音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説1 民主党の「検察リーク批判」は筋違いだ(1/21)

 小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件に関連し、民主党内に検察やメディアを批判する動きが相次いでいる。求められるべきは党として事件の解明に力を尽くすことであり、民主党の対応は筋違いではないか。

 元検事の小川敏夫広報委員長の下に設けた「捜査情報の漏洩(ろうえい)問題対策チーム」が代表的な例だろう。チームは検察からメディアへの意図的な情報操作や漏洩(リーク)があるのかどうかを調べることが目的だ。平野博文官房長官も「あまりにも一方的に情報が出てくることで、不公平感を感じる」とチーム設置に理解を示している。

 リクルート事件をはじめ、自民党政権時代にも政界に捜査が及ぶと「検察リーク説」が与党からわき上がることがあった。しかし、メディアはさまざまな取材対象から得た情報を吟味し、報じることで国民の知る権利に応えるのが使命である。検察も取材対象の一つであるが、あたかもメディアが検察によって操られているかのような民主党の見方は誤っており、到底認められない。

 また、原口一博総務相は「『関係者』という報道は何の関係者か分からない。そこは明確にしなければ公共の電波を使うことは不適だと考える」と述べた。もちろん、メディアは情報源をできる限り明らかにする必要がある。一方で、真実を報道するためには情報源を隠さねばならない場合もある。そうした点を踏まえれば、電波行政の主管大臣として不適切な発言ではないか。

 ほかにも、民主党内では逮捕された石川知裕衆院議員と同じ当選2回の議員が石川議員の逮捕を考える会をつくったり、参院議員の中で事件の論点を整理する勉強会が発足したりした。いずれも、検察への対決姿勢を前面に出した集まりだ。

 私たちは何度にもわたって、小沢幹事長に説明責任を果たすよう求めてきた。また、捜査の進展とは別に、民主党が事実関係を解明するよう訴えてきた。それが、政権交代を実現した民主党に期待する新しい政治の姿でもあったからである。

 しかし、現実はどうか。小沢幹事長や石川議員をかばい、矛先を検察やメディアに向ける姿勢ばかり強めているのは異常である。

 政権であれ検察であれ、権力をチェックすることはメディアの重要な責務である。当然、検察には厳正公平な捜査を求める。そして民主党には、自浄能力を発揮するとともに、事実を解明するための国会審議にも協力するよう、改めて求めたい。