[針路2010]沖縄振興 発想の転換で未来図を

2010年1月9日 09時07分

 沖縄振興特別措置法と沖縄振興計画が2011年度で期限切れを迎える。残すところ2年余り。1972年の復帰から4次にわたる振興(開発)計画は、県が案を作成し国が決定し主導したものだ。これまでの成果と課題を踏まえた上で、ポスト振計の在り方など自立した沖縄の将来像をどう描くか重要な年になりそうだ。従来の枠組みを超え、沖縄の未来は自分たちで決めるという気概をもって議論を深める必要がある。

 沖振計は高率補助や税制上の優遇措置の一方で、補助金漬け、財政依存体質を強めたとの厳しい見方がある。3次までは「本土との格差是正」、現行計画は「民間主導の自立型経済の構築」を掲げている。達成できた目標もあれば、届かなかったのもある。

 この間投じられた振興開発事業費は約8兆7900億円に上る。道路や空港、港湾などの社会資本は格段に整備された。ただ、「ザル経済」といわれるように予算が県内にとどまらず、県外企業に還流する構造的な欠陥を指摘されながら、改善されない。

 目標を達成した中で真っ先に挙げられるのは人口だ。復帰時の約96万人から約138万人となり、想定以上の伸びを示した。経済発展の基礎となる要素といえ、2025年ごろにピークを迎える見通しだ。需要喚起、労働力増加を意味し、減少期に入った日本の中で、沖縄は大きな経済的ポテンシャル(潜在的能力)を持っている。

 目標に届かなかった課題も多い。1人当たり県民所得は約209万円にとどまり全国最低、失業率も7・4%で全国最悪だ。米軍基地の整理・縮小は進んでいない。ただ、県民総所得に占める基地関連収入は15・6%から5・4%まで低下している。

 民主党政権下で公共事業が先細りになるのは間違いなく、それに頼った計画を立てるわけにはいかない。米軍基地についても同様である。

 基幹産業の観光は2008年、600万人を超え過去最高を記録したものの、それ以降は減少傾向だ。1人当たりの消費額は約7万2000円と復帰時を下回り、「安近短観光」にとどまっているのが現状だ。自然環境への負荷を考えると、量から質への転換が必要だ。

 胎動する東アジアのダイナミズムを日本の玄関口としてどう取り込んでいくかも大きなテーマだ。離島を国境圏として積極的に位置づける宮古・八重山5市町村が設立した「美(か)ぎ島(すま)・美(かい)しゃ市町村」の取り組みにも注目したい。

 内閣府の沖縄振興審議会会長代理を務める嘉数啓氏は昨年末の講演で、例えば、久米島の循環型社会を提唱した。

 同島は人口約9000人で、サトウキビ、海洋深層水、漁業、久米島紬(つむぎ)、豊かな自然を擁する。野菜は現在、大半を島外から供給しているようだが、地産地消ができれば、循環型社会のモデルになり、経済自立、共生社会につながる可能性をみている。

 豊かさとは何か。発想を大転換し、基地なき後の沖縄の未来図まで描きたい。


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