| 2010年1月17日 09時45分 | |
名護市長選はきょう告示、選挙戦は事実上終盤を迎える。
日米間で懸案となっている米軍普天間飛行場の移設問題に影響を与えるといわれ、全国的に注目されている。容認・反対両派の一騎打ちとなる公算が大きい。
ただ市長選の評価に内外で大きな差があるのが、名護市長選の定番になっている。
マスコミを含め外部は移設問題が最大の争点と位置づけてきたが、容認派が擁立する候補者は振興策を強調し基地問題について態度をはっきりさせていない。反対派の候補者だけが拒否を明確にするため、論争がかみ合わない。そんな構図で容認派が連勝している。
今回も現市長の島袋吉和氏(63)は、鳩山政権の決定を待って判断する、という立場だ。総決起大会で「県としっかり相談しながらやっていきたい」とだけ語った。
これに対し、反対の立場を明確にしている前市教育長の稲嶺進氏(64)。「辺野古に新基地は造らせない」と主張している。
基地受け入れの是非を問うた1997年の名護市民投票は反対票が過半を占めた。その時決着は付いたはずだが、政府は他に移転先を探せず、当時の比嘉鉄也市長が辞職と引き換えに受け入れを決めたことから、移設問題が漂流しはじめた。
98年、故岸本建男氏は海上ヘリ基地に反対した大田昌秀知事の結論に従う、というスタンスで当選した。2002年、岸本氏は稲嶺県政がまとめた沖合リーフ案を受け入れる考えを表明し、再選した。
しかし稲嶺知事が求めた「15年使用期限」や市が要求した基地使用協定締結などの条件整備に政府は後ろ向きだった。
その後、米軍再編に伴う協議で辺野古の一部埋め立てを含む沿岸案を日米両政府が合意。岸本氏の後継者となった島袋氏は06年に同案に反対を訴え当選した。その時も容認派の選対は「極力基地問題に触れない」との方針だった。自公政権とのパイプを使った振興策の継続を強調し支持を広げる選挙が続いてきた。
市側の反対を受けて、日米両政府は「V字形滑走路」に変更したが、仲井真弘多知事と島袋氏は沖合への移動を要求している。これで4回目となる市長選で市民に厭世(えんせい)気分が広がっていても無理はない。
名護市は普天間移設を容認した、との認識が県内移設を進める理由とされてきた。それが正しいかどうかをはっきりさせるためにも争点の明確化が必要だ。
地域の選挙が外交・防衛といった国家レベルの選択と重なるわけもない。6万人の市民に安保という高度な政治判断を委ねる従来の政府のやり方がいびつだった。
それでも鳩山由紀夫首相は選挙結果が移設問題の行方と「まったく無関係だと言うつもりはない」と述べており、市長選が普天間問題の剣が峰となることは間違いない。
政権交代という新たな政治状況の下で、有権者がどのような判断を下すか注目したい。投開票は24日。