こんにちは。講談社BIZのからまるです。
さて、前回の続きです。
奇跡の電話から待つこと数時間、そのフィギュアスケートジャーナリストの方と連絡を取ることができました。からまるが電話で窮状を訴えたところ、なんと頼りない編集者だろうか、そんな編集者にニコライ・モロゾフさんの本を任せておいたらフィギュアスケート界の恥さらしだ、と思われたにちがいありません。しかも元新聞記者だけあって、展開の早い話についてきていただくことができ、翌日には打ち合わせにお付き合いいただきました。
この方はなんと社会人フィギュアスケーターとしても活躍されているんです。直近の世界大会では6位に入られたとか。この社会人フィギュアスケートの世界はかなり抱腹絶倒の面白さなんですが、それはまた別の機会にご紹介するとして、ともあれあの一本の電話がきっかけで最強の助っ人を獲得することができました。
おかげで熱狂的なフィギュアのファンの方でも納得して楽しんでいただける水準の原稿になったと思っています。からまるには、いまやその人は天使にしか見えません。
それにしても、フィギュア界のお話は聞けば聞くほど面白いですね。個性的な選手たち、ジャッジの謎......とくに複雑に入り組んだ人間関係にはアタマがおかしくなりそうです。日本代表選手たちは、テレビや会見ではみんな揃ってニコニコしているところをテレビで見ますが、やっぱりお互いに強烈なライバルなんですね。
今回のニコライ・モロゾフさんの『キス・アンド・クライ』に、実力が伯仲する国内選手権は、国の代表として出場する国際大会よりもむずかしい場合がある、というところが出てきて、どういうことなんだろうと思っていたのですが、文字通りの実力の問題にプラスして、このライバル関係の強烈さが原因なのではないでしょうか。
モロゾフさんがコーチと振り付けを担当したアレクセイ・ヤグディンと、そのライバル、エフゲニー・プルシェンコの火花散る関係は有名だったわけですが、この本でモロゾフさんは、ヤグディンは金メダルを獲ることよりもプルシェンコよりも上の順位になることに強烈なモチベーションがあったそうです。上ならば5位でも6位でも構わないと思っていたところがあったとか。それは多分お互い様で、プルシェンコは2002年のソルトレイクシティオリンピックでヤグディンに次ぐ銀メダルだったのですが、そのメダルを記者の前で一回しか見せずにしまいこんだのは、銀メダルだったからではなく、ヤグディンの下位に甘んじたからだったのでしょう。
でも、こういうライバル関係があるからこそ、同世代にすぐれた選手が集中するのかもしれません。サッカーの黄金世代だってそうでしたね。
人間関係の複雑さは、もちろん選手同士にとどまりません。選手周囲のいろいろな立場の方々のあいだにも存在します。とてもここでは書けませんが、本当に驚くような話ばかりですね。
それもこれも、ニコライ・モロゾフという人物が、
日本のフィギュア界にとって、革命児であると同時に問題児でもある
からでしょう。モロゾフさんの日本的なスケート文化に対する度重なる批判的言動はいろいろと洩れ聞こえてくるとおりで、筋が通っていると思う反面、気を悪くする人もいるだろうな、と思わせます。『キス・アンド・クライ』にももちろんそれは載せていまして、建設的な議論が起こることを期待しています。
こうして急ピッチで編集作業が進む中、12月25日から大阪なみはやドームで全日本選手権が行われました。その結果、モロゾフさんの現在の教え子である安藤美姫選手、織田信成選手、一昨シーズンまで黄金の師弟コンビであった高橋大輔選手は順当にオリンピック出場が正式決定しました。その代表選出会見があった日、12月28日に、からまるはモロゾフさんと最終打ち合わせをするため、大阪に出張したのでした。
つづくヽ(^。^)丿
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