きょうのコラム「時鐘」 2010年1月22日

 金沢の武家屋敷でロケをしているのかと思ったら、京都の撮影所のセットだった。映画「武士の家計簿」の撮影状況を紹介する写真が興味深かった

以前、この長町武家屋敷のセットに似た風景を見たことがある。福井の朝倉遺跡である。発掘跡に中世の街並みを復元したのだが、金沢の長町に似ているので聞いてみると現地の案内人は「長町の武家屋敷を参考にした」と言うのだった

全国各地の意外な所で故郷と出会うことがある。世界遺産登録に再挑戦する岩手県平泉の中尊寺もそのひとつ。有名な金色堂の近くに白山神社があり、見事な能舞台が残されている。案内板には加賀の白山信仰と奥州のゆかりが記されている

鹿児島で島津藩についての講演を聞いていると、越中富山の売薬が藩の情報収集に大きな役割を果たしたと力説されて驚いたこともある。沖縄では北前船が運んだ昆布の話をよく聞かされる。似た話は関東、関西にはいくらでもある

こうした有形無形で広がる北陸の足跡をたどると面白い。日本は狭いと思うか北陸は広いと思うか。郷土を学ぶ大人の修学旅行をすすめたい。