ADHDについて | 玉木宗久 |
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周りのことが気になって勉強に集中できない,忘れ物が多い,宿題を時間までに終えることができない(不注意),ソワソワして座って話を聞いていられない(多動),人の話を突然さえぎって話をはじめる,事前に考えて計画的に活動できない(衝動性),などなど。
もし,子どもにこのような特徴が認められたら,その子どもはADHDかもしれません。
ADHDとは,アメリカ精神医学会により作成された「精神疾患の診断と統計のためのマニュアル−第4版(DSM-W)」の中にある診断名の1つです。正式には「Attention Deficit/ Hyperactivity Disorder」と呼ばれ,日本語では「注意欠陥/多動性障害」と訳されます。
ADHDは,一般に就学前,あるいは学齢期のはじめ頃より認められるようになるといわれています。「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」(2004)の調査によると,日本においては,小・中学校の子どもの2.5%が,冒頭のような「不注意」や「多動性−衝動性」の問題をもっていると推定されています。換算すると1学級(30〜40名)におよそ1名の割合でADHDの子どもがいる,ということになります。
ADHDの主な症状は,「不注意」「多動」「衝動性」の3つです。ADHDの子どもは,これらの症状のために学校や家庭などの様々な場面において行動を適切にコントロールすることに苦心しています。従って,ADHDのつまずきの本質は,やる気のなさや努力の欠如,あるいは直面する問題を克服するための力がないというのではなく,むしろその力を必要に応じてうまく発揮できないために苦しんでいる,というところにあるといえるでしょう。
ADHDへの支援の基本は,このようなつまずきの本質を,周囲の人たちがきちんと理解して,子どもが自分自身の潜在的な力を活用していけるように,手をさしのべていくことだと考えます。
刺激の調節,集中時間への配慮,得意な認知処理の活用,行動のコントロールや振り返りのための工夫などなど,こうした支援が子ども個々人の状態にあわせて適切に実施されれば,彼らの行動は大きく改善していくといわれています。しかし,反対に,周囲の人からの理解が得られずに不適切な対応を受け続けると,自己評価や自尊感情が低下し,二次的な問題につながっていきます(例えば,かんしゃくを起こすなど)。このような二次的な問題への適切な対応が遅れると,その後の困難がさらに大きなものとなってしまう場合があります。従って,できる限り早い時期からの適切な対応が大切といえます。