日本ハム投手コーチで、17日に心不全のため急逝した小林繁氏(享年57)の葬儀、告別式が20日、福井市内の斎場で500人が参列して営まれた。阪神時代にともにプレーし、01年には近鉄のコーチとしてリーグ優勝を果たした阪神・真弓明信監督(56)は、小林氏が現役時代に見せた巨人に対する強い気持ちを継承するために、ミーティングなどで当時の勇姿を放映する考えを明かした。
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これが今生の別れだとは思えなかった。あまりにも突然のふ報は、最後の時を迎えても信じられなかった。午後1時40分、総監督を務めたオールスター福井の教え子たちが「小林さん、ありがとうございました!」と頭を下げ、最後の旅路へと出発した小林さん。その様子を真弓監督は目に焼き付けるように、じっと見つめていた。
「これが別れになるとは信じがたい。納得できない」。指揮官は悔しさを押し殺すように言葉を並べた。今も目をつぶれば、細い腕で宿敵・巨人に立ち向かっていった姿が浮かんでくる。プロ野球界を生き抜いていくために、重要なのは技術でも体力でもなく、気持ち。それを教えてくれたのが小林さんのピッチングだった。
現役時代、ともにプレーした間柄だからこそ、猛虎の将として宿敵との伝統の一戦に臨むからこそ、遺志を引き継がなければならない。「気持ちでねじ伏せる投球が目に焼き付いている。タイガースOBとしても活躍された方ですし、巨人に対する気持ちを継承していきたい」。告別式後、指揮官はこうきっぱりと言い切った。
「空白の一日」による江川氏とのトレードで巨人から阪神に移籍した79年、小林さんは巨人に対し負けなしの8連勝と圧倒的な強さを誇った。今でもその数字は阪神の球団記録として残っている。「巨人戦では一番、気持ちが出ていた投手。登板の前々日くらいから意識していた。細い体で球もそんなに速くないのに、気持ちで抑えてきたピッチャー」と当時、遊撃のポジションからその背中の大きさを見ていた真弓監督。現在、宿敵がリーグ3連覇を果たしているからこそ、まず気持ちで負けるわけにはいかない。
「今の選手はビデオでも見ていると思うけど、何らかの形で見せたい」と小林さんの勇姿をミーティングなどで放映する方針も口にした。タテジマを身にまとい、因縁の相手へ立ち向かっていく姿から学ぶべき点は多々あるはずだ。
「本当に安らかに眠ってくださいとしか言いようがなかった」と真弓監督は別れを告げた。身長178センチ、体重68キロと細身の体で巨人打線を牛耳り、139の勝ち星を積み上げた右腕が残してくれたもの-。簡単には折れない強い気持ちを胸に抱き、戦っていく。