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アルコールと病気（２）断酒　自分の弱さを直視

　

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デイケアの話し合いに参加した人数などを日誌につける小嶋洋子さん（横浜市旭区の横浜マックで）

　アルコール依存症治療の基本は、酒を断つことだ。重症者は入院が好ましいが、治療は通院でもできる。

　４年前、多量の飲酒による依存症と診断された関東地方の会社員Ａ子さん（３６）は、通院で治療に取り組むことにした。心理的に酒を遠ざけるため、酒を少量でも口にすると悪酔いする「抗酒薬」を、数か月間毎日飲んだ。

　断酒すると数日間、幻覚が現れる患者もいる。国立病院機構久里浜アルコール症センター（神奈川県横須賀市）精神科医長の宮川朋大さんは「その場合は、抗不安薬を短期間使う」と説明する。

　Ａ子さんは、離脱症状で手の震えやひどい寝汗がしばらく続いたが、最もつらかったのは「お酒が抜けて見えてきた現実」だった。

　「仕事を失い、何もできない自分」と向き合う苦痛。「飲んだら楽になる」と誘惑に駆られるが、一度依存症に陥った患者は、再び少しでも酒を口にするとやめられなくなる。実際、治療後に飲酒を再開する患者は半数以上にのぼる。

　「まだ十分、やり直せるから」。Ａ子さんがケースワーカーの言葉に励まされて通い始めたのが、依存症からの離脱を手助けするデイケア施設だった。

　そのひとつ、ＮＰＯ法人「横浜マック」（横浜市旭区）のスタッフ小嶋洋子さん（４９）は、自身がアルコール依存症の経験者だ。「この病気になる人は人付き合いが下手。他人に依存し過ぎたり一人で悩みを抱え込んだりする。話の輪に加われるようになるまでに、２～３か月かかる」と話す。

　Ａ子さんも最初、輪に加われなかった。「道楽で酒を飲んでいた人たちとは違う」との思いもあった。しかし、食費や光熱費を削ってまで酒を買ったとの話を聞くうちに「みんな私と同じだ」と気づいた。

　デイケアには２年間、毎日通った。「人間関係のストレスから目をそらすため、お酒に頼った」と自覚し、何でも話せる仲間を作った。現在は新たな仕事を得たが、ストレスに押しつぶされないよう、仕事を終えるとほぼ毎日、別の自助グループの集会に参加している。

　Ａ子さんの回復のカギは「自分の弱さを直視できたこと」だったという。患者の中には、親がアルコール依存症でつらい幼少期を送った人も少なくないが、小嶋さんは「他人のせいにせず、一番の原因は自分にあると自覚することが回復への道」と語る。

　【全国マック協議会】　（（電）０３・５９７４・５０９１）は、ＮＰＯ法人などが運営する１４のデイケア施設が連携し、アルコール・薬物依存症の支援を行う。

　断酒を継続できる患者は、自助グループの「アルコホーリクス・アノニマス（ＡＡ）」（（電）０３・３５９０・５３７７）へと紹介している。

（2009年12月22日 読売新聞）