこんな部屋に泊まった事はないだろ?」「えっと……一応、言っておきますが。僕は今はこんな姿ですけど男ですからね?」「……お前、何を期待してるんだ?」
「してません!絶対に!襲わないように釘を刺してるんです!僕には先輩を受け入れる場所はありませんと言ってるんです!」「あはは、安心しろ。俺だって男の娘の尻を狙う趣味はない。ヤるのはちゃんとした女の子だけだからな」「ま、それならいいですけどね。ところでこれ、脱いじゃダメなんですか?」「ん?いいけど、着替えなんかないぞ?バスローブくらいしか?」「いや、まぁ服もそうなんですけど、スーツの方ですよ。もう女装しなくてもいいんでしょ?」「いや、ひょっとして親父達が来ないとも言えないから事務所に帰るまでそのままでいてくれるか?」「まぁ、そう言われると仕方がないか。でも、恥ずかしいんですよね。この格好」「はっはっはっ、慣れだよ慣れ。まぁ、2,3日もすれば気にならなくなるんじゃないのか?」先輩がテーブルの上のグラスにバーボンを注ぎながら脳天気に笑う。「先輩……何か変な事を考えてないでしょうね?」先輩がグラスから目を離して顔を上げ僕を見る。「なんだ?藪から棒に?」「いや、長年の学習から言わせてもらえば、今の先輩の雰囲気って何か悪巧みをしている時の先輩なんですよね?」じっと先輩の目を探るように見る。「あっはっはっ、バカだなぁ?俺がいつお前に迷惑を掛けるような事をした?」「知り合ってから、数え切れないくらい迷惑を掛けられましたが?こんな事を言うのも何ですけど、本気で身を固めて落ち着いたらどうです?偽の婚約者を仕立てて逃げるより、本気で結婚を考えた方がいいですよ?」グラスの酒を飲みながら先輩が静かに口を開く。「旅行中にそれは考えたよ?それでな、俺は真剣に考えた結果。結婚する事にした」「あ、なんだ。そうなんだ?だったら後は相手だけですね。誰か居ないんですか?めぼしい女性は?」
「うん、多少問題はあるんだが、いたんだ。お前にも前に言ったような俺の事をよくわかっていて、俺が何をしても受け入れてくれる懐の大きな人が」「えぇ!?どこにそんな物好きが?!」いつの間にそんな人を見つけたんだ?殆ど、家と事務所の研究室しか往復しないような先輩が?「物好きって、お前?それは相手に失礼だろう?」「いや、話を振っておいて何ですけど、先輩と一生を共にしようなんて奇特な人がそう簡単に見つかるとは……?」「ふふん?吉秋くん、灯台下暗しという言葉を知っているかね?」酔いが回ってきたのか、ご機嫌でグラスを揺らす先輩。「? どういう事です?そんな物好きが身近にいたって事ですか?!」「うん、ま、そう言う事。見たい?俺の婚約者?」先輩がグラスを揺らしながらケラケラと笑う。だいぶん回ってきてるな……「え?写真か何かあるんですか?」「いや、本人。あはははは」「えぇ?まさかここに呼んでるとか?だめですよ!僕、こんな格好をしてるんですから。ちょっと何か着替え……てか、このスーツを脱がないと!」僕は慌てて着替えになりそうな物を探すが、当然、今着てるワンピース以外は見つかるはずもなく……「大丈夫、大丈夫、そのままで。くくく。ていうか、脱いじゃ紹介できないから。そこのドアを開けてみな。俺の婚約者が居るから。あ〜、はっはっはっ」先輩、完全に酔っぱらってきてるな?そこのドア?ドアって……「ちょっと、バスルームじゃないですか?!自分の婚約者を風呂場に待機させてるんですか?ダメですよ!先輩と結婚してやろうって言う物好きな……貴重な人なんですよ?」僕は慌ててバスルームのドアを開ける。「あれ?先輩?誰もいませんよ?バスルームに閉じこめたりしたから逃げちゃったんじゃないですか?」僕は空っぽのバスルームを見渡して先輩に問いかける。
「くふふふ、居るよ。中に入ってよく周りを見渡してみろよ?誰かが見つかるから」新たにバーボンをグラスに注ぎながら先輩が笑う。何言ってるんだ、この先輩は?僕は中に入って周りをよく見渡してみるが、そこには明らかに誰もいない。「居ませんよ。せいぜい鏡に映ってる僕が居るだけで?」「あははは。ほら、いたじゃないか?俺の事をよくわかっていて、俺が何をしても受け入れてくれてくれる懐の大きな女性が」「………… はぁ?! どこに!」先輩の言葉がよく理解できない。まぁ、酔っぱらいの言葉は時として意味不明になるけど……?「目の前に鏡があるんだろ?その中にいないか?」「はぁ、いますね。綺麗な女性が。あぁ、この女性なら、って僕ですよ!これは!」先輩のワケのわからない言動にノリツッコミをしてしまった。「うん、その女性。俺にぴったりだと思わないか?10年も俺に付いてきてくれてる上に補佐も完璧だ。欠点は性別だけだったけどこれも解消された。だったら、もう結婚するしかないだろ?」グラスを見つめて、悪戯が見つかった子供のように笑う。「ちょっと!どういう意味です?僕は嘘の婚約者ですよ?てか見かけは女性に化けてますけどれっきとした男です!」「えぇ?俺は吉秋に婚約者になってくれとは言ったけど、嘘の婚約者になってくれって言った覚えはないぞぉ?あはは」わざとらしく驚いた後、先輩はとんでもない事を言って笑う。「え……あれっ?」そう言えば、先輩は「婚約者」とだけしか……「いやいやいや、僕は男なんですから男同士で結婚は無理です!こんな姿ですけど、女性に化けてるだけですから」僕はバスルームから飛び出し、先輩に詰め寄る。
「大丈夫、そのスーツな?着用者の身体を女性に変えるのがメイン機能なんだ。これから約一ヶ月掛けて吉秋の身体は完璧な女性へと変わっていく。それを着用した時に見かけが女性そっくりになるのは、変化してる間中に違和感を持たない為の補助機能だ。一ヶ月後、そのスーツを脱ぐと見かけ通りの完璧な女性の身体が出てくる」「ちょ、ちょっと!冗談ですよね?男の身体が女性になるなんて非常識な事……」「あるらしいんだ。北欧の魔女達による魔法の産物なんだ、それ」「魔法?……あははは、嘘でしょ?魔法なんかあるワケ無いじゃないですか?」僕は先輩の前のテーブルに手を付き、見つめる。「いや、お前も見ただろ?そのスーツに何も仕掛けがないところ?でも着てみたら、ぴったりと肌に吸い付いて全くタイツを意識させないようになっただろ?こんな技術は今の科学でもまだ無理だって」「冗談じゃない。脱ぎますよ!こんなもの!」僕は背中のファスナーに手を伸ばすが……「あれ?ファスナーが……どこに行った?せ、先輩!ちょっとファスナーを下ろしてください!」「あぁ、無理無理、一度完全装備してしまったら変身が完了するまでは脱げなくなってる。ちなみにそのスーツは俺の発明品だ。考えうる限りの破壊行為に耐えられるようになってる逸品だ。凄いだろう?」「ちょっと、何言ってるんですか!自慢なんかしてる場合じゃないでしょ?本当は何か手段があるんでしょ?解除手段が?」僕は着ているワンピースを脱いで背中のファスナーを探す。「あるわけないだろ?だって真相話して、お前の決心が鈍ってそれを脱ぎたいなんて言い出したりしたら困るから、着たら最後、絶対に後戻りできないようにしてある。吉秋ぃ、ダメだぞぉ?いくら婚約者の前だからといっても、女の子が男の前で気軽に下着姿になっちゃ?ははははは」いい気分で笑う先輩。
「ははは、じゃないですって!大体、決心が鈍ってって最初から決心なんてしてません!それに身体が女になっても戸籍上は僕は男ですよ?結婚は無理です!だから今すぐ中止を……」「中止なんかできないって。それに戸籍の問題も気にしなくていい。今、そのスーツの中ではマナという不思議物質が高濃度で被験者情報を書き換えてる。今はそのスーツが結界となって外に漏れだしてないけど、そのスーツが脱げる時に一気に外に放出されて世界はお前は生まれた時から女だった事に書き換えられる。ちなみにお前に覚えさせた婚約者情報な?多分、スーツの中でお前の中から取り込まれてる真っ最中だ。スーツを脱ぐ時にそのニセ情報は本物になる。な?問題ないだろ?」「問題、大有りです!ちょっと待って!じゃあ、あれを俺の頭に徹底的に刷り込ませたのって?」「俺の婚約者として文句のない履歴を身につけてもらうためだな?ははは」僕はがくりと膝を突く。「先輩……マジで僕を嫁にもらうつもりですか?」「ダメか?旅行中、お前が言ってた事を本気で考えたんだけどな?俺の事をよくわかっていてくれて俺が何をしても受け入れてくれる懐の大きな女性、確かにそんな女性がいれば俺は今までと変わらない生活が送れて世間体も保てる。オマケに子供も出来れば織田家は安泰で親父達も喜ぶ」「こ、子供!!僕に赤ちゃんまで産めっていうんですか!」「いや、別に今すぐじゃなくてもいいよ。それは結婚してからゆっくり考えよう。で、話を戻すけど、そんな女性が身近にいないかと考えたんだ。で、よく考えたら本当に身近に条件に合った人物がいたんだ。それがお前。ただ唯一の欠点はお前が男だって事だ?だったら、その欠点を治してやるのは俺の義務だろ?」「義務じゃありません!"男"は欠点でも病気でもありません!治す必要は全くありませんから!」
「あはは、もう治療は始まってる。一ヶ月後には完治して俺と結婚式も挙げられるようになる。よかったな?」先輩が笑って僕の肩を叩く。「不治の病を治して結ばれる医者と患者の美談みたいに言わないで下さい!先輩はいいんですか!僕が男だって知ってて結婚なんかできるんですか!」「いや、身体が女性なら問題はない。それにお前とは波長は合ってるからな」この人は前から変人だってわかっていたけど、まさか、男を女に変えて結婚しようとは……「あ、そう言えば成功報酬の50万はどうする?明日まで待ってくれれば銀行から下ろしてくるけど?」グラスに酒を注ぎながら契約書を取り出してそんなことを俺に聞く先輩。「えっと、それをもらうって事は僕が先輩の"本物の"婚約者だって認める事になるんですよね?」「あぁ、そうだ。ラッキーだな?50万も手に入って、一ヶ月後には贅沢やり放題の織田家の若奥様だ?いや、もう、この世にお前ほど幸せな男は居ないと思うぞ?」「絶対にイヤです。男と結婚するなんて!僕はホモじゃありません!」「まぁまぁ、秋奈ちゃん、まだ一ヶ月もあるんだ。ゆっくりと二人の幸せな未来について話し合おうじゃないか?」先輩が酔った赤い顔でニヒヒと笑う。「男の幸せはお嫁さんになる事じゃありませんっ!!!!」 * * *月日は過ぎ……「先輩!!」僕は事務所のドアを開けて大声で目的の人物の姿を探す。「なんだい、マイハニー?俺たちは夫婦なんだからさ?"せんぱい"なんて他人行儀な呼び方をするなよ。"あなた"でいいからさ?」問題の人物は奥の研究室のドアからにこやかな顔で姿を現す。「先輩は先輩です!何で"あなた"なんて呼ばなきゃいけないんです!」「夫婦だからだろ?それにお前、公式の場ではちゃんと"あなた"って呼んでくれるじゃないか?」
「そう呼ばないと僕が周りからヘンな目で見られるからです!」「だったら、ついでに私的な所でも、そう呼んでくれないかな?マイハニー?」そう言って、笑う先輩。「誰がマイハニーですか!それよりも大事な話があります!」「誰がって、夫が愛する妻をそう呼ぶのは自然だろ?で、何をそんなに怒ってるんだ?」「何ヶ月か前に、嫌がる僕に無理矢理に中だしをしたでしょ!」羞恥に顔を赤らめて先輩に迫る。「え?あぁ、一回だけな?偶々、避妊具が切れてたから仕方がなかったって言っただろ?」「えぇ!あの時はそう聞きました!でも、今日、確信しました!あれってワザとでしょ!」「ん?あ、今日具合が悪いからって病院に寄ってたのって、ひょっとして?」「…………」先輩の問いかけに僕は黙り込む。「あははは、ちゃんと着床したんだ?あの時のヤツ?」「あはは、じゃありません!着床なんて言い方をしないで下さい!」「孕んだ?懐妊した?妊娠した?」ニヤニヤと先輩が僕を見つめる。「黙って下さい! ……知ってたんでしょ?僕のあの時の体調?」「まぁ、妻の体調を把握してるのは夫の義務だからな?」「そんな義務はありません!やっぱり確信犯なんだ?あの時の僕って危険日だったんでしょ?」「いや、だってお前、子供を作るのをいつまでも躊躇してるからさ。文字通り、案ずるより産むが易しって言うだろ?何ヶ月目だ?」「4ヶ月って言われました。案ずるよりって産むのは僕ですよ?」「いいじゃないか、目出度いことだろ?俺はお前が俺の子供を身籠もってくれて嬉しいぞ?」先輩がしれっとそんなことを言って僕の肩を掴む。「な、なんです?」至近距離に迫った先輩に思わずたじろぐ。「愛してるよ、秋奈。俺の子供を産んでくれ」そう言って俺を優しく抱きしめる。
「な、なにを…… ぼ、僕は怒ってるんですよ!僕をこんな身体にして、妊娠までさせて……」「でも、俺のことを嫌いじゃないんだろ?」僕を抱きしめたまま、背中越しに優しく囁く先輩。「き、嫌いですよ……」「嘘だな。本当に嫌いだったら結婚するまでにいくらでも逃げるチャンスはあったし、身体だって絶対にゆるしはしないだろ?」先輩は肩を持ったまま、少し体を離し正面から僕を見つめる。「いや、だって僕は先輩の罠に掛かって女になってしまったから、仕方なく……」「それは俺を拒まない理由にはならないぞ?結婚してからもいくらでも俺から逃げる事は出来たし、そうしても、暮らしてくのに充分な金は自由に使えるようにしてあるんだからな?」先輩が見透かしたようにニヤッと笑う。「正直になれよ?俺の子供を産んでくれるんだろ?俺は本気でお前を愛してるし、お前も俺のことを好きだろ?俺の方の愛は歪んでるけど、お前も歪んでるぞ?」そう言って俺の唇に軽くキスをする。「僕は先輩に恋愛感情なんて無いんですからね?子供には罪はないから産みますけど、決して先輩の為じゃないんですからね!」口を袖でぬぐって僕は先輩に怒った"ように"告げる。「ふふふ、素直じゃないなぁ、ウチの愛妻は」今度は口の中にまで先輩の舌が入ってくる。「ふぇんふぁいのふぁかぁ!」僕はその舌を思いっきり吸い上げ、次第に恍惚とした気分に浸っていく…… 先輩のことなんか嫌いです! はいはい、俺は大好きだぞ、秋奈。 E N D# このスレもいよいよ消えるようです。# どうも、ありがとうございました。
# この話、完結してたんだ。# 未完のまま、スレ消えたと思ってたのに。## このノリからすると清美ちゃんは輿入れになるのかな?# このまま側付きメイドのまま、身体を許さないで親友兼メイドとして引っ掻き回していく気がしました。# 俊秋の方がその気になって、プロポーズしたらあっさり振られたりして。(笑)### お疲れ様でした。次作も期待してます。#
#消える前にオマケが見られてよかった・・・#ホントおつかれさまでした!#ネットのどこかでこの作品を再びお目にかかれることを祈っております!#しかし、お父さんマジで外道www
#この終わりかたっていいよね#ずっと楽しみに読んでいたので、終わってしまうのは残念だけど、#オマケはいいよね#エンディングでその後のストーリーなんかがバックにながれているような感じで、気に入りました。#そのIP/ドメインからは既に投票がおこなわれていますということで、投票はいれられないけれど## GJ!!
# ぁぁ、[GJ]を忘れてました。あらためて(*^ー゚)b グッジョブ!!
#完結、及び外伝お疲れ様でした。>図書館はご勘弁下さい。恐れ多いです。#この作品で図書館に乗るのが畏れ多いなら、図書館は商業レベルしか入りませんって。#文句無しの大作です。大変楽しめました。#また何処かで新作が読めることを期待しています。
#スレの終わり際にこんなことが気になってしまったのもアレですが…#もしかしてお父さん、スーツを自分で試したことあったりして。マスクまでかぶったら戻れないからタイツのほうだけちょっと試してみたとか…#いや、むしろそれが無いほうがおかしいか…w
#なるほど、スーツには吐いたウソっぱち情報を因果律に反映させる機能があるのか。#ということは清香の場合も"旦那様達"とはやはり元々面識があることになってそうですね。#メイドさんトリオとは逆に影響を受けて仮雇用の時が初対面のままになる可能性も。#あと、>生理あります!それはもう盛大にドバドバと!#この台詞で地獄を見ることになってないといいですが…