中央公論 大塚論文〃中曽根民活批判〃を駁す よさのかおる
                             与謝野馨



大塚氏が憂う地価高騰は東京都心部と周辺の高級住宅地に局限されており、やがて中小「地上げ屋」と中小金融機関の倒産という形で終息する可能性が大きい。むしろ今、求められているのは日本経済の「空洞化」に対し、社会資本整備を「民活」で行ない、内需型安定成長を実行する姿勢なのである

 昨年12月15日共産党の機関紙「赤旗」は、たぶん前例のないことであろうが、現職の自民党国会議員、大塚雄司氏の論文を二段にわたって転載した。この論文は、私はその存在を知らなかったが、『週刊朝日』が「86年の苦言、直言、曲言」と言う特集の中で「中曽根民活を罵倒する大塚雄司の事情」として取材に現れたので、早速一読をしてみて、「気がついただけでも三十ヶ所の間違いがある」とコメントしたところ、本誌から反論をするように要請された。事実誤認と間違いが一人歩きをするのを止めるのも自民党の民活導入調査会副会長や都市政策調査会の事務局長としての務めであろうと考え、大塚「直言」と逐一、事実と対比してみようと思う。
▲ 「民活」は地価を凍結させる
さて、大塚氏のこの「緊急直言」は、「地価高騰『中曽根民活』の虚構を衡く」というものだが、このタイトルの中に実は最大の間違いがあるのだ。
 たとえば、「民活第一号」として四四倍の爆発的人気で即日完売した「西戸山タワーホウムズ」(五百七十六戸)の場合、その用地は昨年一月に関東財務局から一平方米当り七十九万八千円で新宿西戸山開発梶iデベロッパー六十六社の均等出資、社長中田乙一氏)に払下げられた。公開抽選で当選した五百七十六世帯は、今、会社と売買契約を締結したところであろうが、その土地価格は国からの払下げ価格と同一の平方米当り七十九万八千円であり、会社は一円の値上げも認められていない。
 また、五百七十六世帯の購入者も十年間、転売・賃貸などが禁止され、違反者には二〇〜三〇%のペナルティが課せられ、かつ現状回復の上、当初の売買価格で買戻されるという特約が登記されることになっている。
 簡単にいえば、「西戸山タワーホウムズ」の土地価格は向う十年間、一平方米当り七十九万八千円で凍結されているのである。だから「民活第一号」は地価を「高騰」させるのではなく、「凍結」させているのである。自ら市街地再開発等を行なう不動産会社のオーナーでもある大塚氏に、こんな自明の道理がどうして判らないのであろうか。
 それでは、一平方米当り七十九万八千円という払下げ価格は地価を高騰させただろうか。この点では私も手元に、昨年の一月十四日付の新聞の面白いスクラップがある。
 読売「西戸山一五〇億円で売却、一平方メートル七九万八千円、四月にも着工」
 日経「公示価格の一・五倍で売却、最開発へ随意契約、大蔵省、民間の共同会社に」
 サンケイ「国有財産有効活用、〃民間導入〃第1号、新宿住宅跡地一五〇億円で売却」
 東京「西戸山再開発ゴー、関東財務局一・九ヘクタールを払い下げ、随意契約一平方メートル七九万八千円で」
 毎日「民間の第一弾一四九億円で契約、新宿区の国家公務員住宅跡地を売却」
 朝日「西戸山払下げ、半値以下の一四九億円」
 赤旗「時価の半値以下、一五〇億円、住民批判よそに〃中曽根民活〃を強行」
 周辺の公示価格は一平方米あたり五十三万円(六十年一月)であったから、日経の記事は事実である。ただ、六十一年四月に公表された同一地の公示価格は六十八万円となり、二八%の値上がりとなっているから、六十一年一月で比較すれば公示価格より一七%高で払下げたことになる。
 いずれにしても六十年から六十一年の一年間にこの地域は公示価格で二八%値上りしていたのであり、その原因は、実は都庁の新宿移転の発表(六十年十月)によるものである(公示価格のベースになる取引事例はすべて、六十年から十二月の間にアップしている)。
 『朝日』、『赤旗』の言う「時価の半値以下」が本当なら、この周辺地域は向う十年間「時価の半値以下」で地価が凍結されることになり、また、日経の記事に従うなら、地価は公示価格の一七%アップで凍結されることとなるのである。
▲ 国有地の競争入札は「民活」ではない
大塚氏が地価高騰の原因の第二にあげているのは国有地の競争入札である。しかし、ここでもテーマは「国有地の競争入札」イコール「民活」ということらしい。
 思うに、氏はご自分の古巣である住宅公団(現住宅・都市整備公団)や地方自治体以外に国有地を払下げることは、すべて「民活」だと定義しているように思われる。「民活」とは「公共的事業分野への民間活力の導入」ということであって、私企業が国有地の払下げを受けて、貸ビルを造るというのとは訳が違うのである(国有地の民間に対する払下げは年によって違うが年三百〜四百件程度である。)
 だから、氏が例としてあげている千代田区紀尾井町の司法研究所跡地や港区六本木の林野庁宿舎跡地の競争入札などは、不要になった財産を民間の営利事業用に払下げただけであり、「公共的分野」での活用は期待されていないのである。
 中曽根首相の真意は遊休化している国有地の「民活」利用であって、この競争入札は遊休化をただ高く売ればよいという事務局の半知半解によるものだと言わざるを得ない。
 しかし、事務当局のために弁ずるとすれば、実はいずれの跡地も東京都や千代田区、港区あるいは住都公団に対して買取る意向があるかどうか、前もって打診がなされていたものである。念のために言えば、国有財産法によって、払下げ価格は時価と定められている。しかし、都、区、公団のいずれもが取得を断念したため、民間へ売却されることなり、今回の競争入札が行なわれたのである(いずれも文書で買受けの意思のないことを明確にしている)。
 もし、競争入札による地価騰貴をおそれるなら、これら公共団体は相談をして先買いをすべきであったと思われる。「西戸山」の例でも判るように、時価で払下げを受けたとしても、公共団体が十年間の地価凍結を行なえばよかったのである。民間企業が競争入札によって時価より高くして落札しても採算がとれるのであるから、公共団体が時価で払下げを受けても必ず事業が可能であったと思う。
▲ 「地上げ屋」の本当の黒幕
  大塚氏はまた地価高騰の原因として、外資系企業のオフィス需要と中曽根首相の五十八年三月の「発言」をあげている。当時の建設省丸山次官(現住都公団総裁)に対して、「山手線の内側ではすべて五階以上の建物を建てられるようにしたらどうか」と指示したと、まるで三年半以上前のことを自分で見て来たように書いてある。
 実際にはどうか。
 地価の高騰はこの一年あまりのことであり、都心の商業地と周辺の高級住宅地に限られている。大阪圏や名古屋圏ではほとんど上昇していない。この事実はつまるところ、「地上げ屋」という東京特有の小鬼たちが「土地ころがし」というマネーゲームを行なっているにほかならない。しかし「地上げ屋」は単独では動けるはずもないのだから、その黒幕にはゼネコンやデベロッパー、あるいは銀行や生保の子会社がいて信用供与をしているのである。
 さらにそれを裏付けるショッキングはデータが日銀から発表された。昨年九月末の全国銀行(都市銀行、地方銀行、長期信用銀行、信託銀行)の不動産業への融資残高は、なんと二十五兆千七百億円、前年同期に比べて三〇.九%の増加で、この一年間の純増額は五兆九千億円、前年の二倍だという。
 これは東京都心部、周辺部の地価高騰の背景には銀行の不動産融資があることを裏付けたことになっている。しかも最近の土地取引は不動産業に限らず、一般企業やリース業、流通・サービス業に形を変えて行われており、実際の不動産融資ははるかにふくらんでいるはずである。円高不況のために金融が超緩和となり、他に投資機会のない資金は土地騰貴を期待して不動産業へ流入し、流入した資金がさらに地価を押し上げ、担保価値が上がることによってさらに資金が流入するという土地高騰のサイクルができているのである。
▲ 「土地は間違いなく下がる」
  経済は『財界』の新年座談会で安藤太郎氏は次のように予言した。これを引用させていただく。「土地は間違いなく下ります。これは安藤さん独特の見通しです(笑)。どうしていま高いかというと過剰流動性もありますが、土地転がしなんです。われわれは泣く泣く、買うわけです。今度法律ができて、二年以内に転売した利益は一〇〇%没収ということになる。これはもう税金ではありませんね。だから、絶対に下ります。それから、東京湾のウォーター・フロント(十三号埋立地)の開発や、東京駅周辺の高層ビル計画が発表されれば、事務所の供給に余裕が出てきますし、四、五千万円(三.三平方米)の土地を買って、四万(注.坪家賃)で貸しても十六年間は赤字です。それに耐えられる体力の会社が日本にいくつありますか。そんな土地は絶対に買いません。だからアメリカに買いに行くんです(笑)」
 今回の土地騰貴を予測してもっとも利益を上げたといわれる住友不動産の実力会長の爆弾発言だから、実に説得力のある現状分析である。
 現に大手のデベロッパーはほとんどすべて、欧米で一件一千億円単位のオフィスビルやホテルの取得に走っているのである。
 地代、家賃、固定資産税等の負担を考えれば都心の地価抑制は緊急課題であり、国政段階で有効な政策手段を強化していかなければならないのは当然のことである。
▲ 「短期超重課」の効果
大局的にみて地価高騰は東京都心部と周辺の高級住宅地に局限され、安藤氏の予測のとおりトランプの「ババヌキ」のように「虫食い」になった土地を残して、中小「地上げ屋」と中小金融機関の倒産という形で終息する可能性が大きい。
 大手のデベロッパーやゼネコン、金融機関はすでにこの「土地ゲーム」から脱退しているのだし、都心の土地を売った人々は代替物件を手に入れて新しい生活設計をはじめているだろう。
 したがって、「二年以内の土地転売益に重課」と言う国土庁の新税制は、発表と同時に劇的な「アナウンス効果」を発揮し、「土地ゲーム」が「マネーゲーム」の変形にすぎなかったことを露呈したのである。
 ビル業大手は、二、三年前から今年にかけて投資の重点を欧米の既存ビルの購入に振り向け、東京都心部はむしろ、「空洞化」の可能性さえみせている。
▲ 「買替え特例」の見直し
「居住用財産の買替え特例」の見直しは、「短期超重課」の側面対策として、周辺住宅地価格の安定に上げると考えられる。
 都心の土地売却者は多額の売却代金を買替え資産の購入に回し、税金を払いたくない心理から土地単価を気にせず同額の高級住宅地を求める。この結果、適正な地価水準を崩す取引が区部の高級住宅地で頻発することとなり、世田谷、大田、目黒で年率数十パーセントの地価高騰となったのである。
 六十二年度税制改正では国土庁のこの案は実現にいたらなかったが、今後の土地価格の動向によっては再考する必要があると思われる。
▲ 東京都の国土法強化の効果
  さらに東京都は、条例を改正して、国土利用計画法で定めた二千平方メートル以上に限る土地売買の届出義務を都心部に限って五百平方メートルに改めた。また、東京都は昨年十二月五日、港区のM恒産に対して「国土利用計画法二三条違反により宅地建物取引業法六五条による指示処分」を言い渡した。
これは西新宿六丁目の土地約五千平方メートルの買収、転売が摘発されたためである。そしてM恒産の背後に実質的な購入者である中堅ゼネコンF社、資金供給者としてY信託、D相銀の存在がクローズアップされた。
 この二つの東京都の処置は強烈なショックを不動産業界と金融界にあたえた。一罰百戒として充分な「アナウンス効果」をあげたといえるだろう。
▲ 「規制緩和」で都心型住宅の供給を
さて、土地供給策としては国土庁は六十一年十二月九日、東京臨海部と汐留貨物駅跡地、東京駅周辺の三つの再開発プロジェクトについて政府部内の検討結果をまとめ公表した。
 オフィス供給や国際化、情報化に対応するため、三地区で業務、商業、住宅を合わせて計千四百ヘクタールの供給が可能であると想定している。ただし、千二百ヘクタールは臨海部からのものであり、そのための道路や鉄道などの基礎整備には開発利益の還元や民間資金の導入を進め、とくに十三号埋立地での早期事業着手を求めている。
 東京都の鈴木知事は、いわゆる「民活推進懇」のメンバーであるが、すでに東京テレポート構想に加えて、「東京都の将来像報告」をもっており、都の主導で開発を進めようとしている。
 すでに世界的にもウォーター・フロントの再開発はニューヨークのバッテリーパーク・シティ、バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア・プレイスなど、数多くのプロジェクトが都市再生の切り札として脚光を浴びている。大都市に残された最後の創造的な空間として未来型の複合都市をめざしており、当然のこととして住宅やレクリエーション施設を包含している。
東京都の「将来像報告」にも十七ヘクタールの住宅地を予定しているが、これはどうやら「国際村」となるらしい。建設戸数は二百個だというから、夢のような豪邸郡である。「西戸山」がこの十分の一の敷地一・八ヘクタールに五百七十六戸だから、一戸当りで、単純比較をすれば二百七十倍の敷地を持つ住宅地ということになる。「国際都市」の隣には「国際村」が必要なことは理解できる。
 しかし、前述の三地区の中でもっとも大きく、またその内部に住宅を内包することができる臨海地区の「将来像」の中に中堅所得層の都民が住める場所がないというのは問題である。
建設省は昨年十二月十七日、特定街区制度などを利用した優良な都市再開発事業を促進するため、容積率を引上げるなどの「規制緩和」を定めた。とくに埋立地などで大規模な都市づくりができるところでは、最高容積率が一五〇〇%となる。臨海部の現在の容積率が二〇〇〜四〇〇%であることを考えれば、国が大地主である東京都にいかに大きなボーナスを与えたか理解できるであろう。
 「国際村」への入居は無理にしても、「西戸山」程度の四千万〜六千万円のマンションの購入希望者が二万世帯ほどもあるのだから、「都民は八潮団地と大川端団地に」ということではなく、「民活」で優良な超高層の住宅を、最後のフロンティアといわれるウォーター・フロントに建設すべきであろう。
 大塚氏のいう首相の「容積率発言」もこのような次元で論議しなければ事の本質を見失って、誰か一人を悪者に仕立てるという古い古い手法でしかないと批判されるのは当然であろう。
なお付言すれば、土地の効率利用のため建築規制のあり方を検討してきた建築審議会(国の機関である)は一種住専にも四階建が建てられること、道路斜線を緩和するなどの答申を行い、建設省は次の通常国会に建築基準法の改正案を提出することになっている。事務レベルでもこれくらいの実効ある規制緩和が可能なのだ。
▲ 「社」「共」「公」と共闘したねらい
大塚氏は今回の林野庁跡地入札問題では、野党である共産党の上田耕一郎議員や、社会党の渋沢利久議員らと「共闘」して競争入札の撤回を求めた。しかしさきにみたとおり住都公団や東京都や港区はとっくに時価による先買権を放棄していたのである。公団が三年前に購入を決心していたら、この土地は一平方メートル二百万円以下で買えたであろう。港区も途中で地区計画を断念することもなかっただろう。    
 結局のところ林野庁跡地は、その立地条件のために「住宅困窮者に低廉な分譲、賃貸住宅を供給する」という「住宅公団」の目的には基本的に合致しないという常識が働いたと思わざるをえない。
「住宅公団」出身の大塚氏が「民活」を「それなりに」認める条件として、公団が随意契約で国有地の払下げを受け、基盤整備をして民間に払下げるという、いわゆる「竜ヶ崎方式」に執着を持つ気持は判らなくはない(注・もっとも港区は実はこの方式に否定的であったことが記録から判っている。)しかし、「竜ヶ崎方式」は地方では意義があっても、既成市街地内の一〜二ヘクタールという林野庁跡地や西戸山に持ち込む必要がない。そんなことをすれば、「随意契約に適格性」を持たせる受皿として公団を利用することになるだろう。賢明な公団幹部は大塚氏の「片想い」に大変迷惑を感じていることであろう。
 林野庁跡地に「竜ヶ崎方式」の導入に失敗した大塚氏がやったことが「超党派」(読売)の、そして「来年の政局をにらんだ安倍派」(週刊朝日)の次元としての競争入札反対運動である。
 反対運動の真の目的は何であったのか。それを知るためには、反対運動で誰が利益を得たを推測すればよい。港区都計審は本当にこぶしをふり上げた如く「公園を指定する」「容積率を下げる」つもりがあるのだろうか。当初、入札希望が数十社あるといわれたが、有力大手は住民運動と港区側の不鮮明な対応におそれをなし、けちらされるように次々と断念をし、実際は三グループとなってしまった。実態は競争入札のもとで法律で禁じられている談合だったとの推論もある。周辺の土地価格にくらべれば二百億円を落札価格は低く、ざっと二百億円を儲けさせたのは誰だったのか?
 林野庁跡地にはアークヒルズを上回る規模の複合新市街地ができ、事務所、商業、文化施設、住宅がつくられるそうだ。私も十五年間にわたるアークヒルズ再開発の関係者の功績を祝福する一人である。しかし、アークヒルズのオープニング・パーティで大塚氏が「私が生みの親だ」と発言して主催者たちから失笑を買ったのを知っている。
 大塚氏は書いている。「アークヒルズの敷地には大蔵省の宿舎があったが、その大部分が公共施設になるように法律による再開発組合に払下げ公正を期した」と。
 しかし、残念ながらアークヒルズには道路提供以外には「公共施設」は存在しないのだ(しかも、道路提供分は建物の容積率のボーナスとして与えられている。)そして、権利床のうち九三%は森ビルの所有なのである。
▲ 日本経済の「空洞化」対策
  一ドル=一五〇円時代に直面して経済界は欧米や東南アジアに拠点を移している。それも日本経済の牽引車であった自動車や電機などハイテク分野にその傾向が著しい。親会社の国際化によって子会社や下請会社なども追随を余儀なくされている。
 日本経済はまさに、「空洞化」しはじめているのである。
 このままで推移すれば「失業」か「賃金のカット」を選択しなければならない企業も現れてこよう。
 一方では貿易の不均衡からくる膨大な外貨の流入があり、国民の貯蓄率は世界で最高のレベルにある。しかしながら、この膨大な貯蓄は実はペーパーマネーにすぎないのだ。実質的な国民の生活条件の整備はあまりにも低い。住宅、下水道、都市公園などのストックの水準では欧米との格差はあまりにも大きい。今、蓄積されたペーパーマネーを社会資本と住宅ストックの充実にあてなければ、二度と「日本の世紀」はもどってこないだろう。
 社会資本整備を「民活」で行う内需型安定成長は、貿易不均衡を緩和し、新たな、国際分業の再編成に貢献するだろう。
 その場合の重要な視点は東京都や特別区のような地方自治体が街づくり、都市づくりの明確で具体的なプラン、具体的なタイムテーブルをもって対応することである。
「将来像」を画くのはたやすい。しかし、それを限られたタイムリミットの中で実行するという姿勢が特に望まれるのだ。
 夜間人口の減少問題を抱える東京都心の各区では、大規模ビル開発に住宅の併設を求める指導要網が作られはじめている。
 今回の「西戸山」「紀尾井町」「六本木」という一連の国有地処分に対する東京都および各特別区の対応をふりかえってみると、単なる「指導要網」ではなく、その地域の上位計画との整合性を重視した都市計画として公共施設の整備をも実施せしめた新宿区長の勇気と努力には誠に敬服の念を禁じえない。
 「公共的事業分野への民間活力の導入」としては「西戸山」以外にも「関西新空港」「幕張メッセ」「東京湾横断道路」など、いくつかのプロジェクトが開始されているが、その最終的な評価は当然、国民によるものである。

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