[日米外相会談]「外圧」頼みとの決別を

2010年1月12日 09時38分

 日米外相会談が明日、ハワイで開かれる。岡田克也外相は米軍普天間飛行場の移設問題について、ヒラリー・クリントン国務長官に説明し、両者は緊密な協議の継続を確認する予定だ。

 「新たなことはない」と岡田外相は発言しており、与党3党が5月までに移転先を決める日本側の対応をあらためて伝えることになりそうだ。今回の外相会談は政権交代後にぎこちなさが目立つ日米関係の体裁を整えようという形式的なものだが、継続協議する姿勢をアピールする狙いもあるだろう。

 クリントン長官は19日までアジア太平洋諸国を歴訪する予定で、途中のハワイでアジア太平洋政策を発表する予定だ。その日程に組み込まれた外相会談は、日米安保改定50周年の節目に同盟深化の議論を始めるセレモニーを兼ねている。

 沖縄基地問題を含め正すべき課題から目をそらさず、アジア太平洋の平和と安定の礎になるような未来志向の論議を目指すべきだ。

 ただ、米政府は名護市辺野古へ移転する現行案を「ベスト」だと言い続けている。難しい問題にぶつかるとき、日本外交はしばしば「外圧」を利用する癖があり、ハワイでこの手口が使われないか注意して見ていたい。

 米長官が現行案の変更に難色を示せば、それをメディアが解説なしに状況だけを報じ、「やっぱりだめなんだ」と世論づくりが行われる、という展開も想定される。「なぜ」「どうして」をしっかり追究する目が不可欠だ。

 クリントン元政権の国防次官補、ジョセフ・ナイ氏が7日付ニューヨーク・タイムズ紙に「ひとつの問題にこだわり過ぎると、大切な同盟を見失うことになる」と主張する論文を投稿した。ナイ氏は1996年の普天間返還交渉に携わった。

 昨年10月に来日したゲーツ米国防長官が辺野古以外の検討を「非生産的」とこき下ろした高圧的なアプローチは、新政権を窮地に追いやるだけで、良い結果を生まない、と忠告した。

 米政府がかたくなに現行案を推し、日本が「外圧」を利用して世論を抑えたにしても、それは「ピュロスの勝利」(払った犠牲に比べ、得るものが少ない戦い)でしかないと分析している。

 論文の書き出しは「東京から見ると、日米関係が危機にひんしている」とあり、日本の空騒ぎをくさしているようにも読める。

 稲嶺前県政が求めた代替飛行場の「15年使用期限」も政府は「外圧」を使って封殺した。2001年の首脳会談で森喜朗首相は沖縄が要求している、と伝聞調で説明し、ブッシュ大統領は「期限を決めることはなじまない」と返した。大統領に否定してもらえば、日本政府は国内向けに説明が付く。

 そんな主体性のない対応が旧政権下でまかり通った。

 軍は政治に従う、という文民統制の基本を再確認しなければ、基地問題の出口は見えてこない。同盟深化もまた実質を伴わないだろう。


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