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2010年01月19日日本年金機構 サービス意識を徹底せよ
数々の不祥事にまみれた社会保険庁が日本年金機構として再出発した。非公務員型の公法人に生まれ変わり、職員が民間人になったのが最大の特徴だ。今度こそサービス業であるという意識を徹底させ、国民の信頼を取り戻してもらいたい。
全国にある社会保険事務所は年金事務所になり、本県では福井、武生(越前市)、敦賀の3事務所も4日から業務を始めた。正規職員約1万800人のほとんどは社保庁からの移行組で、民間から採用したのは約千人にすぎない。「お役所仕事」の旧弊から脱し、民間なら当然の接客姿勢を全員に行き渡らせるのは容易ではないが、単なる「看板の掛け替え」にならないよう肝に銘じてほしい。
社保庁で懲戒処分歴のある職員ら500人余りは採用されず、民間の解雇にあたる分限免職となった。これらの職員が引き起こした不正行為が国民の年金不信を増幅したことを思えば、やむを得ない措置ではあった。
ただ、中には処分歴のない人もいる。処分歴がある人でも、不採用としたのは「二重処分で違法」との指摘もある。今後も引き続き、再就職を希望する人への支援は必要だろう。
身ぎれいになった新組織だが、課題は山積している。急務なのは年金記録の回復問題だ。持ち主が分からない約5千万件の「宙に浮いた」年金記録が明らかになってから間もなく3年になるが、まだ2千万件以上が解明されないままだ。
民主党政権は先の衆院選で「国家プロジェクトとして集中的に取り組む」と約束した。ところが、来年度予算では当初要求の半額しか実現せず、全面解決もいつになるか分からなくなった。ちぐはぐ感は否めない。
本業の保険料徴収では、国民年金の納付率向上が課題だ。2008年度は62・1%と過去最低だった。このままでは将来の低年金や無年金者の増加が危惧(きぐ)される。国民の老後を支えているという自覚をもって全力で取り組み、実績で示せるかどうかが問われる。
気掛かりなのは、民主党政権が掲げる歳入庁との関係だ。マニフェスト(政権公約)では、年金制度の抜本改革とともに、社保庁は国税庁と統合して歳入庁とし、保険料と税を一体徴収するとした。新組織はそれまでの「つなぎ」と位置付けた経緯がある。
だが、その議論はまだ始まっていない。長妻昭厚労相は3年後に年金制度改革法案を提出し、新年金制度と同時に歳入庁を発足させるとしているが、これでは職員は落ち着いて仕事をできないのではないか。
新年金制度をどう設計するかによって、それを担う組織も大きく変わらざるを得ない。システムを改修するだけでも時間がかかるし、なにより年金制度がどうなるかは国民の最も大きな関心事でもある。一刻も早く、制度改革の具体的な議論に着手すべきだ。