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【主張】普天間移設 現行計画での決断求める
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で鳩山由紀夫首相は「他に選択肢があれば決着が早まることもあり得る」と語り、新たに県内の移設先を探して米側に提示する意向を示唆した。
この問題ではゲーツ米国防長官が「普天間移設なしには海兵隊グアム移転や他の基地施設の返還もなくなる」と強調、11月の米大統領訪日までに日米合意に沿った決着を要請したばかりだ。
この期に及んで自らの責任で判断を下せず、あてもなく新移設先を求めたり先送りしたりするようでは、日米同盟は破綻(はたん)の危機に陥りかねない。現行計画の履行を首相に強く求めたい。
首相発言を受けて、政府は「県外移設」を断念して県内に新たな候補地を見つけるという。嘉手納基地への統合案も出ている。
しかし、日米両政府が2006年に合意した現行計画の着実な履行を米側が求めている意味の重大さを忘れてはならない。
来日したマレン米統合参謀本部議長も「計画の遅れは日本の防衛だけでなく地域の安全にも死活的影響を与える」と緊急性を強調した。在日米軍再編の成否は中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル脅威の増大に対応する同盟の抑止態勢を決定付けるとともに、日本の平和と安全に直結する。
首相の決断先送りの背景には、来年1月に行われる移設先の名護市長選の結果を待ちたい意向があるという。だが、現行計画は「普天間全面返還」が決まった1996年以来、あらゆる選択肢を日米が検討した末の“果実”だ。
移設問題を争点に地元で対立を繰り返させられてきた住民の間にも「早く政府の責任で決めてもらいたい」との声があるという。地元自治体も米政府も、沖合移動の微修正で足並みを一致させつつある中で、日本政府だけが国家の安全と同盟戦略の全体を見渡した判断を下せないのは問題だ。
計画が実施されなければ、地元住民が願う普天間全面返還をはじめ、グアム移転を通じた海兵隊の削減、嘉手納基地以南の米軍6施設の返還も水の泡になる。住民の負担もさらに続くだけだ。「同盟基軸」の具体的行動を期待して来日するオバマ大統領を落胆させる結果にもなるだろう。
鳩山首相は公約やメンツにこだわらず、どちらが日本の国益と住民の利益に応えることになるかを速やかに決断すべき時である。