2010年1月21日(木) 東奥日報 社説



■ 国会論戦スタート/国民の納得できる論議を

 鳩山政権発足後初の通常国会が開会、財政演説に対する各党の代表質問で論戦が始まった。民主党・小沢一郎幹事長の資金管理団体による土地購入疑惑で元秘書の石川知裕衆院議員ら3人が東京地検特捜部に逮捕された直後だけに「政治とカネ」の問題で冒頭から与野党対決の様相となった。

 代表質問で大島理森自民党幹事長は小沢氏の政治資金問題や鳩山由紀夫首相の偽装献金問題を取り上げ「民主党や首相の自浄能力が問われる」と追及、事実関係の解明と政治責任の明確化を要求し「政治とカネ」に関する集中審議と小沢氏の参考人招致を求めた。

 首相は自身の偽装献金問題について「検察の捜査で全容が解明され決着したと認識している」と答弁。母親からの資金提供についても「知らなかったことは事実として解明された」「検察から違法な支出は指摘されなかった」と決着済みを強調したが、庶民感覚で納得できる話ではない。

 資金管理団体の問題で検察との対決姿勢を見せた小沢氏について「潔白を訴えるのは当然の権利」と擁護。「戦ってください」発言については検察への圧力、指揮権発動を否定したが、首相の言葉としては軽率過ぎるし、2日間の代表質問では疑惑解明に取り組む姿勢すら見せなかった。

 今国会は鳩山政権が初めて編成した予算案の審議や経済、外交対策など重要案件が山積、政権のあり方が問われる正念場。景気の二番底が懸念される中、2次補正予算案の月内成立と2010年度予算案の年度内成立が最重要課題だ。

 このため与党側は小沢氏の参考人招致に関しては応じない方針で、2次補正を最優先させる構えを崩していない。景気への影響を考えれば、予算審議はいたずらに引き延ばすわけにはいかないし「政治とカネ」はしっかり議論し、早めに決着させてもらいたい。

 旧政権時代に幾度となく繰り返された「政治とカネ」の問題。国民が政権交代にかけた期待には、金権腐敗政治からの脱却もあったはずである。これでは、与野党が入れ替わっただけで、構図は変わらない。ここに来て、各マスコミの世論調査で内閣支持率が急降下、鳩山政権への期待が大きくしぼんできた。

 共同通信社の調査では内閣支持率が41%と急落、不支持が44%と初めて支持を上回った。今回の土地購入疑惑で「小沢氏の説明に納得できない」が86%「小沢氏続投に反対」が73%と、国民の厳しい目がはっきりと表れている。

 小沢氏はこれまでの強硬姿勢から一転して東京地検特捜部の参考人聴取に応じる意向を示している。それなら、国民に対しても堂々と事実関係を明らかにし、説明責任を果たすべきだろう。民主党は野党や社民党も主張している集中審議に応じ、小沢氏自身も参考人招致などで堂々と疑惑を晴らせばいい。

 論戦はいよいよ21日から衆院予算委員会に移る。かつて強行採決や審議拒否で政治不信を招いてきただけに、もはや民意を裏切るような泥仕合は許されない。国民の納得できる論議が求められる。与野党ともに政権交代と政治への信が問われる正念場を迎えた。




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