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オバマ就任1年 具体的な成果問われる


 「今日からわれわれは元気を取り戻し、米国を再生させる仕事にとりかからなければならない」

 首都ワシントンにある白亜の連邦議会議事堂周辺を埋めた約200万人もの人々を前に、黒人として初めて米国の最高指導者の座に就いたオバマ大統領が高らかに宣言してから、20日で1年が過ぎた。

 内外の大きな期待を集めて発足した民主党のオバマ政権が苦しんでいる。

 日本時間の20日に開票が行われたマサチューセッツ州の上院議員補欠選挙は、民主党候補が敗れた。上院(定数100)の議席は59となり、議事妨害を阻止できる安定多数の60議席を割り込んだ。

 オバマ政権が内政の最優先課題と位置づけてきた医療保険改革法案などの重要法案の行方は重大な岐路に立たされ、今後の政策遂行に支障が生じるのは必至の情勢だ。

 オバマ政権は就任直後から世界同時不況からの脱出に向けて巨額の景気刺激策を打ち出し、大手金融会社への公的資金注入など、矢継ぎ早に手を打った。

 こうした金融・経済対策で国内総生産(GDP)は、就任時(2009年1〜3月期)のマイナス6・4%から09年7〜9月はプラス2・2%とプラス成長に転じ、一時は6500ドル台にまで落ち込んだ株価も年明けには1万ドル台を回復した。

 しかし、景気回復の足取りは遅く、就任直後は68%にも達したオバマ大統領の支持率は、直近の調査で50%に落ち込んでいる。

 特に深刻なのは雇用問題。米国民が最も敏感な失業率は昨年1月の7・6%から昨年12月には10・0%まで悪化。年間で前年に比べて400万人以上の雇用が失われる戦後最悪の結果となった。

 今秋には中間選挙を控える。雇用情勢が改善しなければ変革の希望は失望に変わり、政権の危機に直面する恐れも指摘されている。

 外交では軍事力偏重と批判を浴びたブッシュ前大統領の単独行動主義と決別。国際協調と対話姿勢を前面に打ち出し、「核兵器なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受けるなど、国際社会からは好意的に受け止められた。

 だが、昨年後半から始まった米朝対話でも北朝鮮の6カ国協議の見通しは立たず、イランとの核交渉も行き詰まったまま。就任早々に特使を派遣した中東和平交渉も滞っている。

 テロとの戦いでも、3万人の増派と11年7月の米軍撤退開始を発表したアフガン情勢が厳しさを増し、本当に出口戦略を描けるかどうかは不透明だ。

 今年は4月にワシントンで核安全保障サミット、5月にニューヨークで核拡散防止条約(NPT)再検討会議と、米国を舞台に核軍縮・不拡散をめぐる重要な会議が続く。

 言葉から行動へ。内外に山積する課題にどう対処し、変革を実現していくのか。2年目を迎えるオバマ政権はまさに正念場を迎えた。

小笠原裕(2010.1.21)

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