[平野氏来県]基地政策の歪みを正せ

2010年1月8日 09時32分

 米軍普天間飛行場の移設先を検討する与党3党による「沖縄基地問題検討委員会」の委員長、平野博文官房長官がきょうから10日まで沖縄視察する。基地過密の小さな島で軍用飛行場を現在地から数キロだけ動かすことのおかしさをかみしめてもらいたい。

 委員会は今月中に3党がそれぞれ「実現可能な案」を持ち寄り、5月末までに結論を出す予定だ。

 平野氏は「現行案以外で考える」との姿勢を繰り返し強調した。そうでなければ与党があらためて検討委員会を立ち上げる必要もなく、平野氏の主張は当然だろう。

 これまで政府は、海域調査で海上自衛隊の艦船を大浦湾沖合に浮かべるなど、強引な手法で現行の移設計画(V字形滑走路)を進めてきた。2006年5月に稲嶺恵一前知事と額賀福志郎防衛庁長官(当時)が交わした「基本確認書」をもって、旧政権は「沖縄県が現行案に同意した」と国会でも説明し、強権的ともいえるやり方を正当化してきた。

 ところが6日の委員会で、この合意は政府側の一方的な解釈だったことが分かった。防衛省は「合意とは言い切れない」と従来の説明を覆した。県側は移設の諸条件を協議していくことを確認しただけで、現行案を「容認したわけではない」と否定してきた。県の主張が正しく、旧政権が現行案を進めてきたすべての前提が崩れたことになる。

 問題は深刻だ。日米関係の最大懸案とされてきた普天間問題をめぐる政府対応の信頼性が失われるからだ。

 現行案をめぐる暗部は「地元合意」だけではない。

 米海兵隊の新型輸送機「オスプレイ」配備計画についてもあいまいだ。米政府は04年度予算教書に、海兵隊による同機の沖縄配備を盛り込んでいたが、旧政権は正式な配備予定を米側から聞いていない、としてきた。

 新型機配備を前提としているなら、沖縄防衛局が現在進めている環境影響評価のやり直しも迫られるだろう。

 岡田克也外相は「辺野古という選択肢がなくなったわけではない」と現行案を排除しない姿勢を示しているが、その前に政府が米側と交渉してきた過程の正当性を証明する必要がある。

 委員会は日米協議で協議した移設案について検討された資料提出を関係省庁に指示した。沖縄以外の移設案は存在しなかったのかどうか、仮に県外移転も提案されたのなら、なぜ否定されたのか全容を明らかにすべきだ。

 「地元合意の有無」「新型機配備などと移設条件の整合性」「沖縄以外の候補地の存在」など、いずれも重大な論点となる。

 対米関係に配慮しつつも旧政権の垢(あか)を抱えながら新たな解決を生み出すのは容易でない。1996年に返還合意した「普天間」をめぐる混迷は旧政権の置き土産でもあり、自公両党にも聞きたいことが山ほどある。

 平野氏は初めてとなる今回の沖縄視察で、政府が強引に進めた基地政策の歪(ゆが)みを直視してもらいたい。


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