2008.07.04(Fri)
【食糧危機】日本人よ、海に目を向けよう!!
●食糧高騰の話の続きです。2回で完結すると思っていましたが、思いの外分量が増えそうなので、何回かに分けて話を展開していくことにします。
全世界の穀物の4割が向かう先
さて、私は前回の最後に、「タンパク質」が鍵だという話をしました。その理由は、この栄養素を作り出すために、膨大な食糧が消えているという現状があるからです。
日本は、食糧自給率が低い国だと言われています。カロリーベースで計算して、だいたい40%です。サミット参加国中最悪の数字です。なお、金額ベースで表す計算もあります(こちらだと70%)が、外国から自由にものが買えなくなれば意味がありません。
しかも、この40%という数字は非常に重要な数字を取り除いた「上げ底」なのです。それは、畜産を行う際に消費される輸入飼料です。
日本の食糧事情で一番問題なのは、この飼料の自給率が低いことです。少々古いデータですが、平成15年で24%しかありません。特に、早く肥育するために必要な「濃厚飼料」というカテゴリーは10%と非常に低くなっています。
これは日本に限った話ではありません。なんと、全世界の穀物の4割が飼料用として「消費」されているという現状があるのです。面白い話があったので、ご覧下さい。
「あいのり」が飢餓問題の本質に迫る
http://hideyukihirakawa.com/blog/archives/200411/300034.php
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
メンバーたちは、アフリカのマザーテレサと呼ばれているアベベック・ゴベナさん(67歳)が営む孤児院を訪れ、アフリカの飢餓の実態、日本など先進国の利害が深く関わる「飢餓はなぜ起こるのか?」を聞かされる。
(中略)
さて、緑の革命の問題に突っ込んだあと、次はいよいよ「肉食」の問題に話は進む。実は、ここまで見ていて、「ここで肉食の問題までいったら、すごいもんだけど、無理かなぁ」なんて、夫婦二人で半ばあきらめていたのだが、「あいのり」スタッフはなかなかやる。
ちなみに、この話の中では、日本の肉牛生産による穀物の過剰消費だけにスポットが当たっているが、実をいえば、世界全体でみても、穀物生産量全体の40%は家畜飼料である。「外国では肉牛は草を食べて育つことが多い」とあるが、穀物生産大国アメリカなどはがんがん穀物飼料を牛や豚に与えている。自国だけでは足らず、アマゾンの熱帯雨林まで切り開いて、大豆を作らせたり、牧地を広げている。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
例として挙がっている和牛などまだましなほうで、平均すると牛肉1キロを作るために11キロの飼料作物が必要なようです。なんとも馬鹿げた話です。
私は肉の脂が大嫌いな上に、輸出相手国の基準に合わせず●プロパガンダで国民を騙して牛肉を売りつけようとしてくる連中に対して反発したい気持ちがあるので、牛肉は3ヶ月前に親戚に「今半」で和牛のすき焼きをごちそうになっただけで、あとは全く口にしていません。周りには「アホか」と言われることもありましたが、どうやら人間としては間違ったことをしていなかったようです(笑)。
飼料の生産を増やせばいいではないか、という人もいますが、そういう問題ではありません。だいいち、今現在これだけ食糧が高騰しているというのは、各国が増産しようにもできないという事情がある(アメリカのように「バイオエタノール」という無用の長物のために転作している国もいる)からです。日本が、同じ土俵に上がってもダメです。
そもそも、家畜の大規模生産がなぜ始まったのかというと、穀物がデフレになるのを防ぐためです。できの悪い飼料を正規の市場に出さず、あえて穀物用として売りさばくことで、値崩れを防止してきたというわけです。
つまり、発端からして金儲けであるわけで、日本は戦後そういう「世界の流れ」(笑)に完全に乗せられてしまったのだということができます。もちろん、日本が馬鹿だったというのもありますが、大半は飼料用穀物と輸入食肉を大量に日本に買わせたいどこかの国の思惑です。もう、いい加減そういう状況から離脱すべき時が来ているのではないでしょうか。
国産の飼料を増やす(たとえば、飼料作物用のコメを生産する)という考えもありますが、正直あまりよろしくない考えです。費用対効果を考えて有効ならばそういう取り組みはずっと昔から行われているわけです。それを今から無理矢理やろうとしても、税金の無駄遣いに終わるだけでしょう。
だいいち、コメというのは人間が食べるべきものです。そんなことをするくらいなら、もっと有効な税金の使い方をして(のちほど詳述)、他の作物を作った方がよほど日本人の栄養のためになります。
浪費に支えられた畜産はやめよう
高級品と言われる和牛にしても、輸入したものをガツガツ食べて身体に霜降りの脂肪をつけているわけで、結局どっかの国で●ホルモン剤漬けになって飼料をアホみたいに食わされた牛肉と育ち方はたいして変わりません。
豚肉や鶏肉にしても、輸入飼料の浪費を軸にして生産が成り立っているわけで、人が口にすべきものを家畜様が口にしているという構図は変わりません。飼料の購入に補助金をつけてもムダです。今の価格高騰に対応できるかどうか疑問ですし、いわゆる「カイカク派」といわれる人間たちやマスコミから「税金のムダだ!」という攻撃を受けてしまいかねないからです。
そうなると、もう、考え方を変えなくてはダメです。家畜以外の、飼料作物を大量消費しないタンパク源の地位を向上させるのです。
まず、家畜は粗放飼料(牧草など)を原則にして、大量の輸入が必要な「濃厚飼料」には課税するといいでしょう。その上で、過放牧がないか農協や都道府県の農政課が監視すれば、自然がまかなえる範囲で無理のない畜養ができます。今でもそういう風にして牛を育てている農家はちゃんといます(たとえば●肥後のあか牛。もっとも、ここでも濃厚飼料を全廃できてはいない)。
そのような自然な牧畜が不可能だというなら、廃業保証金でもつけて畜産をやめてもらった方がいいでしょう。輸入飼料に依存して、粗放飼料の手に入らない場所で畜産をやるなどというのは、自然の理に反しています。砂漠の真ん中にパイプラインや電線を敷いて、人口都市を造るのと同じです。
早く大きく育てなければ競争にならないという論理もたしかにわかるのですが、そうやって作り出されたタンパク質が窮地を招いているのです。このまま行けば飼料の高騰によってどのみち廃業は免れない状況が出てきます。それならば、粗放飼料をメインにする方向に舵を切った方がいいのではないでしょうか。
もっとも、実は飼料を大量に作り出す方法がひとつ残されています。後で詳しく述べます。
「海洋牧場」の可能性
しかし、それを急に進めてもいけません。失業者が大量に出てしまう上に、国民のタンパク源が不足することになるからです。平行して、新しいタンパク源を確保する政策を行わなければなりません。
その切り札になるのが、「海洋牧場」です。
海洋牧場のモデル図については、●こちらのリンクを見ていただけるとよくわかります。要するに、魚を幼魚の段階から音波を使って「餌付け」してしまい、海の中で育ててしまおうという発想です。
この発想の優れている点は、人工的に作り出した飼料をほとんど必要としない点です。海の豊富な給養力を利用してしまおうというわけです。
具体的に言えば、まず海洋深層水を海水面近くに持ってくることです。海洋深層水はほぼ無尽蔵にあるといっても過言でない最後の資源であり、これを表層に汲み上げてプランクトンの増殖を促進します。
さらには、小魚や海藻にとって住みやすい環境を作り出すために、人工漁礁を利用します。波の影響を受けにくく、隠れ家のある岩場と同じ環境を作り上げるわけです。
こうすれば、魚は海の中で勝手に育ってくれます。貴重な淡水を暴力的に消費し、農薬を大量にしようして作り出した飼料で作られた畜産物より、地球環境に優しいことは間違いありません。そして、このような技術は、すでに実用化されています。
倉敷にも海洋牧場を整備へ
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200805230085.html
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
岡山県は本年度、西日本最大級とされる約800ヘクタールのアマモ場がある倉敷市の味野(あじの)湾で、海洋牧場の整備に着手する。西部の笠岡市白石島、東部の備前市日生町に次ぎ、県内3カ所目。広域的に漁場整備を進め、水産資源の供給増を図る。
海洋牧場は、稚魚の段階から音響装置を使って餌付けし、人工漁礁や藻場の造成などを通し魚の成長に応じた生息場を整備する。白石島では、県が1991―2001年度に、沖合350ヘクタールに総事業費21億円で牧場を整備。笠岡市でマダイなど6種類の漁獲量が約2倍に回復する効果を挙げている。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
今現在は沿岸漁業の主力産品である「マダイ」や「クロダイ」に止まっているようですが、結局養殖が出来る魚なら、適切な規模さえあれば全てこのやり方で生産ができます。たとえば、以下のような魚も畜養可能になるかもしれません。
クロマグロ完全養殖成功から1年。
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/ren/web/ren7/maguro.html
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
1970(昭和45)年、水産庁はマグロ養殖プロジェクトを打ち出す。近畿大学の他、幾つかの大学や試験場が挑戦したが、試験研究期間後も近大は独自に研究を続けた。「何しろ難しい」と、近大水産研究所長の農学博士・熊井英水さん。稚魚は特に皮膚が弱く、手でつかんだだけで死んでしまう。繊細で、車のヘッドライトや船のエンジン音、水の濁りですぐパニックに陥り、イケスの網に衝突する。「隣のイケスのタイやハマチは平気なのに」とスタッフを嘆息させた。「しかし生物には適応性がある」。それは、ハマチに始まりシマアジ、クエ、ブリ…、ありとあらゆる魚の養殖で培ってきた経験と技術の蓄積に裏打ちされた自信だった。そして遂に3代目が孵化。32年の月日が経っていた。なお、この研究は、文部科学省による世界最高水準の研究教育拠点づくりを推進するCOE(センター・オブ・エクセレント)に選定された。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
この前後に、マグロのえさ代に1年数百万かかるというくだりがありますが、その餌を海洋牧場で供給できるようになれば最高です。日本は水産物の自給が半分しかない国ですが、その多くがカタクチイワシなどの養殖用の飼料だからです。
ホンダワラが日本を救う?
魚だけではなく、海藻を育てる「海洋農場」も同様の発想でできます。こちらはタンパク質ではなく、ミネラルの供給源として有効です。
私が今後、海洋農場の主力になると踏んでいるのは、「ホンダワラ」という海藻です。なぜなら、ホンダワラは「飼料用海藻」「肥料」「バイオマス・エネルギー源」という、日本が渇望している資源に転用できるからです。
たとえば、飼料用や肥料用ホンダワラは、今でも粉末として用いられていますが、残念ながら輸入ものです。日本人には「海藻=口に入れるもの」という意識があるためか、ホンダワラのような飼料用海藻の栽培が行われていません。しかし、周りが海だらけなのですから、やろうと思えばいつでもできます。
ホンダワラの栽培は、もちろん昆布同様海の「世話」は必要ですが、どこか別の所からエネルギーを奪ってくる必要がないというのが最大の魅力です。海には陸地から絶えずミネラルが流れ込んでいるので、それだけで海藻の栽培には十分なのです。
しかも、このホンダワラは近い将来エネルギー資源としても使えそうなメドが立ってきました。以前も紹介しましたが、以下の記事をご覧下さい。
「海藻からバイオエタノールを400万トン/年生産」水産振興会構想発表
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/05/4002013.html
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
農林水産省所轄の財団法人【東京水産振興会】の研究委員会(座長・酒匂敏次東海大名誉教授)は5月9日、バイオエタノールを海藻(かいそう)から大量に生産する構想を発表した。同振興会の調査研究委員会がまとめたという。
元記事によると海面に浮かべた網でアカモク(ホンダワラ科)やコンブなどの海藻を、海中に浮かせた巨大な網にタネや苗を植えて養殖し、工場も洋上に建造。その工場で海藻を材料としてバイオエタノールを生産するという。
この仕組みでは原材料の調達コストが現在バイオエタノールの主要材料であるとうもろこしやさとうきびなどの穀物と比べると安く、新たな技術開発も少ないため、ハードルは比較的低いとされている。また、食糧との競合も避けられるので、現在すでに影響が出ている価格全体の引き上げなど、食糧方面での悪影響も防げるメリットがある。
試算では日本の領海と排他的経済水域(EEZ)をあわせた海域約447万平方キロメートルのうち1〜2%を用いるだけで年間1.5億トンの海藻を養殖でき、この海藻から400万〜500万キロリットルのバイオエタノールが生産できるという。これは現在の日本国内のガソリン使用量の約1割にあたるとのこと。
当計画では2013年頃から実証事業を始めるべく各方面に働きかけをしており、漁業者や民間企業が事業主体になることを想定しているが、スタート時は国の事業とするように、国に働きかけるという。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
2013年から実験などと悠長なことを言っている場合ではありません。今すぐ始めなければダメです。そうは言っても、グローバル経済派に乗っ取られている自民党や、外国の意を受けて活動している公明党ではこんな政策は推進できません。野党各党は「海藻バイオマスによるエネルギー自給率アップ」を選挙公約の中に入れて、大々的にアピールすべきです。
このような海洋牧場や海洋農場を、日本中に作ればいいのです。離島でやれるようになれば、雇用対策としてもこれ以上のものはありません。税金のムダという「カイカク派」「公務員叩きマニア」に対しては、上に挙げたようなマグロののように、一般人に受けのよいネタを入れてマスコミを味方につけて対抗すればいいでしょう。なにしろ、輸入飼料に依存しないタンパク質の自給という素晴らしい目標があるのですから、臆する必要などありません。
こういうことをいうと、「それじゃあ内陸部の農村はどうすればいいんだ」という意見が出てきそうです。
しかし、畑でもタンパク源が作れることをお忘れではありませんか。そうです。「大豆」です。
次回はこの大豆を軸にして、農作物の自給についても考えていこうと思います。
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全世界の穀物の4割が向かう先
さて、私は前回の最後に、「タンパク質」が鍵だという話をしました。その理由は、この栄養素を作り出すために、膨大な食糧が消えているという現状があるからです。
日本は、食糧自給率が低い国だと言われています。カロリーベースで計算して、だいたい40%です。サミット参加国中最悪の数字です。なお、金額ベースで表す計算もあります(こちらだと70%)が、外国から自由にものが買えなくなれば意味がありません。
しかも、この40%という数字は非常に重要な数字を取り除いた「上げ底」なのです。それは、畜産を行う際に消費される輸入飼料です。
日本の食糧事情で一番問題なのは、この飼料の自給率が低いことです。少々古いデータですが、平成15年で24%しかありません。特に、早く肥育するために必要な「濃厚飼料」というカテゴリーは10%と非常に低くなっています。
これは日本に限った話ではありません。なんと、全世界の穀物の4割が飼料用として「消費」されているという現状があるのです。面白い話があったので、ご覧下さい。
「あいのり」が飢餓問題の本質に迫る
http://hideyukihirakawa.com/blog/archives/200411/300034.php
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
メンバーたちは、アフリカのマザーテレサと呼ばれているアベベック・ゴベナさん(67歳)が営む孤児院を訪れ、アフリカの飢餓の実態、日本など先進国の利害が深く関わる「飢餓はなぜ起こるのか?」を聞かされる。
(中略)
さて、緑の革命の問題に突っ込んだあと、次はいよいよ「肉食」の問題に話は進む。実は、ここまで見ていて、「ここで肉食の問題までいったら、すごいもんだけど、無理かなぁ」なんて、夫婦二人で半ばあきらめていたのだが、「あいのり」スタッフはなかなかやる。
世界中で生産される穀物は一年に20億トン。
これは世界の人口、63億人の2倍以上の人が食べていくのに十分な量のはずである。
しかし、先進国の人々は貧しい国の4倍もの穀物を消費している。その為、貧しい国の人々には十分な食糧が行き渡らない。
世界で一番穀物を輸入しているのは、日本!世界全体の10%の穀物を輸入している。
しかし、日本人が直接食べるのはこのうちたった3分の1だけ。残り3分の2は家畜の飼料となっている。
外国では肉牛は草を食べて育つことが多い。しかし・・・霜降りの肉が喜ばれる日本では、肉牛は穀物のエサで育てる。肉に脂がのっておいしくなるからだ。
おいしい霜降り和牛1キロを作るために牛は8キロの穀物を食べさせられるのである。焼き肉店でおいしい和牛のカルビを食べるということは、たくさんの穀物を食べてるのと同じことなのである。
ちなみに、この話の中では、日本の肉牛生産による穀物の過剰消費だけにスポットが当たっているが、実をいえば、世界全体でみても、穀物生産量全体の40%は家畜飼料である。「外国では肉牛は草を食べて育つことが多い」とあるが、穀物生産大国アメリカなどはがんがん穀物飼料を牛や豚に与えている。自国だけでは足らず、アマゾンの熱帯雨林まで切り開いて、大豆を作らせたり、牧地を広げている。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
例として挙がっている和牛などまだましなほうで、平均すると牛肉1キロを作るために11キロの飼料作物が必要なようです。なんとも馬鹿げた話です。
私は肉の脂が大嫌いな上に、輸出相手国の基準に合わせず●プロパガンダで国民を騙して牛肉を売りつけようとしてくる連中に対して反発したい気持ちがあるので、牛肉は3ヶ月前に親戚に「今半」で和牛のすき焼きをごちそうになっただけで、あとは全く口にしていません。周りには「アホか」と言われることもありましたが、どうやら人間としては間違ったことをしていなかったようです(笑)。
飼料の生産を増やせばいいではないか、という人もいますが、そういう問題ではありません。だいいち、今現在これだけ食糧が高騰しているというのは、各国が増産しようにもできないという事情がある(アメリカのように「バイオエタノール」という無用の長物のために転作している国もいる)からです。日本が、同じ土俵に上がってもダメです。
そもそも、家畜の大規模生産がなぜ始まったのかというと、穀物がデフレになるのを防ぐためです。できの悪い飼料を正規の市場に出さず、あえて穀物用として売りさばくことで、値崩れを防止してきたというわけです。
つまり、発端からして金儲けであるわけで、日本は戦後そういう「世界の流れ」(笑)に完全に乗せられてしまったのだということができます。もちろん、日本が馬鹿だったというのもありますが、大半は飼料用穀物と輸入食肉を大量に日本に買わせたいどこかの国の思惑です。もう、いい加減そういう状況から離脱すべき時が来ているのではないでしょうか。
国産の飼料を増やす(たとえば、飼料作物用のコメを生産する)という考えもありますが、正直あまりよろしくない考えです。費用対効果を考えて有効ならばそういう取り組みはずっと昔から行われているわけです。それを今から無理矢理やろうとしても、税金の無駄遣いに終わるだけでしょう。
だいいち、コメというのは人間が食べるべきものです。そんなことをするくらいなら、もっと有効な税金の使い方をして(のちほど詳述)、他の作物を作った方がよほど日本人の栄養のためになります。
浪費に支えられた畜産はやめよう
高級品と言われる和牛にしても、輸入したものをガツガツ食べて身体に霜降りの脂肪をつけているわけで、結局どっかの国で●ホルモン剤漬けになって飼料をアホみたいに食わされた牛肉と育ち方はたいして変わりません。
豚肉や鶏肉にしても、輸入飼料の浪費を軸にして生産が成り立っているわけで、人が口にすべきものを家畜様が口にしているという構図は変わりません。飼料の購入に補助金をつけてもムダです。今の価格高騰に対応できるかどうか疑問ですし、いわゆる「カイカク派」といわれる人間たちやマスコミから「税金のムダだ!」という攻撃を受けてしまいかねないからです。
そうなると、もう、考え方を変えなくてはダメです。家畜以外の、飼料作物を大量消費しないタンパク源の地位を向上させるのです。
まず、家畜は粗放飼料(牧草など)を原則にして、大量の輸入が必要な「濃厚飼料」には課税するといいでしょう。その上で、過放牧がないか農協や都道府県の農政課が監視すれば、自然がまかなえる範囲で無理のない畜養ができます。今でもそういう風にして牛を育てている農家はちゃんといます(たとえば●肥後のあか牛。もっとも、ここでも濃厚飼料を全廃できてはいない)。
そのような自然な牧畜が不可能だというなら、廃業保証金でもつけて畜産をやめてもらった方がいいでしょう。輸入飼料に依存して、粗放飼料の手に入らない場所で畜産をやるなどというのは、自然の理に反しています。砂漠の真ん中にパイプラインや電線を敷いて、人口都市を造るのと同じです。
早く大きく育てなければ競争にならないという論理もたしかにわかるのですが、そうやって作り出されたタンパク質が窮地を招いているのです。このまま行けば飼料の高騰によってどのみち廃業は免れない状況が出てきます。それならば、粗放飼料をメインにする方向に舵を切った方がいいのではないでしょうか。
もっとも、実は飼料を大量に作り出す方法がひとつ残されています。後で詳しく述べます。
「海洋牧場」の可能性
しかし、それを急に進めてもいけません。失業者が大量に出てしまう上に、国民のタンパク源が不足することになるからです。平行して、新しいタンパク源を確保する政策を行わなければなりません。
その切り札になるのが、「海洋牧場」です。
海洋牧場のモデル図については、●こちらのリンクを見ていただけるとよくわかります。要するに、魚を幼魚の段階から音波を使って「餌付け」してしまい、海の中で育ててしまおうという発想です。
この発想の優れている点は、人工的に作り出した飼料をほとんど必要としない点です。海の豊富な給養力を利用してしまおうというわけです。
具体的に言えば、まず海洋深層水を海水面近くに持ってくることです。海洋深層水はほぼ無尽蔵にあるといっても過言でない最後の資源であり、これを表層に汲み上げてプランクトンの増殖を促進します。
さらには、小魚や海藻にとって住みやすい環境を作り出すために、人工漁礁を利用します。波の影響を受けにくく、隠れ家のある岩場と同じ環境を作り上げるわけです。
こうすれば、魚は海の中で勝手に育ってくれます。貴重な淡水を暴力的に消費し、農薬を大量にしようして作り出した飼料で作られた畜産物より、地球環境に優しいことは間違いありません。そして、このような技術は、すでに実用化されています。
倉敷にも海洋牧場を整備へ
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200805230085.html
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
岡山県は本年度、西日本最大級とされる約800ヘクタールのアマモ場がある倉敷市の味野(あじの)湾で、海洋牧場の整備に着手する。西部の笠岡市白石島、東部の備前市日生町に次ぎ、県内3カ所目。広域的に漁場整備を進め、水産資源の供給増を図る。
海洋牧場は、稚魚の段階から音響装置を使って餌付けし、人工漁礁や藻場の造成などを通し魚の成長に応じた生息場を整備する。白石島では、県が1991―2001年度に、沖合350ヘクタールに総事業費21億円で牧場を整備。笠岡市でマダイなど6種類の漁獲量が約2倍に回復する効果を挙げている。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
今現在は沿岸漁業の主力産品である「マダイ」や「クロダイ」に止まっているようですが、結局養殖が出来る魚なら、適切な規模さえあれば全てこのやり方で生産ができます。たとえば、以下のような魚も畜養可能になるかもしれません。
クロマグロ完全養殖成功から1年。
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/ren/web/ren7/maguro.html
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
1970(昭和45)年、水産庁はマグロ養殖プロジェクトを打ち出す。近畿大学の他、幾つかの大学や試験場が挑戦したが、試験研究期間後も近大は独自に研究を続けた。「何しろ難しい」と、近大水産研究所長の農学博士・熊井英水さん。稚魚は特に皮膚が弱く、手でつかんだだけで死んでしまう。繊細で、車のヘッドライトや船のエンジン音、水の濁りですぐパニックに陥り、イケスの網に衝突する。「隣のイケスのタイやハマチは平気なのに」とスタッフを嘆息させた。「しかし生物には適応性がある」。それは、ハマチに始まりシマアジ、クエ、ブリ…、ありとあらゆる魚の養殖で培ってきた経験と技術の蓄積に裏打ちされた自信だった。そして遂に3代目が孵化。32年の月日が経っていた。なお、この研究は、文部科学省による世界最高水準の研究教育拠点づくりを推進するCOE(センター・オブ・エクセレント)に選定された。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
この前後に、マグロのえさ代に1年数百万かかるというくだりがありますが、その餌を海洋牧場で供給できるようになれば最高です。日本は水産物の自給が半分しかない国ですが、その多くがカタクチイワシなどの養殖用の飼料だからです。
ホンダワラが日本を救う?
魚だけではなく、海藻を育てる「海洋農場」も同様の発想でできます。こちらはタンパク質ではなく、ミネラルの供給源として有効です。
私が今後、海洋農場の主力になると踏んでいるのは、「ホンダワラ」という海藻です。なぜなら、ホンダワラは「飼料用海藻」「肥料」「バイオマス・エネルギー源」という、日本が渇望している資源に転用できるからです。
たとえば、飼料用や肥料用ホンダワラは、今でも粉末として用いられていますが、残念ながら輸入ものです。日本人には「海藻=口に入れるもの」という意識があるためか、ホンダワラのような飼料用海藻の栽培が行われていません。しかし、周りが海だらけなのですから、やろうと思えばいつでもできます。
ホンダワラの栽培は、もちろん昆布同様海の「世話」は必要ですが、どこか別の所からエネルギーを奪ってくる必要がないというのが最大の魅力です。海には陸地から絶えずミネラルが流れ込んでいるので、それだけで海藻の栽培には十分なのです。
しかも、このホンダワラは近い将来エネルギー資源としても使えそうなメドが立ってきました。以前も紹介しましたが、以下の記事をご覧下さい。
「海藻からバイオエタノールを400万トン/年生産」水産振興会構想発表
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/05/4002013.html
−−−−−−−−以下引用−−−−−−−−
農林水産省所轄の財団法人【東京水産振興会】の研究委員会(座長・酒匂敏次東海大名誉教授)は5月9日、バイオエタノールを海藻(かいそう)から大量に生産する構想を発表した。同振興会の調査研究委員会がまとめたという。
元記事によると海面に浮かべた網でアカモク(ホンダワラ科)やコンブなどの海藻を、海中に浮かせた巨大な網にタネや苗を植えて養殖し、工場も洋上に建造。その工場で海藻を材料としてバイオエタノールを生産するという。
この仕組みでは原材料の調達コストが現在バイオエタノールの主要材料であるとうもろこしやさとうきびなどの穀物と比べると安く、新たな技術開発も少ないため、ハードルは比較的低いとされている。また、食糧との競合も避けられるので、現在すでに影響が出ている価格全体の引き上げなど、食糧方面での悪影響も防げるメリットがある。
試算では日本の領海と排他的経済水域(EEZ)をあわせた海域約447万平方キロメートルのうち1〜2%を用いるだけで年間1.5億トンの海藻を養殖でき、この海藻から400万〜500万キロリットルのバイオエタノールが生産できるという。これは現在の日本国内のガソリン使用量の約1割にあたるとのこと。
当計画では2013年頃から実証事業を始めるべく各方面に働きかけをしており、漁業者や民間企業が事業主体になることを想定しているが、スタート時は国の事業とするように、国に働きかけるという。
−−−−−−−−引用以上−−−−−−−−
2013年から実験などと悠長なことを言っている場合ではありません。今すぐ始めなければダメです。そうは言っても、グローバル経済派に乗っ取られている自民党や、外国の意を受けて活動している公明党ではこんな政策は推進できません。野党各党は「海藻バイオマスによるエネルギー自給率アップ」を選挙公約の中に入れて、大々的にアピールすべきです。
このような海洋牧場や海洋農場を、日本中に作ればいいのです。離島でやれるようになれば、雇用対策としてもこれ以上のものはありません。税金のムダという「カイカク派」「公務員叩きマニア」に対しては、上に挙げたようなマグロののように、一般人に受けのよいネタを入れてマスコミを味方につけて対抗すればいいでしょう。なにしろ、輸入飼料に依存しないタンパク質の自給という素晴らしい目標があるのですから、臆する必要などありません。
こういうことをいうと、「それじゃあ内陸部の農村はどうすればいいんだ」という意見が出てきそうです。
しかし、畑でもタンパク源が作れることをお忘れではありませんか。そうです。「大豆」です。
次回はこの大豆を軸にして、農作物の自給についても考えていこうと思います。
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工ロ系は論外です。
工ロ系は論外です。
ろろ | 2008年07月04日(金) 13:43 | URL | コメント編集
7月1日放送のNHK・クローズアップ現代でやっていました。
http://www.nhk.or.jp/gendai/
原因は温暖化だそうです。海藻の成長が止まるだけでなく、温かい水温を好む南方系の魚やウニが活発化し、海藻を食べ尽くしているといいます。海藻の成長が止まる原因は栄養不足。温暖化で海水面の水温が上がり、海藻への栄養供給源である深層水の循環が止まりつつあることが原因だと、最近の海洋物理学の知見で明らかになったそうです。
しかし、これは逆に考えると、十分な栄養素の供給が出来さえすれば、温暖化による水温の上昇は海藻の生育には好条件になるはずです。人工的に海洋深層水をくみ上げて、海藻の生育を促進させてやればよいわけですから。海洋牧場は、温暖化を逆手に取った施策になるかもしれませんね。
http://www.nhk.or.jp/gendai/
原因は温暖化だそうです。海藻の成長が止まるだけでなく、温かい水温を好む南方系の魚やウニが活発化し、海藻を食べ尽くしているといいます。海藻の成長が止まる原因は栄養不足。温暖化で海水面の水温が上がり、海藻への栄養供給源である深層水の循環が止まりつつあることが原因だと、最近の海洋物理学の知見で明らかになったそうです。
しかし、これは逆に考えると、十分な栄養素の供給が出来さえすれば、温暖化による水温の上昇は海藻の生育には好条件になるはずです。人工的に海洋深層水をくみ上げて、海藻の生育を促進させてやればよいわけですから。海洋牧場は、温暖化を逆手に取った施策になるかもしれませんね。
キューバ農民 農業生態系重視 伝統農法の回復で食料生産に大変革
http://sun.ap.teacup.com/souun/1802.html
外来作物偏重が飢餓の根源 食料安全保障には在来食料が不可欠
http://sun.ap.teacup.com/souun/1804.html
http://sun.ap.teacup.com/souun/1802.html
外来作物偏重が飢餓の根源 食料安全保障には在来食料が不可欠
http://sun.ap.teacup.com/souun/1804.html
今後海洋性農技術が進み、食料・エネルギー問題に明るい展望が見えると良いですね。きっと専門的には解決すべきことがあるのでしょうが可能性・将来性を感じました。
あと心配なのは、こういった事業を「誰が」行うのか(市場原理をどこまで取り入れるか)、A国の食料メジャーなどから妨害されないのか、海洋深層水は長い長い時間をかけて行われる自然の循環だと思っているのでやたらと使ってしまうと将来予期しないマイナスが発生しないのか、などなど考えてしまいました。
浪費し続けなければ綻びが生じる、世界的な食料事情(日本など一部先進国の言い分)は、いびつで正しくないと思います。
・・・さて洞爺湖サミット。期待はゼロか・・・。
あと心配なのは、こういった事業を「誰が」行うのか(市場原理をどこまで取り入れるか)、A国の食料メジャーなどから妨害されないのか、海洋深層水は長い長い時間をかけて行われる自然の循環だと思っているのでやたらと使ってしまうと将来予期しないマイナスが発生しないのか、などなど考えてしまいました。
浪費し続けなければ綻びが生じる、世界的な食料事情(日本など一部先進国の言い分)は、いびつで正しくないと思います。
・・・さて洞爺湖サミット。期待はゼロか・・・。
ウヰスキー | 2008年07月04日(金) 23:27 | URL | コメント編集
炭素循環:二酸化炭素地球温暖化脅威説批判第一部
http://sun.ap.teacup.com/souun/1573.html
http://sun.ap.teacup.com/souun/1573.html
海洋深層水の利用については、私も予期しないマイナス効果があるのではないかと、何となく心配になります。地下水のくみ上げ過ぎによる地盤沈下やらなんやらと自然には何かとゼロサムなイメージがあるせいだと思いますが。
あと、使い古された言い方のような気がしますが、海洋資源を育てるのは森林ですから、仮に海洋資源の利用が注目され始めれば、森林の保護や再生についても注目が行くと思います。それを機に林業やらの山の産業も復活してくれればいいのですが。
あと、使い古された言い方のような気がしますが、海洋資源を育てるのは森林ですから、仮に海洋資源の利用が注目され始めれば、森林の保護や再生についても注目が行くと思います。それを機に林業やらの山の産業も復活してくれればいいのですが。
ddd | 2008年07月06日(日) 19:52 | URL | コメント編集
>>早雲さん
こちらの記事に触発されたのかどうかは分かりませんが、非常にためになる記事の紹介ありがとうございます。実は、TB前に読了していました。
キューバがそこまで到達できたのは、アメリカに楯突くことでグローバル経済システムから締め出しをくらったからなんですよね。日本はどうなのかな・・・。
>>愚樵さん
>>ウヰスキーさん
>>dddさん
海洋の栄養循環については、私も多少の心配はあります。
しかし、淡水のそれよりもはるかに大きな循環であり、ホンダワラの生育に必要な程度でもらっても問題はないかなと思っています。
海洋深層水の利用を本格化するには、まずもって海洋における栄養循環をきちんと把握し、どの程度までの量なら汲み上げて陸上の栄養として利用しても問題ないのかという管理の枠組みを作ることです。どうせ海洋牧場、海洋農場を成功させられる可能性があるのは日本だけなのですから、この枠組みをしっかり作って、台湾やスリランカ、モルジブのような島国を巻き込んでいけば、中国、ロシア、アメリカなどと違うレベルで戦えると思っています。
余談ですが、時折見られる捕鯨に対する異常なまでの国際世論の反発は、全て日本の海洋戦略を封じ込める米英豪の地政学戦略だと思っています。鯨は動物性脂肪を多く含んでいるので個人的には食べたくありませんが、適切な水産資源の管理や、タンパク源の確保という意味で、力を入れた方がいいでしょう。
もっとも、海洋牧場近辺だけ防衛できれば、別に鯨がどこに行こうと構わない、という時代になってほしいです。
こちらの記事に触発されたのかどうかは分かりませんが、非常にためになる記事の紹介ありがとうございます。実は、TB前に読了していました。
キューバがそこまで到達できたのは、アメリカに楯突くことでグローバル経済システムから締め出しをくらったからなんですよね。日本はどうなのかな・・・。
>>愚樵さん
>>ウヰスキーさん
>>dddさん
海洋の栄養循環については、私も多少の心配はあります。
しかし、淡水のそれよりもはるかに大きな循環であり、ホンダワラの生育に必要な程度でもらっても問題はないかなと思っています。
海洋深層水の利用を本格化するには、まずもって海洋における栄養循環をきちんと把握し、どの程度までの量なら汲み上げて陸上の栄養として利用しても問題ないのかという管理の枠組みを作ることです。どうせ海洋牧場、海洋農場を成功させられる可能性があるのは日本だけなのですから、この枠組みをしっかり作って、台湾やスリランカ、モルジブのような島国を巻き込んでいけば、中国、ロシア、アメリカなどと違うレベルで戦えると思っています。
余談ですが、時折見られる捕鯨に対する異常なまでの国際世論の反発は、全て日本の海洋戦略を封じ込める米英豪の地政学戦略だと思っています。鯨は動物性脂肪を多く含んでいるので個人的には食べたくありませんが、適切な水産資源の管理や、タンパク源の確保という意味で、力を入れた方がいいでしょう。
もっとも、海洋牧場近辺だけ防衛できれば、別に鯨がどこに行こうと構わない、という時代になってほしいです。
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2008/07/04(金) 12:38:00 | がんばれ城内実(きうちみのる)
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