| 2010年1月13日 09時54分 | |
難航していた日本航空の再建策がようやくまとまった。会社更生法を活用した法的整理と企業再生支援機構による公的支援を併用し、3年以内の再建をめざす、という内容だ。
法的整理か私的整理か―再建策をめぐっては、関係者の思惑が入り乱れ、激しい綱引きが続いた。
民間の主力取引銀行3行は当初、法的整理に反対していた。保有する優先株に損失が出る恐れがある上に、信用不安による利用客離れや運航への影響が懸念されるからだ。
だが、公的資金を投入する以上、国民が納得できる透明性の高い再建手法が求められる。前原誠司国土交通相の協力要請に対し、銀行団は12日、法的整理を了承した。
債務超過額が8600億円を超え、深刻な経営危機に陥っている日航を再生するためには、経営のけじめをつける必要があり、法的整理はやむを得ないと考える。
公的資金を投入するにあたり高額との批判が集まった企業年金については、減額に必要な3分の2以上の同意を得たという。実施されれば、現役社員が約53%、OBが約30%の大幅な減額となる。
大きな痛みを強いられるのは社員やOBだけではない。100%減資して上場廃止ということになれば株式は紙くず同然となる。個人株主にとっては大きな痛手だ。
日航は19日、会社更生法を申請する。「日航が死んだ日」と言っていい。事ここに至ってもなお、なんでそうなってしまったのかという思いは消えない。
企業再生支援機構の経営再建計画によると、2012年度までの3年間で、グループ人員の約3割にあたる1万5600人を削減するという。
第3者機関の「安全アドバイザリーグループ」(柳田邦男座長)は、安全のための投資をどのように進めるか不明確だとして会社更生法の適用に懸念を示した。
日航ジャンボ機墜落事故の遺族らでつくる「8・12連絡会」も、リストラが進むことを憂慮し、前原国土交通相に安全確保を要望している。
再生への道を歩む日航が最も重視しなければならないのは安全の確保だ。
法的整理によって信用不安が国際的に広がる可能性も否定できない。燃油などの現金決済を迫られ、急激に現金が流出する事態も予想される。企業再生支援機構、日本政策投資銀行、民間の主力3行は、政府と協調して日航の資金繰りを支えてもらいたい。
日航沖縄支店によると、那覇と本土の各都市を結ぶJAL便は、東京、伊丹、関空、名古屋、福岡、成田の6路線に就航している。今のところ、いずれも廃止の予定はないというが、日航の今後の事業戦略が見えないだけに、一抹の不安が残るのも確かだ。
JTA路線のうち那覇―神戸、石垣―神戸は6月1日から、那覇―北九州は5月6日から廃止されるという。
離島県でしかも観光立県。沖縄にとって空の翼から受けてきた恩恵は計り知れない。日航の経営危機は決してよそ事ではない。