2006年01月28日

NHS 医療制度

National Health Serviceの頭文字を取ってNHS。
イギリスの医療制度である。
イギリスへ渡る前に日本でかけている私の生命保険はどうしようかと
夫に相談したらイギリスは医療費が無料だからいらないと思うと言われた。
私の生命保険は年金型なのでそのまま続けることにしたが
医療費がただなんてなんていい国だろうと思った。
しかしただほど怖いものはない。
3年前の秋に耳の近くちょうど男性のもみあげにあたる辺りに
吹き出物のような物ができた。
はじめは気にせずほっておいたのだがこれが大きくなってしまって
小豆粒くらいになってしまった。
夫が病院へ行くように薦めた。
ここで面倒くさいのがすぐに専門医を訪ねられないことだ。
まずそれぞれの地域にGPと呼ばれる街医者のような人がいて
そこで診てくれる様に予約を入れなければならない。
予約を入れると数日後に診てもらえるがここからが長い道のり。
最初に診てくれた医者はちょっと変な感じで私の出来物をチラっと見ただけ。
「すぐ治るでしょう。飲み薬を出しておきますが飲まなくて良いです」と
変な診断をされて帰ってきた。

それから3週間、出来物は一向に治る兆しなし。
更に血のようなつゆのような物が滲み出してきた。
左側にできていたので左側で寝ることができなかった。
もう一度GPに予約を入れて診てもらうことにした。
今度は若い感じのいい先生。
ちゃんと近くで見て触ってみてくれて
「これは切開が必要ですね」と言った。
すぐやってもらえるのかと思ったら
「総合病院に連絡を取ります。総合病院から手紙が来て病院へ来るようにと
指示があるでしょう。たぶん6週間くらいかかると思います」と言われた。
夫がもう少し早くならないんですかと聞くと耳の側の出来物だから
緊急扱いにはならないと言う。

2週間位経ってからようやく総合病院から手紙が来て
14週間後に診ますと書かれていた。3ヶ月以上。
目まいがした。夫に14週間も待てないというと
こういう時は電話で談判するのが一番と言って電話をかけてくれた。
そして3週間後に診てもらえることになった。

やっと当日、これで切開してもらて楽になれると安堵して向かえた。
夫も初めて私がイギリスの病院にかかるので仕事を早びきして
ついて来てくれた。
総合病院では専門医が診てくれて切開が必要ですねと同じ事を言った。
夫がお願いしますと言った。
すぐやってくれるのかと思ったら看護婦に何かを調べさせて
その後「切開は5ヵ月後になります」と言った。
気を失いそうになった。
夫がもう少し早くならないのですがと聞くと待っている人が沢山いるからとの返事。
実はNHS以外に医療費を全額負担するプライベートというのがある。
夫が途方にくれる私を見てプライベートだといくら位かかりますかと聞いた。
医者は250ポンド位かなといった。日本円で5万円くらいである。
夫がどうすると聞いたのでお金がかかっても早くやってもらいたいと言った。
プライベートでお願いしますと言うと突然隣の部屋から
偉い先生が出てきた。
プライベートの場合はその医師が担当することになる。
もう一度その医師が私の出来物を診て、自分の予定をチェックして
2週間後に切開することになった。

2週間後ようやく切開手術を受けられた。
治療は15分くらいで終わったが夫が医師から思った以上に
手ごわかったと言われた。
2,3針縫うことになりますと言っていたが家に帰って数えてみると
8針も縫われていた。
でもようやくできものから解放された。
数週間後検査で送った出来物の細胞の結果が出たので来るようにと
手紙が来た。
医師によるとただの出来物だと思っていたが腫瘍の一種だったと言われた。
しかし切除してしまえば再発する確率は非常に低いので
心配することはないと言うことだった。

長い道のりだった。これが日本だったらと何度も思った。

イギリスの病院にかかってみてその不便さを身に沁みてわかった。
全額負担できる人はいいけれどそうでない人は5ヶ月でも待たなければならない。

近所のメアリーさんは胆石らしいとGP診断されて検査を待つこと数ヶ月。
去年の秋にようやく手術で胆石を取り除いた。
手術までの待ち時間2年近く。

夫も昔膝を痛めて手術が必要となったが1年半待ちと言われたそうだ。
その頃知り合いに病院に勤めている人がいたので数週間後に
手術を受けることができたがそれでなければ1年半仕事を
休まなければいけなかったそうだ。

イギリスの福祉といえば揺りかごから墓場までと言われているが
蓋を開けてみるとなかなか大変だ。
数年前までは治療や手術を受ける待ち時間は1,2年はざら。
去年、政府が発表した誇らしい結果と言うのが待ち時間8ヶ月以内。
これが誇らしい結果とは頭を傾げてしまう。

やはりただより高い物はない。
病気かもしれないと思ったらすぐ日本に戻って病院に行こうと決めている。

Posted by kemmi at 06:31│Comments(9)イギリス
この記事へのコメント
驚きました。そんなに待てない病気になったらどうしましょう...ですね。一刻を争う病気でないとの見立てが間違っていたらと思うと恐くなります。検査漬けの後、薬をどっさりくれて後はまた、と言う医者も困り者ですが。知り合いに医者を持っていることが必要条件に入っていたりして。(^^;)
Posted by 北の旅烏 at 2006年01月28日 14:44
と、繁盛?している病院に行ってきた友人が言っていましたが、それどころではありませんね。
救急車での搬送なら診て下さるのかしら・・・。
二年も待たされたら、軽い病なら治り、厄介な病なら・・・おお恐!

胆石での発作で何度も死にそうな苦しみを味わいましたが、日本で良かった!
Posted by クッキーママ at 2006年01月28日 23:28
北の旅烏さん
見立て間違いも結構あるようですが、医者が政府に守られていて
患者が訴えてもなかなか勝ち目がないようです。
前に一緒に働いていたKenの伯母さんが癌で亡くなったのですが
GPの見立てが間違っていて総合病院へ連絡を取らず、
やっと専門医に診てもらったら手遅れでした。

クッキーママさん
救急の場合は4時間以内に診ると言うことですが
4時間なんて日本の病院では外来で診てもらっても
そんなにかかりませんよね。
軽い病気なら自然治癒です。風邪も病院へいく病気ではないようです。
Posted by kemmi at 2006年01月29日 02:09
なんとコメントしてよいのやら・・・
日本は幸せな国だったんだねえ。
医療費自己負担は増したけど。
kemmiさん、おつかれさまでした。
Posted by z0ra at 2006年01月29日 13:08
歯医者さんにかかるのも大変なのです。
これもブログに書きますね。
医療費何割かの自己負担はいいシステムだと思います。
Posted by kemmi at 2006年01月30日 01:58
kemmiさん、始めましてアメリカから拝見しています。アメリカのシステムに不満を持っていましたが、イギリスと比べればまだ全然まとものようです。
Posted by ゲスト at 2006年02月06日 01:31
はじめまして。
私も自分で病院にかかるまではこんなに不便だと思いませんでした。
本当に先進国?って思いました。
ちびた母さんはアメリカにお住まいなんですね。
これからもよろしく。
Posted by kemmi at 2006年02月06日 08:06
映画「シッコ」を観る限り、アメリカの医療制度もあまりよくないような印象を受けましたが、同時にその映画ではイギリスの医療制度において待ち時間が改善されているかのような印象を受けました。緊急で無い治療についてはあまり改善されていないということなんでしょうか?
Posted by とおりすがり at 2008年06月18日 21:06
☆とおりすがりさま

はじめまして。
イギリスの医療制度は悪くなるばかりです。
もう機能は破綻していてどこが改善されているのか疑問です。
長く待たされた患者がやっと病院で診てもらえることになっても
病院としての衛生状態を保っている病院が少なすぎて
命にかかわる病気で病院に来たはずではなかった患者が
病院の不衛生から他の病気に感染し命を落としている方が
毎年何人も出ています。
本当にこの国は先進国なのかと目や耳を疑いたくなることばかりです。
Posted by kemmi at 2008年06月29日 19:10
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