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 論説 :  鳥取城と鳥西高/広い視野での論議求める
 鳥取市東町2丁目の史跡・鳥取城跡内に建つ県立鳥取西高校の改築問題で、県文化財保護審議会(長石肇会長)と県教育委員会の間に不協和音が波打っている。

 改築を契機に同校の史跡外移転を求める審議会と、実施設計まで進んだ計画の白紙化はできないと県教委が対立しているのだ。

 史跡は国民の宝。同校関係者だけでなく、多くの県民に開かれた議論を展開してほしい。

 問題の発端は、アリーナ建設の事前発掘調査で救済米を保管した幕末期の籾(もみ)蔵跡が発見されたことだった。

 昨年8月の審議会で、史跡埋蔵文化財部会が「県民にとって重要な史跡が、審議会の意見を聞くこともなく現状変更されようとしている」と反発。審議会委員全員の意見として「鳥西高の史跡外移転」を県教委に要望した。

 鳥取城跡の正式な名称は「史跡鳥取城跡附(つけたり)太閤ケ平(たいこうがなる)」。城跡内の久松山山頂にある山上ノ丸は、戦国時代に毛利氏の城将・吉川経家が立てこもり、太閤ケ平には攻め手の豊臣秀吉が布陣した。山下ノ丸と呼ばれる城域は、江戸時代に因幡・伯耆地方を治めた池田氏が居館を置き、鳥西高がある三ノ丸は池田氏が政務を取り仕切った城の中枢部に当たる。

 中世から近世への城郭の発達史を概観できる遺構として全国的にも貴重で、1957年に国史跡に指定された。

 鳥西高は、1889年に三ノ丸に新築移転した尋常中学校が前身で、史跡指定以前から建っていたことが、現地存続論の根拠の一つにもなっている。

 鳥西高移転問題は2001〜03年度にかけ、県教委が「鳥西高の整備の在り方を考える会」を設置し、現地存続か移転かを検討した。この時は、具体的な移転先3案と事業費や整備期間を明示して議論したが、現地整備の意見が強かった。同校卒業生や保護者ら関係者が多いメンバー構成では、当然ともいえる結論だろう。

 さらに02年度、同校関係者から「現地存続」の陳情を受けた県議会が「趣旨採択」し、県教委が現地整備を進める論拠にしている。これには、校舎の下にある遺構が未調査のままでの議論は、条件提示が不十分だという意見が審議会にある。改築のためには校舎解体が必然で、その際の発掘調査結果を待っての議論も必要だろう。

 県教委が現地改築を進めるもう一つの論拠は、鉄筋コンクリート製の厚い床板を遺構全面に敷き、その上に校舎を建てる「マットスラブ工法」を採ることにある。埋蔵文化財の保護に活用され、考古学関係者にも信頼がある工法だ。しかし史跡指定の趣旨からは、久松山を含む遺跡全体の景観は重要な要素で、史跡内に建つ近代建築物である鳥西高校舎は、時代感覚をゆがめかねない。

 地下遺構の保護が可能だから現地存続をしてもよいというのではなく、山容を含めた文化的景観と校舎の整合性が必要なのだ。「存続は認めたが、建ったのは近代的ビルだった」では困る。

 後出しジャンケンでなく、どのようなデザインが現地に建設しても良いのか悪いのか、広い視野での議論が求められている。

('10/01/21 無断転載禁止)

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