【第392回】 2009年11月16日
タスクフォースの「置き土産」
JALにのしかかる10億円
前原誠司国土交通相の旗振りの下、急きょ組成された「JAL再生タスクフォース」が解散されて2週間。現在、日本航空(JAL)の手元にはいくつもの請求書が届き、総額は10億円弱にも上る。
11月中にも資金繰りが詰まる懸念があり、冬のボーナスさえ全額カットせざるをえないJALにとって、いかにも重い金額だ。
約1ヵ月間、タスクフォース主導で、およそ100人の弁護士やコンサルタントらがJALの資産査定と、それに基づく再建計画策定に走った。10億円はその費用である。
「経営共創基盤とPwCアドバイザリーから20人ほど、ボストン・コンサルティング・グループから8人。西村あさひ法律事務所からは、常駐者だけで20人は下らなかったかな」(JAL関係者)
国交相肝煎りのタスクフォースから送り込まれたとあって、JAL経営陣に事実上、契約書へのサインを拒む権限はなく、「このほかにもいくつか、契約を迫られていた会社があったが、タスクフォース解散で契約せずにすんでよかった」(同)という。
10億円で100人ということは、1人頭およそ1000万円。この金額自体は「業界では妥当」だというが、タスクフォースの成果は実質ゼロで終わっているとの見方が一般的だ。企業再生支援機構送りが決まったため、作成した再建案すら日の目を見ず、また一から資産査定をし直すこととなったからだ。
ムダに終わった1ヵ月の費用を支払えるほど、JALの財布に余裕はない。「支払うべきは国ではないか」と憤る関係者も多い。
ちなみに、経営共創基盤とPwCはそれぞれ、タスクフォースメンバーだった冨山和彦氏と田作朋雄氏が籍を置く会社だ。
「通常、資産査定なら10人もいれば十分なはず」(銀行関係者)。JAL社員たちが「タスクフォースチームのいいようにやられた」と臍をかむのも無理はない。
タスクフォースの置き土産はこれだけではない。この1ヵ月間、「債務超過8000億円」などとした情報が漏れるなかで、JALの搭乗者は激減。信用不安も起きており、ただでさえ厳しかった資金繰りは、予想以上に悪化している。
政府は1000億円規模のつなぎ融資を決めたが、「それでも1月末は越せないかもしれない」(関係者)というから深刻だ。
年金問題や過剰債務の解消もさることながら、ビジネスモデルを立て直し、黒字が出る会社にならない限り、JALに未来はない。しかしもはや、綿密に計画を練る時間は限られている。
金融機関や財務省に対して安易に巨額出費を迫り、あっけなく敗北したタスクフォース。残した負のインパクトは大きい。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)
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