2010年1月14日 09時40分 | |
政権が代わっても変わらぬものがある。政治とカネの問題である。しかも当の政治家が説明責任を避ける。失望を禁じ得ない。
民主党の最高実力者である小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が2004年10月、秘書の寮を建てるため東京都世田谷区の土地を3億4000万円で購入した。
問題となっているのはこの土地購入をめぐる原資の4億円の出所である。陸山会は当初、銀行の定期預金を担保に4億円の融資を受けたと説明していたが、その後、融資を受ける直前に土地代の支払いを終えていたことが判明した。元私設秘書の石川知裕衆院議員は東京地検特捜部の調べに4億円は現金で小沢氏から渡された「たんす預金だった」と供述している。この4億円がこの年の政治資金収支報告書に記載されていなかった疑いが持たれている。
特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)の疑いで衆院議員会館の石川氏の事務所や陸山会、ゼネコンなどの一斉捜索に乗り出した。在宅起訴する方針とみられる。
小沢氏は12日の定例記者会見で「私自身も、事務所の者たちも計算上のミスはあったかもしれないが、意図的に法律に反するような行為はしていないと信じている」と釈明したが、億を超える資金の出入りである。説明にも何にもなっていない。4億円の原資は何か。特捜部は、ゼネコン側からの献金だった疑いがあるとみている。小沢氏は西松建設の巨額献金事件で公設秘書の公判も抱えている。
小沢氏は著書「日本改造計画」で、政治資金の出入りを一円に至るまで全面的に公開し、カネの流れを完全に透明化することによって政治家が不正を働く余地も、国民が不信を抱く余地もまったくなくなる、と書いたことがある。連座制を強化し、政治家自身の責任を強調した。記者会見では、その考えは今も変わらないと言っている。
小沢氏の関連政治団体は2000年から06年までの間に、ゼネコン8社から計6億円近い献金を受けていたことも分かっている。特捜部はこれら献金の一部が土地購入費に充てられた可能性があるとみているようだ。
政治とカネに対する国民の目は厳しい。共同通信社が10、11両日に実施した全国電話世論調査で、小沢氏は説明責任を「果たしていない」との回答が85・4%に上った。民主党支持層でも83・5%に上る。支持層でさえ、納得していないことを示すもので小沢氏は深刻に受け止めるべきだ。
特捜部は全容解明には小沢氏の事情聴取が不可欠とみているが、実現していない。自民党は18日召集の通常国会で小沢氏の政治資金問題を徹底追及する構えだ。政府の最高責任者の鳩山由紀夫首相と党の最高実力者の小沢氏が、ともにカネにまつわる事件にかかわるのは嘆かわしい限りだ。
不況さなかの予算国会は喫緊の課題が山積し停滞は許されない。小沢氏は捜査中を理由に何も説明しなかった。やましいところがなければ堂々と説明すべきだ。それが政治家の責任ではないか。