社説
オバマ政権/変革への初心を忘れるな
オバマ米大統領が就任して1年を迎えた。米国初の黒人大統領として「変革」を掲げて登場。「核なき世界」や「イスラム社会との対話」など新たな外交政策を打ち出し、世界中の注目を集めた。
だが、国際社会の期待とは裏腹に、米国内ではオバマ人気に陰りが見え、就任当時の高揚感や熱気が消えつつある。
最新の世論調査では、支持率50%となったが、昨年12月には50%を割るまで落ち込んだ。就任1年後の評価では最近の大統領の中でレーガン氏に次ぐ低い支持率だ。
なぜ「オバマ離れ」が進むのか。大きな要因は依然回復しない経済情勢だろう。
おととい、東部マサチューセッツ州で行われた上院議員補欠選挙が、それを裏付ける。30年以上も民主党の牙城だった同州の議席を共和党に奪われた。共和党候補は、膨らむ財政赤字と、膨大な税金が投入される医療保険改革の問題を厳しく批判し、有権者の支持を得た。
その結果、民主党が上院で安定多数を失い、今後の政権運営に大きく影響しかねない事態に陥ってしまった。
深刻なのは雇用問題だ。就任時7・6%だった失業率は今、10%に達する。金融危機から何とか脱却したが、市民が景気回復を実感できるまでには至っていない。
そうした不満が募り「ウォール街(金融機関)は税金で救済したが、メーンストリート(国民)には失業者があふれる」。そんな声が聞かれるのが現状だ。
さらに、オバマ批判に追い打ちをかけたのが、昨年暮れの米機爆破テロ未遂事件だ。事前情報が入っていながら、未然に防げなかった。「9・11」から8年たっても消えないテロの脅威に、米当局の対応が追いついていない実態を浮き彫りにした。
アフガニスタンでも依然、テロとの戦いが続き、米兵の犠牲者が増えている。北朝鮮やイランの核問題も進展がない。内政だけでなく、外交政策でもオバマ政権への信頼が薄れつつあるのかもしれない。
とはいえ、対話と協調を基軸にしたオバマ外交に共鳴する国は今も多い。ノーベル平和賞はそうした平和外交の今後に期待するからこそ、授与されたといえる。
オバマ大統領が力を入れる核安全保障サミットと、核拡散防止条約(NPT)再検討会議は今年、米国で開かれる。秋の中間選挙を控え、経済再生へのかじ取りが一層注目される。同時に「核なき世界」をめざす変革への初心を忘れないでほしい。
(2010/01/21 09:57)
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