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アルコールと病気（１）若い女性の依存症増加

　

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　関東地方の会社員Ａ子さん（３６）が、初めて飲酒したのは高校生の時。文化祭の後、友人とビールやチューハイを飲んだ。

　「最初はその場の勢いだったのが、酒を飲むと気分が高揚するのに、次第にはまってしまった」

　２０歳の時、酒が原因で初めてのトラブルを起こした。会社の新人研修後に行われた懇親会で、全く話をしたことのない男性にビンタを放ち、勝手に帰宅した。この時の記憶はない。

　働き始めて飲酒量が増えた。ビールや日本酒を次々とあけると、男性の上司や同僚から「女性なのにすごい」とちやほやされる。さらに酒を勧められ、「いい気になって飲んでしまった」。自宅でも「仕事を頑張ったごほうび」と、ビールをあけるのが習慣になった。飲み過ぎて記憶をなくすことも度々あった。

　若い女性の飲酒率が上昇し、アルコール依存症に陥るケースが増えている。女性は男性に比べ、肝臓が小さいため分解する力が弱いことや、体脂肪が多いためアルコールが溶けにくく、血液中の濃度が高まりやすい。男性よりも、アルコールの影響を受けやすいとされる。

　国立病院機構久里浜アルコール症センター（神奈川県横須賀市）精神科医長の宮川朋大さんは「男性は飲み始めて２０～３０年で依存症になるが、女性は１０年未満の場合もある。女性ホルモンが影響を増大させるとの研究もある」と話す。

　Ａ子さんは２８歳の時、付き合い始めた男性と晩酌するようになった。ビール５００ミリ・リットル缶６本セットが毎晩なくなり、足りずに日本酒をあけた。「職場の人間関係でストレスをためた時期。視野がぼやけて記憶が遠のくまで飲まないと気が済まなくなった」

　やがて、多量のアルコールの影響で、不眠や抑うつに陥った。家族と話すのもつらくなり、仕事への集中力を欠いて職を失った。失恋も重なり、実家で酒を飲んでは暴れた。

　飲酒の欲求が抑えられない、酔いにくくなり量がさらに増す、酒が切れると手が震えたり眠れなかったりする、などはアルコール依存症の代表的な症状だ。

　それでもＡ子さんは周囲に「私は酒に強いから病気ではない」と、自分では認めたがらなかった。実はこれも依存症の特徴のひとつだ。３２歳の時、家族に勧められ受診した病院で、依存症と診断された。

　【若い女性の飲酒率】　２００８年の国の研究班調査で、年に１度以上の飲酒をする人は、２０歳代前半の女性で５年前より１０ポイント増え９０％に。同年代男性の８３％を初めて上回った。１日の飲酒量が日本酒換算で３合以上の多量飲酒者も、２０歳代前半の女性で６．７％から１１．７％に上昇した。

（2009年12月21日 読売新聞）