日本航空が会社更生法を申請し、企業再生支援機構の支援を受けて経営を立て直す。政府はすぐ再建支援を表明した。公的資金を投入し、運航を継続しながら3年間で再建を図るというが、これからが正念場だ。
公的支援を受けていく以上、まず透明性の確保が求められる。効率を追求するだけでは駄目だ。乗客の生命を預かっている仕事であることを忘れず、安全運航第一で労使一丸となって再生に取り組んでもらいたい。
昨年10月下旬、政府が日航問題の解決を目指すことになったが、前原誠司国土交通相の対応は一貫性に欠けた。今回の法的整理では約440億円の国民負担が生じる恐れがある。公的資金による救済は今回限りにすべきだ。
「飛行機が飛ばない状況は絶対に避けなければならない」。前原国交相は何度もこう強調し、日航がつぶれてなくなる事態だけは回避する強い意思を示した。更生法などの法的整理にも否定的だったが、経営内容が債務超過状態と予想以上に悪化していることが次第に分かってきた。
日航や国交省、金融機関は関係者の協議による私的整理で何とか乗り切ろうとした。会社更生法の適用は経営破綻(はたん)を意味するので客離れを招き、業績がますます低迷する可能性があるからである。
日航はこれまで何回も経営不振に陥ったが、金融機関の出資、融資などで難局を切り抜けてきた。だが、それは課題を先送りしただけだった。
そうした甘い対応に加え、一昨年の世界同時不況が追い打ちをかけた。約8600億円の債務超過になり、経営が行き詰まった。
今回は抜本的な改革なしに、お茶を濁すわけにはいかない。
支援機構は、日航の経営実態を洗い出し、私的整理では長年のうみを出せないと判断した。金融機関に債権放棄を要請、事前調整を済ませた。
公的支援をする以上、国民が納得しやすい法的整理が不可欠と強調したのだ。これまでの経緯を考えれば、適切な処理といえよう。
再建計画ではグループ全体の人員の約3割を削減する。110社ある子会社は半減し、燃費効率の悪いジャンボ機はゼロにする方針だ。不採算路線からの撤退は、新たに国内、国際計31路線を追加する。
日航は人員や関連会社が多すぎるといわれてきた。ジャンボ機の小・中型機への機種更新が必要なことは分かっていた。病気の原因、患部は判明しているのに切除する決断ができなかった。社内外のしがらみもあり、痛みを避け続けたといえる。
今度は思い切った手術が可能だが、それが業績の急回復につながるかはまだ不透明だ。
計画に盛り込まれた黒字化などの見通しは甘いとみられている。日航の会長兼最高経営責任者(CEO)に稲盛和夫・京セラ名誉会長が就任するが、運輸業界については素人である。重責を担えるのか今のところ未知数だ。
社内抗争や放漫経営、複雑な労働組合問題に加え、政・官とのもたれ合いが日航衰退の原因といわれる。公的支援で再建されることを念頭に置き、今度こそ日航労使が協力して立て直しに全力で取り組んでほしい。
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