国会論戦 政治とカネの集中審議を

 国会は20日までに、菅直人財務相の財政演説に対する衆参両院の代表質問が終了した。野党側は、鳩山由紀夫首相と小沢一郎民主党幹事長の政治資金問題を厳しく追及した。
 各種世論調査では、首相と小沢氏に対して説明責任を果たすよう求める声が圧倒的である。疑惑追及が論戦の焦点となるのは当然だ。
 一方、その他の重要課題も山積している。景気対策である2009年度第2次補正予算案の成立が遅れれば、国民生活に影響が出かねない。
 子ども手当や農家への戸別所得補償など、参院選にらみの色合いが濃い政策が盛り込まれた来年度予算案については、財源問題やその効果をきちんとチェックしなければならない。
 疑惑をめぐり与野党が不毛な対立や駆け引きを繰り返すのでは、これまでと変わらない。政策論争を通じて国が進むべき道筋を描く。この国会本来の役割を果たすために、いかに混乱を最小限に抑えるかに知恵を絞ることも与野党の責務である。
 それにはまず、「政治とカネ」の問題で野党が求めている集中審議に民主党が積極的に応じるべきだ。
 資金管理団体の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件で元秘書の現職国会議員ら側近3人が逮捕された小沢氏は潔白を主張し、東京地検特捜部の参考人聴取に応じる意向を示している。国会の場でもきちんと説明し、国民の疑問を晴らしてはどうか。
 首相の資金管理団体による偽装献金事件では、実母から提供された資金の使途が注目されている。代表質問で首相は「違法な支出はない」と繰り返した。ならばなぜ具体的に答えないのかとの思いは消えない。
 共同通信が17、18日に行った世論調査では、小沢氏は国会の参考人招致に応じるべきだとする意見が8割を超えた。首相の問題でも関係者の参考人招致を望む声が約7割を占めた。
 代表質問で首相は、「政権交代への国民の期待に応えることが使命」とも述べた。国民は、「政治とカネ」の問題にけじめをつけることも強く期待しているはずだ。
 それにしても不可解なのは、小沢氏の元秘書らが逮捕されて以降の政府と民主党の対応である。小沢氏に説明を求めるより、検察や報道への批判に力が入っているように見える。
 鳩山首相は「潔白を信じる」と強調し、民主党は「捜査情報漏えい問題対策チーム」の設置を決めた。
 「法の下の平等」が法治国家の根本原則である。政府と最大与党が党内実力者の擁護ばかりに熱心になっているような現状は、行政府や立法府への信頼までも揺るがしかねない。

新潟日報2010年1月21日

冬季五輪 スキー人口増につなげよ

 来月12日からカナダのバンクーバーで開かれる冬季五輪の日本代表選手がほぼ出そろった。18日には結団式も行われ、本番に向け緊張感が高まりつつある。
 本県関係ではスキーアルペンの皆川賢太郎選手、クロスカントリーの恩田祐一選手、バイアスロンの井佐英徳選手、スノーボードの藤森由香選手の4人が代表入りした。
 4大会連続の皆川選手をはじめ4人は、いずれも連続出場だ。過去の大会の経験を生かし、悔いの残らない滑りをしてきてほしい。
 冬季五輪は1924年の第1回大会では4競技、16種目、参加国・地域は16でしかなかった。それが、回を重ねるごとに肥大化し、バンクーバーでは7競技、86種目に膨らんだ。参加国・地域も80前後になる見通しだ。
 スキー、スケートを中心に北ヨーロッパなどで発展してきたウインタースポーツも、楽しみ方の幅を広げ、全世界に普及しているということだろう。
 日本のスキーは上越市の金谷山で産声を上げた。オーストリアのレルヒ少佐が新雪にシュプールを描いてから、来年で100周年を迎える。
 以来、本県はスキー王国として、多くの名選手を生み、日本のスキー界をリードしてきた。節目の年に向け弾みをつけるためにも、本県4選手の活躍に期待したい。
 ただ、今回のスキーの日本選手団を見て気になることがある。アルペン、クロスカントリー、ジャンプで若手の台頭が見られないことだ。
 ゲレンデの華といわれるアルペンは、佐々木明選手も4回目の連続だ。「日の丸飛行隊」といわれメダルを量産してきたジャンプに至っては、6大会連続の葛西紀明選手や39歳の岡部孝信選手が中心となる。
 10年以上、トップ選手が変わらないということである。皆川選手らベテラン勢の努力のたまものと言ってしまえばそれまでだが、次々に新星が現れるヨーロッパ勢に比べて、選手層の薄さは覆い隠せない。
 これは、取りも直さず日本のスキー人口が減少し、関心も低くなっていることを意味している。底辺が厚くなければ、トップ選手を脅かす次世代選手も出てこない。このままでは競技スキーの先細りが懸念される。
 皆川選手は「自分が世界の舞台で活躍することで、一人でも多くの子どもがあこがれを持ってくれれば」と語っている。スキー人口減少に対する危機感が言わせものだ。
 本県は冬の観光の大部分をスキーが占めてきた。冬季五輪はスキーに目を向けさせる絶好の機会である。関係者にはメダルの皮算用より、まず普及の道を考えてもらいたい。

新潟日報2010年1月21日