「吉越浩一郎の「結果の出る会議」」

吉越浩一郎の「結果の出る会議」

2010年1月19日(火)

部下の浮かない表情に「重要なヒント」があります

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 最近、米国のある会社の幹部にこんな話を聞きました。その会社では、会議をする前に、参加者の中で誰がディシジョンメーカーなのか、つまり決定権を持つリーダーなのか、決めなければ会議は開催しない、というルールになっているというのです。

 私は議長と呼んでいるのですが、会議のリーダーが決まっていない会議は開いてはいけないということです。リーダーの重要性はよく語られますが、実は会議においてもリーダーシップは極めて重要です。

「仕事には限りがある」というのはウソ

 前回の「してほしい仕事を、部下がしてくれます」では、「緊急度は低いが重要度は高い」仕事に社員の目を向けさせることこそ、会議の役割だ、と書きました。では、どうすればいいのか。

 実は、それほど難しいことではありません。日々、新たに発生してくる問題について、議長を務める会議のリーダーが問いただしていけばいいのです。私が第2回の「会社の悩みを解決してくれる早朝会議とは?」で紹介した、会議のテーマを思い出してください。あれこそ、日々、新たに発生してくる課題や問題であったり、それに対する疑問です。こういう課題や問題は、リーダーなら、間違いなく数多く気がついているはずです。

 そして、個々の社員の近くには、実は膨大な量の「緊急度は低いが重要度は高い」仕事があるのです。それは無限にあるといってもいい。「仕事には限りがある」という考え方は、緊急度ばかりを見ているからです。重要度の高い仕事はそれこそいくらでもあります。そして、これを会議であぶり出して、デッドラインを付けて解決に向かわせる。これが、会議を主導するリーダーの役割になります。

 と、こう書くと、なんだか難しそうだな、と思われるかもしれません。しかし、すでに触れたように、私だけではなく、かつての私の部下も同じ会議を行っていました。それぞれの部や課で、新たに発生してくる課題や問題について担当者に問いただす「吉越式会議」を実現させればいいのです。

問題や疑問をぶつけていくと、課題が顕在化する

 例えば、営業担当者なら、営業の状況や担当の取引先について。財務部門は、担当する銀行とのやりとりについて。システム部門は、担当しているシステム開発の進捗状況について……。そして、担当者に、浮かんだ問題や疑問点をぶつけているうちに、実は新たな課題が顕在化してくるのです。その解決について考えてこい、とデッドラインを引けばいいのです。

 この「考えてこい」がポイントです。解決策が出てきた時にこそ、上司にはツッコミどころがたくさん見えてきます。単なる状況報告を聞いているだけでは怒るか励ますくらいしかありません。しかし、部下が具体的に解決策を提示してくれれば、あれやこれやと確認したいことが浮かんでくるのです。そして、その解決策こそ多くの場合「仕組み化」につながっていくのです。

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著者プロフィール

吉越 浩一郎(よしこし・こういちろう)

吉越 浩一郎1947年千葉県生まれ。ドイツ・ハイデルベルク大学留学後、72年に上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。極東ドイツ農産物振興会、メリタジャパン、メリタ香港の勤務を経て83年にトリンプ・インターナショナル(香港)に入社、リージョナル・マーケティングマネージャーを最後に86年よりトリンプ・インターナショナル・ジャパンに勤務。87年代表取締役副社長、92年に代表取締役社長に就任し、2006年に退任。同社は毎日開催される早朝会議での即断即決経営を武器に19年連続増収増益を達成。2004年には『平成の名経営者100人』(日本経済新聞社)の1人に選出された。2008年、第37回ベストドレッサー賞<政治・経済部門>を受賞。
現、吉越事務所代表。現在、東京と、夫人の故郷である南フランスの2カ所を拠点にしつつ、国内各地で幅広く講演活動、執筆を行う。


このコラムについて

吉越浩一郎の「結果の出る会議」

私が社長を退任するまで、トリンプ・インターナショナル・ジャパンは、19年連続して増収増益を達成しました。この間に、売上高は5倍の規模になりました。バブル崩壊があり、厳しいデフレ不況があったにもかかわらず、です。なぜ、これほど長期にわたって会社を成長させられたのか。その最大の要因は「会議」にあったと私は考えています。どうぞ、これまで会議を軽んじてきたツケを、ここで清算してみてはどうでしょう。「その気になれば誰でもできる吉越式会議」をこのコラムではそっとお教えします。

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