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2003年3月、胡錦濤氏は国家主席の座に着いたものの、江沢民氏が軍のトップの座に留まったため、両派の権力闘争は一層激化したと伝えられている。(Getty Images)

ウイグル抗議事件、導火線は高層権力闘争か

 【大紀元日本7月27日】発生からすでに約3週間が過ぎた新疆ウイグル自治区での大規模抗議事件。根深い民族問題と社会の対立が事件発生の重大な原因であるのは言うまでもないが、その一方で、中共最高指導部の江沢民派と胡錦濤派の権力闘争が直接の導火線であるという見方も、内部の情報筋によって指摘された。

 海外中国語情報サイトBoxunが、第17回全人代を最後に退任したある中共中央の元高層幹部から寄せられた情報として明らかにしたところによると、7月5日に新疆ウイグル自治区で大規模抗議事件が発生する前に、元公安部長で中国共産党中央政治局の周永康常務委員がすでにその情報を把握していたが、胡錦濤氏には報告しなかった。そのため、大規模抗議事件発生当日、胡錦濤氏は何も知らずにイタリア訪問の途についた。

 周永康氏は、江沢民派の重鎮で、中国共産党中央政法委員会書記として公安と政法機構を主管している。

 「この抗議事件は、江沢民派が胡錦濤派を抑え込むために利用された」と同情報筋はいう。

 この背景には、2012年に控えている首脳部のメンバーを決定する第18回全人代があるという。江沢民・前国家主席が率いる派閥は、引き続き裏で政権の舵取りをしたいため、体制内部にメンバーを配置するのに必死である。その一方で、現職の胡錦濤・国家主席は江沢民派の制御から脱却するために、汚職幹部の取締りの形で、江沢民派のメンバーを権力の座からどんどん引きずりおろしている。

 抗議事件発生直後、江沢民派の画策により、当時外国訪問していた胡錦濤氏は、詳細な情報を把握できなかったという。その一方で、国内にいた周永康氏は、この種の大事件(銃殺)について、胡錦濤氏または政治局の指示がなければ自分では決定できないとし、抗議者を銃殺した責任を胡錦濤氏の陣頭指揮に転嫁した。

 事件発生3日後の7月8日、胡錦濤氏は外国訪問を中断して緊急帰国した。帰国後の胡錦濤氏は最高指導部の緊急会議を開き、周永康氏と公安部トップの孟建柱氏に事件の処理を命じ、翌日両氏を新疆ウイグル自治区に現地派遣したもよう。

 「胡錦濤氏は、事件の責任を負いたくないため、江沢民派の周・孟両氏を最前線に送り出したのではないか」と同情報筋は指摘する。

 今年5月、胡錦濤氏は経済発展の重要地域・広東省で、幹部の汚職取締として、江沢民派の幹部を相次いで失脚させた。6月5日には、江沢民氏の側近で深セン市の許宗衡市長を、「党内紀律に大きく違反した」との疑惑で連行し、今なお軟禁中。この件によって、江沢民派の深セン市での権力体制が完全に崩壊したとみられている。

 
江沢民氏の側近で、失脚した深セン市の許宗衡市長(大紀元)

同情報筋によると、胡錦濤氏は許宗衡市長の案件を審理もせず、終結もしない策略を取っている。そのため、「江沢民派はまるで熱い鍋の上に置かれた蟻(アリ)で、いつ根こそぎやられるかと、極度の不安に陥っている」という。

 また、最近摘発された、胡錦濤氏の息子・胡海峰氏が経営する会社がナミビアの汚職犯罪案件に加担しているという情報は、江沢民派が胡錦濤氏を陥れるために流したものだという。

 「 (約2年前に)温家宝総理が江沢民派の陣営である上海の権力体制を弱体化しようとした時、インターネットで温家宝氏の息子・温元松氏の汚職情報が流された。その結果、江沢民派は温家宝氏を黙らせることに成功した」という。

 3年後の2012年に第18回全人代を控えて、両派閥の権力闘争はますます熾烈化するという見方が強い。今後の成り行きが注目される。

(記者・呉偉林、翻訳編集・叶子)


 (09/07/27 01:10)  





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