[政権・検察対立]まず説明責任を果たせ

2010年1月18日 09時44分

 政権与党と東京地検特捜部が、のっぴきならない対立状態に陥っている。

 どちらも強大な権力集団で、これまでは、つかず離れずの距離を保って、それぞれの立場から国家権力を行使し、支えてきた。政権と検察の対決がここまでエスカレートするのは異常というしかない。

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、東京地検特捜部は、石川知裕衆院議員ら元秘書3人を政治資金規正法違反容疑で逮捕した。

 16日の民主党大会と18日の通常国会召集に照準を合わせたかのような、現職国会議員らの一斉逮捕。当の小沢幹事長は党大会で「到底、このようなやり方を容認することはできない」「断固として戦っていく決意だ」と激しい口調で検察の捜査を批判した。

 鳩山由紀夫首相は、公邸で小沢幹事長と会談した際、「どうぞ戦ってください」と小沢氏を擁護したという。党大会では「小沢幹事長を信じている」と述べ、幹事長続投にお墨付きを与えた。

 首相は、党代表であると同時に、検察を含む政府組織のトップである。その首相が、「どうぞ戦ってください」と検察との対決を後押しするようでは、何をか言わんやだ。

 首相自身、元秘書が偽装献金事件で起訴されていて、範を垂れる立場にない。お互い一致結束して苦境に立ち向かっていきましょう、と幹事長を激励しただけなのかもしれない。仮にそうだとしても、言葉の軽さは度を超している。

 平常心を取り戻して事に当たるべき首相が、次第に国民目線を失いつつあるようにも見える。

 首相は小沢氏と一蓮托生(いちれんたくしょう)の道を選んだのだろうか。最後まで小沢氏を支える以外に選択肢はない、と自ら判断したのだろうか。だが、その考えはあまりに甘い。

 元秘書3人の逮捕容疑は、政治資金収支報告書への虚偽記載や記入漏れ、というものだ。現職の国会議員を逮捕するには確かに容疑内容が軽すぎる。法曹関係者の中から強引な捜査を批判する声も上がっている。

 しかし、だからと言って、小沢幹事長の説明責任が免除されるわけではない。土地購入資金4億円の出所について小沢氏は「私どもが積み立ててきた個人の資金」と語るだけで、偽装工作などの疑いを自ら率先して晴らしてはいない。検察と戦う前にまず、説明責任を果たすべきである。

 通常国会は18日に召集される。政府にとっては予算案の早期成立が最大の課題だが、首相も幹事長も「政治とカネ」を巡る問題で野党の集中砲火を浴びるのは確実だ。

 田中角栄元首相と金丸信自民党元副総裁。政界きっての実力者は2人とも「政治とカネ」の問題でつまずき、秘蔵っ子の小沢氏も、同じ問題であえいでいる。

 十分な説明もせずに検察との対決姿勢を鮮明にし、数の力で難局を突破しようする小沢氏の姿勢は、旧自民党的体質そのものである。政権交代を実現させた有権者をこれ以上、失望させてはならない。


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