県内市町村の消防本部が新年度、統合に向け動き出す。最も早い砺波と南砺、小矢部の3市は平成23年4月の統合に向け、新年度に協議会を発足させる。新川地域8市町村の消防本部は2月に研究報告書を各首長に提出し、合意が得られれば新年度に協議会を立ち上げる。氷見、高岡、射水の3市も消防本部による勉強会を継続する。今後、消防関係者から首長、議会での検討段階に進む地域には、住民の目線でサービス向上につながる議論を求めたい。
消防署間の調整などを行う消防本部を統合すれば、市町村の枠を超えた対応で現地への到着時間を短縮したり、はしご車や化学消防車なども効率的に配備できる。
消防本部の広域化論議は県内では平成6年から始まり、10年には砺波広域圏で広域化が実現した。その後、市町村合併という大きな流れの中で議論され、18年6月の消防組織法の一部改正で再び注目され始めた。市町村ごとに置かれる消防団については今回、広域化の対象としていない。
高齢化の進行で、消防活動に占める救急搬送のウエートが大きくなっている。県内の救急搬送は1日平均で約100件に上る。10年前に比べ5割増、20年前の2倍となっている。
富山は救急車が患者を搬送し医療機関が収容するまでの平均時間が全国で2番目に短い27・2分という救急の優良県だ。20年までで18年連続で出火率が全国で最も低い、安全・安心な県でもある。しかし高齢者が増え、業務が過密する中で、小さな消防本部の規模のままでこうした高いサービスを今後も維持していけるとは限らない。20年2月に県東部を中心に発生した高波被害のように災害は広域的に発生する。市町村の枠にこだわること自体が実情に合わない。
消防本部の広域化に向けた県内の動きは、県が20年3月に策定した県内13の消防本部を4~5に再編する案を盛り込んだ消防広域化推進計画に基づいている。
計画の中で県は管内人口をおおむね10万人規模以上とし、隣接自治体との関係や地理的条件、消防本部の実情などを踏まえた統合パターンを提案した。国は30万人を目安としているが、県内の実態に合わせた。県東部で3、西部で3の計6の枠組み案を提案したが、昨年から議論が活発化し東部で2案、西部で2案に絞り込まれた。
県東部では富山市と新川地域を軸に、立山町と舟橋村がどちらに所属するかの2案、西部では高岡、氷見市に射水市が加わるかどうかの2案がある。県東部では、一時富山市との統合を志向していた立山町の動向がポイントとなっており、今月24日投開票の立山町長・町議選後にできるだけ早い決断を望みたい。
これまで消防関係者が中心だった広域化の論議は、首長や議会の判断へと移行することになり、総論から各論に入る。地域の実態を踏まえ、十分協議してほしい。
28年度までには消防救急無線のデジタル化への対応も求められる。消防サービスを充実し、併せて財政の効率化も図るため、広域化のスケールメリットを役立てるべきだ。