オバマ米大統領の就任から1年がたった。「チェンジ」への期待に就任当初は米国だけでなく世界が高揚感に包まれたが、米国内での支持率は低落傾向にある。注目されたマサチューセッツ州の上院補欠選挙でも民主党候補が敗れ、政権運営は厳しさを増している。
就任直後、68%に達していた支持率は昨年12月上旬に47%まで下落した。最新の世論調査では50%程度まで持ち直したとはいえ、依然さえない。就任1年目の大統領としては下落ぶりが目立つ方という。
オバマ氏に対する厳しい見方は、多くの国民が景気回復を実感できていないことに起因しているようだ。国内総生産(GDP)は2009年7〜9月期に2・2%増と5四半期ぶりにプラス成長に転じたものの、12月の就業者数は前月比8万5千人減少した。失業率は10・0%と高止まりしたままである。
オバマ氏と同じく就任1年後に人気が低迷したレーガン元大統領は景気対策に力を入れ、支持率を回復させた。オバマ政権も雇用拡大を最優先課題に据え中小企業減税など追加雇用対策を打ち出している。
懸案の医療保険改革もある。オバマ政権は今後、内政重視の姿勢をより鮮明にしていくと予想される。米国は世論の国であり支持率が重視される。2期目をにらめば当然ではあろうが、日本など他国にとって重要なのは米国の外交姿勢である。内向き志向の反作用として外への関心、関与が希薄になる。あるいは経済交渉などで自国有利の議論を押しつけてくることだ。
内と外のバランスは米大統領にとって宿命的なジレンマと言える。だが、オバマ氏は変革を掲げて登場した。変革の中身の重要な部分は、前ブッシュ政権の一国主義と対極にある「対話と協調」の姿勢であろう。前政権に振り回された側からすれば今後もこの姿勢は大切にしてほしいところだ。
例えば北朝鮮やイランの核問題では、当事国以外の関係国との連携であろう。米国を軸に各国が結束し、解決を導かねばならない。ロシアとも精力的に核削減交渉を進め、オバマ氏自身が提唱しノーベル平和賞につながった「核なき世界」を引き寄せてもらいたい。
日本との関係では、米軍普天間飛行場移設問題などで同盟のきしみが言われている。日本側が決断しなければならないのはもちろんだが、今後の交渉では超大国としての米国の寛容さにも期待したいところである。