民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る事件で、東京地検特捜部の捜査が大きく動いた。
小沢氏の元私設秘書、石川知裕衆院議員と別の元私設秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕、西松建設事件で公判中の大久保隆規・公設第1秘書の逮捕状を取った。
陸山会は04年10月、東京都世田谷区に土地を購入した。金融機関から借りた4億円を支払いに充てたと小沢氏側は従来説明していた。だが、実際は、小沢氏から提供された別の4億円が充てられたという。
容疑は、この4億円を政治資金収支報告書に記載しなかったなどの疑いだ。なぜそうしたのか。小沢氏の提供とされる4億円の原資は何か。それが事件の核心だ。
陸山会を巡り、中堅ゼネコン「水谷建設」元幹部が「1億円を小沢氏側に渡した」と供述しているという。5000万円は04年10月に石川議員に、残り5000万円は翌年、大久保秘書に渡したと話しているという。
国が発注した胆沢(いさわ)ダムの下請け工事受注の成功報酬だという。この供述が事実だとすれば裏献金である。
特捜部は時期的に、最初の5000万円が、土地代の支払いに充てられた可能性があるとみるのだろう。
胆沢ダム工事で水谷建設の元請けだった大手ゼネコン「鹿島」に捜索が入ったことからもうかがえる。
逮捕容疑は、4億円を報告書に記載しなかったことだ。だが、仮に裏献金を使って土地を購入したことを隠す意図がその背景にあったとすれば、悪質というほかない。
石川議員は特捜部の調べで4億円の原資について「知らない」といい、説明は合理性を欠いていたとされる。逮捕は、そのためだろう。
18日に通常国会が開会する。仮に開会後に石川議員を逮捕する場合、所属する衆院の許諾が必要になる。特捜部は、石川議員の在宅起訴の方針を転換し、逮捕しての真相解明にかじを切る中で、ギリギリの判断で、時機を探ったとみられる。
小沢氏は虚偽記載の経緯についてどういう認識だったのだろうか。捜査を尽くすよう改めて検察に求めたい。
小沢氏の政治資金問題で現職国会議員が逮捕され、鳩山内閣の運営に与える影響は極めて重大だ。捜査の進展次第では小沢氏の進退問題も絡むだけに、国会は冒頭から緊迫した展開となる。
小沢氏をはじめ党が国会審議を通じての真相究明に協力すべきことは言うまでもない。鳩山由紀夫首相は党代表として自浄能力を示すため、指導力を発揮する責任がある。
その覚悟を16日の党大会で表明すべきである。
毎日新聞 2010年1月16日 2時31分