日経スペシャル「ガイアの夜明け」 1月19日放送 第400回 シリーズ「デフレと闘う!」第1弾 スーパー特売品の攻防
「価格競争」「激安」…消費者にとっては、物が安く買えるいい時代である。しかし、一方で企業は利益をすり減らし、社員の給料も下がっていくという負のスパイラルも進行中だ。安さと不況…ニッポンを覆うデフレの波とどう闘っていけばいいのか。番組では、3週連続で、価格競争の最前線と、そこに立ち向かう企業の取り組みを特集する。 1回目は、激しい価格競争にさらされる食品スーパーと食品メーカーの闘い。 先月、日本チェーンストア協会が発表した全国のスーパーの売上高は、前年同月比5.2%減、11ヶ月連続の前年割れだ。なかでも顕著なのが食品の単価ダウン、消費者の節約志向をもろに受けている。納豆、豆腐、牛乳といった日販品は、かつての特売価格が日常的な状態だ。激しい価格競争の裏で、起きていることとは?
愛知県。金融危機以降、自動車産業を中心に愛知経済の凋落ぶりは全国的に見ても大きかった。しかしそんな名古屋で前年比なんと250%の売り上げを誇る超激安スーパーがある。名古屋市南部の住宅街にある「ウオダイ」だ。午前10時、オープンと同時に客がなだれ込む。人気の秘密はズバリ価格。野菜や魚などの生鮮食品は、すべて競合スーパーの8掛け以下。例えば、豆腐1丁38円、うどん一玉18円など破格の値段が客を呼んでいた。実は「ウオダイ」は、昨年まではこの地区に3つのチェーン店を構える一般のスーパーだった。しかし大手との価格競争には勝てず、昨年2月に本店のみを残し2店舗を閉鎖、超激安スーパーへ業態変更したのだ。加藤社長は、「まともに闘っていては大手量販店に勝てない。1個100円儲けるのではなく、1円の儲けを100個作ろうという発想に切り替えた」と語る。 一方、「ウオダイ」と取引する市内の豆腐メーカー「メイセイ」。「メイセイ」は、愛知県でも有数の豆腐メーカーだ。年々同業者が倒産していく中で、大手スーパーや格安スーパーへの安価な豆腐を大量に請け負うことで生き残ってきた。コストを削減し人件費も抑え、すでに限界の状態だ。実は、安価な豆腐のほかに高品質の豆腐も作ってはいるが売り上げは全体の5%程度、利益の薄い取引でも工場のラインを止めるわけにはいかない…。
茨城県水戸の名産といえば納豆。茨城では全国約220社のうち29社の納豆メーカーがしのぎを削っている。そんな納豆にも豆腐と同様、値下げ圧力が高まっていた。全国納豆協同組合連合会は、昨年12月、スーパーなどの大手量販店の過当な価格競争は「不当廉売」であるとして公正取引委員会に意見書を提出、製品の品質悪化を招く懸念があるとした。そんな中、激安から一線を退いたメーカーがある。水戸市内にある「だるま食品」だ。昨年4月、あるスーパーの特売依頼を断った。「50円を切るような納豆には国産大豆は使えない、赤字を出してまで特売には応じられない…」。あくまで国産大豆にこだわる高野社長には、このデフレに対抗する秘策があった。それはJAと共同で復興させた日本最古の大豆原種「農林1号」だ。その大豆を原料に「伝承納豆」を開発、1パック150円を越える高級納豆を水戸ブランドのお土産品として高速道路のサービスエリアで売り出した。一方で、納豆入りのレトルトカレーを開発、パッケージにはアニメキャラの少女をデザインしアキバ系の若者が集まる漫画ショップで販売、さらにアニメオタクが集まるイベント「コミックマーケット」で売り出し攻勢をかける。スーパーの販売網だけに頼らない納豆メーカーの取り組みを追う。