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きょうの社説 2010年1月21日
◎就職対策前倒し 「氷河期」に途切れず支援を
厳しい経済・雇用情勢が続く中で、石川県は新規学卒者の就職対策の前倒しに乗り出す
。新年度当初予算案の知事裁定で谷本正憲知事が指示したが、今春卒業予定の高校生、大学生の就職状況は「就職氷河期」の再来と言われるほどで、年が明けても厳しい就職活動が続いている。新年度はさらに厳しさを増すとの見方もある。県は石川労働局、県教委などの関係機関 と連携して今年度の未内定者への就職支援に全力をあげるとともに、来春の就職希望者に対して途切れなく情報提供や合同就職面接会などの就職対策を進めてもらいたい。 北國新聞社が今年の新成人を対象に行ったアンケートによると、「地元で働きたい」と 答えた人が76%に上り、多くの若者が郷土に愛着を抱いていることが示された。地元で働きたくても働けず、大都市圏などへ人材が流出するならば地元にとって大きな損失となる。 景気低迷の中でも、優秀な人材確保の好機ととらえ、地域の企業としての社会的責任も 果たそうとして採用に踏み切る企業もみられる。地域の活性化に欠かせない若者が地元に根差すことができる官民の後押しが求められている。 高校生の早期離職率の高さも問題になっているが、求人数の減少によって選択肢が狭ま ることで一層の離職率アップが懸念されている。3年以内に4割以上が離職するという状況は、本人、企業双方にとってマイナスである。企業側からは生徒に対して「積極性やマナーがない」などと学校側に指導を求める声もある。求人の掘り起こしとともに、生徒が働くことに理解を深めるインターンシップ(就業体験)や企業実習と一体になった職業訓練を受けるデュアルシステムのこれまで以上の受け入れ体制の整備が必要であろう。 また、政府が雇用増加の見込める成長産業と位置づけている介護や農業分野などの職場 体験も増やすことで、新たな就職先の開拓や求人・求職のミスマッチ防止につながるのではなかろうか。大学生に対しては、Uターン就職を受け入れる環境が厳しくなっているが、きめ細かく情報を提供して就業促進を図ってほしい。
◎賃金抑制の春闘方針 国の家計支援と絡めずに
日本経団連が春闘方針で、定期昇給(定昇)の凍結など賃金を抑える厳しい姿勢を示し
たのは、先行きの見えない経済情勢では、やむを得ぬ面があるとしても、賃金抑制ムードが産業界全体に波及すれば景気の足を引っ張り、政府や自治体の景気対策にも水を差す。鳩山政権が新年度予算案に盛り込んだ子ども手当や高校授業料無償化などをあてにし、その分、給与総額を下げる考え方も出始めたが、そんな動きが広がれば個人消費を刺激する政策効果を打ち消すだけである。デフレがさらに進めば物価の下落が続き、企業の収益が落ちて給与も下がる。国の家計 支援策は、そうした悪循環に歯止めをかける一定の役割もあるはずだ。デフレ下の春闘は賃金交渉が重要な意味を持つ。経営側には国の家計支援を安易に絡めず、個々の収益構造や経営見通しに照らした適切な判断が求められよう。 経団連は経営側の春闘指針の報告で、「賃金より雇用重視」の姿勢を鮮明にし、定昇の 凍結・延期なども議論になり得る認識を示した。連合はベースアップ(ベア)の統一要求を見送る一方、定昇確保を強く求めており、経団連報告を受け、「労使関係の信頼を揺るがす」と反発するなど春闘の攻防は実質的に幕を開けた。 失業率が5%台で高止まりするなか、経団連が雇用確保へ向けた企業努力を強く求めた のは当然である。雇用維持のためには賃金抑制はやむを得ないというのが基本的な考え方だが、今春闘は労使ともに横並び方針は例年にも増して通用しにくくなっている。世界不況から持ち直す動きが広がってきたとはいえ、企業業績に格差が広がり、同一業種でも明暗が分かれている。余力のある企業は積極的に賃金改善に反映させてほしい。 国の家計支援に伴い、経営者側には家族手当など賃金の生活給的な性格を見直す発言も 出ている。これを機に成果主義、能力給に移行させるならともかく、国の支援分だけ総額を減らす短絡的な考え方では従業員の士気も高まらないだろう。国の支援策が過度の賃金抑制を招いては何の意味もない。
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