民主党と国民との間に、大きな認識のずれがあるのではないか。
言うまでもなく、小沢一郎幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐり、元秘書の衆院議員らが逮捕された事件への受け止め方だ。
事件を受け共同通信社が行った電話世論調査で、小沢氏は「幹事長をやめるべきだ」と「議員辞職すべきだ」を合わせると、7割を超す人が続投に否定的な考えを示した。
党内には表だって批判する声は少ないが、国民は事件を厳しい目で見ていることを物語る。
鳩山内閣への評価にも表れ、支持率は41・5%と、この1週間で9ポイントも下落。逆に不支持率は44・1%に上昇、支持率と不支持率が初めて逆転した。
政権発足当初、自民党と30%近くの大差があった政党支持率も、10%内に縮まった。
民主党の”ご意見番“渡部恒三元衆院副議長が「大政翼賛会」と例えたように、思ったことを口に出せない党内の現況への批判もあるのでないか。
政治改革を望む国民の支持を受け、政権交代が実現したはずなのに、政権発足から4カ月で、改革の根っこともいうべき「政治とカネ」の問題でつまずきかけている。
いま一度、初心に帰り、国民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
事件の焦点は土地購入に充てられた4億円の原資の出所と、小沢氏がかかわっていたかどうかだ。「何ら不正なお金を使っていない」などとする小沢氏の説明では不十分だ。
世論調査でも9割近くが「納得できない」と回答。野党が求めている小沢氏の国会への参考人招致も8割が「応じるべき」としている。
鳩山由紀夫首相がきのうの代表質問に対し、「小沢氏が潔白を主張していることを信じるのが同志としての基本だ」と答弁したのとは対照的だ。
いまだに小沢氏に説明を求めたり、責任を問う声が小さいのも不思議だがそれ以上に問題なのは、党内に「捜査情報の漏えい問題対策チーム」なる組織の設置を決めたことだ。
検察をけん制し、全面対決の姿勢をみせる小沢氏を側面から支援しようとの狙いのようだが、なすべき方向が間違っている。
必要なのは小沢氏から事情を聴き、真相解明をめざす外部者による調査組織だ。自浄機能が求められている。
小沢氏は検察からの事情聴取の要請に応じる意向という。当然だが、それだけでは足りない。開会中の国会の場で堂々と説明してもらいたい。
政権交代しても「政治とカネ」の問題は同じ−では、深刻な政治不信をもたらしかねない。民主党は党の命運だけでなく、日本の政治の行く末もかかっていると認識すべきだ。
[京都新聞 2010年01月20日掲載] |