幸運なシナリオ:日本の場合
「2050年は江戸時代」石川英輔著(2010年ピークオイル⇒終りの無いオイルショック⇒世界経済崩壊⇒世界恐慌⇒日本食糧危機
この小説には、2050 年の日本人の生活と、どのような経過でそうなったかが(老人の記憶を通して)描写されている。
小説にはっきりとは書かれていないが、行間読みをすれば、食料とエネルギーの輸入が2015 年から急激に減り、2020 年までにはゼロとなったことがわかる。
日本経済は2012 年頃から少しずつ凋落し、2020 年までに大都市は基本的に廃虚となる。
その後ひどい飢餓に見舞われて困難な時代が続くが、2050 年までには日本の人口が約6,500 万人となり、そのうち99%が農村地帯で独立した共同体を営み、農業的生活を送っている。
政治的には大きく異なるが、生活様式は実質的に居心地が良い「江戸時代」に回帰している。
6,500 万人という人口は、1930 年の水準で、国立社会保障・人口問題研究所による人口予測の低位シナリオなら2070年から2080 年のレベルである。
人気blogランキング <-- クリックしていただくと、より多くの方に読んでいただけます。ご協力お願いします。
石川のシナリオは「スローモーション崩壊」と言えるかもしれない。
日本経済は次第に凋落していくが、一般人には何が起こっているのか理解できず、政府は迫り来る危機の前に無策であるか、または問題を軽減する努力を特にはしなかったと石川は書いている。
このことは小説の中で老人の記憶から明らかになっているし、現実味がある。
危機が深まるにつれて、農村につながりのある人々は大都会を脱出し、拡大家族と合流する時期がある。
そのように生活できる農村へと移動した幸運な人々(石川の小説で取り上げられた村は、この点で大変豊かである)は比較的スムーズに自分たちの生活を守り、新しい生活様式への移行を遂げる。
小説の中ではほとんど直接には触れられていないが、そうではない他の人々は幸運ではなかったようである。
人口予測の低位シナリオでは、2050 年の日本の人口は9,200 万人前後と予測されている。
石川の小説で2050 年に6,500 万人になるということは、2020 年代に、おそらく2,000 万人から3,000 万人が消えてしまうという意味であり、穏やかな農村を背景にした石川の小説の裏側には恐ろしい底流があるとしか言いようがない。
今日の日本は、150 年間化石エネルギーに依存して主な活動が行われてきた大都会に、過度に人口が集中している。
つまり、大多数の人々は、農作業が行われ食料が生産される地域には住んでいないのである。
石川が小説で書いたように、人口の大移動は起きるだろうが、いつどこへ行けばいいのか都会の人々は見当もつかないだろう。
上述したように、現在日本人のほとんどは農作業の経験も知識も技能もない。
日々の肉体労働にも不慣れである。
大部分の人が生産性の高い農作業ができるようになるにはかなりの年月がかかるだろう。
適切な技能や技術を指導できる人材はさらに不足すると思われる。
しかも、機械を動かす燃料もなく、機械の維持管理さえもできるかどうかわからない。
そして家畜もいないとなると、状況は悲惨である。
きつい仕事を全部人間の労働力で行なうことになるのである。
しかし、前もってきちんと備えていれば最悪の状況を避けることはできるはずである。
投稿者Yから
地球温暖化や環境破壊は化石燃料の焼却が原因で、ピークオイルよりも将来的には大きな脅威となると言われています。
ですからピークオイルは実は天の恵です。
日本には循環型社会であった江戸時代というすばらしいお手本があります。
持続可能な社会へのさまざまな知恵は日本の歴史を振り返ることから始まるかもしれません。
資源の枯渇、エネルギー危機、食糧問題、地球温暖化等、地球規模で私たち人間の営みがわれわれの存続を危ういものにしていく中で、持続可能なモデルへの転換は、成長至上主義の価値観を転換することでもあるのです。
関連:
石油ピークの意味するところ その1
:
石油ピークの意味するところ その2
--------------------------------
参考:
実質的に[石油ピーク]を認めたIEA 石井 吉徳氏著
「IEA報告WEO2004から学ぶこと
図2はIEA,国際エネルギー機関による過去、未来予測である。この図で、現存油田の生産は2005年ころから急減する。その減退を補うのが、先ず一層の生産向上であり、そしてEOR(Enhanced Oil Recovery)、つまり高度の回収率技術となる。Non-conventional、つまり非在来型の原油がその次で、最後に新規油田に期待する、という見解と読める。しかし現存油田からの生産がもっとも重要視されているが、その量は2010年以前から減退するとしているが、これは先の図1と本質において整合する。すなわちIEAは陽には言っていないが、結果として「石油ピーク」を認めている。」
「「石油ピーク」がもたらす必然とは、
1)現代工業化社会はエネルギー供給減退に今から本気で対処すべき、
2)浪費型社会を根本から見直すが、
3)短中期には石炭だが、原子力も避けて通れない、
4)究極には持続的なエネルギー源は自然、再生的なのであろうが、分散型社会が前提、
5)今の石油に頼る中国をはじめとする第三世界の工業化路線はおそらく不可能、日本はそれにも備えるべきである。そして
6)石油減耗から今の二酸化炭素排出はいつまでも続かない、地球温暖化問題はまったく違った国際政治、社会問題と化す、
7)文明の欲求は止まるところを知らないと言うが、それを支える豊かなエネルギー源はもうない、
8)最後に[Think Globally, Act Locally]、我々は今からでも出来ることは沢山ある、これは心、志の問題である。」
--------------------------------
6/8/16
8