福井県の総合ニュースサイト 福井新聞オンライン

サイトマップ


全国の速報

論説

2010年01月20日日航破綻 視界不良下の「再生飛行」

 日本航空が会社更生法の適用を東京地裁に申請。経営破綻(はたん)した。日本の空の象徴だったツルが地に落ちたことになる。採算性のない地方空港就航を強要、乱立させた航空行政の責任も重い。1987年の完全民営化後も結局は「名ばかり民営化」で意識、経営両面での体質の甘さに原因があったのではないか。

 今後は企業再生支援機構の主導により3年間で経営立て直しを図るが、効率追求だけでは再生はおぼつかない。利用者に支持され、雄々しく世界の空を羽ばたけるか視界不良だ。

 昨年10月下旬、政府が前面に出て日航問題の解決を目指すことになった。前原誠司国土交通相は一貫して「飛行機が飛ばない状況は絶対に避けなければならない」と強調してきた。当初、更生法などの法的整理にも否定的だったが、経営内容が債務超過状態と予想以上に悪化していることが明らかになった。

 日航や国交省、金融機関は私的整理で何とか乗り切ろうとした。法的整理は倒産、破綻とみられるので客離れを招き、業績がますます低迷する可能性があるからである。日航はこれまで何回も経営不振に陥ったが、金融機関の出資、融資などで難局を切り抜けてきた。だがそれは抜本改革なしに、課題を先送りしただけだった。そうした甘い対応が日航を追い詰めた。長年のうみを出すためには法的整理が不可欠と判断されたのだ。

 事業再生計画ではグループ全体の人員の約3割を削減する。110社ある子会社は半減し、燃費効率の悪いジャンボ機はゼロにする方針だ。日航は人員や関連会社が多すぎるといわれ、またジャンボ機の小・中型機への機種更新が必要なことも分かっていた。病気の原因、患部は判明しているのに切除する決断ができなかった。社内外のしがらみもあり痛みを避け続け、かえって傷口を広げたといえる。

 今度は思い切った手術は可能だが、それが業績の急回復につながるのか。マイレージは維持され、顧客サービスの充実は当然だが、格安料金合戦が激化する中、計画に盛り込まれた黒字化などの見通しは甘いと指摘される。破綻イメージの影響、さらに85年のジャンボ機墜落事故など安全への不安もいまだついて回っていることも、しっかり肝に銘じるべきであろう。

 日航の会長兼最高経営責任者(CEO)に稲盛和夫・京セラ名誉会長が就任する。優れた経営者として手腕に期待したいところだが、運輸業界については素人である。重責を担えるのか、不安視する関係者もいる。

 社内抗争や放漫経営、複雑な労働組合問題に加え、政・官とのもたれ合いが日航衰退の原因といわれる。今回の法的整理では少なくとも約440億円の国民負担が生じる恐れがある。公的資金による救済は今回限りにすることが重要だ。安全運行を最優先に、今度こそ日航労使一丸となって迅速、着実に再生に向け努力する必要がある。

ニュースランキング

ぷりん

福井新聞文化センター 風の森倶楽部


〒910-8552 福井県福井市大和田町56

TEL:0776-57-5111

本ページに掲載の記事・写真などの一切の無断掲載を禁じます。