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【群馬】「八ッ場ダム」越年する課題<中> 住民補償の行方 『中止』前提の協議難しく2009年12月27日
「最も早く補償の問題が出てくるのは、川辺川ダム(熊本県)になる」。十一日の閣議後会見で、ダム事業見直しに向けた今後のスケジュールに言及した前原誠司国土交通相。ダム建設中止に伴う住民補償法案については「個別の事業では、地元と交渉しながら法案化に取り組む。川辺川の場合も、来年の通常国会への法案提出は難しい」との見通しを示した。 「八ッ場(やんば)は後回しにされるのか」。前原氏の発言によって、八ッ場ダムの生活再建問題の全面解決が大幅に遅れる公算が大きくなり、地元からは不安の声も聞こえ始めた。補償問題の行方は、八ッ場ダム問題の今後を左右する最重要テーマだ。 政権交代前に、民主党は国直轄のダム事業などの中止を想定した「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案(仮称)」の骨子案を示している。 同案は、二〇〇〇年に片山善博・鳥取県知事(当時)が中止を決めた、県営中部ダムの関係住民に対する補償策がモデルとされる。ダム事業中止後に国や自治体、地元住民らで協議会を組織し、公共施設の整備や産業振興などにつながる事業を議論。合意内容を「特定地域振興計画」として実行し、地域の生活再建を図る内容だ。 前原氏は同案などを基に八ッ場ダムや川辺川ダムなどの住民補償策を具体化した上で、法案作成を目指すとみられる。 だが、前原氏が示す住民補償の枠組みは、あくまでダム建設中止が条件。中止撤回で団結する八ッ場ダムの地元関係者が、前原氏のイメージする補償協議のテーブルにつく可能性は、現段階ではゼロと言っていい。 ダム本体建設の是非に関する結論が出ていない以上、八ッ場ダムの生活再建事業のうち、来年度に実施する内容は、ダム建設を前提とした現在の計画が基になる。 しかし、国と地元の対立関係が続いたまま住民補償の協議を始める見通しが立たない場合、一一年度以降の生活再建事業の取り扱いが「白紙」となる事態も考えられる。 二十五日に示された国の来年度予算案では八ッ場ダムの生活再建事業費に約百五十四億円が計上された。長野原町の高山欣也町長とダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「納得できる金額だ」と国の対応を評価した。 だが、前原氏の示す住民補償の考え方には「ダムが中止になった場合の生活再建を議論することはできない」と“徹底抗戦”の構えだ。
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