大型倒産速報

倒産・動向記事

2010/01/19(火) 航空事業
東証1部上場、戦後4番目の大型倒産、事業会社では過去最大
株式会社日本航空など3社
会社更生法の適用を申請
負債2兆3221億8100万円

TDB企業コード:986327932

「東京」 日本航空グループの持株会社で東証1部上場の(株)日本航空(資本金2510億円、東京都品川区東品川2-4-11、代表西松遙氏ほか3名、従業員6名)と、航空事業を手がける(株)日本航空インターナショナル(資本金2000億円、同所、同代表ほか3名、従業員1万5943名)、および航空機リースを手がける(株)ジャルキャピタル(資本金35億円、同所、代表金山佳正氏ほか1名、従業員24名)の3社は、1月19日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請、同日更生開始決定を受けた。

 申請代理人は南賢一弁護士(港区赤坂1-12-32、電話03-5562-8760)ほか16名。

 管財人には片山英二弁護士(東京都中央区八重洲2-8-7、電話03-3273-2600)と(株)企業再生支援機構(千代田区大手町1-6-1、代表西澤宏繁氏、電話03-6266-0310)で、職務執行者として同機構の瀬戸英雄弁護士(千代田区九段北4-1-3、電話03-3239-3100)と企業再生支援機構の中村彰利専務が選任された。

 (株)日本航空は、国際線主体の当時の日本航空(株)と国内線主体の当時の(株)日本エアシステムの経営統合を目的とした共同持株会社として、2002年(平成14年)10月に(株)日本航空システムの商号で設立された。グループ会社の航空運送事業、運送関連、カード・リース事業などの戦略立案や意思決定を行い、グループ会社の経営の統括を行っていた。一方、現在の(株)日本航空インターナショナルは、1951年(昭和26年)8月に設立、その後53年(昭和28年)10月に特殊法人として発足した経緯があり、長年に亘り日本航空(株)の商号で航空事業を行ってきた。54年に国際線の運航をスタート、70年には東証1部へ上場を果たし、83年にはIATA(国際航空運送協会)の国際定期線輸送実績で第1位となるなど実績を積み重ねた。87年に完全民営化されたが、この間の85年にはジャンボ機が御巣鷹山に墜落、死者520名、重傷4名の大事故となり、当時の社長などトップ交代に繋がる事件となった。2002年10月には(株)日本エアシステムと経営を統合するとともに、共同持ち株会社(株)日本航空システムが設立され同社が東証1部上場となり、2004年4月には航空事業を手がける日本航空(株)が(株)日本航空インターナショナルに商号を変更、同年6月には持ち株会社の(株)日本航空システムが(株)日本航空へ商号を変更した。国内、国際のバランスの取れた事業展開が期待されたが、逆に合併の相乗効果が発揮できず、2005年には運航トラブルが頻発し、国土交通省から事業改善命令が出される事態を招いていた。

 業績面では近年の燃料価格高騰などに伴い欠損計上が続いていたため、低採算路線の撤退や減便、中型機導入など効率経営に努めたが、急激に国内外の景気が悪化するなか海外路線が苦戦、2009年3月期の(株)日本航空の連結ベースの年収入高は約1兆9511億5800万円にとどまり、当期純損失約631億9400万円を計上。2009年6月に日本政策投資銀行などから1000億円の融資枠を得たものの、新型インフルエンザの影響もあり、2010年3月期第1四半期は連結ベースで約990億円の赤字を余儀なくされ、資金繰りが懸念されていた。2009年9月には国交省主導の「JAL再生タスクフォース」が改善計画の策定に着手、債権放棄やDESによる金融支援や資本増強、企業年金の支給額カットによる約3300億円の年金積み立て不足の1000億円への圧縮などを骨子とする素案をまとめたが、銀行団との交渉は難航。このため「企業再生支援機構」を活用して再建する方針となった。再建には企業年金の減額が不可欠とされる一方、減額の実現には退職者と現役社員のそれぞれ3分の2の同意が必要であることからこの動向も注目されていた。こうしたなか、2009年末を前に、支援機構が会社更生法の適用申請の直後に支援決定するプレパッケージ(事前調整)型を検討していることが報道されるなど注目が集まっていたが、金融機関も法的整理による再建を受け入れる方向となり、今回の措置となった。

 (株)ジャルキャピタルは、1988年(昭和63年)7月に設立。JALグループの金融機関としての役割を持ち、グループ企業に対する貸付や航空機をはじめとするリース業を手がけ、2009年3月期は年収入高約444億8900万円を計上していた。

 負債は日本航空が約6715億7800万円、日本航空インターナショナルが約1兆5279億1900万円、ジャルキャピタルが約1226億8400万円で、3社合計の負債は約2兆3221億8100万円。戦後では千代田生命保険(相)(負債2兆9366億円)に続いて4番目(同時申請のグループ会社含む)の大型倒産となり、金融関連を除いた一般事業会社としてはそごうグループ22社(負債1兆8700億円、2000年7月民事再生法)を抜いて最大規模となった。

 また2009年度では(株)ロプロ(負債2500億3400万円、2009年11月会社更生法)を抜いて最大の倒産となった。世界の航空会社では2005年のデルタ航空(米国、負債約3兆1200億円)、2002年のユナイテッド航空(米国、負債2兆8000億円)に次いで3番目となった。

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